【風俗トラブル・キャスト側】「講習」の名目で性的な行為を求められたら?
本記事は、18歳以上の方が風俗店の利用をめぐってトラブルになった場面を前提にしています。個別の事情によって取れる対応は変わりますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。
風俗店の利用をめぐってトラブルになり、店側との話し合いの中で「次は親を連れてこい」「親も同席させろ」と求められた、というご相談があります。家族に知られたくない気持ちと、要求に従わなければ話が進まないのではという不安の間で、どう動けばよいか分からなくなる方は少なくありません。
この記事では、親を同席させる法的な義務があるのか、同席させた場合にどのような問題が起こりやすいのか、そして要求を受けたときに取れる対応を順に整理します。
親を連れていく法的な義務はありません
民法4条により、18歳で成年となります。成年に達した方が当事者となるトラブルでは、示談は本人と相手方との合意で成立するものであり、親の同意や同席は必要ありません。店側から求められたとしても、親を連れていく法的な義務はないと考えられます。
また、親だからといって、成人した子の損害賠償や示談金を支払う義務を当然に負うわけではありません。民法には親子間の扶養義務の定めがありますが、これは生活に困窮した親族を経済的に支える義務であり、子が第三者に対して負った責任を親が肩代わりする義務とは別のものです。
親に支払い義務が生じるのは、親自身が約束した場合
注意したいのは、親がその場で何かに署名した場合です。たとえば示談書の連帯保証人欄に親が署名すれば、親自身が保証人として支払いを求められる立場になるおそれがあります。保証契約は書面でしなければ効力を生じないとされています(民法446条2項)が、裏を返せば、書面に署名すると効力が生じ得るということです。
親を同席させるよう求められる場面では、この「親自身に約束させる」ことが目的になっている可能性も考えておく必要があります。
店側が親の同席を求める理由として考えられること
店側の意図は事案ごとに異なりますが、ご相談の中で見えてくる理由としては、次のようなものが考えられます。
- 本人に支払い能力がないとみて、親から支払わせるという目的。
- 親を連帯保証人にして、確実に回収できる形にするという目的。
- 家族に知られたくないという心理を利用し、早く決着させるという目的。
- 実家の住所や親の連絡先を把握し、その後の連絡手段を増やすという目的。
もちろん、すべての店がこうした意図を持っているわけではありません。ただ、どの理由であっても、親が同席することは本人にとって不利な方向に働きやすいという点は共通しています。
親を同席させることで生じやすい問題
| 問題になる点 | 起こりうること |
|---|---|
| 親の個人情報 | 実家の住所、親の電話番号や勤務先が相手方に伝わる |
| 保証・支払いの約束 | 親がその場で保証人欄に署名したり、支払いを約束したりする |
| 判断の焦り | 事実関係を確かめないまま、早く終わらせることが優先される |
| 連絡先の広がり | その後、本人だけでなく親にも連絡が来るようになる |
| 本人の主張 | 親の前で萎縮し、事実と違う内容まで認めてしまう |
とくに、事実関係に争いがある事案では、親の前で「とにかく謝る」「言われた内容をすべて認める」という対応になりやすく、後から主張を整理し直すことが難しくなる場合があります。
要求の言い方によっては、それ自体が問題になる場合もある
「親を連れてこい」という言葉だけで直ちに犯罪になるわけではありません。ただし、「連れてこなければ職場に知らせる」「家族に全部ばらす」といった害悪の告知を伴い、義務のないことを行わせようとする場合には、強要罪(刑法223条)が問題になることがあります。脅して金銭を支払わせようとする場合には、恐喝罪(刑法249条)が問題になる可能性もあります。
また、トラブルで被害を受けたと主張しているのは、多くの場合キャスト本人です。弁護士ではない店の関係者が、報酬を得る目的で本人に代わって示談交渉や示談金の受け取りを行うことは、弁護士法72条が禁じる非弁行為との関係が問題になり得ます。2026年2月には、店の女性従業員とトラブルになった客と示談交渉をしたなどとして、風俗店の店長らが弁護士法違反の疑いで逮捕されたと報じられています。
こうした点から見ても、店側が示した段取りにそのまま従う必要はありません。
「親を連れてこい」と言われたときの対応
