【風俗トラブル】示談金をギフトカードや電子マネーで払うよう求められたら?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

本記事は、2026年11月時点の法令と一般的な実務をもとにしています。ギフトカードや電子マネーの払戻し・利用停止の扱いは発行会社ごとの規約によって異なりますので、個別の対応は各社の窓口でご確認ください。


風俗店の利用をめぐって示談金を求められ、その支払い方法として「コンビニでギフトカードを買って、裏面の番号を送ってほしい」「電子マネーで送ってくれれば今日中に終わらせる」と指定されることがあります。振込や現金の手渡しよりも手軽に見えるため、早く終わらせたい一心で応じてしまう方も少なくありません。

 しかし、ギフトカードや電子マネーによる支払いは、相手が誰なのか、何のために払ったのかという記録が残りにくく、払った後に取り戻すことも難しい方法です。本記事では、こうした指定を受けたときに払う前に確かめておきたいことと、すでにカードを買ってしまった場合、番号を伝えてしまった場合の動き方を整理します。

ギフトカード・電子マネーでの支払いを求められる典型的な場面

 ご相談の中で見られる指定のされ方には、いくつかの型があります。

  • コンビニで特定のギフトカードを買い、裏面のコードを撮影してLINEやメールで送るよう求められます。
  • コード決済アプリの送金機能を使い、個人のアカウントへ送るよう求められます。
  • コンビニの端末で申込券を発行し、レジで代金を払うよう指示されます。
  • 「振込だと記録が残って店も困る」「受け取りに行く人がいない」など、振込や手渡しを避ける理由が添えられます。


 いずれも、支払う側から見ると「誰の手に、いくら渡ったのか」が確認しにくいという点で共通しています。

ギフトカードや電子マネーで払うことの問題点


番号を伝えた時点で、お金を渡したのと同じになる

 ギフトカードの多くは、裏面の番号さえ分かれば額面分を使える仕組みです。カードそのものが手元に残っていても、番号を伝えた時点で、相手はその金額を自由に使える状態になります。警察も、カードの番号を教えることは額面の金額を渡すことと同じだと注意を呼びかけています。

誰に払ったのかが分からないまま終わりやすい

 振込であれば口座の名義が残りますが、ギフトカードの番号を送る方法では、受け取ったのが店なのか、キャスト本人なのか、店の名前を使っている第三者なのかを確かめる手がかりがほとんど残りません。示談は「誰と」「何について」合意したかが重要ですので、相手が特定できないまま支払うと、その支払いが示談として意味を持つのかどうかも曖昧になります。この点は【風俗トラブル】支払った後に相手が別人だと分かった|本人確認をしない示談の危うさでも取り上げています。

支払いの証拠が弱く、追加の請求を止めにくい

 手元に残るのは、カードを買ったときのレシートと、相手に送った画像くらいです。後日「受け取っていない」「あれは別の件の支払いだ」と言われたとき、示談金として払ったことを示すのは容易ではありません。記録の残りにくい方法で一度応じると、「まだ足りない」「別の担当者の分も必要だ」と請求が続くきっかけになることもあります。

払った後に取り戻す手立てが限られる

 ギフトカードなどの前払式の支払手段は、資金決済法により、発行会社が払戻しをすることが原則として制限されています。また、預金口座への振込であれば、口座の凍結や振り込め詐欺救済法による被害回復の手続が問題になる場面がありますが、ギフトカードの番号を伝える形の支払いはこの仕組みの対象外です。払ってしまった後に回収する道は、振込と比べてかなり狭いと考えておく必要があります。

支払い方法ごとの違い

 主な支払い方法を、後で問題になりやすい点で比べると次のとおりです。

支払い方法相手が誰か分かるか払った記録後で争いになったとき
銀行振込口座名義から相手をたどれる振込明細が残る口座を手がかりに返還や確認を求めやすい
弁護士を通じた支払い弁護士が相手方を確認する示談書・受領書と結び付けて残る合意の内容に沿って処理しやすい
現金の手渡し対面した人しか分からない受領書がなければ残らない受け渡しの有無から争いになりやすい
コード決済の送金アカウント名しか分からないことが多い送金履歴は残る受取後に取り消すことは通常できない
ギフトカード・電子マネーの番号を伝えるほとんど分からない購入時のレシート程度誰に渡ったかを示しにくく、回収も難しい


示談金をギフトカードで払う義務はあるのか

 示談金は金銭の支払いですので、民法上、支払う側は通貨で支払うことができます(民法402条1項)。お金の代わりに別のもので支払うことは「代物弁済」と呼ばれ、受け取る側との合意があって初めて成り立つものです(民法482条)。つまり、相手から支払い方法としてギフトカードを指定されたとしても、それに従わなければならない法律上の決まりはありません。

 また、支払う側は、支払いと引き換えに受取証書(領収書・受領書)を交付するよう求めることができます(民法486条1項)。ギフトカードの番号を送る方法では、この受領書のやり取りが成り立ちにくいという点も押さえておきたいところです。受領書の作り方は【風俗トラブル】示談金の領収書・受領書をどう作るか|後日の否認に備えるで解説しています。

 利用時の行為について自分に非があると感じている場合でも、この点は変わりません。謝罪や示談に向き合うことと、記録の残らない方法で支払うことは、分けて考えることができます。

