【親子問題】夫婦の一方だけで依頼することはできる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

本記事は、成人したお子さんの暴力・ひきこもり・金銭の要求などについて、親御さんがご相談される場面を想定しています。法令は2026年11月時点のものに基づいて記載しています。


子の問題について弁護士に相談したいと思っても、夫婦の足並みがそろっているとは限りません。ご相談の場面では、次のようなお声をよく伺います。

  • 夫は「家の恥だ」と言って、弁護士に頼むことに反対している。
  • 妻が子をかばっていて、自分一人で動いてよいのか迷っている。
  • 配偶者は話し合いに加わろうとせず、何も決まらないまま時間だけが過ぎている。
  • 配偶者には、相談したことをまだ知られたくない。


 結論から申し上げると、夫婦の一方だけでも、弁護士への相談や依頼はできます。ただ、依頼者が一人であることで、報告の受け方や費用の負担、方針の決め方に違いが出てきます。また、もう一方の親が反対している場合には、進め方に工夫が必要になることもあります。この記事では、夫婦の一方だけで依頼するときに知っておきたい点を整理します。

夫婦の一方だけでも、相談や依頼はできる

 弁護士への依頼は、依頼者と弁護士との間で結ぶ委任契約(民法643条)です。契約の当事者になるのは、実際に契約を結んだ方です。配偶者の同意や署名は、契約が成り立つための条件ではありません。

 実際のご相談でも、母親お一人、父親お一人からのご相談は珍しくありません。ひとり親のご家庭や、親が動けないためにきょうだいが相談に来られる場合もあります。きょうだいからのご相談については、【親子問題】きょうだいが相談者になる場合|親が動けないときで解説しています。

 もっとも、「一方だけで依頼できる」ことと、「一方だけで進めても支障がない」ことは別の問題です。親子の問題は同じ家の中で起きることが多く、依頼していない側の親の言動が、対応の行方に影響することがあるためです。

依頼者が一方だけのとき、何が変わるのか


項目夫婦の一方だけが依頼者夫婦二人が依頼者
方針の決定依頼者の意向に沿って決める二人の意向を確認して決める
弁護士からの報告依頼者に対して行う二人に対して行う
配偶者への情報共有依頼者の了解の範囲で行う二人とも当事者として共有する
費用の負担契約した依頼者が負う契約の定めによる
夫婦の意見が割れたとき依頼者の意向が基準になる双方の調整が必要になり、続けにくくなる場合がある


報告と守秘義務

 弁護士には、職務上知り得た秘密を守る義務があります(弁護士法23条、弁護士職務基本規程23条)。この義務は、依頼者の配偶者に対しても同じです。そのため、依頼者でない方の親から問い合わせがあっても、依頼者の了解がなければ、事件の内容をお伝えすることはできません。

 逆にいえば、「配偶者にも経過を伝えてほしい」「面談に同席させたい」というご希望があれば、その範囲で共有することができます。どこまで共有するかは、最初の段階で決めておくと進めやすくなります。子に対して相談内容がどう扱われるかについては、【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方もあわせてご覧ください。

費用の負担

 夫婦の財産は、それぞれの名義ごとに分けて考えるのが原則です(民法762条、夫婦別産制)。契約書に署名していない配偶者が、委任契約上の費用を直接支払う義務を負うことは通常ありません。夫婦が日常の家事について負った債務には連帯責任の定めがありますが(民法761条)、弁護士費用がこれに当たるかは事情によって判断が分かれうるところです。

 実際には、家計の預金から費用を出す場合も多いと思います。後になって「勝手に使った」という争いにならないよう、どの預金から支払うのかは、できる範囲で整理しておくことをおすすめします。

もう一方の親が賛成していないときに起きやすいこと

 依頼していない側の親が反対している場合、次のようなことが起きることがあります。

  • 子が、反対している側の親を頼って連絡するようになる。
  • 弁護士が金銭の要求を受けない方針をとっていても、もう一方の親がお金を渡してしまう。
  • 弁護士から子に伝えた内容と、家での親の言動が食い違い、子が混乱する。
  • 子に家を出てもらう話を進めたくても、住まいの名義人が反対している。


 特に、家の名義の問題には注意が必要です。子に退去を求める場面では、その家の所有者や賃借人が誰かによって、取れる手段が変わります。名義人である配偶者が反対している場合、名義を持たない親だけの判断で退去を求めることは難しくなります。退去や明渡しの考え方は、【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで詳しく扱っています。

