【親子問題】子がSNSで他人を誹謗中傷して訴えられた、親の責任は?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

この記事は、2026年10月時点の法令にもとづいて、子がSNSなどで他人を誹謗中傷し、損害賠償の請求や訴訟を起こされた場面での親の立場を整理したものです。個別の事情によって結論が変わることがあります。


ある日、プロバイダから見慣れない書面が届いた。相手方の弁護士から「お子さんの投稿について損害賠償を求める」という通知が来た。裁判所から訴状が届いた。子がSNSで他人を誹謗中傷していたと分かったとき、多くの親御さんがまず考えるのは「親として自分も責任を負うのか」「払わなければならないのか」ということです。

 結論から言うと、親が責任を負うかどうかは、子の年齢と判断能力、そして親自身の関わり方によって分かれます。この記事では、責任の分かれ目と、書面が届いたときに親が取るべき順序を整理します。

最初に確かめたいのは「子の年齢」と「何が届いたか」

 親の責任を考える前に、2つのことを確かめておくと、その後の整理がしやすくなります。

 1つ目は子の年齢です。2022年4月から成年年齢は18歳になっており、18歳以上の子は法律上の成人として扱われます。成人か未成年か、未成年であれば何歳かによって、親の立場は大きく変わります。

 2つ目は、届いた書面の種類です。誹謗中傷をめぐる手続では、次のような書面が届くことがあります。

  • プロバイダや携帯電話会社から届く、発信者情報の開示に同意するかを尋ねる「意見照会書」。
  • 相手方の弁護士から届く、損害賠償や投稿の削除を求める通知書。
  • 裁判所から届く訴状や、発信者情報開示命令の申立てに関する書面。
  • 警察からの連絡や、事情を聞きたいという呼び出し。


 どの書面かによって、回答の期限や、誰が対応すべきかが変わります。届いた書面は捨てたり放置したりせず、封筒も含めて保管しておくことをお勧めします。

子が成人している場合、親が賠償する義務は原則としてない

 他人の名誉やプライバシーを侵害した場合に損害賠償の責任を負うのは、その行為をした本人です(民法709条・710条)。子が18歳以上であれば、親であるというだけで、子の投稿について親が賠償する法的な義務を負うことは基本的にありません。

 成人した子が仕事をしておらず、支払う資力がない場合でも、それだけで親に支払義務が移るわけではありません。相手方から「親が払うべきだ」と求められても、法的な義務と、親が任意に支払うかどうかの判断は分けて考える必要があります。

 ただし、親自身が投稿の内容を一緒に考えた、親も同じ内容を拡散したなど、親の行為そのものが問題にされる場合は別です。この場合は、親本人の行為として責任を問われる可能性があります。成人した子が起こしたトラブルと親の責任の関係は、【親子問題】子が近所の人とトラブルを起こした|成人した子の賠償と親の責任でも整理しています。

子が未成年の場合は、責任能力の有無で分かれる

 子が未成年の場合、まず問題になるのは、子に「責任能力」があるかどうかです。責任能力とは、自分の行為が法的な責任を生じさせることを理解できる程度の判断能力のことをいいます。

責任能力がない年齢の子の場合

 責任能力がない子は、本人が賠償責任を負いません(民法712条)。その代わりに、監督義務を負う親が責任を負うのが原則です(民法714条1項)。親が責任を免れるには、監督義務を怠らなかったこと、または監督義務を尽くしても損害が生じたことを親の側で示す必要があり、実際に認められる場面は限られています。

 責任能力の有無は年齢だけで機械的に決まるものではありませんが、裁判例ではおおむね12歳前後が一つの目安とされてきました。小学生がSNSに書き込んだ事案では、このパターンが問題になりやすいといえます。

責任能力がある子の場合

 中学生や高校生など、責任能力がある子については、原則として子本人が賠償責任を負い、親は当然には責任を負いません。

 もっとも、親の監督義務違反と損害との間に相当因果関係があると認められる場合には、親自身の不法行為として責任を問われることがあります(民法709条、最高裁昭和49年3月22日判決)。この場合、親の監督に落ち度があったことや、それが損害につながったことは、請求する側が示す必要があります。たとえば、子が以前から特定の人への中傷を繰り返していると知りながら、何の対応もしなかったといった事情があるかどうかが問われます。

子の状況賠償の責任を負うのは原則として誰か親の責任が問題になる場面
18歳以上(成人)子本人親自身が投稿や拡散に関わった場合など
未成年で責任能力がある子本人親の監督義務違反と損害との因果関係が示された場合
未成年で責任能力がない監督義務者である親監督義務を尽くしたことを親が示せない場合


 相手方が子と親の両方を被告として訴えてくることもあります。訴えられたことと、親の責任が認められることは別の問題であり、親として何を主張できるかは事情によって変わります。

スマホや回線が親の名義だと、親のもとに書面が届く

 誹謗中傷をされた側は、投稿者を特定するために、SNSの運営会社やプロバイダに対して発信者情報の開示を求めることがあります。この手続の中で、プロバイダは契約者に対して、情報の開示に同意するかを尋ねる意見照会を行います。

 子のスマホや自宅の回線を親の名義で契約している場合、この意見照会書は契約者である親のもとに届きます。親が書面を見て初めて、子の投稿に気づくという流れは珍しくありません。

