風俗店でトラブルになったら絶対にやってはいけない5つのこと|本番・盗撮トラブルの正しい対処法
風俗店の個室やホテルでの盗撮が問題になったとき、多くの方が最初に不安を口にされるのが「今回の件だけで済むのか」という点です。押収されたスマートフォンに過去の画像や動画が残っていれば、なおさら気が気ではないでしょう。
ただ、「余罪がどうなるか」という問いに、いきなり結論から答えることはできません。見通しは、①どの罪名にあたるのか → ②罪の数はどう数えるのか → ③公訴時効は完成していないか → ④処分にどう効くのか、という順番でしか立たないからです。ここを飛ばして「たいてい不起訴になる」「必ず重くなる」と言われても、ご自身の事案に当てはまるかどうかは分かりません。
この記事では、性風俗を利用される男性の立場を想定し、余罪の見通しを立てるための考え方と、弁護活動で現実にできることを整理します。
なお、この記事は捜査を逃れる方法を説明するものではありません。撮影された相手方には実際に被害が生じています。その前提のうえで、ご自身の置かれた状況を正確に把握していただくための内容です。
1. 「余罪」とは何か──風俗利用の場面で問題になるケース
余罪とは、いま捜査の対象になっている事件(本件)以外に犯したもので、まだ立件されていない犯罪事実を指します。「立件」に法律上の定義はありませんが、一般には被疑者として認定され、本格的な捜査の対象とされることをいいます。
風俗利用の場面では、次のような形で余罪が問題になりやすい傾向があります。
- メンズエステなどの個室で、施術中に繰り返し撮影していた
- デリヘルを呼んだホテルの部屋に、複数回にわたりカメラを設置していた
- 同じ店を何度も利用し、そのつど別のキャストを撮影していた
- 複数の店舗・複数の地域にまたがって同種の行為が続いていた
つまり、風俗事案の余罪は「相手方が複数いて、店をまたぎ、期間が長期にわたる」という形をとりやすい。この構造が、次章以降の見通しに直接効いてきます。
2. 見通しは「罪名の特定」からしか立たない
盗撮という言葉は、法律上の罪名ではありません。同じ「盗撮」でも、行為をした時期によって適用される法律が変わります。
2023年(令和5年)7月13日に性的姿態撮影等処罰法が施行され、それ以降の行為は同法の性的姿態等撮影罪(撮影罪)で処理されます。一方、施行前の行為には、行為当時の各都道府県の迷惑防止条例や軽犯罪法が適用されます。余罪が数年にわたる場合、本件と余罪で適用法令が異なることが起こり得ます。
| 罪名 | 主な法定刑 | 補足 |
|---|---|---|
| 性的姿態等撮影罪(撮影罪/同法2条) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 2023年7月13日以降の行為。未遂も処罰される |
| 東京都迷惑防止条例違反 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(常習は2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金) | 施行前の行為。内容は都道府県ごとに異なる |
| 建造物侵入罪(刑法130条前段) | 3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金 | 撮影目的で店舗等に立ち入った場合 |
| 軽犯罪法違反(1条23号) | 拘留または科料 | のぞき行為 |
| 性的影像記録提供罪(同法3条) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(不特定・多数への提供や公然陳列は5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金) | データを他人に渡した場合 |
※法定刑は2025年6月1日施行の拘禁刑一本化を反映しています。
もう一点、罪の数え方も重要です。撮影目的で店舗に立ち入った行為(建造物侵入罪)と撮影そのものは、目的と手段の関係にあるため、刑法54条1項後段の牽連犯として、処断上は一罪として扱われます。ただし、これはあくまで1件ごとの話です。この「立入り+撮影」というセットが複数あれば、各セットどうしは併合罪の関係に立ちます。
