【親子問題】相談の前に整理しておきたい5つの情報
本記事は、2026年10月時点の法令と国税庁の公表資料をもとに、親から子への仕送りと贈与税の関係を一般的に整理したものです。個別の税額の計算や申告の要否については、税理士または所轄の税務署にご確認ください。
独立した子の生活を支えるために、毎月の仕送りや家賃の支払いを続けている親御さんは少なくありません。そのなかで「年間110万円を超えると贈与税がかかる」と耳にして、仕送りの額が気になっている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、親が子の生活費や教育費として、その都度必要な分を渡している限り、通常は贈与税の対象にはなりません。ただし、渡したお金の使い道や渡し方によっては、課税の対象となる部分が生じることがあります。また、税金の問題とは別に、仕送りが長く続くことで親自身の生活や親子の関係に負担がかかっているケースもあります。
この記事では、仕送りに贈与税がかからない理由と、課税される可能性がある場面、後から説明できる渡し方を整理したうえで、親子問題として仕送りを見直すときの考え方にも触れます。
仕送りは法律上「贈与」だが、贈与税がかからない仕組みがある
民法では、当事者の一方が財産を無償で相手に与える意思を示し、相手がこれを受諾することで贈与が成立するとされています(民法549条)。返してもらう約束のない仕送りは、法律上は贈与にあたります。
そのうえで、相続税法は、扶養義務者相互間で生活費や教育費に充てるためにした贈与によって取得した財産のうち、通常必要と認められるものは贈与税の課税価格に算入しないと定めています(相続税法21条の3第1項2号)。国税庁も「贈与税がかからない場合」として、同じ内容を案内しています。
つまり、仕送りが贈与にあたることと、贈与税がかからないことは両立します。年間110万円の基礎控除とは別の枠組みで非課税とされているため、1年間の仕送りの合計が110万円を超えていても、それだけで課税されるわけではありません。
非課税となるための3つの要素
非課税の扱いを受けられるかどうかは、主に次の3点から判断されます。
- 渡す人と受け取る人が扶養義務者の関係にあること。
- 生活費または教育費に充てるためのものであること。
- その目的のために通常必要と認められる範囲であること。
成人した子との関係でも親は扶養義務者にあたる
民法877条1項は、直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養をする義務があると定めています。親と子は直系血族ですので、子が成人していても、親は子の扶養義務者にあたります。相続税法上の扶養義務者も、この民法の定めを基礎にしています(相続税法1条の2第1号)。
なお、成人した子に対する親の扶養義務は、一般に、親が自分の生活を維持したうえで、余力の範囲で援助する程度のものと考えられています。扶養義務がどこまで及ぶかについては、【親子問題】親の扶養義務はどこまでか|成人した子を養う義務はあるのかで詳しく解説しています。
「生活費」「教育費」に含まれるもの
国税庁の説明では、生活費とはその人にとって通常の日常生活を営むのに必要な費用をいい、教育費とは学費や教材費、文具費などをいうとされています。通院や治療にかかる費用も、生活費に含まれるものとして扱われています。具体的には、次のような支出が考えられます。
| 費目 | 具体例 |
|---|---|
| 住まい | 家賃、共益費、水道光熱費 |
| 日常の暮らし | 食費、日用品、衣類、通信費 |
| 医療 | 通院や治療にかかる費用 |
| 教育 | 学費、教材費、文具費 |
金額について「月いくらまでなら非課税」という明確な基準は示されていません。受け取る子の年齢や住んでいる地域、健康状態、収入などを踏まえて、社会通念上相当といえる範囲かどうかで判断されます。子に一定の収入があり、自分の生活費をおおむね賄えている場合には、親からの送金が「通常必要な生活費」とは見られにくくなることもあります。
仕送りでも贈与税の対象になりうる場面
贈与税がかからないのは、生活費や教育費として必要な都度、直接それに充てるために渡したお金に限られます。名目が仕送りであっても、次のような場合は課税の対象になる可能性があります。
使わずに貯金や投資に回された部分
国税庁は、生活費や教育費の名目で受け取ったお金であっても、それを預金したり、株式や不動産などの購入資金に充てたりしている場合には贈与税がかかると説明しています。たとえば、毎月の仕送りの一部を子が使わずに積み立てていた場合、残った部分は生活費ではなく財産の移転とみられることがあります。この部分とほかの贈与の合計が年間110万円の基礎控除を超えると、子の側で申告と納税が必要になる場合があります。
数年分をまとめて渡したお金
「毎月送るのは手間だから」と、数年分の生活費を一度に渡すケースもあります。国税庁が公表している生活費・教育費の贈与に関するQ&Aでは、数年分の生活費や教育費をまとめて贈与した場合は贈与税の課税対象になると説明されています。生活費として渡すのであれば、必要な額を必要な時期に送る形にしておくほうが、非課税の扱いを説明しやすくなります。
生活費の範囲を超える支出に充てたお金
車の購入費、趣味や遊興のための高額な支出など、通常の日常生活に必要とはいえない支出に充てるためのお金は、生活費とは扱われにくいと考えられます。
