再び事件を起こしたら量刑はどう変わるのか

若井亮

若井亮

テーマ:刑事事件

一度刑事事件を経験された方から、「もし同じことをしてしまったら、前回より重く扱われるのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。前に事件を起こしていることが今回の処分に影響するのは確かですが、その影響は「刑が自動的に上乗せされる」という単純な形では現れません。

 前科があることで変わるのは、実は一か所ではありません。同じ行為でも罪名そのものが入れ替わる場面、言い渡せる刑の枠が広がる場面、執行猶予という選択肢を使えるかどうかが動く場面、量刑判断の中で評価される場面、そして起訴や保釈といった手続の判断に影響する場面があり、それぞれ根拠となる条文も判断の仕方も異なります。

 この記事では、再び事件を起こした場合に何がどこで変わるのかを、変化が生じる場所ごとに分けて整理します。

変わる場所は5つに分けて考えると整理しやすい


変わる場所動くもの主な根拠
①罪名同じ行為でも別の罪名で処理されることがある盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律2条・3条
②刑の枠言い渡せる刑の上限が広がることがある刑法56条・57条・59条
③執行猶予猶予を付けられる条件を満たすかどうか刑法25条・26条
④評価量刑判断の中でどう位置づけられるか犯情と一般情状の区別
⑤手続起訴するか、保釈を認めるかの判断刑事訴訟法248条・89条


 このうち①と②は、法律が刑の範囲そのものを作り替える話です。③から⑤は、その範囲の中で、あるいはその手前で判断が動く話になります。混同されやすいところですので、順に見ていきます。

法律上の「再犯」は日常語より狭い

 日常会話では、もう一度事件を起こせば、それは全て「再犯」と呼ばれます。しかし刑法が「再犯」として特別な効果を与えているのは、もっと限られた場合です。

 刑法56条1項は、拘禁刑に処せられた者が、その執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年以内にさらに罪を犯し、その罪について有期拘禁刑を言い渡すときを「再犯」としています。整理すると、次の3つがそろった場合です。

  • 前に拘禁刑に処せられ、その刑の執行を終えたか、執行の免除を得ていること。
  • その日から5年以内に、さらに罪を犯していること。
  • 今回の罪について、有期拘禁刑を言い渡すこと。


 5年の起算点について、最高裁は執行を終わった日の翌日から数えるとしています(最高裁昭和57年3月11日判決)。また、前の刑が罰金であった場合には、条文が求める「拘禁刑に処せられた」にあたりません。執行猶予の期間中にさらに罪を犯した場合も、猶予されている刑はまだ執行されていませんので、法律上の再犯には該当しないとされています(最高裁昭和24年12月24日判決)。

 もっとも、法律上の再犯にあたらないことは、軽く扱われることを意味しません。執行猶予期間中の事件には、後述する猶予の取消しという別の効果が用意されています。

① 同じ行為でも罪名が変わることがある

 窃盗を繰り返している場合、通常の窃盗罪(刑法235条)ではなく、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3条の常習累犯窃盗として起訴されることがあります。

 同条は、常習として窃盗・強盗・事後強盗・昏酔強盗またはこれらの未遂を犯した者で、その行為の前10年以内に、これらの罪などについて3回以上、6か月の拘禁刑以上の刑の執行を受けたか、その執行の免除を得た者について、同法2条の例によると定めています。2条は、窃盗として処断すべきときは3年以上の有期拘禁刑としています。

 ここで起きているのは、刑が重くなるというより、刑の枠そのものが作り替わるという変化です。通常の窃盗罪は10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金ですが、常習累犯窃盗になると下限が3年に引き上げられ、罰金という選択肢自体がなくなります。刑法25条1項の執行猶予は3年以下の拘禁刑を言い渡す場合に限られますので、酌量減軽などによって刑期を下げられなければ、執行猶予を検討する前提も整いません。罪名の変化は、この段階で見通しを大きく左右します。

