【刑事事件・ストーカー事件】「ストーカー扱いされたくない」相手にお金を返してもらうには?

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

本記事は、2026年10月時点の法令にもとづく一般的な解説です。実際にどのように扱われるかは、連絡の内容や回数、それまでの経緯によって変わります。


交際していた相手や知人に貸したお金が返ってこない。返してほしいと連絡したいけれど、何度も連絡をすれば「ストーカーだ」と言われるのではないか。こうした不安から、請求そのものをためらっている方は少なくありません。

 実際に、お金の話をきっかけに相手が警察へ相談し、連絡をした側が警察から呼び出されたり、警告を受けたりするケースはあります。一方で、貸したお金の返済を求めることは、正当な権利の行使です。大切なのは、請求をあきらめることではなく、請求の「仕方」を誤らないことです。

 この記事では、お金の返済を求める連絡がストーカーと受け止められやすくなる場面と、相手との直接のやり取りを減らしながら返済を求める方法を解説します。

お金を返してほしいという用件そのものは、ストーカー行為の典型ではない

 ストーカー規制法が規制の対象としているのは、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われる「つきまとい等」です。つきまといや待ち伏せ、面会や交際の要求、拒まれたのに繰り返す電話やメッセージなどがこれにあたり、これらを反復すると「ストーカー行為」として処罰の対象になります。

 この目的の要件があるため、貸したお金を返してほしいという用件だけで連絡をすることは、ストーカー規制法が想定している典型的な場面とは異なります。ただし、「お金の話だから大丈夫」と言い切れるわけではありません。

お金の話でも「ストーカー」と受け止められやすくなる場面

 警察は、連絡の名目だけでなく、内容・回数・時間帯・それまでの経緯を総合して判断します。次のような事情があると、返済の請求が本当の目的なのか、好意や恨みの感情が背景にあるのかが疑われやすくなります。

  • 返済の話に「もう一度会いたい」「やり直したい」といった言葉が混ざっている。
  • 別れ話の直後から、お金の話を理由に連絡が急に増えている。
  • 相手から「連絡しないでほしい」と言われた後も、同じ内容を何度も送っている。
  • 深夜や早朝に連絡したり、電話に出るまでかけ続けたりしている。
  • 相手の自宅や勤務先の近くで待つ、直接訪ねるといった行動をとっている。
  • 「許さない」「後悔させる」など、感情的な言葉が添えられている。


 また、東京都の迷惑防止条例は、恋愛感情に限らず、ねたみや恨みといった悪意の感情を満たす目的で行うつきまといも規制しています。お金を返さない相手への怒りが文面ににじみ出ていると、こちらに当てはまると判断されるおそれもあります。

ストーカー規制法以外にも気をつけたい行為

 返済の請求をめぐっては、ストーカー規制法とは別の法律が問題になることもあります。相手が返してくれない状況が続くと焦りが生まれますが、次のような行為は、かえってこちらが責任を問われる原因になりかねません。

行為の例問題になりうるもの
「払わなければ家族や会社に知らせる」と伝える脅迫罪・恐喝罪(未遂を含む)
返済しないと不利益があると告げて念書を書かせる強要罪
共通の知人やSNSで「お金を返さない人だ」と広める名誉毀損罪・民事上の損害賠償
勤務先に何度も電話をかけたり、押しかけたりする業務妨害罪
退去を求められても相手の自宅に居座る不退去罪・住居侵入罪


 これらはいずれも、お金を貸していたという事情があっても正当化されるわけではありません。貸したお金を取り戻したいという気持ちが強いほど、手段の選び方には慎重さが求められます。

自分で連絡するときに意識したいこと


連絡する前に整理しておくこと

 まず、貸したお金がいつ、いくら、どのような方法で相手に渡ったのかを整理します。振込記録、LINEやメールでの「貸して」「来月返す」といったやり取りが残っていれば、まとめておきましょう。交際中に渡したお金は、相手から「もらったものだ」と主張されることが多く、貸したのか、あげたのかが後に争いの中心になりやすいためです。

 整理してみると、請求できる金額がはっきりし、何度も連絡を重ねる必要がなくなります。連絡の回数を抑えることは、ストーカーと受け止められないための一番の備えにもなります。

連絡の内容と方法で守りたい線


  • 用件を返済の話だけに絞ること。
  • 金額・返済期限・振込先・連絡先を簡潔に伝えること。
  • 復縁や交際中の出来事、気持ちには触れないこと。
  • 連絡は記録が残る方法で、日中の常識的な時間帯に送ること。
  • 返信がなくても、短い間隔で同じ内容を送り続けないこと。
  • 相手の自宅・勤務先・実家を訪ねたり、家族や友人に連絡したりしないこと。


