出し子・送金バイトをしてしまった|2026年改正で何が変わったのか
この記事は2026年10月時点の法令に基づいて書いています。ストーカー規制法については令和7年12月30日施行の改正を、刑法の法定刑については2025年6月1日施行の拘禁刑への一本化を反映しています。個別の事情によって結論は変わりますので、一般的な整理としてお読みください。
貸していた本やゲーム機、預けたままの衣類、使ってもらっていた家電。関係が終わった後も相手の手元に自分の物が残っていて、それを返してほしいと思うのは自然なことです。ところが、ストーカー規制法に基づく警告を受けている場合、「返して」と一言伝えるだけのつもりの連絡が、別の意味を持ってしまうことがあります。
警告を受けた方からは、「物を返してもらう話なら連絡してもいいのではないか」「このまま諦めるしかないのか」というご相談が寄せられます。返還を求める権利そのものが、警告によって消えるわけではありません。変わるのは、求め方の選択肢です。
この記事では、警告を受けた後に貸していた物を取り戻したいと考えている方に向けて、直接の連絡を控えるべき理由、渡した物の性質の整理、代理人や裁判所の手続を使った求め方、避けたい行動を順に説明します。
警告を受けた後、「返して」の一言が重くなる理由
警告が求めているのは「これ以上繰り返さないこと」
ストーカー規制法の警告は、つきまとい等をした人に対し、さらに反復してその行為をしてはならない旨を告げるものです(法4条)。令和7年12月30日施行の改正により、相手からの申出がなくても、警察が職権で警告できるようになりました。
警告それ自体に罰則はありません。ただし、警告の後も同じような行為を続けると、公安委員会による禁止命令が出されたり、ストーカー行為罪として捜査の対象になったりすることがあります。禁止命令が出された後にこれに違反すると、それだけで6月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となり、禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金が定められています。禁止命令の期間や更新については、禁止命令が出た|違反した場合の刑罰と期間・更新で整理しています。
用件が正当でも、連絡の形で評価される
つきまとい等には、拒まれたにもかかわらず、電話やメッセージ、文書を連続して送る行為が含まれています(法2条1項5号)。警告を受けているということは、少なくとも相手が接触を望んでいないことが外から見てもはっきりしている状態です。そこで連絡を入れれば、文面が事務的であっても、「警告後も接触を続けている」という事実として受け取られるおそれがあります。
また、返還を求めるという正当な権利の行使に見えても、権利の濫用にあたる場合には「義務のないことを行うことを要求する」行為(法2条1項3号)に該当し得るとされています。警告を受ける前の段階で、荷物やお金の清算をどう伝えるかについては、【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で説明しています。この記事では、すでに警告を受けた後の場面に絞って整理します。
まず「貸した物」なのか「あげた物」なのかを整理する
返してもらえるかどうかは、その物を相手に渡したときの約束の中身によって変わります。交際中のやり取りは口約束が多く、後から見ると評価が分かれやすい部分です。
| 渡したときの約束 | 法律上の整理 | 返還を求められるか |
|---|---|---|
| 使い終わったら返す約束で貸した | 使用貸借(民法593条) | 期間や目的を決めていなければ、原則として返還を求められる |
| 自分の物を相手の部屋に置いていた | 所有権は自分に残る | 所有者として返還を求められる |
| プレゼントとして渡した | 贈与 | 渡し終えた物は、原則として返還を求めにくい |
| 二人で費用を出し合って買った | 共有の可能性 | 物の分け方や負担分の清算として話し合う |
「貸した」と思っていても、相手が「もらった」と受け止めていることは珍しくありません。購入時の記録や、貸したときのメッセージなど返す約束がうかがえるやり取りは、手元に残しておきたい資料です。ただし、資料を集めるために相手や相手の周囲へ連絡を取ることは避けてください。貸した物の返還についての一般的な考え方は、恋人に貸した車・ブランド品を返してほしい|返還を求めるときの考え方と進め方で解説しています。
警告を受けている方がとれる返還の求め方
弁護士を代理人にして、書面で伝える
現実的なのは、弁護士が代理人となり、返してほしい物、受け渡しの方法、返事の期限を書面で相手に伝える方法です。受け渡しは、宅配便での送付や代理人の事務所を経由する形など、直接会わずに済む方法を提案するのが一般的です。代理人を通すことで、ご本人から相手への連絡はなくなり、連絡の回数や時間帯が問題にされる余地を小さくできます。受任通知の役割については、受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかをご覧ください。
もっとも、代理人からの連絡であっても、催促を何度も重ねたり、返還の話に謝罪や復縁の話を混ぜたりすれば、相手の受け止め方は変わります。依頼する際には、伝える内容を物の返還に限ることを最初に決めておくことが大切です。
相手に代理人がついている場合
相手が弁護士に依頼している場合は、その代理人に宛てて伝えることになります。相手の代理人から書面が届いている場合は、そこに連絡窓口が示されているのが通例です。相手方の代理人に連絡すること自体は、相手本人への接触とは性質が異なります。ただ、ご本人が感情を交えたやり取りをすると話が進みにくくなるため、こちらも代理人を立てて進めるほうが落ち着いた形になりやすいといえます。弁護士名義で警告の書面が届いた場合の対応は、【刑事事件】弁護士から警告の書面が届いた|ストーカーと名指しされたときの返し方で説明しています。