 一方の親が子をかばっている場合の向き合い方については、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときをご参照ください。夫婦の考えが完全に一致していなくても、「子にお金を渡すときは事前に相談する」「子から連絡があれば弁護士に回す」といった最低限の取り決めができるだけで、進めやすさは大きく変わります。

夫婦二人とも依頼者になる場合に知っておきたいこと

 夫婦がそろって依頼者になることもできます。この場合、二人が同じ情報を受け取り、同じ方針で動けるという利点があります。

 一方で、同じ事件で依頼者が複数いて、その間で利害が対立するおそれがあるとき、弁護士は受任の段階で、後に辞任する可能性があることなどを説明しなければならないとされています(弁護士職務基本規程32条)。依頼の途中で夫婦の利害が実際に対立した場合には、弁護士は事情を告げて、辞任を含む適切な対応を取ることになります(同規程42条)。たとえば、子の問題をめぐって夫婦が別居や離婚を考えるようになった場合などです。

 そのため、夫婦の意見に大きな隔たりがある段階では、まず一方が依頼者となり、もう一方には必要に応じて情報を共有するという形のほうが、結果として続けやすいこともあります。

場面ごとの考え方


もう一方の親が関わりたがらない

 反対はしていないものの、関わることを避けているという場合です。依頼者を一人にして進め、もう一方の親には、子からお金を求められたときの対応だけは同じにしてもらうよう協力をお願いする形が考えられます。関わりたがらない理由が、子への罪悪感や、何をすればよいか分からないという戸惑いであることも少なくありません。役割を一つに絞ってお願いするほうが、協力を得やすい場合があります。

もう一方の親に相談を知られたくない

 相談をしただけで、配偶者や子に伝わることはありません。ただ、弁護士が子に連絡を取るなど、実際に対応を始めると、同じ家に住む配偶者がそのことを知るのは時間の問題です。どの段階で、どのように伝えるかを、ご相談の中で一緒に考えていくことができます。

もう一方の親が高齢や病気で判断が難しい

 配偶者が判断能力に不安を抱えている場合には、健康な側の親が依頼者となるのが一般的です。配偶者名義の財産や住まいが関わる場面では、成年後見制度などの利用を検討する必要が出てくることもあります。

途中から配偶者も依頼者に加わりたい

 はじめは一方だけで依頼し、対応が進む中で配偶者の考えが変わることもあります。その場合、配偶者にも依頼者として加わっていただくことは可能です。ただし、二人が依頼者になると、先に述べた利害対立の説明が必要になるほか、報告の方法や方針の決め方も改めて確認することになります。依頼者を増やすかどうかは、配偶者が同席するだけで足りるのかも含めて検討するとよいでしょう。

 反対に、依頼者だった方が体調を崩すなどして、配偶者に依頼者を交代したいという場合もあります。このときは、交代の時期や、それまでの経過をどこまで引き継ぐかを、依頼者ご本人の意向を確認したうえで整理します。

夫婦が離婚・別居している

 離婚している場合、子と同居している親、または子から被害を受けている親が依頼者となるのが通常です。元配偶者に子の問題を伝えるかどうかは、状況によって判断が分かれます。詳しくは【親子問題】離婚した元配偶者に子の問題を伝えるべきか|伝える場面・伝えない場面をご覧ください。

ご相談の前に整理しておきたいこと

 夫婦の一方だけで相談に来られる場合、次の点を事前に考えておくと、最初の面談で方針を立てやすくなります。

  • 夫婦のどちらが依頼者になるか。
  • 配偶者に経過をどこまで共有するか。
  • 弁護士費用をどの預金から支払うか。
  • 子からお金を求められたときの対応を、夫婦でそろえられるか。
  • 住まいの名義が誰になっているか。


 すべてが決まっていなくても、ご相談はお受けできます。そのほかに整理しておきたい情報は、【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報にまとめています。

当事務所での進め方

 当事務所では、弁護士が親御さんの代理人として子との窓口を担い、自立支援カウンセラーが子の生活面の支援を行うという役割分担で対応しています。ご依頼いただくのが夫婦のどちらかお一人であっても、この進め方は変わりません。

 依頼者でない親御さんについても、依頼者の了解があれば、面談への同席や経過の共有を行っています。はじめはお一人でご相談に来られ、途中から配偶者の方が加わるという形もあります。ご相談から自立までの流れや費用については、【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問をご参照ください。

 夫婦の考えがそろうのを待っている間にも、子の暴力や金銭の要求が続くことがあります。夫婦の一方だけで動き出すことにためらいがある段階でも、まずは今の状況と、配偶者との関係を含めてお聞かせください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