【ストーカートラブル】講師・医師・美容師などからつきまとわれたら?
ストーカー被害に遭っているとき、子どもの通う学校や保育園に事情を伝えておくべきか迷う方は少なくありません。知らせておけば見守ってもらえる一方で、家庭の事情をどこまで話すのか、話した情報がどう扱われるのかが気になるのも自然なことです。
この記事は、令和7年12月30日に施行されたストーカー規制法の改正(被害者の勤務先や就学先の学校が、被害者を援助する努力義務の主体に加えられたこと)を反映しています。実際の対応は、事案の状況によって異なります。
この記事では、学校や保育園に伝えるかどうかを考えるときの目安、法律上の位置づけ、伝える相手と内容の絞り方、警察や弁護士を通して伝える方法を順に整理します。
伝えるかどうかを考えるときの目安
判断の軸になるのは、「相手が子どもの存在や通っている先を知っているか、知りうるか」という点です。相手が子どもの名前や学校・園を知っている場合は、送り迎えの時間帯や下校途中が接触の機会になりうるため、限られた教職員に事情を伝えておくことを検討する意味があります。
伝えておくことを検討したい場面
- 相手が子どもの名前や、通っている学校・園を知っている場合。
- 相手が以前、送り迎えの場面や学校行事に姿を見せたことがある場合。
- 相手が「子どもに会いに行く」など、子どもに触れる発言をしている場合。
- 相手が子どものもう一方の親(元配偶者など)で、引き取りや面会を口実に近づくおそれがある場合。
- 警察から警告や禁止命令が出たあと、相手が反発している様子がある場合。
急いで伝えなくてもよい場合もある
一方で、相手が子どもの存在を知らず、生活圏にも接点がない場合は、急いで伝える必要までは高くないこともあります。伝えた情報が意図しない範囲に広がると、子どもが周囲から特別な目で見られたり、保護者同士の話題になったりするおそれもあるためです。
どちらとも言い切れないときは、相談している警察署の担当者に「子どもの学校・園にも伝えておいたほうがよいか」を尋ねてみるのも一つの方法です。相手の言動や危険性をふまえた意見を聞いたうえで判断すると、伝えすぎ・伝えなさすぎのどちらも避けやすくなります。
ストーカー規制法の上で、子どもの学校はどう位置づけられているか
ストーカー規制法の「つきまとい等」は、被害者本人に対する行為だけでなく、被害者の配偶者、直系や同居の親族など、社会生活で密接な関係にある人に対する行為も含む形で定められています。また、見張りや押し掛けの対象となる場所として、住居や勤務先と並んで「学校」が挙げられています(ストーカー規制法2条1項)。
そのため、親に対する好意や恨みの感情から、子どもの学校の付近で見張りや待ち伏せをするような行為は、規制の対象になりうると考えられます。学校や園の職員が相手の姿を見かけた記録は、警察に状況を伝える際の材料にもなります。
令和7年の改正で加わった「学校の長」の努力義務
令和7年の改正により、被害者を雇用する者と、被害者が就学する学校の長が、被害者を援助する努力義務の主体に加えられました。文部科学省の通知では、学校に具体的な措置を義務づけるものではなく、通常の教育活動の範囲内での協力が想定されているとされています。想定されている協力の例は、次のとおりです。
- 被害を知ったときや緊急時の、警察への通報や情報提供。
- 助けを求められた場合の、警察に引き継ぐまでの一時的な保護。
- 掲示板やホームページに被害者の氏名等を載せないといった情報管理。
- 警察官による警戒などの活動への協力。
この努力義務が直接及ぶのは、生徒・学生自身が被害者である場合です。親が被害者で、子どもへの接近が心配だという場面は、この規定の直接の対象とは別に考える必要があります。
| 場面 | 学校・園の位置づけ | 伝え方の目安 |
|---|---|---|
| 子ども自身がつきまといを受けている | 就学先の学校の長が援助の努力義務の主体になる | 警察と学校の双方に伝え、連携を求める |
| 親が被害者で、子どもへの接近が心配 | 改正で加わった努力義務の直接の対象ではない | 子どもを預かる立場としての安全配慮をお願いする |
| 保育所に通う子どもの場合 | 学校教育法上の学校ではないため、上記の規定とは別に考える | 園の安全管理の一環として協力をお願いする |
親が被害者の場合でも、子どもを預かる学校や園が安全に配慮する立場にあることに変わりはなく、事情を伝えて協力をお願いすること自体は難しくありません。ただし、学校や園が取れる対応には限りがあり、相手の接近を物理的に防ぐところまで期待できるとは限らない点は、あらかじめ理解しておく必要があります。
伝える相手と伝える内容を絞る
誰に伝えるか
担任の先生だけに伝えると、担任が不在の日や学年をまたいだときに情報が途切れることがあります。学校であれば校長・教頭などの管理職、園であれば園長や主任にも伝え、送迎の受付や電話を受ける職員にまで必要な範囲で共有してもらうよう依頼すると、対応がそろいやすくなります。ほかの保護者やPTAへの共有は、基本的には求めないほうがよいでしょう。
