【親子問題】働き始めた子の給料を、親が管理したほうがいい?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、2026年10月時点の法令(2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられた後の民法など)をもとに整理しています。実際の対応は、子の年齢や親子の取り決め、これまでの経緯によって変わることがあります。


子どもが就職して初めての給料を受け取ったとき、「無駄遣いしないように、しばらく親が預かっておこうか」と考える親御さんは少なくありません。お金の扱いに不安がある子や、学生時代にカードの使いすぎや借金があった子であれば、なおさらでしょう。

 ただ、働いて得た給料は、法律上は子自身の財産です。親が管理できる範囲は、子が成人しているかどうか、子が同意しているかどうかによって分かれます。また、善意で始めた管理が、数年後に「通帳を返してもらえない」「何に使ったのか説明してほしい」という親子の対立に変わることもあります。

 この記事では、働き始めた子の給料を親が管理することの法的な位置づけと、管理するなら最初に決めておきたいこと、管理する代わりに取れる方法を整理します。

給料は誰のお金か|まず押さえたい前提

 会社から支払われる給料は、働いた本人である子の財産です。子の口座に振り込まれたお金は子の預金であり、「育ててきたのだから」「同じ家に住んでいるのだから」という理由で、親が当然に使ったり管理したりできるものではありません。

 2022年4月から成年年齢は18歳になりました。高校を卒業して働き始めた子の多くは、就職した時点ですでに成人です。成人した子の財産について、親が親権にもとづいて管理する権限はありません。

 そのため、成人した子の給料を親が管理するとすれば、それは子から「預かってほしい」と頼まれた、あるいは子が了承したという親子の合意(法律上は、事務を任せる委任や、物を預ける寄託に近い関係)にもとづくものになります。

未成年のうちに働き始めた場合

 18歳未満の子については、親権者に子の財産を管理する権限があります(民法824条)。ただし給料の受け取りについては、労働基準法に特別な定めがあります。未成年者は独立して賃金を請求でき、親権者や後見人が未成年者の賃金を代わりに受け取ることは禁じられています(労働基準法59条)。賃金は本人に直接支払うのが原則でもあります(同法24条)。

 そのため、未成年の子であっても、勤務先に「給料は親の口座に振り込んでほしい」と求めることはできません。子の口座に入った後のお金に親権者が関わる余地はありますが、それはあくまで子のための管理であり、親の生活費や親自身の支出に充ててよいという意味ではありません。

親が管理することが問題になりやすい場面

 子が納得して親に預けている間は、表立った問題にはなりにくいものです。問題が表に出るのは、多くの場合、子が「自分で管理したい」と言い出したときや、一人暮らし・結婚などで家を出るときです。弁護士ドットコムなどの法律相談サイトにも、成人した子の側から「親が通帳を返してくれない」「口約束で始まった管理をどう終わらせればよいか」といった相談が数多く寄せられています。

 親の側から見て、特に注意したいのは次のような場面です。

  • 子が通帳やカードの返却を求めているのに、親が応じていない場合です。
  • 預かったお金の一部を、家計や親自身の支出に充てていた場合です。
  • いつから、いくら預かり、何に使ったのかの記録が残っていない場合です。
  • 子のお金を親名義の口座に移してためている場合です。
  • 「結婚するまで」「家を出るまで」など、管理を終える時期があいまいなまま続いている場合です。


子はいつでも管理をやめるよう求めることができる

 お金の管理を任せる関係は、法律上、原則としていつでも解消できます(民法651条1項)。管理を引き受けた側は、求められれば管理の状況を報告し(同法645条)、預かったお金を引き渡す義務を負います(同法646条)。「まだ早い」「親が持っていたほうが安全だ」という親の判断は、成人した子が返還を求めた後まで管理を続ける理由にはなりにくいと考えられます。

使い込みと受け取られるおそれ

 子の了承なく、預かったお金を親の生活費や借金の返済に使えば、子から返還を求められることがあります。刑法には、親子など一定の親族間の財産犯について刑を免除する規定があります(刑法244条1項、横領罪には255条で準用)。ただし、これは刑事罰の扱いについての定めであり、民事上の返還義務までなくなるわけではありません。家計への入金のつもりで差し引いていた分についても、子が同意していたかどうかで認識が食い違うことがあります。

親名義の口座にためると、誰のお金か分かりにくくなる

 「子のために」と親名義の口座へ移して積み立てると、後になって誰のお金なのかが分かりにくくなります。親が亡くなったときに相続財産との区別が問題になったり、きょうだいとの間で言い分が分かれたりするおそれがあります。預金が誰のものかは名義だけでなく実態でも判断されるため、名義と実態が食い違っていると、説明に手間がかかることもあります。子のお金は子名義の口座で管理するのが基本です。

それでも親が関わったほうがよいのはどんなときか

 一方で、子のほうから「自分では管理できそうにないので手伝ってほしい」と頼んでくることもあります。社会人になったばかりで支出の感覚がつかめない、以前にカードの使いすぎや借金があった、といった事情があれば、一定の期間、親が関わることに意味がある場合もあります。

