【親子問題】ひきこもりの子が急に外出を始めた、親は何に気をつける?
この記事は、2022年4月1日施行の成年年齢引下げ(民法改正)と、2026年10月時点の民法・消費者契約法・特定商取引法の規定をもとにしています。個別の契約で取消しや解約ができるかは、契約の種類、勧誘の経緯、書面の内容によって変わります。
18歳や19歳の子が、エステや美容医療のコース、副業の教材、投資の情報商材などで、親の知らないうちに数十万円から100万円を超える契約を結んでいた。こうしたご相談は、親御さんからも多く寄せられます。以前であれば「未成年だから取り消せる」と考えられた場面ですが、成年年齢が18歳になった現在は、年齢だけを理由に取り消すことはできません。
ただ、取り消す手立てがまったくないわけではありません。18歳になる前に結んだ契約かどうか、どのような勧誘を受けたのか、どのような方法で支払っているのかによって、使える制度は変わります。この記事では、18歳・19歳の子が結んだ高額な契約について、取消しや解約を検討できる主な道筋と、親が関われる範囲を整理します。
18歳・19歳の契約は、年齢だけでは取り消せない
民法は、成年を18歳と定めています(民法4条)。2022年4月1日の改正法施行により、18歳・19歳は成年として扱われ、親の同意がなくても自分の判断で契約を結べるようになりました。
未成年者が親の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができます(民法5条1項・2項。いわゆる未成年者取消権)。しかし、この保護は18歳未満の人に限られます。18歳・19歳が結んだ契約は、親が知らなかった、親が反対していたという事情だけでは、取り消しの理由になりません。
福岡市消費生活センターのコラムでも、19歳の娘が100万円のローンを組んで美容整形手術を受けていたことについて、親が何か言えないのかという相談が紹介されています。成年になった後の契約では、契約の当事者はあくまで子ども本人です。この前提を押さえたうえで、次に述べる個別の制度を当てはめていくことになります。
18歳になる前に結んだ契約は、今も取り消せることがある
まず確認したいのが、契約を結んだ日です。現在18歳・19歳の子でも、17歳のときに親の同意なく結んだ契約であれば、成年になった後でも未成年者取消権を使える場合があります。取消権は、追認できる時(成年になった時など)から5年、契約の時から20年を過ぎると行使できなくなります(民法126条)。
注意したいのは、成年になった後に請求に応じて支払いを続けたり、契約の内容をそのまま受け入れるような行動をとったりすると、契約を認めた(追認した)と扱われるおそれがある点です(民法125条)。17歳のときに申し込んだ分割払いの契約を、18歳になってからも払い続けている場合は、早めに状況を確かめることをおすすめします。
また、年齢を偽って成年だと信じさせた場合(民法21条)や、親から自由に使ってよいと渡されたお小遣いの範囲内の支出(民法5条3項)は、取り消せないことがあります。取り消した場合、子が返す範囲は、受け取ったもののうち手元に残っている利益の限度とされています(民法121条の2第3項)。
成年になってからの契約で検討できる主な手立て
18歳になってから結んだ契約でも、契約の種類や勧誘の方法によっては、取消しや解約ができる場合があります。主なものを整理すると、次のとおりです。
| 手立て | 主な場面 | 期間の目安 |
|---|---|---|
| クーリング・オフ(特定商取引法) | 訪問販売、電話勧誘販売、エステ・美容医療などの特定継続的役務提供 | 法定の書面を受け取った日から8日 |
| クーリング・オフ(特定商取引法) | 連鎖販売取引(マルチ商法)、業務提供誘引販売取引(副業・内職商法) | 法定の書面を受け取った日から20日 |
| 中途解約(特定商取引法) | エステ・語学教室などの特定継続的役務提供、連鎖販売取引 | クーリング・オフ期間の経過後も可能(一定の清算あり) |
| 取消し(消費者契約法) | 事実と異なる説明、帰してもらえない状況での勧誘、不安をあおる勧誘、好意の感情につけこむ勧誘など | 追認できる時から1年、契約の時から5年(霊感等による勧誘は3年・10年) |
| 取消し(民法) | だまされて結んだ契約(詐欺)、脅されて結んだ契約(強迫) | 追認できる時から5年、契約の時から20年 |
クーリング・オフと中途解約
訪問販売や電話勧誘販売、一定額を超えるエステや美容医療の契約などは、法定の書面を受け取ってから一定期間内であれば、理由を問わず契約を解除できます(クーリング・オフ)。書面が交付されていない場合や、記載に不備がある場合は、期間が進まないと考えられています。期間を過ぎていても、エステや語学教室などの継続的なサービスやマルチ商法では、途中で解約できる仕組みがあります。
一方、ネット通販など自分から申し込んだ通信販売には、クーリング・オフの制度がありません。返品できるかは、事業者が定めた返品のルールによります。「お試し価格」から定期購入になっていたといった場面では、申込み画面の表示内容が問題になることがあります。
消費者契約法による取消し
