【親子問題】祖父母名義の家に子が居座っている、誰が退去を求める?
親の介護が始まると、ケアマネジャー(介護支援専門員)は家族にとって最も身近な相談相手の一人になります。その一方で、同居している子の暴言や金銭の要求、介護サービスへの拒否といった「子の問題」まで話してよいのか、話したことが子に伝わってしまわないかと迷う方は少なくありません。この記事では、ケアマネジャーに子の問題を相談するときの考え方と、ケアマネジャーにできること・できないこと、ほかの窓口との組み合わせ方を整理します。
本記事は、2026年11月時点の介護保険法・高齢者虐待防止法などの内容をもとにした一般的な解説です。実際に取れる対応は、ご家庭の事情や自治体の運用によって異なります。
子の問題をケアマネジャーに伝えることは差し支えない
ケアマネジャーは、介護保険法上、要介護者などからの相談に応じ、その方の心身の状況に合った介護サービスを利用できるよう、市町村やサービス事業者との連絡調整を行う専門職とされています(介護保険法7条5項)。ケアプランを作るときには、本人の心身の状態だけでなく、同居する家族の状況や家族がどこまで介護を担えるかも確認する項目に含まれています。
そのため、同居する子がいて、その子の言動が親の生活や介護に影響しているのであれば、それはケアマネジャーにとってケアプランを考えるうえで必要な情報です。「家庭の恥を話すようで気が引ける」と感じる方もいますが、子の状況を知らないまま組まれたケアプランは、実際の生活に合わないものになりやすい面があります。
ただし、ケアマネジャーはあくまで介護を受ける親の側の支援者です。子の代理人や子の支援担当者ではないため、子の問題そのものを解決する役割までは期待できません。ケアマネジャーには「親の介護に関わる部分」を中心に伝え、子への働きかけはほかの窓口と分担する、という考え方が現実的です。
ケアマネジャーができること・難しいこと
| 場面 | ケアマネジャーが担えること | ケアマネジャーだけでは難しいこと |
|---|---|---|
| 子の暴言・暴力がある | 状況の把握、地域包括支援センターや市町村への相談、親が家を離れる時間をつくるサービスの検討 | 子に暴力をやめるよう法的に求めること、警察への届出の代行 |
| 親の年金や預貯金を子が使っている | 状況の把握、地域包括支援センター(権利擁護)への橋渡し、成年後見制度などの利用の検討 | 使われたお金の返還請求、子との金銭の交渉 |
| 子が介護サービスの利用を拒む | サービスの組み方の工夫、子への説明、関係機関との調整 | 子の意向に反して家に立ち入る権限の行使 |
| 子自身の生活・就労・心身の不調 | 相談窓口の情報提供、関係機関への橋渡し | 子の生活全般にわたる継続的な支援 |
表のとおり、ケアマネジャーの強みは、親の介護を軸に関係機関をつなぐところにあります。子と直接向き合って交渉したり、法的な請求をしたりすることは、ケアマネジャーの業務の範囲を超えます。
ケアマネジャーに伝えておく意味が大きい場面
- 子から親への暴言や暴力があり、介護の場面にも影響が出ている場合。
- 子が親の年金や通帳を管理していて、介護サービスの利用料の支払いが滞りがちな場合。
- 子が「介護は自分がやる」と言うものの、実際には食事や通院の世話が十分にされていない場合。
- 子がヘルパーや訪問看護の訪問を断ったり、サービス担当者に強い口調で接したりする場合。
- 親の入院や施設入所が近く、家に子が一人で残ることが心配な場合。
とくに最後の場面は、親の生活が変わる節目です。親が入院や施設入所で家を離れると、子の生活の土台が一気に揺らぐことがあります。前もってケアマネジャーに事情を伝えておくと、退院後の受け入れ方や施設の選び方を検討する際に、子の状況も踏まえた提案を受けやすくなります。同居の子の生活がどう変わるかについては、【親子問題】親が要介護になったとき、同居の子の生活はどうなるのかもあわせてご覧ください。
相談した内容は子に伝わるのか
ケアマネジャーには秘密保持義務がある
ケアマネジャーには、正当な理由なく業務上知った人の秘密を漏らしてはならないという義務が法律で定められており、ケアマネジャーでなくなった後も同じです(介護保険法69条の37)。また、居宅介護支援事業所の運営基準では、サービス担当者会議などで家族の個人情報を使う場合には、その家族の同意をあらかじめ文書で得ておくこととされています。
したがって、親から聞いた子の問題を、ケアマネジャーが理由もなく外部に話すことは想定されていません。ただ、秘密保持義務は「外部に漏らさない」ための決まりであり、同じ家に住む子との日常的なやり取りの中で、うっかり話題に出てしまう可能性まで完全に防げるものではありません。
子に知られたくないときの伝え方
子に知られたくない内容がある場合は、そのことを言葉にしてはっきり伝えておくことが大切です。具体的には、次のような工夫が考えられます。
- 子が在宅していない時間帯に電話や面談の機会をつくってもらう。
- 「この話は子には伏せておいてほしい」と、伝えてよい範囲と伏せたい範囲を分けて伝える。
- サービス担当者会議の場で、子に関する話をどこまで共有するかを事前に相談する。
- 連絡先を親の携帯電話など、子が見ない手段に指定する。
相談内容の扱いについての考え方は、弁護士に相談する場合とも共通する部分があります。詳しくは【親子問題】相談内容は子に伝わるのか|守秘義務と連絡の取り方で解説しています。
