【親子問題】ひきこもりの子が入浴や着替えをしない、どう関わればいい?
本記事は、2026年10月時点の法令にもとづき、成人した子が家業の売上を使い込んでいる場合の一般的な考え方をまとめたものです。刑罰は、2025年6月施行の改正刑法による「拘禁刑」の表記によっています。
家業を手伝っている子に経理や売上金の管理を任せていたところ、帳簿と手元の現金が合わない、通帳に覚えのない引き出しがある、と気づくことがあります。家族だからと任せてきた分、どこから手をつければよいか迷われる親御さんは少なくありません。
この記事では、成人した子が家業の売上を使い込んでいる場合に、まず何を確かめ、どの順番で止めていくかを整理します。刑事事件として扱えるかどうか、使われたお金を返してもらえるか、子を家業から外すときの注意点もあわせて解説します。
最初に確かめたいのは家業の形と子の立場
「家業」と一口にいっても、親が個人事業主として営んでいる場合と、株式会社などの法人にしている場合とでは、売上金が誰のものかが異なります。この違いが、後で取れる手段を大きく分けます。
| 確かめること | 個人事業の場合 | 法人(会社)の場合 |
|---|---|---|
| 売上金の持ち主 | 事業主である親 | 会社 |
| 被害を受けた立場 | 親 | 会社 |
| 子の立場の例 | 家族従業員、無給の手伝い | 従業員、取締役などの役員 |
| 止めるための主な手段 | 口座や現金の管理を親の手に戻す | 権限の変更、社内の処分、役員の解任など |
あわせて、子がどの立場で家業に関わっているかを確かめます。給料を受け取る従業員なのか、取締役などの役員なのか、無給で手伝っているだけなのかによって、止め方も、家業から外す手続も変わります。
会社の場合は、子が代表取締役になっていないか、銀行口座の届出印やネットバンキングの管理者が誰になっているかも確認しておきたいところです。子が会社の代表者であれば、親が株主やほかの役員の立場からどう関与できるかを、別に検討する必要があります。
まず止める|お金の通り道を親の手元に戻す
使い込みに気づいたとき、子を問い詰める前に、これ以上お金が出ていかない状態を作ることを優先します。先に話し合いをしてから口座やカードを動かそうとすると、その間に引き出されたり、帳簿や伝票を持ち出されたりするおそれがあるためです。
口座・カード・印鑑・ネットバンキングを見直す
事業用の通帳、キャッシュカード、届出印、ネットバンキングのログイン情報を子が持っている場合は、親が管理する状態に戻します。手元に戻すのが難しいときは、金融機関に相談し、カードの利用停止や再発行、届出印の変更、ネットバンキングの利用者やパスワードの変更を進めます。法人口座の手続は原則として会社の代表者が行うため、代表者が誰かによって進め方が変わります。
実印や不動産の権利証まで持ち出されている場合の考え方は、【親子問題】子が親の実印や権利証を持ち出した|悪用を止める手続の順序と、使われていた場合の対応も参考になります。
売上の受け取り方を変える
現金の売上が多い商売では、レジ締めや入金を子一人に任せている状態が、使い込みの起きやすい環境になりがちです。売上の確認に親が立ち会う、売上金はその日のうちに親が入金する、取引先からの振込先を親が管理する口座に限る、といった変更を検討します。
経理を一人で完結させない
出金の承認と記帳を別の人が担う、月に一度は通帳と帳簿を突き合わせる、顧問税理士に定期的に確認してもらう、といった形で、一人で完結しない流れに組み替えます。家族経営では人手が限られますが、確認する目を一つ加えるだけでも、同じことが続くのを防ぎやすくなります。
子が強く反発しそうな場合や、これまでに暴力や激しい言動があった場合は、管理を戻す手順と同時に、親自身の安全をどう確保するかも考えておく必要があります。
使われた金額と使い道を記録で確かめる
お金の流れを止めたら、どの期間に、いくら、どのように使われたかを資料で確かめます。返してもらうための話し合いにも、法的な手段の検討にも、金額を裏づける記録が土台になります。
- 事業用口座の通帳や取引明細(過去の分は金融機関で取り寄せられることがあります)。
- 帳簿、売上台帳、レジの記録、POSのデータ。
- 請求書・領収書・伝票と、実際の入出金との照合結果。
- 子が使っていた事業用カードの利用明細。
- 子とのやり取り(LINEやメール、使い込みを認めた発言の録音など)。
確認を進めると、子から「もらえなかった給料の分だ」「仕入れの立て替えを精算しただけだ」と説明されることがあります。こうした言い分にも、裏づけがあるものとないものがあります。支払うべきだった報酬や正当な立替金があるかどうかを分けて整理しておくと、後の話し合いが進めやすくなります。税務申告に関わる処理が含まれていることもあるため、税理士にも早めに相談しておくと安心です。
刑事事件として扱えるか|親族相盗例と家業の形
他人から預かって管理しているお金を自分のために使えば、横領罪にあたりえます。仕事として継続的に管理していた場合は業務上横領罪となり、法定刑は10年以下の拘禁刑です(刑法253条)。
ただし、家族の間では親族相盗例と呼ばれる特例があります。配偶者・直系血族・同居の親族の間で起きた窃盗や横領は刑が免除され、それ以外の親族の間では告訴がなければ起訴されません(刑法244条、255条)。この特例が当てはまるかどうかは、家業の形によって分かれます。
個人事業の場合
親が個人事業主であれば、売上金の持ち主は親です。子は親の直系血族にあたるため、使い込みが横領にあたるとしても刑は免除される扱いになり、刑事事件として処罰を求めるのは難しいことが多いでしょう。もっとも、免除されるのは刑罰の面に限られ、お金を返してもらう民事上の請求は別に考えることができます。この分かれ目は、【親子問題】親の預貯金を勝手に引き出された|刑事と民事の分かれ道でも解説しています。