消費者契約法は、事業者の不当な勧誘によって結ばれた契約の取消しを認めています(消費者契約法4条)。重要な事項について事実と異なる説明をされた場合や、帰りたいと伝えたのに帰してもらえなかった場合などが典型です。社会生活上の経験が乏しいことから生じる不安をあおった勧誘や、勧誘者への好意の感情につけこんだ勧誘(いわゆるデート商法)なども、取消しの対象とされています。
ただし、取消しができる期間は限られています。勧誘の様子を示す記録が残っているうちに、内容を確かめておくことが大切です。
ローンやクレジットで支払っている場合
販売店のクレジットや分割払いで代金を支払っている場合、販売店に対して主張できる取消しや解除などの事情を、クレジット会社に対しても主張し、支払いを止められる場合があります(割賦販売法の抗弁の接続)。
これに対し、消費者金融などで借りたお金で代金を支払った場合は、借入れは販売店との契約とは別の契約です。販売店との契約を取り消せても、借入れの返済義務が当然に消えるわけではありません。どのお金を、どこから、どのように支払ったのかを分けて把握することが、方針を決める出発点になります。
親が代わりに取り消すことはできるのか
成年になった子に対して、親は親権を持っていません。そのため、親が自分の判断で、子の名前で契約を取り消したり解約したりすることはできません。取消しやクーリング・オフの通知は、契約の当事者である子ども本人が行うのが原則です。
また、親が保証人になっていない限り、子が結んだ契約の代金やローンを親が支払う法的な義務は、原則としてありません。業者から親に請求が来た場合も、すぐに応じる必要はありません。このあたりは【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのか、保証人になっている場合は【親子問題】保証人になってしまった後にできることで詳しく解説しています。
親が関われるのは、子ども本人の意思を前提に、手続を支えることです。成人した子の問題に親がどこまで関われるかの考え方は、【親子問題】成人した子の問題に親が介入できる法的な範囲もあわせてご覧ください。
親が動くときに気をつけたいこと
子の契約に気づいたとき、親としては早く何とかしたいと考えるのが自然です。ただ、動き方によっては、取消しや解約の道を狭めてしまうことがあります。次の点を意識しておくとよいでしょう。
- 子に事情を聞く前に、親だけで業者に連絡したり、解約を申し入れたりしないようにします。
- 業者に言われるまま、親がまとめて代金を支払うことは避けます。取消しの機会を失うほか、同じことが繰り返されるおそれがあります。
- 契約書、概要書面、勧誘時のメッセージ、広告の画面、振込やカードの利用明細を、消さずに保存してもらいます。
- クーリング・オフや取消しには期間があるため、契約日と書面を受け取った日を確認します。
- 子を責めるよりも、事実を一緒に整理する姿勢で話を聞きます。だまされたと認めにくい気持ちが、相談を遅らせることがあります。
まず相談先として考えられるのは、消費者ホットライン(188)につながる地域の消費生活センターです。子ども本人が相談するのが基本ですが、親が同席して経緯の説明を補うこともできます。
高額な支出が何度も続く場合は、契約ごとの対応だけでは追いつかないこともあります。その場合の考え方は、【親子問題】浪費が止まらない子|保佐・補助を検討する場面で取り上げています。
弁護士に相談すると、どのように進むか
弁護士が取消しや返金の交渉を担う場合、依頼者は契約の当事者である子ども本人になります。親御さんからご相談をいただいた場合でも、契約の手続を進めるには、本人の意思を確認する場を設けることが前提です。
本人から依頼を受けた後は、契約書面や勧誘の記録をもとに、クーリング・オフ、消費者契約法、民法のどの規定が当てはまりそうかを検討し、事業者やクレジット会社に通知を送ったうえで交渉を進めます。本人が事業者と直接やり取りしなくてよくなるため、強い勧誘を受けていた場合の負担を減らすことにもつながります。
一方、子が親にお金を求め続けている、親名義のカードが使われているといった、親自身の生活や財産を守る必要がある場面では、弁護士が親の代理人として対応することもあります。子の契約の問題と、親を守る問題を分けて考えることで、それぞれに合った手立てを選びやすくなります。
関連する解説記事
- 【親子問題】子がローンで車を買い、支払いを親に求めてくる|親に返済義務はあるのか
- 【親子問題】子がホストクラブの売掛で多額の債務を負った|親が関わるときの順序と改正風営法
- 【親子問題】SNSで知り合った相手に子が金を送り続けている|ロマンス詐欺・投資勧誘の構造と、止められない理由
- 【親子問題】子が宗教・自己啓発団体に多額の支払いをしている|親が守れるものと、本人が取り戻す道を残す備え
まとめ
18歳・19歳の子が結んだ契約は、年齢だけを理由に取り消すことはできません。それでも、18歳になる前の契約であれば未成年者取消権が使える場合があり、成年後の契約でも、クーリング・オフや中途解約、消費者契約法や民法による取消しを検討できる場面があります。いずれも期間の制限があるため、契約に気づいた段階で、書面と記録をそろえて早めに相談することが大切です。親が代わりに払う前に、まずは誰の契約で、どの手立てが使えそうかを整理するところから始めてみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


