性犯罪の再犯防止プログラムはどこで受けられるのか
ネット上に書き込んだ内容について、相手から「名誉毀損で告訴した」と告げられたり、警察から連絡が入ったりすると、この先に何が起きるのかが見えないまま時間だけが過ぎていきます。調べてみても、出てくる説明の多くは被害を受けた側が告訴をするための手順を扱ったもので、告訴をされた側が今どの位置にいるのかを知る手がかりにはなりにくいところがあります。
もうひとつ分かりにくいのは、告訴という入口を通った事件は、被害届が出されただけの事件と手続の組み立てが少し違うという点です。この違いは条文に書かれているのですが、書き込んだ側の視点から説明されることはあまりありません。
この記事では、ネット上の書き込みについて名誉毀損の告訴をされた方に向けて、告訴が受理されると何が動き出すのか、どの段階で何を確かめておくとよいのか、そして処分の結果がどのように伝わるのかを、順を追って整理します。
「告訴する」と言われた段階と、告訴が受理された段階は違います
相手方やその代理人から「告訴した」と伝えられたとしても、それがそのまま告訴の受理を意味するとは限りません。告訴状を警察署に持ち込むことと、警察がそれを受理することは別の出来事です。窓口では、書かれている事実がどの罪にあたるのか、いつどこで何があったのかが特定されているか、裏づけとなる資料があるかといった点が確認され、その上で受理の判断がされます。
また、交渉を進めるための予告として「告訴する」と告げられている段階のこともあれば、逆に何も告げられないまま警察から連絡が来ることもあります。自分がどちらの状況にいるのかを、まず切り分けておきたいところです。
告訴をされた側が、その事実を知る経路にはおおむね次のようなものがあります。
- 警察官から電話があり、聞きたいことがあるので署に来てほしいと言われた。
- 相手方の代理人弁護士から、告訴を予定している旨または告訴をした旨を記載した書面が届いた。
- 契約しているプロバイダから、発信者情報の開示請求について意見を尋ねる書面が届いた。
- 相手方が自身の投稿などで告訴した旨を公表していた。
- 勤務先や家族への連絡から、間接的に知った。
どの経路であっても、最初に確かめたいのは「どの書き込みについて」「どの罪名で」「どこの部署が扱っているのか」という三点です。この三点が分かるかどうかで、この後の見通しの立て方が変わります。弁護人が就いていれば、担当の部署に連絡を取って進行状況を尋ねることができます。
被害届ではなく告訴であることは、何を意味するのか
告訴は、犯罪の事実を捜査機関に申告したうえで、犯人の処罰を求める意思表示です。被害の事実を届け出るだけの被害届とは、この「処罰を求める」という部分が違います。そして、その違いは手続の進み方にも表れます。
| 手続の場面 | 告訴があった事件 | 告訴人がいない事件 |
|---|---|---|
| 警察から検察への引継ぎ | 告訴を受けた司法警察員は、速やかに書類と証拠物を検察官に送付することとされています(刑事訴訟法242条) | 捜査の結果を踏まえ、送致の要否が判断されます |
| 処分結果の連絡 | 検察官は、起訴・不起訴のいずれについても告訴人に通知することとされています(同法260条) | 同じ仕組みは置かれていません |
| 不起訴だった場合の理由 | 告訴人から請求があれば、検察官はその理由を告げることとされています(同法261条) | 同じ仕組みは置かれていません |
つまり、告訴という入口を通った事件は、途中で立ち消えになりにくい組み立てになっています。「相手も冷静になれば忘れるだろう」という見込みが立ちにくいのは、このためです。
もっとも、告訴があれば捜査が急いで進むと決まっているわけでもありません。捜査の迅速さについては犯罪捜査規範が「特にすみやかに捜査を行うように努めなければならない」と定めているにとどまり、義務として時期が区切られているわけではないからです。連絡が来ないまま数か月が過ぎ、忘れかけたころに呼出しが入るという経過も珍しくありません。
告訴は起訴の条件であって、捜査が始まる条件ではありません