法人の場合
会社のお金を使い込んだ場合、お金の持ち主は会社です。会社は親族ではないため、一般に親族相盗例は適用されないと考えられており、業務上横領などとして捜査の対象になりえます。
ただ、被害届や告訴をするかどうかは会社として判断することになり、家族関係や家業の今後への影響も小さくありません。刑事手続に進むかどうかは、返金の見通しや子の状況とあわせて慎重に検討したいところです。
使われたお金を返してもらう|民事での請求
刑事手続とは別に、使い込まれたお金は、不法行為にもとづく損害賠償や不当利得の返還として請求できる場合があります(民法709条、703条・704条)。子が会社の取締役であれば、会社に対する任務懈怠の責任(会社法423条)が問題になることもあります。
進め方としては、まず金額と返し方について話し合い、合意できれば書面に残します。分割で返してもらう場合は、支払いが滞ったときの扱いまで決めておき、必要に応じて公正証書にしておくことも考えられます。書面の作り方と注意点は、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で詳しく扱っています。話し合いがまとまらない場合は、調停や訴訟を検討します。
請求には期限があります。不法行為による損害賠償は損害と加害者を知った時から3年(行為の時から20年)、不当利得の返還は権利を行使できると知った時から5年(行使できる時から10年)で、時効にかかるおそれがあります(民法724条、166条)。長い期間にわたる使い込みでは、古い分から順に期限が近づいていくため、気づいた段階で早めに整理しておくことが大切です。
子を家業から外すときに気をつけたいこと
使い込みが分かった後、子に家業を続けさせるかどうかは、家族にとって大きな判断です。子の立場ごとに、取れる手続と注意点が異なります。
| 子の立場 | 主な手続 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 会社の従業員 | 配置換え、懲戒、解雇など | 就業規則の定めがあるか、処分が重すぎないかの検討が必要 |
| 会社の取締役 | 株主総会での解任 | 正当な理由のない解任は損害賠償の対象になりうる(会社法339条2項) |
| 個人事業の家族従業員・手伝い | 任せる業務を変える、手伝いをやめてもらう | 給料の扱いや、生活の基盤が急に失われることへの配慮 |
使い込まれた分を子の給料から差し引きたいと考える方もいますが、従業員としての給料は全額を支払うのが原則とされています(労働基準法24条)。一方的に差し引くことはできないと考えておき、返済は給料とは別に取り決めておくほうが無難です。
家業を継がせる予定だった場合は、後継者の計画や遺言の内容を見直すことも考えられます。もっとも、相続人から外す相続廃除は家庭裁判所が認める要件が厳しく、使い込みがあったことだけで認められるとは限りません。詳しくは【親子問題】暴力を続ける子に財産を渡したくない|相続廃除の要件をご覧ください。
夫婦の一方が子をかばい、対応の方針がそろわないこともあります。その場合の考え方は、【親子問題】夫婦で方針が割れる|一方の親が子をかばうときで整理しています。
使い込みの背景にあるものにも目を向ける
家業のお金に手をつけるに至った背景には、借金の返済、ギャンブルや遊興費、交際相手からの金銭要求など、子自身が抱えている問題が隠れていることがあります。お金の管理を親の手元に戻しても、使い道を失った子が親個人に金銭を求めるようになるなど、問題の形が変わるだけで終わることもあります。
当事務所では、親御さんの代理人として子とのやり取りの窓口を担うとともに、自立支援カウンセラーとチームを組み、子の生活や仕事の立て直しを支える取り組みを行っています。家業の問題とあわせて親子の関係を見直したい場合は、【親子問題】子の暴力・ひきこもり・お金の無心・犯罪行為に悩む親御さんへ|ご相談から自立までの流れと費用、よくあるご質問もご覧ください。弁護士が間に入ることで何が変わるかは、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で説明しています。
よくあるご質問
子が使い込みを認めず、話し合いになりません。どうすればよいですか?
記録で金額や時期を確かめたうえで、弁護士から書面で返還を求める方法があります。親子が直接やり取りすると感情的な衝突になりやすいため、窓口を代えることで話が進む場合があります。
個人事業で刑が免除されるなら、警察に相談しても意味はありませんか?
処罰を求めるのは難しくても、子とのトラブルについて相談した記録が残ることには意味があります。暴力や脅しを伴う場合は、家業のお金の問題とは別に、身の安全のための相談として警察を頼ることができます。相談記録の意味については、【親子問題】警察に相談した記録を残す意味|相談票と後の手続をご覧ください。
使い込みが何年も前から続いていました。今からでも請求できますか?
時効の起算点は事情によって異なり、古い使い込みでも請求できる部分が残っていることがあります。一方で、すでに期限が過ぎている部分がある可能性もあるため、期間ごとに分けて早めに整理しておくことをおすすめします。
家業と家族の生活を守るために
家業の売上の使い込みは、事業の問題であると同時に、親子の関係の問題でもあります。お金の流れを止め、記録で事実を確かめ、そのうえで返金や今後の関わり方を一つずつ決めていくことで、家業と家族の生活の両方を守る道筋が見えてきます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