 LINEやメールで一度伝えて返事がない場合は、同じ手段で何度も催促するより、書面にまとめて一度送るほうが、こちらの意図が正確に伝わります。

「連絡しないで」と言われた・警察から連絡が来た場合


相手から連絡を拒まれた場合

 相手からはっきり「もう連絡しないでほしい」と言われた後に連絡を続けると、拒まれているのに連続して連絡したと評価されるおそれが高まります。返済を求める権利がなくなるわけではありませんが、この段階からは、本人が直接やり取りを続けるより、後で紹介する書面や裁判手続、弁護士を通じた請求に切り替えることを検討したほうがよいでしょう。

警察から呼び出しや警告を受けた場合

 すでに警察から連絡を控えるよう言われている、あるいはストーカー規制法にもとづく警告を受けている場合は、お金の用件であっても、本人から相手へ直接連絡することは避けるべきです。警告の後も連絡が続くと、禁止命令や検挙へと進む可能性があります。

 この場合も、返済を求める権利そのものが消えるわけではありません。代理人である弁護士から書面で請求したり、裁判所の手続を使ったりすることで、本人同士が接触しない形で請求を続けることは考えられます。警察から連絡を受けた段階で、どこまでが許されるのかを弁護士に確認しておくと安心です。

直接のやり取りを減らしながら返済を求める方法

 本人が何度も連絡する代わりに使える方法には、次のようなものがあります。いずれも、請求の内容が記録に残り、こちらの目的が「お金の返済」であることがはっきりする点に意味があります。

方法概要注意点
内容証明郵便いつ、どのような内容の請求をしたかを郵便局が証明する強い言葉や感情的な表現は避け、事実と金額を中心に書く
民事調停簡易裁判所で、調停委員を交えて話し合う相手が出席しなければ成立しない
支払督促書類審査のみで、裁判所から相手に支払いを命じる書面が送られる相手が異議を出すと通常の裁判に移る
少額訴訟60万円以下の金銭請求について、原則1回の期日で審理する相手が希望すれば通常の裁判に移る
通常の訴訟金額にかかわらず利用できる証拠の準備と期間が必要になる


 裁判所の手続を使うと、相手との連絡は裁判所を介したものになります。また、判決や支払督促が確定すれば、相手が任意に支払わない場合に、給与や預金の差押えといった強制執行を検討できるようになります。

相手の住所が分からない場合

 内容証明郵便や裁判手続を使うには、相手の住所が必要になります。電話番号や銀行口座など手元に残っている情報から住所を調べる方法として、弁護士が依頼を受けて行う弁護士会照会があります。自分で相手の住まいを探そうとして周辺を歩き回ったり、勤務先の人に尋ねたりすると、見張りやつきまといと受け止められるおそれがあるため、注意が必要です。

時効にも目を配る

 貸したお金を返してもらう権利は、原則として、返してもらえる時期が来たことを知った時から5年で時効により消滅します。連絡をためらっているうちに期間が過ぎてしまうことのないよう、貸した時期と返済の約束をした時期は早めに確認しておきましょう。内容証明郵便などで請求すると、その時から6か月間は時効の完成が猶予されます。

弁護士に依頼すると変わること

 弁護士に依頼すると、相手への連絡はすべて代理人である弁護士が行うことになります。代理人が、金額・根拠・期限を示した書面で請求する形は、本人が繰り返し連絡するのとは性質が異なるものとして受け止められやすく、ストーカーと言われる不安を抑えながら請求を進めることにつながります。

 また、貸付か贈与かが争いになりそうな場合に、手元の記録で何をどこまで示せるかを見立てたうえで、交渉で区切りをつけるか、裁判手続に進むかを判断できます。相手がすでに警察に相談している場合でも、警察への説明と返済の請求を切り分けて進めることが可能です。

 もちろん、依頼すれば必ず全額が返ってくるというものではありません。相手の支払能力や証拠の状況によって、分割払いでの合意や一部の返済で区切りをつける判断が必要になることもあります。

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ストーカーと言われる前に、請求の方法を見直す

 お金を返してほしいと伝えること自体は、正当な権利の行使です。ただ、連絡の回数や内容、相手との関係の経緯によっては、こちらの意図とは違う形で受け止められることがあります。相手に拒まれている、警察から連絡があったといった事情があるときは、本人による連絡を続ける前に、請求の方法を切り替えることを考えてみてください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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