名誉毀損罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない罪とされています(刑法232条1項)。告訴を欠いたまま起訴されれば、その起訴は手続に違反するものとして公訴棄却の対象になります(刑事訴訟法338条4号)。
ここで誤解されやすいのが、「告訴がなければ警察は動かない」という説明です。解説記事のなかにはそのように書かれているものもありますが、告訴は起訴をするための条件として位置づけられているものであり、捜査そのものを始めるための条件とは異なります。「まだ告訴されていないようだから何も起きない」という前提は、置きにくいということになります。
反対の方向についても同じことが言えます。告訴がされたからといって、そのまま身柄の拘束につながるわけではありません。逮捕には、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由に加えて、逃亡や証拠の隠滅を防ぐ必要があるといえるかどうかの判断が求められます。ネット上の書き込みは記録が事業者側に残っていることが多く、在宅のまま捜査が進む例も多くみられます。ただし、投稿が長期にわたる、削除や口裏合わせをうかがわせる行動があるといった事情があれば、判断は変わり得ます。
どの書き込みが告訴の対象になっているのかを確かめる
名誉毀損の事案では、書き込みが一つだけということはむしろ少なく、同じ相手について複数回、複数のアカウントから投稿しているケースがよくあります。告訴状に書かれた事実がそのうちのどれを指しているのかによって、見通しはかなり変わります。
確かめたい点は次のとおりです。
- 対象となっている投稿の日付と件数、どのサービス上のものか。
- 自分が書いたもののほかに、他人の投稿を引用したり再び投稿したりしたものが含まれていないか。
- 罪名が名誉毀損なのか、事実を示さない表現として侮辱にあたるとされているのか。
- 同じ一連の書き込みの中に、業務の妨害や脅迫といった別の罪が問題になり得る部分がないか。
最後の点は見落とされがちです。名誉毀損と侮辱は告訴がなければ起訴できない罪ですが、同じ投稿から問題になり得る他の罪の中には、告訴がなくても起訴できるものがあります。その部分については、告訴の有無や取消しの話が直接には効いてこないことになります。
なお、書いた内容が事実であれば直ちに責任がなくなる、というものでもありません。公共の利害に関わる事実であること、専ら公益を図る目的であったこと、重要な部分が真実であったことがそろって初めて処罰されない扱いになる仕組みが置かれています(刑法230条の2)。個人間のいさかいから生じた書き込みでは、最初の段階でつまずくことが少なくありません。
警察から連絡が来たときの受け止め方
在宅で捜査が進む場合、電話や書面で日時を指定した出頭の求めが入り、警察署で事情を聴かれるという流れになるのが一般的です。仕事などの都合が合わないときは、その旨を伝えて日程の調整を申し出て差し支えありません。連絡に応答しないままにしておくと、逃亡や証拠隠滅の懸念があると受け取られる材料になり得ますので、避けたいところです。
取調べでは、話した内容が供述調書にまとめられます。作成された調書は読み聞かせを受け、内容が自分の記憶と違う部分については訂正を申し立てることができます。署名や押印をする前に、細かい表現まで確かめておきたい場面です。記憶がはっきりしない点については、はっきりしないままに述べておくほうが後で食い違いが生じにくくなります。
携帯電話やパソコンの提出を求められることもあります。その場で判断しかねるときは、持ち帰って弁護士に相談したいと伝えることができます。
書き込みを消すかどうかの判断
投稿を削除しても、すでに成立した責任がそれで消えるわけではありません。相手方は告訴の前に画面を保存していることが通常で、事業者側にも記録が残っています。一方で、アカウントごと削除してしまうと、自分の側にも投稿の全体像が残らなくなり、対象の特定や経緯の説明がしにくくなります。