この指定から読み取れること

 正規の店舗や代理人弁護士が示談金を受け取る場面で、ギフトカードや電子マネーの番号を指定することは通常ありません。そのため、こうした指定がされた場合には、次のような事情が背景にある可能性を考えておく必要があります。

  • 店の名前を使った第三者が、店とは無関係に請求している可能性があります。
  • キャストや従業員が、店を通さずに個人として金銭を求めている可能性があります。
  • 利用の事実そのものがなく、架空の請求である可能性があります。


 もちろん、相手が支払い方法についてよく分からないまま指定しているだけという場合もあり、指定があったことだけで請求全体が不当だと決まるわけではありません。ただ、相手が誰で、何を根拠に請求しているのかを確かめる理由としては十分です。請求の確かめ方は風俗トラブルで不当請求・詐欺を見抜くチェックリストや【風俗トラブル】請求元の店が実在するか分からない|払う前の確認方法も参考にしてください。

 なお、「払わなければ家族や勤務先に知らせる」といった告知とあわせて金銭を求められている場合には、請求の態様によっては恐喝(刑法249条)などが問題になることもあります。

指定を受けたときに、払う前にすること


  1. カードを買いに行かず、その場で支払いを約束しないこと。
  2. 相手とのやり取り(メッセージ、着信履歴、指定された金額やカードの種類)を消さずに保存すること。
  3. 相手の店名・所在地・担当者名と、キャスト本人との関係を確かめること。
  4. 振込など記録の残る方法と、示談書・受領書の作成を求めること。
  5. 自分で判断がつかない段階で弁護士に相談すること。


 「今日中に払えば終わる」と急がされることも多いですが、支払い方法を確かめるための時間をとることは不自然なことではありません。相手には、「支払い方法と内容を確認してから改めて連絡します」とだけ伝え、その場で金額や期限に応じないことが考えられます。急がされたときの考え方は【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で詳しく扱っています。

すでにカードを買った・番号を伝えてしまった場合


カードを買ったが、番号はまだ伝えていない

 番号を伝えていなければ、まだ相手には何も渡っていません。番号の画像を送らず、カードとレシートを手元に保管してください。購入後の返品や払戻しには応じてもらえないことが多いものの、扱いは発行会社や販売店によって異なるため、カードに記載された窓口に確認してみる価値はあります。

番号を伝えてしまった

 できるだけ早く、カードの発行会社の窓口に連絡し、使われていない残高について利用停止の対応ができるかを確認してください。時間が経つほど残高が使われてしまう可能性が高くなります。あわせて、警察の相談窓口(#9110)に相談することも考えられます。

 カード、レシート、相手とのやり取りの記録は、その後の対応の手がかりになりますので処分しないでください。一度支払いに応じた後は、追加の請求が来ることも珍しくありません。次の請求が来ても、同じ方法では応じずに、まず相談先に状況を伝えることが大切です。振込で払ってしまった場合の対応は【風俗トラブル】振り込んでしまった直後|振込を止められるか・取り戻せるかをご覧ください。

弁護士が窓口になると変わること

 弁護士が代理人として入ると、まず請求している相手が誰なのか、店として請求しているのか、キャスト本人の意思に基づくものなのかを確認します。そのうえで、請求に応じるべき事情がある場合には、金額の根拠を確かめ、示談書を取り交わし、記録の残る方法で支払うという順序で進めます。

 キャストが自分の口座や名前を知られたくないという事情がある場合でも、弁護士を通じて支払えば、双方の個人情報を必要以上に開示せずに済む形を整えやすくなります。当事務所でも、振込先だけを告げられたご相談について、合意書の締結と本人確認を条件として解決に至った例があります(【解決事例】風俗店から30万円を請求され振込先だけを告げられた男性が、合意書の締結と本人確認を条件に約1週間で解決した事例)。示談書に入れておきたい内容は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで整理しています。

よくあるご質問


一部だけギフトカードで、残りは振込にすると言われたら?

 一部であっても、ギフトカードで払った分は誰に渡ったのかを示しにくく、示談金の一部として扱われるかどうかで後から争いになるおそれがあります。全額を記録の残る方法で支払い、その総額を示談書と受領書に記載する形を求めるほうが安全です。

「ギフトカードなら家族に知られない」と言われたら?

 家族に知られたくないという気持ちに配慮したように聞こえますが、記録が残らないことで困るのは、主に支払う側です。家族への発覚を避けたい場合でも、弁護士を窓口にして連絡先を一本化するなど、記録を残したまま配慮する方法はあります。

振込先として個人名義の口座を指定されたら?

 ギフトカードよりは相手をたどりやすいものの、その口座が店やキャスト本人と結び付いているかは確かめる必要があります。詳しくは【風俗トラブル】振込先が個人名義の口座だった|払う前に確かめることをご覧ください。

関連する解説記事



まとめ

 示談金をギフトカードや電子マネーで払うよう求められたときは、支払い方法そのものが、相手の特定・支払いの証明・払った後の回収という三つの点で不利に働きやすいことを押さえておく必要があります。指定に従う法律上の義務はなく、記録の残る方法と書面での合意を求めることは正当な対応です。カードを買う前、番号を伝える前の段階であれば、選べる対応はまだ多く残っています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【風俗トラブル】示談金をギフトカードや電子マネーで払うよう求められたら?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