警察に事情を伝えておく
警告を担当した警察官に、相手の手元に自分の物が残っていること、代理人を通じて返還を求める予定であることを伝えておくことも考えられます。後から「警告後も接触しようとしている」と受け取られないよう、事情を先に共有しておく意味があります。ただし、物の受け渡しを仲介することは警察の本来の役割ではなく、引き受けてもらえるとは限りません。警察が民事上の返還を代わりに実現してくれるわけではない点にご注意ください。
裁判所の手続を使う
話合いで戻らない場合は、民事調停や訴訟で返還を求めることになります。裁判所を通じた手続は、本人が相手に直接連絡を重ねることとは性質が異なり、権利を実現するための正規の手段です。
なお、民事訴訟には、当事者が住所や氏名を相手方に知られないようにする秘匿の制度が設けられており、相手の側がこれを利用することも考えられます。手続を使ったからといって相手の現住所が分かるとは限らず、物の価値に比べて費用や時間が大きくなることもあるため、事前の見通しが欠かせません。
警告後に避けたい行動
- 用件が物の返還だけでも、相手に電話やメッセージ、手紙を送ること。
- 共通の友人や相手の家族に、返すよう伝えてもらうこと。
- 相手の勤務先や実家に連絡すること。
- SNSに「返してほしい物がある」と投稿し、相手に読ませようとすること。
- 合鍵を使って相手の部屋に入り、自分の物を持ち出すこと。
- 物を受け取るために、相手の自宅の前で待つこと。
第三者を介した伝言は、実際に伝えたのが別の人であっても、頼んだ側の行為として評価されることがあります。ストーカー規制法は、本人だけでなく、その家族など社会生活において密接な関係を有する人への行為も対象にしています。また、自分の物であっても自力で取り返すことは原則として認められず、住居侵入などに問われるおそれがあります。荷物の扱いについては、【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかもあわせてご覧ください。
相手のほうから「返したい」と連絡が来たとき
相手から「預かっている物を返したい」と連絡が来ることもあります。この場合でも、直接会って受け取ることは避け、宅配便で送ってもらうなど、会わずに済む方法を選ぶのが無難です。返信が必要な場面でも、受け取り方法の確認にとどめ、それ以外の話題には触れないようにしてください。相手から先に連絡が来た場合の考え方は、【ストーカートラブル】相手から先に連絡が来た|返信したら違反になるのかで整理しています。
受け取った後に、お礼や近況を伝える連絡を重ねることも控えたほうがよいでしょう。そうした連絡が、警告後の接触として扱われることがあるためです。
相手の物がこちらに残っている場合
反対に、相手の私物を自分が預かったままになっていることもあります。返したい気持ちから自宅まで届けに行ったり、手渡しを持ちかけたりすると、それ自体が接触の口実と受け取られるおそれがあります。返す側であっても、代理人を通じて送付先や方法を確認し、宅配便などで送る形が安全です。
また、連絡が取れないからといって、相手の物を勝手に処分することは避けてください。後から損害賠償を求められる原因になり得ます。扱いに迷う場合は、処分する前にご相談ください。
返還を求める前に考えておきたいこと
すべてを取り戻すことが、常に最善とは限りません。物の価値に比べて、代理人費用や手続の負担のほうが大きくなる場合もあります。相手が「もう捨てた」と言っている場合には、物そのものの返還ではなく、失われた物の価値を金銭で求める話に変わります。貸したお金を含め、金銭の請求で使える手続は、先に挙げた清算の記事で一覧にしています。
また、警告を受けた直後は、相手の不安が強い時期でもあります。返還の話を急ぐより、まずは警告の内容を守って行動を落ち着かせ、そのうえで代理人を通じて一度だけ書面で伝える、という順序のほうが、結果として話が進みやすいこともあります。警告を受けた後の見通しについては、警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかをご覧ください。
よくあるご質問
警告から時間が経てば、自分で連絡してもよいですか
警告には、法律上の期間の定めが置かれていません。時間が経ったからといって、直接の連絡が問題にならなくなるとはいえないため、返還を求める場合は引き続き代理人や裁判所の手続を通す形をお勧めします。
返してほしい物の一覧を、手紙で一度だけ送るのも避けるべきですか
1通であっても、警告を受けた後に相手へ直接送ることにはリスクがあります。内容が物の返還だけでも、相手や警察がどう受け止めるかは分かりません。同じ内容を伝えるのであれば、代理人名義の書面にするほうが安全です。
禁止命令が出ている場合も同じ考え方ですか
禁止命令が出ている場合は、命令に違反すること自体が処罰の対象になるため、より慎重さが求められます。命令の内容を確認したうえで、直接の連絡は行わず、代理人を通じて進めることが前提になります。
まとめ
- 警告を受けても、貸した物の返還を求める権利そのものはなくなりません。
- 警告後は、物の返還という用件であっても、直接の連絡が接触の継続と受け取られるおそれがあります。
- 「貸した物」か「あげた物」かによって、返還を求められるかどうかが変わります。
- 返還は、代理人を通じた書面や、民事調停・訴訟といった手続で求めるのが基本です。
- 共通の友人や家族を介した伝言や、自力での取り戻しは避けてください。
- 相手の物を預かっている場合も、会わずに送る方法を選び、勝手に処分しないことが大切です。
自分の物を返してほしいという思いは、警告を受けた後でも変わらないものです。ただ、その思いを直接相手に向けるほど、ご自身の立場が苦しくなる場面があります。誰を通じて、どの順番で伝えるかを先に決めておくことが、物を取り戻すうえでも、問題をこれ以上大きくしないうえでも役に立ちます。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


