事件が終わったあと|前科がついた場合の就職・住居・海外渡航
この記事は、2026年10月23日時点のストーカー行為等の規制等に関する法律(令和7年12月30日施行の改正を含みます)および刑法にもとづいて書いています。個別の事案でどう扱われるかは、経緯や相手方の受け止め方によって変わります。
別れた相手ともう一度話がしたくて、何度か家を訪ねてしまった。相手は出てこなかった、あるいは「もう来ないで」と言われた。その後しばらくして、「警察に相談されているのではないか」「いつか連絡が来るのではないか」と落ち着かない日を過ごしている方は少なくありません。
弁護士ドットコムなどの法律相談サイトにも、「LINEで復縁を求めたあと自宅を2回訪ねた。もう近づかないと伝えたが、警察から警告が来る可能性はあるか」といった趣旨の質問が寄せられています。この記事では、訪問した側の立場から、警察から連絡が来るかどうかを左右する事情、家を訪ねる行為が法律上どう扱われるか、連絡が来る前と来たときにできることを整理します。
警察から連絡が来るかどうかは、相手の動きと訪問の中身で決まる
最初にお伝えしておきたいのは、「必ず連絡が来る」とも「来ない」とも言い切れないということです。警察が動くきっかけの多くは相手方からの相談ですが、相手が警察に相談したかどうかを、訪問した側が知る方法は基本的にありません。
また、令和7年12月30日に施行された改正により、警察は相手方からの申出がなくても、職権で警告を出せるようになりました。以前は「相手が申し出なければ警告は出ない」と考えられていましたが、現在はそうとも限りません。
そのうえで、警察が対応を検討する際に重視しやすい事情は、おおむね次のとおりです。
| 事情 | 警察の対応につながりやすい方向 | 比較的穏やかに受け止められやすい方向 |
|---|---|---|
| 訪問の回数と間隔 | 短い期間に繰り返している | 1回きりで、その後は間が空いている |
| 相手の意思表示 | 「来ないで」「連絡しないで」と伝えられた後も訪ねた | 拒絶の意思が示される前に訪問をやめた |
| 訪問時の様子 | インターホンを何度も押す、ドアを叩く、長時間居続ける、深夜に訪ねる | 一度呼び鈴を押し、応答がないので帰った |
| 訪問以外の行動 | LINEや手紙、SNSでの連絡も重ねている | 訪問以外の接触はしていない |
| 相手の受け止め方 | 恐怖を感じ、外出を控えるなど生活に影響が出ている | 困惑はしているが、生活への影響は小さい |
表の左側に当てはまる事情が多いほど、警察から何らかの連絡が来る可能性は高まると考えられます。ただし、右側に当てはまるからといって、問題にならないと決まるわけではありません。
家を訪ねる行為は、法律上どう扱われるのか
ストーカー規制法の「押し掛け」にあたるおそれ
ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で、住居等に押し掛けたり、住居等の付近で見張りをしたり、みだりにうろついたりする行為を「つきまとい等」として規制しています(同法2条1項1号)。
「もう一度やり直したい」という復縁の気持ちは、この「好意の感情」にあたると評価されやすいものです。訪問した側に危害を加えるつもりがまったくなくても、目的の要件は満たされうる点に注意が必要です。
1回の訪問と、繰り返した訪問の違い
つきまとい等を同じ相手に対して反復して行うと「ストーカー行為」となり(同法2条4項)、それ自体が犯罪として処罰の対象になります。法定刑は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です(同法18条)。何回から「反復」になるという決まった回数はなく、期間や態様を含めて判断されます。
1回きりのつきまとい等であれば、ただちに処罰されるのではなく、警告や禁止命令の対象として扱われるのが通常です。この違いは連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで詳しく解説しています。
敷地や建物の中に入った場合
門の内側や玄関先まで入った場合、オートロックの内側や共用廊下に入った場合には、ストーカー規制法とは別に、住居侵入罪(刑法130条、3年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金)が問題になることがあります。帰るよう求められても立ち去らなかった場合には、不退去罪が問題になる余地もあります。
建物の外で待っていた場合との違いについては、元交際相手の家の前で待っていた|住居侵入とつきまといの境界とマンションの共用部に入った|どこからが住居侵入になるのかもあわせてご覧ください。
警察からの連絡は、どのような形で来るのか
警察からの連絡の形は一つではありません。事案の重さや相手方の意向によって、主に次のような段階があります。
| 連絡・対応の形 | 主な内容 |
|---|---|
| 電話や来署の依頼 | 事情を聞きたいとして連絡が来る。多くは任意の聴取 |
| 口頭での注意・指導 | 今後接触しないよう求められる。誓約書や上申書の作成を求められることもある |
| 警告(同法4条) | つきまとい等をやめるよう警察本部長等が求めるもの。書面で行われるのが一般的 |
| 禁止命令(同法5条) | 都道府県公安委員会が出す命令。原則として事前に聴聞の機会がある |
