【親子問題】子が実家をシェアハウスのように使っている、制限できる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

成人した子が実家に友人を次々と泊める、知らない人が昼夜を問わず出入りする、親のいない間に仲間を集めて部屋を使っている。こうした状態が続くと、親御さんは自分の家なのに落ち着いて暮らせなくなってしまいます。「家族なのだから仕方がない」と我慢を重ねている方も少なくありません。

 この記事では、子が実家をシェアハウスのように使っている場合に、親としてどこまで使い方を制限できるのかを、法律上の考え方と実際の進め方に分けて整理します。

この記事は、主に成人した子が親名義の家に家賃を払わずに住んでいる場面を前提にしています。子が未成年の場合や、家の名義・契約の形が異なる場合は、考え方が変わることがあります。


「シェアハウスのように使う」とはどのような状態か

 ご相談の中では、次のようなお悩みがよく聞かれます。

  • 子の友人が何日も泊まり込み、いつ帰るのか分からない。
  • 知らない人が合鍵を持って出入りしている。
  • リビングや台所を子の仲間に占領され、親が使えない。
  • 深夜に大勢が集まり、騒音で近所から苦情が来た。
  • 光熱費や食費が急に増えたのに、子は一切負担しない。
  • 親の外出中や旅行中に、家を勝手に使われている。


 いずれも、家の中で起きていることなので外からは見えにくく、親御さんが一人で抱え込みやすい問題です。ただ、家族の家であっても、誰を住まわせ、どのように使うかを決める立場には法律上の整理があります。

家の使い方を決めるのは、原則として所有者


家賃を払わずに住む子との関係は「使用貸借」

 親名義の家に成人した子が家賃を払わずに住んでいる場合、法律上は、親が子に家を無償で使わせる「使用貸借」(民法593条)の関係にあると整理されることが多くあります。契約書がなくても、口約束や暗黙の了解で成り立つとされています。

 つまり、子は親の家を「借りて使っている」立場にあり、家そのものの持ち主になったわけではありません。この点が、使い方を制限できるかどうかを考える出発点になります。

子が友人を住まわせるには、親の承諾が必要

 使用貸借で物を借りている人は、貸主の承諾を得なければ、第三者に使わせることができないとされています(民法594条2項)。また、契約や物の性質によって決まった使い方に従って使う義務も負います(同条1項)。

 親の家に子が住むことを認めていたとしても、それは通常、子本人が生活の場として使うことを想定したものです。子が親の承諾なく友人を住まわせたり、仲間の集まる場所として常に開放したりすることは、この範囲を超えていると評価される余地があります。

 したがって、親御さんが「友人を泊めるのはやめてほしい」「知らない人を家に入れないでほしい」と求めることは、所有者として筋の通った申し入れといえます。

名義や契約の形によって、制限できる人が変わる

 誰が使い方を決められるかは、家の名義や契約の形によって異なります。

家の状況使い方を決める主な立場注意点
親の単独名義所有者である親もっとも筋道を立てやすい形です
親が賃貸物件を借りている賃借人である親(大家との契約が前提)契約で同居人や又貸しが制限されていることが多く、大家との関係にも配慮が必要です
親と子の共有名義共有者どうしで協議子にも持分があるため、親だけでは当然に退去を求められない場合があります
祖父母など親以外の名義名義人本人親が自分の名前で制限を求める立場にない場合があります


 親以外の名義になっている家の考え方は、【親子問題】祖父母名義の家に子が居座っている、誰が退去を求める?で詳しく取り上げています。

使い方を制限するための進め方


まず、誰がいつ出入りしているかを記録する

 話し合いを始める前に、現状を記録しておくことをおすすめします。出入りしている人の人数や様子、泊まり込んだ日数、深夜の騒音、増えた光熱費の明細、近所からの苦情の内容などを、日付とともにメモしておきます。

 記録は、子との話し合いで事実を共有するためにも、後に弁護士や警察へ相談するときの資料としても役に立ちます。

家のルールを決めて伝える

 いきなり「全部やめなさい」と伝えると、子が反発して話し合いにならないことがあります。何を認め、何を認めないのかを具体的に決めて伝えるほうが、受け入れられやすい傾向があります。

  • 友人を家に入れてよいか、入れる場合は事前に親へ伝えること。
  • 泊まりを認めるかどうか、認める場合の日数の上限。
  • 来客を受け入れてよい時間帯。
  • リビングや台所など、家族が共用する場所の使い方。
  • 合鍵を子以外の人に渡さないこと。
  • 増えた光熱費や食費の負担の仕方。


 ご夫婦など家族の間で方針が割れていると、子はその隙間を突いてくることがあります。伝える前に、家族の中で方針を揃えておくことも大切です。

約束を書面にしておく

 話し合いでルールが決まったら、簡単なもので構わないので書面にしておくと、後で「言った・言わない」になるのを防げます。違反したときにどうするか(たとえば一定の期限までに家を出ること)まで書いておけば、次の段階に進むときの根拠にもなります。

 親子間の書面の効力や作り方については、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界で解説しています。

増えた費用の負担を求める

 使用貸借では、借りている物を使ううえで通常かかる費用は、借りている側が負担するものとされています(民法595条1項)。友人の出入りで光熱費や水道代が増えている場合に、その分の負担を子に求めることは、話し合いの材料の一つになります。