削除は、被害の広がりを止めるための対応として意味を持ちます。同時に、削除したこと自体を有利な事情として押し出すよりも、その後に新しい投稿を重ねないことのほうが、実際には評価に影響します。相手方の主張に反論する内容を改めて公開の場に書くことは、問題になる範囲を広げる方向に働きます。
民事の請求が同時に来ている場合
刑事の告訴と、損害賠償の請求は別々の手続です。書き込みの相手方が両方を進めていることもあり、その場合はプロバイダからの意見照会、代理人からの通知書、告訴に伴う警察からの連絡が、前後して届くことになります。
注意しておきたいのは、片方が終わってももう片方は残るという点です。不起訴になったからといって賠償の請求が消えるわけではありませんし、賠償の話がまとまっても、それだけで刑事の手続が自動的に終わるわけでもありません。どの書面がどちらの手続のものなのかを取り違えないよう、届いた順に日付を付けて保管しておくと、後の整理が楽になります。
告訴の取消しは、起訴されるまでの間に限られます
告訴は、公訴の提起があるまでの間であれば取り消すことができます(刑事訴訟法237条1項)。名誉毀損罪は告訴がなければ起訴できない罪ですので、起訴の前に告訴が取り消されれば、検察官はその事件について起訴をしないという処分をすることになります。取消しは代理人によって行うこともできます(同法240条)。
もっとも、これは相手方の判断に委ねられた事柄です。取消しを求めることはできても、こちらの側で決められるものではありません。また、一度取消しをした人は、同じ事実について改めて告訴をすることができないとされています(同法237条2項)ので、相手方にとっても軽い判断ではないという前提で考えておく必要があります。
告訴が取り消されて事件が終わった場合でも、捜査を受けた記録そのものは残ります。有罪判決を受けた経歴としての前科にはあたりませんが、捜査の対象になった事実は消えるものではないという整理になります。
処分の見通しと、結果の知り方
捜査が終わると、検察官が起訴するかどうかを判断します。起訴には、公開の法廷で審理される公判請求と、書面審理で罰金額が定められる略式命令の請求とがあります。罰金であっても有罪の判断を受けたことに変わりはなく、前科として残ります。
起訴しないという判断にもいくつかの区分があり、嫌疑がない場合、嫌疑が十分でない場合、行為が罪にあたらない場合、告訴の取消しなどにより起訴の条件を欠く場合、犯罪の嫌疑は認められるものの諸般の事情から訴追を要しないと判断される場合などに分かれます。示談が成立したことは、最後の区分の判断で考慮される事情のひとつという位置づけになります。
ここで知っておきたいのが、処分の結果がどのように伝わるのかという点です。実は、告訴した人と告訴された人とでは、この部分の扱いが同じではありません。
| 立場 | 処分の結果 | 不起訴だった場合の理由 |
|---|---|---|
| 告訴した人 | 起訴・不起訴のいずれについても通知することとされています(刑事訴訟法260条) | 請求があれば告げることとされています(同法261条) |
| 告訴された人 | 請求があったときに告げることとされています(同法259条) | 同じ仕組みは置かれていません |
つまり、告訴された側は、自分から求めないかぎり結果の連絡を受けられるとは限りません。在宅のまま捜査が進んだ事件で、いつの間にか処分が済んでいたのに本人はそれを知らないまま、という状況が生じるのはこのためです。
書面で告知を求めた場合には、不起訴処分告知書が交付されます。ただし、そこに記載されるのは公訴を提起しない処分をした旨と処分の日付にとどまり、どの区分による不起訴なのかまでは記載されないのが通常です。区分まで確認したい事情があるときは、担当の検察官に個別に尋ねることになります。この請求は、弁護人を通じて行うこともできます。
不起訴になっても、そこで全部が終わるとは限りません
不起訴となった場合、告訴をした人は理由の告知を求めることができ、その判断に納得できなければ検察審査会に審査を申し立てるという道が残されています。頻度の高い経過ではありませんが、制度としては存在します。