| 捜査としての呼び出し | 被害届や告訴を受けた場合など。事案によっては逮捕に至ることもある |
ストーカー行為の罪は、現在は告訴がなくても起訴できる罪とされています。そのため、相手方が被害届を出していない段階でも、警察が事件として扱う可能性はあります。
連絡が来る時期にも決まりはありません。訪問の翌日に電話が来ることもあれば、数週間たってから連絡が来ることもあり、最後まで何もないこともあります。なお、禁止命令が出された後に、それに違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と、より重い罰則が定められています(同法19条)。
連絡が来る前に、今からできること
連絡を待つ間にできることは、主に次のとおりです。
- これ以上、相手の家を訪ねないことです。
- 謝罪や説明のためであっても、相手に直接連絡を取らないことです。
- 共通の友人や相手の家族を通じて気持ちを伝えることも控えることです。
- 相手の家の前に手紙や贈り物を置かないことです。
- 相手を思わせるような内容をSNSに投稿しないことです。
- これまでのやり取りは消さずに残し、訪問の日時・回数・その場の様子を時系列でメモにまとめておくことです。
とくに注意したいのは、「迷惑をかけたので一言謝りたい」という気持ちからの連絡です。訪問した側にとっては区切りをつけるための行動でも、相手方にとっては新たな接触と受け止められ、つきまとい等が続いていると評価されるおそれがあります。この点は【ストーカートラブル】謝りたい|謝罪の連絡そのものが問題になる理由でも取り上げています。
やり取りの記録を残しておくことは、自分に不利な事実だけでなく、訪問の回数が実際には限られていたことや、相手方の申し出を受けてすぐに接触をやめたことなど、自分の側の事情を説明する材料にもなります。
警察から連絡が来たときの向き合い方
まず連絡の中身と性質を確かめる
電話がかかってきたら、所属する警察署や部署、担当者の名前、用件を確認し、必要であれば警察署の代表番号にかけ直して本物かどうかを確かめます。事情聴取への出頭が任意かどうか、日程を調整できるかどうかも、その場で聞いておくとよいでしょう。折り返す前の確認事項は「警察から電話が来た」|折り返す前に確認したい3つのことに、呼び出しへの対応は警察から呼び出しの電話が来た|任意同行・出頭要請への対応にまとめています。
聴取では事実を落ち着いて伝える
聴取では、訪問の回数や時間、その場でのやり取りを、記憶とメモにもとづいて落ち着いて伝えます。事実と違う内容が書面に書かれていれば、署名の前に訂正を求めることができます。相手方の受け止め方を頭から否定するよりも、自分の行動が相手にどう映ったかを考えたうえで、今後は接触しない意思をはっきり示すほうが、その後の見通しにつながりやすいことが多いものです。
警告を受けた場合
警告を受けても、それだけで前科がつくわけではありません。ただし、警告の後も接触が続けば、禁止命令や検挙へと進むおそれがあります。警告の後の流れは警察から「警告」を受けた|前科はつくのか、次に何が起きるのかで、刑事処分の分かれ目は【刑事事件】ストーカーで前科はつくのか|警告・検挙・起訴の分かれ目と、不起訴になる場合で解説しています。
弁護士に相談する意味
警察からの連絡を待っている段階で弁護士に相談すると、訪問の回数や態様をもとに、どの程度の対応が考えられるかの見通しを立てやすくなります。連絡が来た場合には、聴取に臨む前に話す内容を整理したり、日程の調整について助言を受けたりすることもできます。
また、相手方に謝罪の気持ちや今後接触しない意思を伝えたい場合も、本人が直接連絡するのではなく、弁護士を通じて相手方や相手方の代理人に伝えるという方法があります。事件として扱われた場合には、弁護士が窓口となって示談を検討することも考えられます。早めに相談する意味については【刑事事件】警察から電話が来た段階で弁護士に相談する意味もご参照ください。
よくあるご質問
しばらく連絡がなければ、もう心配はいらないのでしょうか
一定期間がたてば連絡が来ないと決まっているわけではありません。ただ、訪問や連絡をやめた後に新たな接触がなければ、警察が対応を急ぐ理由は小さくなっていくと考えられます。今後も接触しないことが、何よりの備えになります。
自分から警察に出向いて説明したほうがよいでしょうか
事情によって判断が分かれます。自分から出向くことで誤解が解ける場合もあれば、相手方が相談していないのに新たな手続のきっかけになる場合もあります。出向くかどうかを決める前に、弁護士に経緯を伝えて相談することをおすすめします。
相手から「会ってもいい」と連絡が来たら、会ってもよいでしょうか
相手方から連絡があった場合でも、それまでの経緯によっては慎重に考える必要があります。とくに警告などを受けた後であれば、会ったことが後で問題とされるおそれもあります。応じる前に、一度立ち止まって専門家に相談してください。
復縁を望んでの訪問は、訪ねた側には相手を怖がらせるつもりがなくても、回数や時間帯、相手の受け止め方によっては法律上の問題になりえます。今からできるのは、これ以上の接触を控え、経緯を整理して、連絡が来たときに落ち着いて説明できるよう備えておくことです。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