② 刑の枠の上限が広がることがある

 法律上の再犯にあたる場合、刑法57条により、その罪について定められた拘禁刑の長期の2倍以下まで刑を言い渡せることになります。3回目以降も同じ扱いです(59条)。ただし、加重しても30年を超えることはできません(14条2項)。

 ここで誤解が生じやすいのが、上限が2倍になることと、実際に言い渡される刑が2倍になることは別だという点です。57条が動かすのは枠の天井だけで、下限は変わりません。上限が引き上げられたからといって、その水準の刑が選ばれるとは限らず、多くの事件では加重後の上限が実際の判断に触れないまま終わります。

 もう一つ注意したいのが、前の裁判の確定より前に犯した罪の扱いです。刑法45条後段は、ある罪について拘禁刑以上の刑に処する確定裁判があったとき、その罪と、その裁判が確定する前に犯した罪とに限り併合罪とすると定めています。つまり、今回問題になっている行為が前の判決の確定前のものであれば、それは累犯ではなく併合罪の問題として整理され、まだ裁判を経ていない罪について改めて処断されることになります(50条)。前の判決を受けた後にまた事件を起こしたのか、それとも前の判決より前の行為が後から明らかになったのかで、適用される条文が変わります。

加重されても、そこから下がる余地はある

 刑法72条は、加重と減軽を行う順序を次のとおり定めています。

  1. 再犯加重。
  2. 法律上の減軽。
  3. 併合罪の加重。
  4. 酌量減軽。


 再犯加重が最初に来ますが、それで終わりではありません。未遂や幇助などの法律上の減軽があればその後に適用され、最後に酌量減軽(刑法66条)が控えています。累犯加重を受けた事件であっても、犯行に至る経緯や被害の回復状況などを踏まえて酌量減軽がなされ、結果として枠の下の方の刑が言い渡されることはあります。順序を知っておくと、「加重されたのだからもう下がらない」という誤解を避けられます。

③ 執行猶予という選択肢がどうなるか

 実際のご相談で最も関心が集まるのが、この点です。

前科があると執行猶予は付かないのか

 刑法25条1項は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金を言い渡す場合に、次のいずれかにあたる者へ執行猶予を付けることができるとしています。1号は、前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者です。2号は、前に拘禁刑以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日または執行の免除を得た日から5年以内に拘禁刑以上の刑に処せられたことがない者です。

 ここで見落とされやすいのが、56条の5年と25条1項2号の5年は、数えている対象が違うということです。56条は、5年以内に「さらに罪を犯した」かどうかを見ます。25条1項2号は、5年以内に「拘禁刑以上の刑に処せられた」ことがないかどうかを見ます。罪を犯した時期と判決を受ける時期はずれますので、両者の結論が一致しないことがあります。前科がいつのものかという記憶だけで自己判断をせず、いつ何が確定したのかを資料で確認する必要があるのは、このためです。

執行猶予の期間中に事件を起こした場合

 猶予期間中に罪を犯し、その罪について拘禁刑以上の刑に処せられて執行猶予が付かなかったときは、前の執行猶予は取り消されます(刑法26条1号)。取り消されると、猶予されていた刑を改めて執行されることになり、今回の事件の刑と続けて服することになります。前の事件が比較的軽いものであっても、猶予されていた刑期が現実の負担として戻ってくる点は、見落とせません。

 他方で、猶予期間中の事件に再び執行猶予を付ける道が、完全に閉ざされているわけではありません。刑法25条2項は、1年以下の拘禁刑を言い渡す場合で、情状に特に酌量すべきものがあるときに限り、再度の執行猶予を認めています。この場合は保護観察が必ず付きます。ただし、前の執行猶予に保護観察が付いていて、その期間中に犯した罪については、この規定を用いることができません。適用範囲がかなり絞られた制度だとご理解ください。

