【親子問題】子の交際相手が家に居着いている|第三者を家から出す
成人して一人暮らしを始めた子について、ある日、大家や管理会社から「夜中に大声を出している」「警察が来た」「ほかの入居者から苦情が出ている」と連絡が来ることがあります。離れて暮らしているため状況が見えず、謝罪や弁償をその場で約束してよいのか、退去を求められたらどうなるのか、判断に迷う親御さんは少なくありません。
この記事では、大家から親に連絡が来たときに、まず何を確かめ、親として何を引き受け、何を引き受けなくてよいのかを、親の立場ごとに整理します。
この記事は、成人した子が自分の名義で部屋を借りている場面を前提にしています。親が契約者になっている場合や、子が未成年の場合は扱いが異なるため、該当する箇所で補足します。
大家や管理会社が親に連絡してくる理由
大家や管理会社が親に連絡してくるのは、多くの場合、入居時の書類に親の名前が書かれているからです。ただ、同じ「親への連絡」でも、親が契約上どの立場にあるかによって、求められていることの意味が変わります。
連絡を受けたら、話を聞く前でも後でもかまいませんので、手元にある賃貸借契約書や保証契約書の写しを探し、自分の欄が何と書かれているかを確かめてください。写しが見当たらない場合は、管理会社に「自分がどの立場で登録されているか」を尋ねれば足ります。
| 親の立場 | お金の負担 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 連帯保証人 | 契約で定めた範囲で、子と同じ立場で支払いを求められることがある | 賃料や修理費などの支払いを保証する |
| 緊急連絡先 | 原則として支払いの義務はない | 子と連絡がつかないときなどの連絡・協力 |
| 契約上の立場なし | 支払いの義務はない | 親としての任意の協力 |
| 契約者(借主)本人 | 借主としての責任を負う | 賃料の支払いや部屋の明渡しなど |
近年は、家賃保証会社を利用し、親は緊急連絡先だけになっている契約も増えています。緊急連絡先は、保証人とは異なり法的な支払い責任を負わない協力者という位置づけで、いつでも対応しなければならない窓口というわけでもありません。
連絡を受けたときに確かめたいこと
大家からの連絡は、苦情を伝えたいだけのこともあれば、修理費の請求や退去の申し入れにつながっていることもあります。最初の電話で結論を出そうとせず、事実を聞き取ることに集中すると、その後の対応を組み立てやすくなります。
- いつ、どのような騒ぎがあったか(日時・回数・大声や物音、物の破損など)。
- 警察や救急が呼ばれたか、けが人がいるか。
- 部屋や共用部分に壊れたものがあるか。
- 大家が何を求めているか(注意してほしい、修理費の支払い、退去など)。
- 連絡が大家本人からか、管理会社や保証会社からか。
聞き取った内容は、日付とともにメモに残しておきます。電話口で「全部こちらで弁償します」「すぐに退去させます」と答えてしまうと、後から立場を整理し直すのが難しくなることがあります。謝意を伝えることと、支払いや退去を約束することは分けて考え、「本人に確認したうえで、改めてご連絡します」と伝えるのが穏当です。
連帯保証人になっている場合に負う範囲
親が連帯保証人になっている場合、子が支払わない賃料や、部屋を傷めたことによる修理費(原状回復費用)などについて、大家から支払いを求められることがあります。連帯保証人は、まず子に請求してほしいと言うことができないため、請求が親に直接来ることもあります。
一方で、保証の範囲には限りがあります。2020年4月1日以降に結ばれた個人の保証契約では、保証の上限額(極度額)を定めなければ保証契約が効力を生じないとされています(民法465条の2)。それより前の契約や、更新のしかたによっては扱いが異なることがあるため、契約書の日付と極度額の欄を確かめます。
また、保証の対象は、通常、子が賃貸借契約にもとづいて大家に対して負う債務です。隣の部屋の住人など、第三者への賠償が当然に保証の範囲に含まれるわけではありません。保証人として何を求められているのかを確かめ、内訳の説明を求めることは保証人の立場として自然なことです。子から頼まれて保証人になっている場合は、未払いの有無や金額について大家に情報の提供を求めることもできます(民法458条の2)。
- 保証の対象になっている契約と極度額。
- 請求されている金額の内訳と、その根拠となる資料。
- 子本人がその請求を認めているかどうか。
なお、連帯保証人であっても、子の行動を止めたり、子に代わって退去を決めたりする権限まで持つわけではありません。保証人になる前後の注意点は、【親子問題】家を借りる際の保証人・保証会社の問題|無職の子のために親が引き受ける前にや【親子問題】保証人になってしまった後にできることでも取り上げています。
