【親子問題】家庭裁判所の調停で、子と話し合いの場を持つことはできる?

若井亮

若井亮

テーマ:親子問題

成人した子との関係がこじれ、家の中で話し合おうとしても言い争いになる、あるいは子が話し合いそのものに応じない。こうした状況で、家庭裁判所の「親族関係調整調停」という手続を知り、裁判所の場であれば子と落ち着いて話せるのではないかと考える親御さんは少なくありません。この記事では、親族関係調整調停で子と話し合いの場を持てるのか、どのように進むのか、子が来なかった場合はどうなるのか、利用を考える前に確かめておきたい点を整理します。

本記事は、2026年10月時点の家事事件手続法と裁判所の案内をもとにしています。手続の細かな運用は家庭裁判所ごとに異なる場合があるため、実際に申し立てる際は申立先の裁判所の案内もあわせてご確認ください。


親族関係調整調停とは|家庭裁判所で親族が話し合うための手続

 親族関係調整調停は、親族の間で感情的な対立や財産の管理をめぐる争いなどが生じ、関係が円満でなくなったときに、家庭裁判所で関係の回復に向けた話し合いを行う手続です。裁判所の案内では、申立人は「相手方と親族関係にある者」とされており、親が成人した子を相手方として申し立てることもできます。

 調停では、裁判官と家事調停委員で構成される調停委員会が、双方から事情を聴き、必要に応じて資料の提出を求めながら、解決案を示したり助言をしたりする形で話し合いを進めます。どちらが正しいかを裁判所が決める手続ではなく、第三者が間に入って合意を目指す手続である点が特徴です。

項目内容
申立人相手方と親族関係にある方(親から子への申立ても可能)
申立先相手方の住所地を管轄する家庭裁判所、または当事者が合意で定めた家庭裁判所
費用収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なります)
主な書類申立書と相手方の人数分の写し、進行に関する照会回答書、連絡先等の届出書など
進み方おおむね1か月に1回程度の期日を重ねて話し合う


 申立書の写しは、法律の定めにより相手方である子に送られます。どのような言葉で申立ての理由を書くかは、子の受け止め方にも影響するため、後ほど触れる注意点もあわせて検討しておくことが大切です。

調停の場で、子と直接顔を合わせる必要はあるのか

 「話し合いの場を持つ」といっても、親子が同じ部屋で向き合って話すとは限りません。家事調停では、申立人と相手方がそれぞれ別の待合室で待機し、交互に調停室に入って調停委員に話をする進め方が一般的です。調停委員がそれぞれの言い分を聞き取り、相手に伝えながら調整していくため、子と直接言葉を交わさずに話し合いを進めることもできます。

 一方で、双方が同席して話すことが有益だと調停委員会が考える場面や、当事者が同席を望む場面では、同じ部屋で話す時間が設けられることもあります。子と直接話したいという希望がある場合も、逆に顔を合わせることに不安がある場合も、その意向を早めに裁判所へ伝えておくとよいでしょう。

暴力や威圧が心配なときに伝えておきたいこと

 過去に子から暴力を受けたことがある、裁判所の行き帰りで待ち伏せされるおそれがあるといった事情は、申立ての際に提出する「進行に関する照会回答書」などで具体的に伝えておくことが考えられます。裁判所によっては、呼出しの時刻をずらす、待合室の階を分けるといった配慮がとられることがあります。

 また、親が一時的に家を出て別の場所に身を寄せている場合など、現在の住所を子に知られたくない事情があるときは、連絡先等の届出書とあわせて住所等の非開示を希望する申出をする方法があります。避難を考えている段階であれば、【親子問題】避難先の確保|一時的に親が家を出るという選択もあわせてご覧ください。

電話会議やウェブ会議が使われる場合

 家事調停では、裁判所が相当と認めるときに、電話会議やウェブ会議の方法で期日に参加することが認められる場合があります。遠方に住んでいる、同じ建物に行くこと自体に強い不安があるといった事情があれば、利用できるかどうかを裁判所に相談してみるとよいでしょう。