虐待にあたる可能性がある場合の流れ
親が65歳以上で、同居の子から暴力や暴言、介護の放棄、年金や預貯金の無断使用などを受けている場合、高齢者虐待防止法の「養護者による高齢者虐待」にあたる可能性があります。同法では、虐待を受けたと思われる高齢者を見つけた人は、生命や身体に重大な危険が生じているときは市町村に通報しなければならず、それ以外の場合も通報に努めることとされています(同法7条1項・2項)。ケアマネジャーのような介護の専門職は、虐待の早期発見に努める立場にもあります。
ここで知っておきたいのは、通報を受けた市町村は、通報した人が誰かを特定させる情報を漏らしてはならないとされている点です(同法8条)。また、この仕組みは子を罰することだけを目的としたものではなく、介護の負担を抱える養護者(この場合は子)への支援も、市町村の役割として定められています(同法14条)。
「虐待」という言葉に抵抗を感じる親御さんも多いと思います。ただ、ケアマネジャーが地域包括支援センターや市町村と連携して動くきっかけになるのは、多くの場合この枠組みです。行政が動く仕組みについては、【親子問題】高齢の親が被害者の場合|行政が動く仕組みで詳しく解説しています。
ケアマネジャーに相談する前に整理しておきたいこと
- 子の年齢、同居の有無、仕事や通院の状況。
- 困っている出来事の内容と、いつ頃から続いているか。
- 暴言・暴力、金銭の要求など、具体的な出来事の日時と記録。
- 親の年金や通帳を誰が管理しているか。
- すでに相談したことのある窓口(警察、保健所、ひきこもり地域支援センターなど)とその結果。
- ケアマネジャーに求めたいことと、子に伏せておいてほしいこと。
すべてがそろっていなくても相談はできます。ただ、出来事の記録や金銭の流れがわかる資料があると、ケアマネジャーが地域包括支援センターなどにつなぐ際に、状況が伝わりやすくなります。子に通帳やカードを持ち出されている場合の対応は、【親子問題】通帳・カードを取り上げられた場合の対応を参考にしてください。
ケアマネジャーだけでは対応が難しいとき
子の問題が、介護の調整の範囲を超えている場合は、ケアマネジャーを入り口にしつつ、ほかの窓口を組み合わせることになります。子のひきこもりや心身の不調であればひきこもり地域支援センターや精神保健福祉センター、子の生活困窮であれば自立相談支援機関、身の危険があれば警察が考えられます。複数の課題が重なっている世帯に対しては、市町村によって【親子問題】重層的支援体制整備事業とは|市町村窓口の使い方のような分野横断の支援が用意されていることもあります。
一方で、子が親に繰り返しお金を求める、親の財産を無断で使う、話し合いに応じないといった場面では、行政の窓口だけでは子と向き合いきれないことがあります。こうした場合、弁護士が親の代理人として子との連絡の窓口を引き受け、金銭の要求に対応したり、使われたお金の扱いを整理したりすることが考えられます。ケアマネジャーや地域包括支援センターと役割を分けて動くことで、親が子と直接やり取りする負担を減らせる場合があります。
当事務所では、弁護士が親の側の代理人として関わり、民間の自立支援カウンセラーが子の生活の立て直しを支える形で、親子の問題に取り組んでいます。窓口全体の役割分担については、【親子問題】親子の問題はどこに相談すればよいのか|警察・行政・弁護士の役割分担でも整理しています。
よくあるご質問
ケアマネジャーに相談したら、すぐに子が呼び出されたりしますか
相談したことだけを理由に、すぐに子が呼び出されるとは限りません。ケアマネジャーはまず状況を把握し、必要に応じて地域包括支援センターなどと対応を検討するのが一般的です。ただし、親の生命や身体に重大な危険があると判断される場合は、市町村による事実確認などが速やかに行われることがあります。
子が「介護は自分がやる」と言ってケアマネジャーを遠ざけています
介護サービスを利用するかどうかを決めるのは、介護を受ける親本人です。子が反対していても、親が希望すれば、サービスの利用に向けて相談を進めることはできます。子への説明の仕方や、子が受け入れやすいサービスの組み方についても、ケアマネジャーと一緒に考えてみてください。
担当のケアマネジャーに相談しにくい場合は、替えることもできますか
居宅介護支援事業所やケアマネジャーは、利用者である親の希望で変更することができます。担当者との相性や、子の問題を話しにくいといった事情がある場合は、市町村の介護保険担当や地域包括支援センターに相談してみるのも一つの方法です。
親本人が子をかばって、相談すること自体を嫌がります
親が子をかばう気持ちは自然なものであり、無理に説得しようとすると、かえって相談から遠ざかることがあります。まずはきょうだいなど周囲の家族がケアマネジャーや地域包括支援センターに状況を伝え、親本人のペースに合わせて関わり方を相談していく方法も考えられます。
子の問題を抱えながら親の介護を続けることは、家族にとって大きな負担です。ケアマネジャーは介護の調整役として頼れる存在ですが、子との金銭のやり取りや話し合いまで一人で背負う必要はありません。ケアマネジャーに伝えること、行政に任せること、弁護士に任せることを分けて考えることで、親御さん自身の生活を守る道筋が見えやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