緊急連絡先や、契約上の立場がない場合
親が緊急連絡先にとどまる場合や、契約書に名前がない場合、大家への支払いを法的に求められる立場にはありません。大家からの「親なのだから払ってほしい」という求めに応じるかどうかは、親が自由に決めてよいことです。
ただし、協力を断ることが子のためになるとは限りません。騒ぎが続けば、子が住まいを失うおそれもあります。支払いには応じないが、子に事実を伝えることには協力する、というように、引き受ける範囲を自分で区切って伝えることもできます。成人した子に親がどこまで関われるかについては、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲も参考になります。
退去を求められたとき
大家から「出ていってもらいたい」と言われると、すぐに退去しなければならないように感じるかもしれません。しかし、建物の賃貸借契約は借主の保護が厚く、一度の騒ぎだけで契約の解除が認められることは多くありません。裁判例では、契約違反があっても、大家と借主の信頼関係を壊すほどの事情があるかどうかが問われます。
たとえば、近隣への迷惑行為が繰り返され、注意を受けても改善しない場合や、ほかの入居者が退去するなど大家に具体的な損害が生じている場合には、解除が認められることがあります。契約書に「警察が関わる事態を起こした場合は直ちに解除できる」といった条項があるときも、条項があることだけで結論が決まるわけではなく、実際の行為の内容や頻度、その後の様子などをふまえて判断されると考えられています。
また、契約者が子である以上、親が子に代わって解約や明渡しを約束することはできません。反対に、大家の側も、鍵を替えたり荷物を運び出したりして、裁判所の手続を経ずに部屋を明け渡させることは原則として許されていません。親が契約者になっている場合は扱いが異なり、【親子問題】子が親名義で借りた部屋を解約したい|契約者としてできることと退去までの順序で整理しています。
子にどう伝えるか
大家からの連絡を子に伝えるときは、責めることよりも、事実と大家の要望をそのまま伝えることを優先すると、話が進みやすくなります。子の側にも、隣人との行き違いや、言い分があることも考えられます。
- 大家から聞いた事実を、評価を加えずに伝える。
- 大家が何を求めているかを伝える。
- 子の言い分や、騒ぎの背景にある事情を聞く。
- 今後どうするかを、子自身に考えてもらう。
騒ぎの背景に、体調の変化や精神的な不調、飲酒の問題、金銭の行き詰まりなどがうかがえることもあります。その場合は、騒音の問題として片づけず、医療機関や地域の相談窓口につなぐことを検討します。子と連絡が取れなくなっている場合や、警察に保護されて引き取りを求められた場合については、【親子問題】独立した後に連絡が来なくなったら|安否確認の順序と「報告の枠組み」や【親子問題】子が警察に保護された|引き取りを求められたときもあわせてご覧ください。
近隣の住人から親に請求が来たとき
騒ぎの相手となった住人や、物を壊された近隣の人から、親に直接賠償を求められることもあります。成人した子が自分の判断で起こしたことについて、親であることだけを理由に賠償の責任を負うことは、原則としてありません。
もっとも、相手の方の気持ちに配慮した受け答えは大切です。お詫びの気持ちを伝えつつ、賠償については子本人と話してもらうよう伝える、あるいは窓口を整えたうえで改めて連絡する、という対応が考えられます。詳しくは【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任で取り上げています。
弁護士に相談するとできること
大家からの連絡が一度きりで、子との話し合いで落ち着くのであれば、弁護士が関わる必要はないかもしれません。一方で、請求額が大きい場合や、退去を強く求められている場合、子が親の話を聞かない状態が続いている場合には、第三者が間に入ることで整理しやすくなることがあります。
- 保証契約の範囲や、請求の内訳が妥当かを確認する。
- 大家や管理会社との連絡窓口を引き受ける。
- 親が引き受ける範囲と引き受けない範囲を、書面で整理する。
- 子との話し合いの場を設け、今後の住まいや生活について考える。
当事務所では、親御さんの代理人として子との間に入り、自立支援カウンセラーと役割を分けながら、住まいや仕事、お金の管理など生活の立て直しにも取り組んでいます。騒ぎそのものだけでなく、その背景にある親子の関係を含めて考えたいときにも、ご相談いただけます。
大家から連絡が来たときは、親の立場を確かめ、事実を聞き取り、その場では約束をしないことが出発点です。そのうえで、子の住まいと生活をどう守るかを、子と一緒に考えていくことになります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