- その場で同席を約束しないこと。
- 親の連絡先や実家の住所を伝えないこと。
- やり取りの内容を、録音やメッセージの保存で記録しておくこと。
- 示談書への署名や支払いを、その場で行わないこと。
- 返答の前に弁護士へ相談すること。
記録は、後から相手方の要求の内容や言い方を確かめるための材料になります。電話であれば通話の録音、メッセージであれば画面の保存を残しておくとよいでしょう。
また、相手方から急かされても、その場で結論を出す必要はありません。いったん持ち帰り、自分の立場や法的なリスクを整理してから対応を決めることが大切です。
伝え方の一例
返答に迷う場合は、「本人である自分が対応します。家族は関係がないので同席はできません」「弁護士に相談したうえで、改めて連絡します」といった形で、短く伝えるにとどめる方法があります。相手方の言い分に反論したり、事実関係を詳しく説明したりする必要はありません。言葉を重ねるほど、後から主張を整理しにくくなるためです。
同席を断ったら、不利になるのか
親の同席を断ると、「誠意がない」「それなら警察に行く」「家に直接行く」などと言われることがあります。こうした言葉を受けると、断ったこと自体が不利に働くのではないかと心配になるかもしれません。
しかし、親を同席させなかったことを理由に、本人の法的な責任が重くなるわけではありません。示談に応じるかどうか、どのような条件で応じるかは、あくまで本人と相手方との間で決めることです。親が同席しないことは、示談の成否を左右する事情ではないと考えられます。
一方で、被害届や警察への相談をするかどうかは相手方の判断であり、こちらで止められるものではありません。だからこそ、相手方の言葉に押されて親を呼ぶのではなく、実際に何が問題とされているのか、その主張にどの程度の根拠があるのかを落ち着いて確かめることが重要になります。自宅や実家に来ると告げられた場合には、その言葉も記録に残し、早めに弁護士へ相談してください。状況によっては、警察への相談も選択肢になります。
すでに親に連絡が行ってしまった場合
予約時の情報や身分証の写しなどから、すでに親や実家に連絡が入っているケースもあります。その場合でも、親が相手方と直接やり取りを続ける状態は避けたほうがよいでしょう。親が事情を知らないまま対応すると、確認していない事実を認めたり、支払いを約束したりするおそれがあるためです。
まずは親に、「相手方から連絡が来ても話には応じず、本人か弁護士に任せてほしい」と伝え、窓口を一本にまとめることが考えられます。親がすでに何かに署名していたり、支払いをしていたりする場合は、その書面や振込の記録を手元に集めておくと、その後の対応を検討しやすくなります。
親が支払いを申し出てくれた場合の考え方
親が「お金は出すから早く終わらせなさい」と申し出てくれることもあります。本人以外の人が代わりに支払うこと自体は、法律上も認められています(民法474条)。
ただし、親が示談の当事者や保証人として名前を出す必要はありません。親からの援助は本人への資金の援助として受け取り、示談そのものは本人と相手方との間で整える形にしておくほうが、親の負担や情報が広がるのを抑えやすくなります。
あわせて、支払う前には、示談の相手方が誰なのか(キャスト本人が合意しているのか)、示談書に今後一切の請求をしない旨の条項が入っているかといった点を確認しておくことが大切です。支払った後で別の人物から請求が来る、といった事態を避けるためです。
弁護士が窓口になると何が変わるか
弁護士にご依頼いただくと、相手方とのやり取りは弁護士が引き受けることになります。弁護士から相手方に受任を伝える際には、本人や家族へ直接連絡しないよう求めることができ、親を同席させるかどうかという問題そのものが生じにくくなります。
また、示談の相手方が誰なのか、請求されている金額にどのような根拠があるのかを確かめたうえで、示談書の内容を整えることができます。相手方が弁護士の関与を嫌がるような言い方をしてくることもありますが、それで不利になるとは限りません。
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親を巻き込む前にご相談ください
「親を連れてこい」という要求は、応じなければならないものではありません。一方で、断り方や、すでに親に連絡が行っている場合の整え方によって、その後の進み方は変わります。親を巻き込んでしまう前に、一度状況を整理してみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