子が調停に来なかった場合はどうなるのか

 調停は話し合いの手続であるため、子が期日に出てこない限り、話し合いは前に進みません。家事事件手続法には、呼出しを受けた当事者が正当な理由なく出頭しないときに5万円以下の過料に処する規定がありますが、出頭を強制して話し合いの席に着かせる仕組みではありません。

 子が欠席を続けたり、出席しても合意の見込みが立たなかったりする場合、調停委員会は調停を不成立として手続を終えることがあります。離婚後の財産分与や遺産分割のように、不成立になると審判へ移る類型もありますが、親族関係調整調停はそうした類型には当たらないため、不成立になると、その時点で手続は終わります。裁判所が「調停に代わる審判」を出すこともありますが、当事者から2週間以内に適法な異議が出されれば効力を失います。

 つまり、親族関係調整調停が役に立つかどうかは、子に「裁判所の場であれば話を聞いてもよい」という気持ちがあるかどうかに大きく左右されます。家で話すと感情的になるが、第三者がいれば落ち着いて話せそうだという子であれば、手続を使う意味は十分にあると考えられます。

調停で話し合えることと、合意したときの効力


話し合いのテーマになりやすい事柄

 親子の間の調停では、関係の修復そのものだけでなく、今後の暮らし方や金銭の扱いを具体的に決めることも話し合いの対象になります。たとえば、次のような事柄が考えられます。

  • 繰り返されている金銭の要求をやめること。
  • 生活費を援助する場合の金額と期間。
  • 同居を解消する時期と、転居にかかる費用の分担。
  • 今後の連絡方法(親への連絡は手紙やメールに限るなど)。
  • 実家への訪問や立ち入りについての約束。


 親族関係調整調停は円満な関係の回復を目的とする手続とされていますが、必ずしも以前と同じように仲良く暮らすことだけが「円満」ではありません。互いに距離を置きながら、衝突しない関係を築くための約束を決めるという方向で話し合うことも考えられます。法律上できることの範囲については、【親子問題】子と縁を切りたい|法律上できることとできないことで整理しています。

調停調書の効力と限界

 話し合いがまとまり、その内容が調停調書に記載されると、調停が成立します。調停調書の記載は確定判決と同一の効力を持つため、「毎月○日までに○円を支払う」「○月○日までに退去する」といった具体的な約束であれば、守られなかったときに強制執行を申し立てる根拠になり得ます。

 一方で、「親に金銭を求めない」「実家を訪ねない」といった、何かをしないことを約束する条項は、守られなかったときに直接その行為を止めさせることが難しい面があります。違反した場合の取り扱いをあらかじめ条項に盛り込んでおくなど、内容の作り方に工夫が必要です。当事者同士で書面を交わす場合との違いは、【親子問題】親子間で合意書を作る|約束を書面にする意味と限界も参考になります。

調停を申し立てる前に確かめておきたいこと


暴力がある場合は、安全の確保を先に考える

 調停は、期日を重ねながら数か月をかけて進むことが多い手続です。子から身体的な暴力を受けている、刃物を持ち出されたことがあるといった状況では、調停の結論を待つあいだにも危険が続くおそれがあります。こうした場合は、警察への相談や一時的な避難など、身の安全を確保する手立てを先に検討することが大切です。

申立書が届いたときの子の反応を想定する

 同居している子のもとに裁判所から書類が届くと、子が驚き、強く反発することがあります。申立書には事実関係を淡々と記載し、子を責める表現や感情的な言葉はできるだけ避けたほうがよいでしょう。書類が届く時期に親がどこで過ごすか、子が荒れたときにどこへ連絡するかを、あらかじめ決めておくことも考えられます。

話し合いで何を決めたいのかを整理しておく

 「とにかく話し合いたい」という気持ちだけで申し立てると、期日で何を伝えればよいか分からなくなりがちです。金銭の要求をやめてほしいのか、家を出て自立してほしいのか、連絡の取り方を決めたいのかなど、親として譲れない点と、譲ってもよい点を書き出しておくと、調停委員にも状況が伝わりやすくなります。