3. 古い行為は、公訴時効が完成していることがある
公訴時効は、罪名ごとに法定刑の上限で決まります(刑事訴訟法250条)。撮影罪・迷惑防止条例違反・建造物侵入罪はいずれも3年、軽犯罪法違反は1年、不特定・多数への提供や公然陳列は5年です。
したがって、余罪の時効は「盗撮」という一括りでは計算できず、行為ごと・罪名ごとに個別に検討する必要があります。数年前の行為であれば、すでに時効が完成していて立件の対象にならないこともあります。
もっとも、これは「時効を待てばよい」という話ではありません。ご本人が条例違反のつもりでいた行為が撮影罪と評価されたり、データを他人に渡していた事実が加わったりすれば、前提そのものが変わります。
4. 「発覚」と「立件」は別物──風俗事案の位置
押収されたスマートフォンやパソコンの解析、家宅捜索、取調べでの供述などから、過去の行為が捜査機関に知られること自体は珍しくありません。ただ、発覚することと、その行為が事件として立件されることは別です。
立件するには、いつ・どこで・誰に対して行われたのかを、証拠で示せる必要があります。画像や動画だけでは撮影場所や相手方を特定できないことが多く、これが余罪の立件を難しくしています。
ここで、風俗事案には他の盗撮事案と異なる特徴があります。駅や商業施設での通りすがりの撮影と違い、利用の記録が残っているという点です。予約履歴、店舗側の受付記録、決済の記録などから「どの店の、どの時間帯の、誰か」まで辿れる余地は、一般の盗撮事案より大きいといえます。
他方で、相手方は源氏名でしか把握されず、店舗を通じてしか連絡が取れないのが通常です。店舗側が事件化に消極的な場合もあります。特定しやすい要素と、特定しにくい要素が同居しているのが風俗事案の実情です。
5. 立件されにくいことは、必ずしも有利ではない
余罪が立件されにくいと聞くと、安心材料のように思えるかもしれません。しかし、相手方が特定できないということは、その相手と示談ができないということでもあります。
刑事処分の判断において、被害者との示談は大きな要素です。ところが相手が特定されていなければ、謝罪も被害弁償も届けようがありません。相手の意向にかかわらず金銭を法務局に預ける供託という手段も、供託書に相手方の氏名・住所を記載する必要があるため、源氏名しか分からない事案では事実上使いにくいのが実情です。
つまり、「立件されない可能性が高い余罪」は、処分を軽くする材料として使うこともできない余罪でもあります。この場合は、再犯防止の取り組みなど、示談以外の情状を積み上げる方向で組み立てることになります。
6. 余罪が処分に効く4つの経路
余罪の影響は、「余罪も起訴されるかどうか」だけではありません。次の4つの経路を分けて考えると、見通しが整理しやすくなります。
6. 余罪が処分に効く4つの経路
余罪の影響は、「余罪も起訴されるかどうか」だけではありません。次の4つの経路を分けて考えると、見通しが整理しやすくなります。
| 経路 | 内容 |
|---|---|
| ①本件の処分に効く | 立件に至らなくても、同種行為の反復は常習性・再犯のおそれの評価に関わり、本件の処分や量刑に影響し得ます |
| ②併合罪として処断される | 本件と余罪がまとめて起訴された場合、有期拘禁刑は最も重い罪の長期に2分の1を加えたものが上限となり(刑法47条)、罰金は各罪の多額の合計以下で処断されます(同48条2項)。撮影罪が複数であれば上限は4年6月です |
| ③手続が長引く | 裏づけ捜査に時間がかかるため、身柄事件では勾留が満期まで及びやすく、在宅事件でも捜査が数か月に及ぶことがあります。日時・場所・相手方が特定された余罪は、別事件として再逮捕されることもあります |
| ④確定後も終わらないことがある | 併合罪関係が遮断されるのは「拘禁刑以上の刑に処する確定裁判」があった場合です(刑法45条後段)。本件が罰金で確定しても、未処理の余罪は刑法50条により更に処断され得ます |