④ 量刑の中でどう評価されるか

 条文が刑の枠を動かさない場合でも、前科があることは量刑の判断材料になります。ただし、その位置づけは「前科1件につき何年上乗せ」といったものではありません。

 量刑の判断は、大きく犯情と一般情状の二層で考えられています。犯情は、行為そのものの重さに関わる事情です。被害の大きさ、行為の態様、計画性、動機などがこれにあたり、まずこれによって、その行為の責任に見合った刑の幅が定まります。一般情状は、その幅の中で調整に働く事情です。前科・前歴、反省の程度、再犯を防ぐ環境が整っているかといった事情は、こちらに位置づけられるのが一般的な整理です。

 この整理を前提にすると、前科があることは、行為の責任に見合った幅を超えて刑を重くする理由にはならない、ということになります。同時に、その幅の中では厳しい方向に働きやすい事情でもあります。実際に見られているのは前科の有無だけではなく、前の事件と今回の事件が同じ種類のものか、前の処分からどれだけ期間が空いているか、前回の手続で述べたことが実行されていたか、といった中身です。

⑤ 起訴・保釈といった手続にも影響する

 判決より前の段階でも、前科は判断に関わってきます。

起訴するかどうか

 刑事訴訟法248条は、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができると定めています。前科は、ここでいう性格や境遇、情状の評価に関わります。同種の事件を繰り返している場合、初めての事件であれば起訴猶予が検討され得た事案でも、その判断は慎重になりやすいといえます。

保釈が認められるかどうか

 起訴後の保釈について、刑事訴訟法89条は、原則として保釈を許さなければならない場合の例外を列挙しています。前科に関わるものとして、同条2号は、前に死刑または無期もしくは長期10年を超える拘禁刑にあたる罪について有罪の宣告を受けたことがあるときを挙げています。ここで見るのは実際に言い渡された刑ではなく、有罪の宣告を受けた罪の法定刑です。3号は、常習として長期3年以上の拘禁刑にあたる罪を犯したものであるときを挙げています。

 もっとも、89条の除外事由にあたることは、保釈が認められないと決まることを意味しません。裁判所の裁量による保釈(同法90条)の余地は残りますので、身元引受人の確保や生活環境の説明を通じて、逃亡や証拠隠滅のおそれが小さいことを具体的に示していく作業になります。

見通しを立てるために確認したいこと

 ここまで見てきたとおり、前科の影響は複数の場所に分かれて現れます。そして、どの場所が問題になるかは、日付の並びでおおむね決まります。ご相談の際は、次の点が分かる資料をご用意いただけると、見通しの精度が上がります。

  • 前の事件の判決がいつ確定したか。
  • 前の刑が拘禁刑だったか罰金だったか、実刑だったか執行猶予付きだったか。
  • 実刑であれば刑の執行がいつ終わったか、執行猶予であれば期間がいつまでか。
  • 今回問題となっている行為が、前の判決の確定より前か後か。
  • 前の事件と今回の事件の罪名が同じ種類のものか。


 判決の謄本や釈放時に交付された書面が手元になくても、弁護人が受任した後に確認できることは少なくありません。記憶があいまいなまま「もう執行猶予は無理だろう」と自己判断をされる方がいらっしゃいますが、条文にあてはめてみると結論が変わることもあります。

再び事件を起こしてしまった場合にできること

 繰り返しになったという事実そのものは動かせませんが、その後にできることは残っています。被害者がいる事件であれば示談や被害弁償の可能性を早い段階で探ること、事件の背景に依存や生活上の問題があるのであれば、その対処に着手して経過を記録として残すこと、監督にあたる家族や職場の協力を具体的な形で示すこと。これらは、起訴するかどうかの判断にも、量刑における一般情状の評価にも関わります。前回と同じ説明を繰り返すのではなく、前回から何が変わったのかを客観的に示せるかどうかが問われる場面です。

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、刑事事件のご相談を24時間受け付けており、初回のご相談は無料でお受けしています。ご本人の身柄が拘束されている場合の接見にも、即日で対応できる体制を整えています。前科がある状態で新たに刑事事件の当事者となり、今後の見通しに不安を抱えていらっしゃる方は、日付の分かる資料をお手元にご用意のうえ、早い段階でご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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