調停以外の選択肢との比べ方

 子と話し合う方法は、親族関係調整調停だけではありません。それぞれに向いている場面と注意点があるため、状況に合わせて組み合わせることも検討します。

方法向いている場面注意点
家族だけでの話し合い感情的な衝突が少なく、子にも話す意思がある場合言い争いや暴力に発展するおそれがある
弁護士が親の代理人として交渉子と直接やり取りすると衝突する場合、金銭の要求が続いている場合子が弁護士からの連絡に応じないこともある
親族関係調整調停第三者がいれば子も話を聞けそうな場合子が出席しなければ不成立で終わる
警察への相談暴力や脅しがある場合事件として扱われるかどうかは状況による


 弁護士が窓口となって子と連絡を取る場合の進め方は【親子問題】弁護士に頼むと何が変わるのか|窓口を代えるという選択で、最初に子へ送る通知の考え方は【親子問題】弁護士から子に最初の連絡が入るとき|通知で伝えることで説明しています。弁護士が交渉したうえで、まとまらなかった点について調停を申し立てるという順序をとることもあります。

弁護士に依頼した場合にできること

 親族関係調整調停は、弁護士に依頼せずに親御さんご自身で申し立てることもできる手続です。ただ、子との関係が長くこじれている場合や、暴力や金銭の問題が絡んでいる場合には、弁護士が関わることで次のような点を担えることがあります。

  • 申立書の記載内容を、子を過度に刺激しない表現に整えること。
  • 裁判所に伝えるべき安全面の事情を整理し、期日の進め方について配慮を求めること。
  • 期日に同行し、親御さんと一緒に調停委員へ事情を説明すること。
  • 合意の見込みが立ったときに、守られやすく、後で争いになりにくい条項を考えること。
  • 調停の前後に、弁護士が窓口となって子と連絡を取ること。


 なお、家事調停は本人が出頭することが原則とされており、やむを得ない事由がある場合に代理人のみの出頭が認められることがあります。体調や安全面の事情から出頭が難しい場合は、その事情もあわせて相談しておくとよいでしょう。

 当事務所では、親御さんの代理人として子と向き合う弁護士と、子の生活面を支える自立支援カウンセラーがチームを組んで、親子の問題に取り組んでいます。調停を使うかどうかを含め、ご家庭の状況に合わせて進め方を検討しています。詳しくは【親子問題】弁護士が「親の代理人」として親子問題に介入するサービス|家庭内暴力・ひきこもりに悩むご家庭へ、自立支援カウンセラーとチームで対応をご覧ください。

よくあるご質問


父親と母親のどちらか一人だけでも申し立てられますか

 申立人は相手方と親族関係にある方とされているため、どちらか一方の親だけで申し立てることもできます。ただ、もう一方の親の考えが大きく異なると、調停の場で方針が揺らぐことがあります。申し立てる前に、夫婦でどこまで足並みをそろえられるかを話し合っておくことが望ましいでしょう。

子と同居したままでも申し立てられますか

 同居していても申し立てることはできます。ただし、申立書の写しは子のもとに届くため、書類が届いた後に家の中で衝突が起きないかを考えておく必要があります。暴力のおそれがある場合は、書類が届く前に親が一時的に別の場所へ移ることも選択肢になります。

子に金銭を求められている場合も、調停で話し合えますか

 金銭の要求をやめてもらうこと、援助をするならその範囲と期間を決めることは、調停で話し合うテーマになり得ます。もっとも、要求に応じる法的な義務があるかどうかは、子の年齢や生活状況によって異なります。考え方は【親子問題】子から金銭を要求され続けている|断ることの法的な位置づけで整理しています。

家庭裁判所の調停を、子との話し合いの一つの場として検討する

 親族関係調整調停は、家の中では話し合いにならない親子が、第三者を交えて今後の関係を考えるための手続です。子と顔を合わせずに進めることもでき、合意できれば調停調書という形で約束を残せます。一方で、子が出席しなければ手続はそこで終わり、暴力がある場面ではまず安全の確保を優先する必要があります。調停が合っているかどうかは、子の状態やこれまでの経緯によって変わりますので、ほかの方法とあわせて検討してみてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【親子問題】家庭裁判所の調停で、子と話し合いの場を持つことはできる?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