【親子問題】子の配偶者(嫁・婿)から子の問題を相談されたら?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

息子の妻や娘の夫から、「ご本人のことで相談があるのですが」と連絡が来ることがあります。暴力や暴言、借金、働かない、お酒やギャンブルがやめられない、心の不調があるのに受診しないなど、内容はさまざまです。自分の子のことで配偶者が困っていると知れば、親として申し訳なく感じる一方で、どこまで関わってよいのか、何を引き受けるべきなのか迷う方も少なくありません。
 この記事では、子の配偶者(いわゆる嫁・婿)から子の問題を相談された親が法律上どのような立場にあるのか、相談を受けたときに気をつけたいこと、相談の内容ごとの考え方を整理します。

本記事は2026年11月時点の法令をもとにしています。2026年4月に施行された改正民法(父母以外の親族と子との交流に関する規定)も反映しています。


子の配偶者から寄せられやすい相談

 子の配偶者からの相談は、たとえば次のような形で寄せられます。

  • 夫(息子)が怒ると物を投げたり、手を上げたりする。
  • 妻(娘)が借金を重ねていて、生活費が足りない。
  • 仕事を辞めてから家にこもり、働こうとしない。
  • お酒やギャンブルがやめられず、話し合いにならない。
  • 心の不調があるようなのに、受診を拒んでいる。
  • 離婚を考えているので、親として知っておいてほしい。


 いずれの場合も、まず困っているのは子の配偶者であり、その背景には夫婦の関係があります。問題の大きさに目を向ける前に、親自身がどの立場で話を聞いているのかを整理しておくと、その後の対応がぶれにくくなります。

親と子の配偶者は法律上どういう関係か


夫婦のことを決めるのは夫婦本人

 成人した子の結婚生活は、子と配偶者の二人の関係です。夫婦は互いに同居し、協力し、扶助する義務を負い(民法752条)、生活費は夫婦で分担します(民法760条)。離婚するかどうかもまず夫婦の話し合いで決め、まとまらなければ調停や訴訟に進みますが、手続の当事者はあくまで夫婦です。親が子に代わって離婚を成立させたり、離婚の手続を起こしたりすることはできません。
 成人した子との関係で親が法的にできることの範囲については、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲で詳しく解説しています。

子の配偶者は親から見て「1親等の姻族」

 民法では3親等内の姻族も親族にあたり(民法725条)、子の配偶者は親から見て1親等の姻族です。ただし、互いに扶養する義務を当然に負うのは直系血族と兄弟姉妹であり(民法877条1項)、子の配偶者の生活を親が支える義務は原則としてありません。また、姻族の関係は子が離婚すると終了します(民法728条1項)。

子の借金や生活費を親が負担する義務はあるか

 成人した子の借金について、親が保証人や連帯保証人になっていなければ、親に返済の義務はありません。日常の家事に関する債務は夫婦が連帯して責任を負う場合がありますが(民法761条)、これは夫婦の間の決まりであり、親には及びません。詳しくは【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかをご覧ください。
 子の配偶者から求められやすいことと、親の法的な立場の目安をまとめると、次のとおりです。

求められること親の法的な立場の目安
子の借金を返してほしい保証人になっていなければ返済の義務はない
夫婦の生活費を援助してほしい生活費は夫婦で分担するもので、親が負担する義務は原則としてない
離婚の話し合いを代わりに進めてほしい当事者は夫婦であり、親が代わりに決めることはできない
自分(子の配偶者)の生活を支えてほしい姻族である子の配偶者を扶養する義務は原則としてない


 義務がないことと、援助してはいけないことは別の話です。援助するかどうかは、親自身の生活や老後の資金とのバランスを見ながら、親が決めることができます。

相談を受けたときに親が気をつけたいこと


話を聞くことと、どちらかの側に立つことを分ける

 子の配偶者の話は、その人が見て感じてきた事実として受け止めることが大切です。一方で、夫婦の問題は双方の受け止め方が異なることも多く、子の側にも言い分があるかもしれません。相談を受けた段階では「話は分かりました。少し考えさせてください」と伝え、どちらが正しいかの判断を急がないほうが、後で関係を立て直しやすくなります。
 また、離婚の話し合いや調停では、メッセージのやり取りや録音が資料として出てくることがあります。親が感情に任せて書き送った言葉が、親の意図とは違う形で使われる可能性もあるため、書いて残すときは事実と気持ちを分けて表現するよう心がけてください。

お金や書面の約束はその場でしない

 「借金を立て替えてほしい」「この書面に署名してほしい」と求められても、その場で引き受けず、持ち帰って考える時間をとることをおすすめします。保証人になったり、借用書に親の名前を書いたりすると、後から取り消すことが難しい場合があります。援助をすると決めた場合も、贈与なのか貸付なのか、子と配偶者のどちらに渡すのかを決め、記録に残しておくと後のトラブルを防ぎやすくなります。

子に伝えるかどうか、伝え方を考える

 子の配偶者から「本人には言わないでほしい」と頼まれることもあります。特に暴力が疑われる場合、親が子を問い詰めたことで相談の事実が子に知られ、配偶者の身に危険が及ぶおそれがあります。子に話をする前に、何をどこまで伝えてよいか、配偶者の安全が確保されているかを、配偶者との間で確認しておくことが大切です。