②について補足すると、上限が引き上げられることと、実際に言い渡される刑がそれに比例して重くなることは別です。件数、態様、期間、示談の有無などを踏まえて個別に判断されます。
7. 「スマホに残っているだけ」で別の罪になるのか
よくいただく質問です。性的姿態撮影等処罰法には、撮影罪とは別に性的影像記録保管罪(4条・2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金)が置かれていますが、これは「提供または公然陳列をする目的で」保管した場合の規定です。目的なく手元に残しているだけでは、この罪の対象にはなりません。
ただし、別罪にならないことと、不利にならないことは違います。残されたデータは余罪の有力な証拠になりますし、同法は押収された記録の消去等の手続も定めています。
そして、自分でデータを消すことは避けてください。削除されたデータは解析により復元されることがあり、消去を試みた事実そのものが罪証隠滅を疑わせ、身柄拘束や処分の判断に不利に働くおそれがあります。
8. 店やキャストからの金銭要求は、刑事とは別のレイヤー
余罪が疑われる場面では、「他にも撮っているだろう」と言われ、その場で高額の支払いを求められることがあります。
刑事責任と、店舗・キャストからの民事上の請求は別の問題です。提示された金額がそのまま支払義務の額になるわけではありません。他方で、その場で応じた支払いやサインした書面が、後に刑事手続の資料として扱われることもあります。勤務先や家族への連絡をほのめかすなど、脅し文句を伴う要求であれば、脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(同249条)の問題が生じ得ます。
いずれにしても、その場で即断せず、窓口を一本化して対応することをおすすめします。この点は別稿[「示談書にその場でサインした場合の支払義務」]で詳しく扱っています。
9. 弁護活動として何ができるか
余罪がある事案で、弁護人が現実に行うのは次のような活動です。
- 事実の棚卸し:いつ・どこで・何件あるのかを、弁護人と一緒に時系列で整理する。あいまいな点は「あいまい」のまま記録します
- 供述方針の検討:黙秘権は憲法上の権利で、行使したこと自体で不利益な取扱いを受けるものではありません。もっとも、証拠状況によって適切な対応は変わります。方針は自己判断せず、弁護人と協議して決めてください。なお、事実と異なる説明をすることは、黙秘とはまったく別の問題です
- 示談交渉:相手方が特定されている場合は、捜査機関を通じた取次ぎを求め、弁護人限りで連絡を取る形で進めます。ご本人が店舗や相手方を自力で探すことは、罪証隠滅や接触のおそれと評価されかねず、避けるべきです
- 再犯防止の環境づくり:専門的な治療やカウンセリング、ご家族による監督、機器の管理など。示談ができない余罪がある場合、この積み上げが中心になります
- 手続の見通しを踏まえた交渉:一括して処理するよう求めることは可能ですが、応じるかどうかは捜査機関の判断であり、結果を保証できるものではありません
10. 避けたい対応と、今からできること
避けたい対応
- データの削除や機器の処分
- 相手方や店舗への直接の連絡・謝罪
- その場での支払いや、内容を確認しないままの署名
- 呼び出しの無視、着信拒否
- 記憶があいまいな点を、断定的に述べること
今からできること
- 利用日、店舗、支払い方法など、手元に残る記録を整理する
- 記録類を自分の判断で消さない
- 対応の窓口を一本化する
- 処分が決まる前の段階で弁護士に相談する
まとめ
余罪の見通しは、罪名の特定・罪数の構造・公訴時効・処分への効き方という順序でしか立ちません。風俗利用の場面では、相手方が特定しにくい一方で利用の記録が残るという特徴があり、「立件されにくいが示談もできない」という状況が生じやすくなります。
余罪の有無や範囲は、ご本人の記憶と押収された資料の突き合わせによって初めて輪郭が見えるものです。取調べでの受け答えや示談の進め方は、いずれも処分が決まる前の段階で方針を決めておく必要があります。一人で抱え込まず、早い段階でご相談ください。


