【ストーカートラブル】近所の住人につけ回されたら、ストーカーとして扱われる?
風俗店やキャバクラ、メンズエステなどで働く方が、客からつきまといや執拗な連絡を受けていても、「仕事のことを話さなければならない」「自分にも落ち度があると思われそう」と考えて、相談に踏み切れないことがあります。ストーカー被害への対応は、被害を受けている方の職業によって変わるものではありません。この記事では、相談をためらう理由として多いものを取り上げ、それぞれについて法律や手続の面から整理します。
本記事は2026年10月時点の法令と一般的な実務をもとにした解説です。2025年12月に施行された改正ストーカー規制法の内容を反映しています。個別の事情によって取れる手段は変わるため、具体的な対応は弁護士にご相談ください。
相談をためらう理由として多いもの
客からのつきまといに悩む方からは、次のような声が聞かれます。
- 風俗の仕事をしていることを、警察や家族に知られたくない。
- 店の外で会ったことや、個人の連絡先を教えたことがあるので、自分も悪いと言われそうだ。
- 「お金を使ってもらったのだから仕方ない」と言われるのではないかと思う。
- 店に迷惑をかけたくないし、店を辞めることになるのも困る。
- 相手に本名や住所を知られてしまうのが怖い。
どれも、相談をためらう理由としてもっともなものです。ただ、こうした不安の多くは、制度の仕組みを知ることで整理がつく部分があります。以下、順に見ていきます。
職業によってストーカー規制法の保護が変わることはない
ストーカー規制法は、特定の人に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われるつきまとい等を規制しています。被害を受けている方の職業は、要件に含まれていません。客として通っていた人物が好意を募らせ、店の外で待ち伏せをする、断っているのに連絡を続けるといった行為は、この法律の対象になり得ます。
客からの好意によるつきまといも対象になる
接客の仕事では、相手に好意的に接することが仕事の一部です。そのため、客の側が仕事上の対応を個人的な好意と受け止め、店の外での接触を求めてくることがあります。しかし、仕事として親しく接していたことは、店の外でのつきまといを受け入れたことを意味しません。
出勤・退勤時の待ち伏せや見張り、自宅付近のうろつき、拒否した後も続くメッセージや電話などは、内容や回数によって、警察による警告や公安委員会による禁止命令の対象となることがあります。偽名で予約を入れて無断で取り消すことを繰り返すなど、店の営業に支障を及ぼす嫌がらせについては、業務妨害など別の罪が問題になることもあります。接客の仕事でのつきまといにどう向き合うかは、【ストーカートラブル】接客の仕事で客につきまとわれている|個人でできることでも取り上げています。
店の外で会った・連絡先を教えたことがあっても
以前に店の外で食事をした、個人のLINEを教えたといった経緯があると、自分にも責任があるように感じる方は少なくありません。しかし、ある時点まで連絡を取り合っていたとしても、拒否の意思を示した後に続く接触は、それとは別に評価されます。問題となるのは、相手が嫌がっていると分かる状況で接触を続けているかどうかです。
相談の際には、過去のやり取りも含めて経緯をそのまま伝えたほうが、警察や弁護士は状況を把握しやすくなります。不利になると考えて経緯の一部を伏せていると、後で相手が別の説明をしたときに食い違いが生じ、かえって対応が遅れるおそれがあります。
仕事のことが周りに知られるのではという不安
相談をためらう理由として特に多いのが、勤務先が周りに知られることへの不安です。相談先ごとに、情報がどのように扱われるのかを確認しておきましょう。
警察に相談した場合
警察へのストーカー相談では、相手の行為や身の安全に関わる事情を中心に聞き取りが行われます。相談したことが、警察から家族や昼の勤務先へ連絡されることは、通常の手続の流れとしては想定されていません。ただし、警告を出せば相手には警察が関与していることが伝わりますし、身の安全を守るために家族の協力が必要と判断される場面もあります。
2025年12月の改正で、被害者からの申出がなくても警察の判断で警告を出せる仕組みが設けられました。相談の段階で、どの範囲の人に何が伝わるのか、相手への働きかけをいつどのように行うのかについて、希望や不安を伝えておくことが大切です。家族に知らせずに相談に行きたい場合の準備は、【ストーカートラブル】被害を家族に言えない|一人で相談に行くときの準備でまとめています。
刑事手続に進んだ場合の名前や住所
告訴などにより刑事手続に進むと、相手に本名や住所を知られるのではないかと心配される方もいます。刑事手続には、起訴状などに記載される被害者の氏名や住所を相手に知らせない措置や、公判で被害者を特定する事項を伏せたまま審理する制度があり、一定の要件のもとで利用できます。