あわせて、民事の請求は刑事の処分とは別に検討されます。刑事の手続が終わったことをもって、賠償の話まで終わったと受け止めてしまうと、後になって書面が届いたときに対応が遅れます。刑事の結論が出た時点で、民事の側がどうなっているかを確かめておくとよいでしょう。
今のうちに整理しておきたいこと
弁護士に相談する場面でも、捜査機関に説明する場面でも、次の材料がそろっているかどうかで話の進み方が変わります。
- 対象になっていると思われる書き込みの内容と、投稿した日付。
- 使用していたアカウントと、そのアカウントが自分のものであるかどうか。
- その書き込みをするに至った経緯と、その時点で自分が知っていた事実、その根拠。
- 相手方との過去のやり取りや、相手方からの投稿が先にあったかどうか。
- 届いている書面の一覧と、それぞれの差出人・受領日・回答期限。
- 警察から連絡があった場合は、担当の部署名と担当者名、指定された日時。
- すでに削除した投稿があれば、削除の時期と、削除前の内容が手元に残っているか。
控えたほうがよい対応
次のような対応は、事態を落ち着かせにくくする方向に働きます。
- 相手方に直接連絡を取り、自分の言い分を説明しようとすること。
- 新しい投稿で経緯を説明したり、相手方に反論したりすること。
- 警察からの連絡に応答しないまま日を重ねること。
- 記憶があいまいな部分について、その場の勢いで断定的に述べること。
- 関係者に口裏を合わせるよう頼むこと。
- 処分の結果が出たものと自己判断し、確認しないまま放置すること。
よくあるご質問
相手が本当に告訴したかどうかを確かめられますか
告訴が受理されているかどうかを、書き込んだ側が窓口で直接教えてもらえるとは限りません。警察から連絡があった段階であれば、担当の部署に対して、どの事実について捜査が行われているのかを弁護人から照会するという方法があります。相手方の代理人から書面が届いている場合は、その書面に告訴の有無や時期が書かれていることもあります。
書いた内容は事実です。それでも告訴されるのですか
名誉毀損罪は、示した事実が本当かどうかにかかわらず成立し得る組み立てになっており、事実であったことは処罰されない例外の側で問題になります。その例外にあたるかどうかは、公共の利害に関わるか、公益を図る目的だったか、重要な部分が真実といえるかという順で判断されます。事実であるという一点だけで手続が止まるわけではない、という理解が出発点になります。
示談ができれば告訴は取り消されますか
告訴を取り消すかどうかは相手方が決めることであり、示談が成立すればそうなると決まっているわけではありません。金銭の支払いだけを条件にする形ではなく、投稿を削除し今後同様の投稿をしないことなど、相手方の関心に沿った内容を組み合わせて話し合いを進めることが多くみられます。取消しがされない場合でも、話し合いが成立していること自体は、その後の判断で考慮される事情のひとつになります。
まとめ
- 「告訴する」と言われた段階と、告訴が受理された段階は別のものです。
- 最初に確かめたいのは、どの書き込みについて、どの罪名で、どこが扱っているのかの三点です。
- 告訴があった事件は、検察官への送付、処分結果の通知、不起訴理由の告知が仕組みとして置かれており、立ち消えになりにくい組み立てです。
- 告訴は起訴をするための条件であり、捜査を始めるための条件とは異なります。
- 対象の投稿が複数にわたる場合や、他人の投稿を再び投稿した分が含まれる場合は、範囲の確認が先になります。
- 削除は被害の広がりを止める対応であり、新たな投稿を重ねないことのほうが後の評価に影響します。
- 告訴の取消しは起訴されるまでの間に限られ、取り消した人は同じ事実で改めて告訴することができません。
- 処分の結果は、告訴された側からは請求しなければ告げられないため、自分から確かめる必要があります。
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