 もっとも、費用を負担させれば友人を住まわせてよいということにはなりません。お金の問題と、誰を家に入れるかの問題は分けて考えておくと、話がこじれにくくなります。

ルールが守られないとき


使用貸借の解除を伝える

 子が親の承諾なく第三者に家を使わせたり、決まった使い方に反したりした場合、貸主である親は契約を解除できるとされています(民法594条3項)。また、期間も目的も定めずに住まわせていた場合は、貸主はいつでも解除できるとされています(民法598条2項)。

 実際には、解除の意思と退去の期限を書面で通知し、それでも応じない場合に、調停や建物明渡しの訴訟を検討するという順序になるのが一般的です。子が長年その家を生活の本拠にしている場合などは、解除が認められるかどうかが争われることもあるため、事情に応じた見極めが必要です。

 子に家を出てもらう際の考え方は、【親子問題】子を家から出ていかせることはできるのか|占有と明渡しで詳しく取り上げています。

出入りしている友人に、親から退出を求める

 子が招き入れている友人は、家について独自の権利を持っているわけではありません。所有者であり居住者でもある親御さんが、友人に対して家から出るよう求めることはできると考えられます。

 求められても退去しない場合には、不退去罪(刑法130条後段)が問題になる場面もあります。ただし、同居する子が招き入れているという事情があるため、警察がすぐに介入するとは限らず、判断は個別の状況によります。友人と直接やり合うと感情的な衝突になりやすいので、穏やかに、記録を残しながら伝えることが大切です。

 子の交際相手が家に住み着いている場合については、【親子問題】子の交際相手が家に居着いている|第三者を家から出すもあわせてご覧ください。

鍵を替えて締め出すことには慎重に

 困り果てて、鍵を替えて子や友人が入れないようにしたいと考える方もいます。しかし、子がその家で生活している場合、法的な手続を経ずに締め出すことは「自力救済」として問題とされるおそれがあります。

 一方、子以外の第三者に渡っている合鍵を回収することや、子に合鍵を他人へ渡さないよう求めることは、家の管理として考えやすい対応です。どこまでが許されるかは、【親子問題】鍵を替える・締め出すことの可否|自力救済の限界で解説しています。

子が住んでいないのに、実家を勝手に使っている場合

 独立した子が合鍵を持ったまま、親の外出中や不在中に実家へ友人を連れてきて使っている、というご相談もあります。この場合、子はその家に住んでいないため、生活の本拠として使っている子とは状況が異なります。

 所有者である親御さんが「今後は無断で使わないでほしい」「合鍵を返してほしい」と求めることは、より明確な申し入れになります。親が施設に入るなどして実家が空き家に近い状態になっている場合は、誰が管理し、誰が使い方を決めるのかを早めに整理しておくことが大切です。

 親が家を離れた後の考え方は、【親子問題】親が施設に入った後も実家に子が住み続けている|誰が退去を求められるのかで取り上げています。

早めに外部へ相談したい場面

 次のような事情がある場合は、家族の話し合いだけで解決しようとせず、早めに警察や弁護士などに相談することをおすすめします。

  • 注意すると子や友人から暴力や脅しを受ける。
  • 出入りしている人の中に、素性の分からない人や年齢の分からない人がいる。
  • 家の中で違法な物の使用や取引が行われている疑いがある。
  • 親の財産や貴重品がなくなっている。
  • 近所とのトラブルが大きくなっている。


 特に、暴力を伴う場合は、まず親御さん自身の安全を確保することが優先です。具体的な備えについては、【親子問題】子から暴力を受けている|まず確保すべき安全と記録をご覧ください。

 また、泊まり込んでいる人が未成年と思われる場合は、その人の保護者が事情を知らないまま家を離れていることもあります。親御さんだけで判断せず、関係機関への相談も含めて慎重に対応することが望まれます。

弁護士が間に入ることでできること

 親子の間では、親が何度注意しても聞き流されてしまい、話し合いが進まないことがよくあります。弁護士が親御さんの代理人として子に連絡し、家の使い方のルールや、守られない場合の対応を法的な根拠とともに伝えることで、子が事態を受け止め直すきっかけになることがあります。

 当事務所では、家庭内暴力やひきこもり、お金の無心など、成人した子をめぐる問題に、親御さんの代理人として取り組んでいます。必要に応じて民間の自立支援カウンセラーとチームを組み、弁護士が親御さんを守る役割を、カウンセラーが子の住まい探しや仕事探しなど生活面の支援を担います。子を家から出すことだけを目的とするのではなく、親と子がそれぞれ自立した生活を送れるようになることを目指しています。

 弁護士に依頼した場合に何が変わるのかは、【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で詳しくご紹介しています。

まとめ


  • 子が親名義の家に無償で住んでいる場合、法律上は使用貸借と整理されることが多く、家の使い方を決めるのは原則として所有者である親です。
  • 子が親の承諾なく友人を住まわせることは、使用貸借の範囲を超えていると評価される余地があります。
  • まずは出入りの状況を記録し、具体的なルールを決めて伝え、書面にしておくことが有効です。
  • ルールが守られない場合は、使用貸借の解除や退去を求める手続を検討できますが、鍵を替えて締め出すような対応には慎重さが求められます。
  • 暴力や違法行為の疑いがある場合は、家族だけで抱えず、早めに外部へ相談することをおすすめします。


 自分の家なのに居場所がないと感じる状態は、親御さんにとって大きな負担です。家族の問題だからと我慢を続けるのではなく、どこまでなら認め、どこからは認めないのかを整理するところから始めてみてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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