伝える内容の目安
- 相手の外見の特徴や、分かる範囲での写真・車両の情報。
- これまでの出来事の概要と、警察への相談の状況。
- 子どもを引き渡してよい人の範囲と、それ以外の人が来たときの連絡先。
- 電話などで子どもの所在や住所を尋ねられても答えないでほしいこと。
- 学校だよりやホームページ、掲示物に子どもの名前や写真を載せる際の配慮。
- 緊急時に連絡してほしい相手(保護者と警察署の担当者)。
伝えなくてよいこと
交際の経緯や被害の細かな内容まで話す必要はありません。学校や園にとって必要なのは、子どもの安全に関わる情報です。口頭だけでなく、要点を1枚の書面にまとめて渡すと、職員の間で伝え間違いが起きにくくなります。写真などを渡す場合は、保管する場所と、不要になったときの扱いもあわせて確認しておくと安心です。
相手が子どものもう一方の親である場合
相手が元配偶者など子どものもう一方の親である場合、学校や園は、その人からの問い合わせや引き取りの申し出に対して、親として扱う立場にあることがあります。とくに、離婚後も父母の双方が親権者となる場合には、保護者からの口頭の説明だけで、学校側が一方の親の引き取りを断るのは難しいこともあります。
このような場面では、禁止命令や保護命令が出ている事実、家庭裁判所で決まった面会の取り決めの内容など、学校側が判断の根拠にできる資料を示せるかどうかが大切になります。どの資料をどこまで示すかは、事案によって異なるため、早めに専門家に相談しておくと判断しやすくなります。
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子どもにはどう伝えるか
学校や園に伝えるのとあわせて、子ども本人にどこまで話すかも考えておく必要があります。保育園や小学校低学年の子どもであれば、事情を細かく説明するよりも、「決めた人以外とは一緒に帰らない」「知らない大人に名前を聞かれても答えない」といった約束の形で伝えるほうが、受け止めやすいことが多いでしょう。
年齢が上がれば、相手の特徴を伝え、見かけたらすぐに先生や保護者に知らせるよう話しておくことも考えられます。ただ、必要以上に詳しく話すと、子どもが強い不安を抱えることもあります。様子に変化が見られるときは、スクールカウンセラーなど学校の相談体制を利用することも検討してください。
警察や弁護士を通して伝えるという方法
自分で学校や園に説明するのが負担に感じられる場合や、どう伝えれば理解してもらえるか不安な場合は、相談している警察署の担当者に、学校・園との連絡について相談してみる方法があります。令和7年の改正を受けて、警察庁は都道府県警察に対し、勤務先や学校との連携を一層図るよう指示しています。
弁護士に依頼している場合は、相手方への通知の中で子どもの学校や園への接近を控えるよう求めたり、学校・園に渡す説明書面の内容を一緒に整えたりすることができます。接近禁止の仮処分を検討する場面では、子どもの学校周辺を求める範囲に含めるかどうかも、事案に応じて検討することになります。
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よくあるご質問
学校に伝えたら、ほかの保護者にも知られてしまいませんか
学校や園は、子どもや家庭の情報を慎重に扱う立場にあります。ただ、職員の間で共有される範囲が広がるほど、意図しない形で話が伝わる可能性はゼロではありません。伝える際に「共有するのはこの範囲の職員まで」と具体的にお願いしておくと、扱いの目安を持ってもらいやすくなります。
引っ越しや転校を考えている場合、学校にはどう伝えればよいですか
転居や転校を伴う場合は、転校前の学校に対して、転校先や新しい住所を問い合わせられても答えないよう依頼しておくことが考えられます。住民票の写し等の交付制限など、住所を知られないための手続とあわせて進めると、情報が漏れる経路を減らしやすくなります。
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保育園に伝えておけば、相手が来ても防げるのでしょうか
伝えておくことで、引き渡しを断ってもらったり、すぐに保護者や警察へ連絡してもらったりといった対応は期待しやすくなります。一方で、園が相手の来訪そのものを防ぐ義務まで負っているわけではありません。差し迫った危険を感じる場面では、園の職員にも、ためらわず110番通報をお願いしておくとよいでしょう。
子どもの学校や保育園に伝えるかどうかは、相手が子どもの存在や居場所を知っているか、相手と子どもの関係はどうか、といった事情によって答えが変わります。伝えると決めた場合も、伝える相手と内容を絞り、警察や弁護士と連携しながら進めることで、子どもの日常を守りやすくなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