相談の内容ごとの考え方


子が配偶者に暴力や暴言を向けている

 配偶者暴力防止法は、身体に対する暴力だけでなく、心身に有害な影響を及ぼす言動も「配偶者からの暴力」としています。最優先は子の配偶者と孫の安全であり、身の危険があるときは110番通報、そうでない場合も配偶者暴力相談支援センターや警察の相談窓口(#9110)につなぐことが考えられます。被害者の申立てにより裁判所が保護命令を出す制度もあり、事情によっては被害者の親族等への接近禁止命令が出ることもあります。
 子どもの前で配偶者に暴力をふるうことは、児童虐待にあたるとされています(児童虐待防止法2条4号)。親の家を一時的な避難先にすることも考えられますが、子が親の家を知っている以上、安全な場所にならないこともあるため、支援機関と相談しながら判断してください。
 なお、反対に子の側が配偶者から暴力を受けている場合については、【親子問題】子が配偶者から暴力を受けていると気づいた|親にできることで解説しています。

借金・浪費・ギャンブルがやめられない

 親が借金を肩代わりすると、その場の負担は軽くなっても、同じことが繰り返される場合があります。借金の整理は子本人の手続であり、弁護士や法テラスなどの相談先を子の配偶者と共有しておくことは、親にできる関わり方の一つです。ギャンブルやお酒への依存が疑われる場合、精神保健福祉センターなどで家族からの相談を受け付けているところもあります。
 子の配偶者を通じて、あるいは子本人から親にお金を求められるようになったときは、【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけも参考にしてください。

働かない・家にこもる・心の不調が続く

 成人した子に受診や就労を強制することは、配偶者にも親にもできません。保健所や精神保健福祉センターでは、本人が来られない段階でも家族からの相談に応じていることがあります。子の配偶者と親が別々に動くと子が身構えることもあるため、誰が窓口になるかをあらかじめ話し合っておくと、子にとっても受け入れやすくなります。

離婚を考えていると打ち明けられた

 離婚するかどうかを決めるのは夫婦であり、親は引き止めることも、離婚を勧めることも、最終的に決めることはできません。子の配偶者自身の離婚や婚姻費用、養育費の問題は、子の配偶者が自分で弁護士に相談するのが基本です。親が知っておきたいのは、別居や離婚をきっかけに子が親の家に戻ってくる場合があることです。戻ってきた子との同居の扱いについては、【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで解説しています。

親自身が弁護士に相談したほうがよい場面

 子の配偶者からの相談は、話を聞くだけで終わることもあります。一方で、次のような場面では、親自身の立場を守るために早めに弁護士へ相談しておくと安心です。

  • 子や子の配偶者から、借金の返済や生活費の援助を繰り返し求められている場合。
  • 保証人になってほしい、書面に署名してほしいと求められている場合。
  • 別居や離婚をきっかけに、子が親の家に戻ってこようとしている場合。
  • 子の暴力や暴言が、配偶者だけでなく親にも向き始めている場合。
  • 同居している子の夫婦との関係を見直したい場合。


 親が弁護士に依頼する場合、弁護士は親の代理人として動きます。子の配偶者と親とでは、利害が一致しない場面も出てくるため、同じ弁護士が双方の立場を兼ねることは基本的にできません。相談した内容が子に伝わるかどうかについては、【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で解説しています。子の夫婦と同居している場合は、【親子問題】息子夫婦・娘夫婦との同居をやめたい|二世帯の解消もあわせてご覧ください。
 当事務所では、弁護士が親の代理人として子と向き合い、自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支える形で親子の問題に取り組んでいます。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。

よくあるご質問


子の配偶者に頼まれて、夫婦の話し合いに同席してもよいですか

 同席すること自体に問題はありません。ただし、親は子の親であると同時に、話し合いの結論を決める立場にはないため、どちらかの代弁者にならないよう意識しておくと、話し合いが進みやすくなります。暴力がある場合は、同席の場そのものが危険になることもあるため、直接会う形にこだわらず、支援機関や弁護士を交える方法も考えてください。

子が離婚したら、孫に会えなくなりますか

 離婚後の孫との関わりは、まずは孫を育てる親との話し合いで決まります。2026年4月に施行された改正民法では、子の利益のため特に必要があると認められるときに、家庭裁判所が父母以外の親族と子との交流を定めることができるようになりました。もっとも、祖父母が自ら申し立てられる場面は限られています。子の配偶者からの相談に誠実に向き合っておくことは、離婚後も孫との関係を保つうえで意味を持つことがあります。

まとめ


  • 夫婦の問題を決めるのは夫婦本人であり、親が代わりに離婚などを決めることはできません。
  • 子の配偶者は1親等の姻族ですが、親がその生活を支える義務は原則としてありません。
  • 子の借金は、保証人になっていなければ親が返す義務はありません。
  • 相談を受けたら、話を聞くことと、どちらかの側に立つことを分けて考えます。
  • お金や書面の約束はその場でせず、持ち帰って考える時間をとります。
  • 暴力が疑われるときは、子の配偶者と孫の安全を最優先にし、支援機関につなぎます。


 子の配偶者から相談を受けることは、親にとっても子の状況を知る大切な機会です。親として力になりたい気持ちと、親自身の生活や立場を守ることの両方を大切にしながら、関わり方を考えていくことが望まれます。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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