 契約者であることは、それだけで投稿の責任を負うことを意味しません。一方で、開示されるのは契約者の氏名や住所であるため、相手方が親を投稿者と考えて請求してくる可能性があります。回答の期限が区切られていることも多いため、誰がその端末や回線を使っていたのかを確かめたうえで、どう回答するかを検討する必要があります。事実と異なる内容を回答すると、その後の交渉や裁判で不利に扱われるおそれがある点にも注意が必要です。

 子の携帯電話などを親の名義で契約していることのリスクについては、【親子問題】子の携帯・車の名義を親が持っている場合のリスクで詳しく解説しています。

未成年の子が訴えられたとき、親は「法定代理人」として手続に関わる

 未成年の子が訴えられた場合、子は自分だけで裁判の手続を進めることができず、親権者である親が法定代理人として手続を行います(民事訴訟法31条)。親自身に賠償の責任がない場合でも、子の代わりに答弁書を出したり、和解の話し合いに臨んだりするのは親ということになります。

 訴状が届いたのに答弁書を出さず、期日にも出席しないと、相手方の主張をそのまま認めたものとして扱われ、請求どおりの判決が出るおそれがあります。内容に納得できない場合でも、まずは期限までに対応することが大切です。

刑事の手続に進む場合

 誹謗中傷は、民事の損害賠償とは別に、刑事事件として扱われることもあります。具体的な事実を示して人の社会的評価を下げれば名誉毀損罪(刑法230条1項、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)、事実を示さずに侮辱すれば侮辱罪(刑法231条、1年以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料)が問題になります。いずれも、被害を受けた人の告訴がなければ起訴されない親告罪です(刑法232条)。

 子の年齢によって、刑事手続の扱いは次のように変わります。

  • 14歳未満の子は刑事責任を問われませんが、児童相談所などが関わることがあります。
  • 14歳以上20歳未満の子は、少年事件として家庭裁判所で扱われるのが原則です。
  • 18歳・19歳の子は、民法上は成人ですが、少年法では「特定少年」として少年事件の手続の対象になります。
  • 20歳以上の子は、成人として通常の刑事手続で扱われます。


 18歳・19歳の子は、民事では親が監督義務者として責任を負う立場にはない一方で、刑事では少年事件として扱われるという、少しずれた位置にあります。少年事件の流れは【親子問題】少年事件の流れ|家庭裁判所送致から審判まで、成人した子の場合は【親子問題】成人した子の刑事事件で親ができること・できないことで整理しています。民事と刑事の違いそのものについては、SNSの投稿で名誉毀損と言われた|刑事と民事の違いもあわせてご覧ください。

親がとっさにしてしまいがちな対応と、その注意点

 書面が届いて慌てたときほど、後から見ると不利になる対応をしてしまうことがあります。

投稿やアカウントを急いで消させる

 問題の投稿を削除すること自体は、被害の拡大を止める意味があります。ただ、何を投稿したのかが分からなくなると、どの部分が問題にされているのか、どこに反論の余地があるのかを確かめられなくなります。削除する前に、投稿の内容や日時を画面の保存などで残しておくことが大切です。この点はアカウントを消せばよいのか|投稿削除と証拠保全の関係で詳しく解説しています。

子の代わりに親が相手と直接やり取りする

 成人した子の件で、親が相手方に謝罪の連絡をしたり、話し合いを申し出たりすると、親が責任を認めたように受け取られることがあります。謝罪の気持ちを伝えることと、法的な責任を引き受けることは分けて考え、連絡の前に方針を決めておくことが望まれます。

請求された金額をそのまま親が払う

 法的な義務がなくても、親が子に代わって支払うこと自体は可能です。ただし、金額が妥当か、支払いと引き換えに投稿の削除や今後の請求をしないことが合意されているかを確かめないまま払うと、後から追加の請求を受けるおそれがあります。親が支払う場合の考え方は、【親子問題】示談金を親が払うべきか|払う場合の条件で整理しています。

成人した子の中傷が繰り返されている場合

 ひきこもりの状態にある成人した子が、ネット上で他人への攻撃的な投稿を続けている。そうしたご家庭では、意見照会書や請求の書面が親の住む家に届き、親が対応に追われることが少なくありません。子本人と話し合おうとしても、親の言葉が届かず、かえって関係がこじれることもあります。

 法的な責任が子本人にあるとしても、その子が自分で書面に向き合い、支払いや謝罪を進められるとは限りません。親が抱え込み続けると、請求への対応と子との関係の両方で、親が疲弊してしまうおそれがあります。

 当事務所では、親の代理人として相手方とのやり取りや子への連絡の窓口を担い、必要に応じて自立支援のカウンセラーと連携しながら、子が自分の行為に向き合える環境づくりを進める取り組みをしています。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。

ご相談の前に整理しておきたいこと

 相談の際は、次のような情報が手元にあると、親の責任の有無や取るべき順序を早く見通しやすくなります。

  • 子の年齢と、同居しているかどうか。
  • 届いた書面の種類と、届いた日付、記載されている回答期限。
  • 問題とされている投稿の内容と日時、投稿に使われた端末や回線の契約名義。
  • 相手方とすでに連絡を取ったかどうかと、その内容。
  • 子本人が投稿を認めているかどうか。


 子の誹謗中傷で訴えられたとき、親が責任を負うかどうかは、子の年齢や判断能力、親自身の関わり方によって変わります。親の責任がない場合でも、親名義の契約や法定代理人としての立場から、親が手続に関わらざるを得ない場面はあります。何から手をつければよいか迷ったときは、期限のある書面への対応を優先しながら、早めに専門家に相談することをお勧めします。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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