子の借金を親が代わりに返した場合も注意が必要です。この場合、親が子に対して返済額に相当する金額を贈与したものとみなされることがあります(相続税法8条)。ただし、子が資力を失って借金を返すことが難しい状況で、扶養義務者である親が返済したときは、返済が難しい部分については課税しない扱いも定められています(同条ただし書)。そもそも親に子の借金を返す義務があるかどうかについては、【親子問題】子の借金を親が返す義務はあるのかもあわせてご覧ください。
子名義の口座に親がお金を積み立てている場合
親が子の名義で口座を作り、仕送りとは別にお金を積み立てているケースもあります。子がその口座の存在を知らず、通帳や印鑑も親が管理しているといった実態があれば、子の財産ではなく親の財産(いわゆる名義預金)とみられることがあります。この場合は贈与税ではなく、親が亡くなったときに相続税の対象として扱われる可能性があります。
後から説明できる渡し方と記録の残し方
通常の仕送りについて、贈与税の申告や契約書の作成は必要ありません。ただ、使い道を後から説明できるようにしておくと安心です。次のような方法が考えられます。
- 現金の手渡しではなく銀行振込で送ると、送金の日付と金額が記録に残ります。
- 数年分をまとめて渡さず、必要な額を必要な時期に送ります。
- 家賃や学費は、親が貸主や学校へ直接支払う方法もあります。
- 仕送り用の口座を分けておくと、生活費として使われていることを示しやすくなります。
- 子の収入や生活の状況が変わったときは、仕送りの額を見直します。
「あげた」のか「貸した」のかをはっきりさせる
親子の間では、渡したお金が仕送り(贈与)なのか、後で返してもらうつもりの貸付けなのかがあいまいなまま続くことがよくあります。返してもらうつもりであれば、金額や返済の方法を書面に残しておかないと、後になって「もらったものだ」と言われ、親子間の争いになることがあります。反対に、返済の予定が実際にはないのに「貸した」形だけをとっていると、税務上は実質的に贈与と判断されることもあります。
貸したお金の返還を求めたい場面については、【親子問題】子に貸したお金を返してもらいたい|「もらった」と言われたときの整理と請求の進め方で解説しています。
相続のときに仕送りが問題になることはあるか
きょうだいの一人だけに長く仕送りを続けていた場合、親が亡くなった後の遺産分割で、ほかのきょうだいから「特別受益ではないか」と指摘されることがあります。特別受益とは、相続人の中に生計の資本としての贈与などを受けた人がいる場合に、その分を考慮して各相続人の取り分を計算する仕組みです(民法903条)。
扶養義務の範囲内で通常の生活費を援助していたにとどまる場合は、一般に特別受益にはあたらないと考えられています。ただし、金額が大きい、援助の目的が生活の維持を超えているといった事情があれば、遺産の前渡しとして扱われる余地もあります。きょうだい間の公平が気になる場合は、援助の内容と理由を記録しておくことや、遺言で親の考えを示しておくことも一つの方法です。
子から生前の贈与を強く求められている場合については、【親子問題】生前贈与を迫られている|断り方と記録の残し方をご覧ください。
税金より先に考えたい、仕送りが続いている理由
当事務所には、成人した子への仕送りや家賃の支払いが何年も続き、親の老後の資金が少しずつ減っているというご相談も寄せられます。贈与税がかからない範囲であっても、親が自分の生活を圧迫してまで援助を続けなければならないわけではありません。
仕送りが「子の自立を支えるための一時的な援助」なのか、「求められるままに続いている支出」なのかによって、考えるべき対応は変わります。後者の場合、仕送りを減らしたり止めたりすることを子に伝えると関係が悪化するのではないか、強い要求や暴言が返ってくるのではないかと心配される親御さんも少なくありません。
仕送りの止め方や伝え方は【親子問題】子への仕送りを止めたい|止め方と伝え方、家賃の支払いについては【親子問題】独立した子の家賃を払い続けている|いつまで払うのかで整理しています。
独立を支える仕送りとして組み立てる
当事務所では、子の暴力や金銭の要求、ひきこもりなどに悩む親御さんの代理人として子との間に入り、自立支援カウンセラーと役割を分けながら、子の独立と生活の立て直しを支援しています。子が家を出た後しばらくは、親から必要最小限の経済的な援助を続けていただくことが多く、その間にカウンセラーが仕事探しや生活保護の申請、日々の金銭管理などを支えます。
このように、期間と金額の見通しを持った仕送りであれば、生活費としての性格もはっきりし、親の負担にも区切りをつけやすくなります。子を家から独立させるまでの流れについては、【親子問題】子を家から独立させる具体的な手順をご覧ください。
まとめ
- 親から子への仕送りは法律上は贈与ですが、扶養義務者からの生活費や教育費で通常必要な範囲であれば、贈与税はかかりません。
- 年間の仕送りが110万円を超えていても、それだけで課税されるわけではありません。
- 使わずに貯金や投資に回した部分、数年分をまとめて渡した分、生活費の範囲を超える支出に充てた分は、課税の対象になる可能性があります。
- 銀行振込で必要な都度送るなど、後から使い道を説明できる形にしておくと安心です。
- 仕送りが親の生活を圧迫している場合は、税金とは別に、援助の続け方そのものを見直すことも検討できます。
子への仕送りは、税金の面だけでなく、親子の関係や親自身の生活とも深く結びついています。仕送りをいつまで、どのように続けるかに迷っている場合や、援助をめぐって子との話し合いが難しくなっている場合は、お一人で抱え込まずにご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