 その場合でも、親が給料を「管理する」というより、子が自分で管理できるようになるまで「手伝う」という位置づけで考えるほうが、後の対立を防ぎやすくなります。手伝うのであれば、次の点を最初に親子で決めておくとよいでしょう。

  • 管理を終える時期や条件(半年後、目標額に達したときなど)。
  • 通帳・キャッシュカード・暗証番号を誰が持つか。
  • 毎月子が使える金額と、家計に入れる金額の区別。
  • 貯蓄に回したお金の置き場所(子名義の口座とすること)。
  • 入出金の記録の付け方と、子に見せる頻度。
  • 子が「自分で管理したい」と言ったときの返し方。


 口約束のまま始めると、数年後には「そんな約束はしていない」という食い違いが生じがちです。簡単なメモでもかまいませんので書面に残し、親子それぞれが控えを持っておくと、管理を終えるときの確認がしやすくなります。

給料を預からずに取れる方法

 給料そのものを親が預からなくても、子がお金をため、家計にも協力する仕組みは作れます。

方法内容親の関わり方
家計への入金額を決める毎月一定額を生活費として家に入れてもらう金額と支払日を話し合って決める
先取り貯蓄給料日に子名義の別口座へ自動で移す設定の手順を一緒に確認する
支出の見える化家計簿アプリなどで子自身が記録する月に一度、話を聞く程度にとどめる
期限付きの見守り最初の数か月だけ使い方の相談に乗る口座とカードは子が持つ


 同居している成人の子に生活費の負担を求めることは、家族の取り決めとして自然なことです。生活費を家に入れてもらうことと、給料を親が管理することは、分けて考えるとよいでしょう。家計の分け方については、次の記事で具体的に整理しています。

【親子問題】家計を分ける実務|口座・光熱費・保険をどう切るか

 親が成人した子をどこまで養う必要があるのかという点は、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで解説しています。

浪費や借金が心配な場合の選択肢

 子の浪費が収まらない、借金を繰り返しているといった事情があると、「親が給料を押さえておかないと危ない」と感じるのは無理もないことです。ただ、成人した子が同意していない状態で、親が一方的に子の給料を押さえる方法はありません。

 判断能力の状態によっては、家庭裁判所の保佐・補助の制度や、社会福祉協議会が行う日常生活自立支援事業など、第三者が金銭管理に関わる仕組みを使える場合があります。いずれも本人の判断能力や意思が前提となる制度で、浪費があるというだけで当然に使えるものではありません。

【親子問題】浪費が止まらない子|保佐・補助を検討する場面

【親子問題】金銭管理を第三者が担う仕組み|日常生活自立支援事業と民間の支援者の違い

 また、子の借金を親が肩代わりすることを前提に管理を始めると、親子の金銭関係がさらに複雑になりがちです。子の借金と親の返済義務の関係は、【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかをご覧ください。

すでに管理している場合の返し方

 これまで親が子の給料を管理してきた場合、子が「自分で管理したい」と言い出したことは、自立に向けた前向きな変化と受け止めることもできます。返すときは、次の順で進めると行き違いが起きにくくなります。

  1. これまでの入金額、引き出した額、現在の残高を通帳や記録で確認し、子に見せます。
  2. 家計に充てた分や子のために支払った分があれば、何にいくら使ったかを説明します。
  3. 通帳、キャッシュカード、届出印を子に渡し、必要に応じて暗証番号の変更を勧めます。
  4. 返した日と内容を簡単な書面に残し、親子で控えを持ちます。


 使い道の説明がつかない部分がある、親子で金額の認識が大きく食い違っているといった場合は、話し合いが感情的になりやすくなります。親子だけで結論を出そうとせず、第三者に間に入ってもらうことも検討してください。

お金の問題の背景に、親子の距離の課題があるとき

 給料の管理をめぐる対立は、お金そのものよりも、親が子の生活にどこまで関わるかという問題の表れであることが少なくありません。反対に、働いているのに家にお金を入れない、親に金銭を求め続けるといった、逆の形の悩みを抱えるご家庭もあります。

 当事務所では、成人した子との金銭や同居をめぐる問題について、親御さんの代理人として子との間に入るご相談をお受けしています。必要に応じて自立支援カウンセラーと連携し、子が自分でお金を管理し、生活を組み立てられるようになるための支援も行っています。

【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応

まとめ


  • 働いて得た給料は子自身の財産で、成人した子の給料を親が管理できるのは、子が同意している範囲に限られます。
  • 未成年の子についても、親が勤務先から給料を代わりに受け取ることはできません。
  • 管理を任されている場合でも、子が求めれば報告と返還に応じる必要があります。
  • 親が関わるなら「手伝う」位置づけとし、終える時期や記録の方法を最初に決めておくことが大切です。
  • 給料を預からなくても、生活費の入金や先取り貯蓄など、子が自分で管理しながら家計に協力する方法があります。


 働き始めた子のお金について親がどこまで関わるかは、家庭ごとに答えが異なります。管理を続けるか、返すかで迷ったときや、すでに親子の間で食い違いが生じているときは、早めに状況を整理しておくことをおすすめします。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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