どの制度が使えるかは事案によって異なるため、被害届や告訴の段階から、捜査機関や弁護士に心配している点を伝えておくことが大切です。公判で証言を求められた場合の配慮については、【ストーカートラブル】裁判で証言を求められた|相手と顔を合わせない方法で説明しています。
弁護士に相談した場合
弁護士には法律で守秘義務が課されています(弁護士法23条)。相談の中で聞いた内容を、相談者の了解なく家族や勤務先、店に伝えることは原則としてありません。相手が源氏名しか知らない場合に、相手方への通知の中でご本人の情報をどこまで示すかといった点も、相談しながら検討していくことができます。
自分の働き方を問われるのではという不安
風俗店などで働いていることを理由に、ストーカー被害の相談が受け付けられないということはありません。届出をして営業している店での勤務は、それ自体が責められるものではありません。
一方で、店の外での金銭のやり取りなど、ご自身の行動が法的にどう評価されるのか気になる点がある方もいるでしょう。そのような場合は、警察に行く前に弁護士に相談し、何をどのような順序で伝えるかを整理しておく方法があります。弁護士は守秘義務を負う立場で、気になる点も含めて事情を伺ったうえで、被害への対応を組み立てることができます。
また、相手が「これまで使ったお金を返せ」などと金銭を求めてくることもあります。客として支払った利用料金や、好意で贈られた品物は、多くの場合、返す義務があるとはいえません。ただし、個人的にお金を借りていたなど事情によって結論は変わるため、要求に応じる前に一度ご相談ください。
店に相談するときに考えておきたいこと
つきまといの相手が客である場合、店はその人物の来店履歴や予約時の連絡先などを把握していることがあります。出入り禁止の措置、送迎、出勤情報の掲載の見直しなど、店にしかできない対応もあります。
2025年12月に施行された改正ストーカー規制法では、被害を受けている方を雇用する者が、被害者を援助する努力義務を負う主体に加えられました。店との契約が雇用か業務委託かによって法律上の位置づけは異なり得ますが、店に事情を伝えて協力を求めること自体は、契約の形にかかわらずできます。店舗や会社の側で取れる対応は、【ストーカートラブル】職場や店舗で客からつきまとわれる|従業員を守るために会社ができることでまとめています。
注意しておきたいのは、店の関係者が相手と直接話をつけようとする場合です。店の関係者が相手と交渉したり、金銭の授受を取り決めたりすると、相手の反発を招いたり、後で合意の内容が争われたりするおそれがあります。この点は店がキャストに代わって示談交渉をしてよいのか|非弁行為という視点でも触れています。店に協力を求める範囲と、警察や弁護士に任せる範囲を分けて考えるとよいでしょう。
昼の仕事と掛け持ちしていて、昼の勤務先にも相手が連絡してくるおそれがある場合は、【ストーカートラブル】ストーカー被害を会社に伝えるとき、どこまで話せばいい?も参考にしてください。
相談先ごとの役割
相談先は一つに絞る必要はありません。それぞれの役割を整理すると、次のとおりです。
| 相談先 | 主に担うこと | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 警察 | 警告・禁止命令、検挙、パトロールなどによる身の安全の確保 | 待ち伏せや自宅付近への出没など、危険が差し迫っている場面 |
| 弁護士 | 相手方への通知、接触しない約束の書面化、損害賠償の請求、警察への相談の準備 | 相手と直接やり取りしたくない場面、金銭の要求も絡んでいる場面、警察に何を伝えるか迷う場面 |
| 店 | 出入り禁止、予約の拒否、送迎、出勤情報の扱いの見直し | 相手が客として店に関わり続けている場面 |
身に危険を感じる場面では、ためらわずに110番通報してください。警察と弁護士のどちらに先に相談するかで迷う場合は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序で考え方を説明しています。警察に相談しても警告に進まなかった場合は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段が参考になります。弁護士に依頼した場合に何が変わるのかは、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で取り上げています。
相談の前に整理しておくとよいこと
次の点をまとめておくと、どの相談先でも話が進みやすくなります。
- 相手について分かっていること(本名、連絡先、SNSのアカウント、来店時に使っていた名前など)。
- 相手が自分について知っている情報の範囲(源氏名だけか本名もか、自宅や昼の勤務先を知られているか)。
- これまでの経緯(いつ頃から、どのような接触があったか、拒否の意思をいつどのように伝えたか)。
- メッセージや着信の履歴、写真、店に残っている記録など、手元にある記録。
- 店にすでに伝えているかどうかと、店の対応の内容。
メッセージを保存する際は、画面の切り取りだけでなく、送信日時や相手のアカウントが分かる形で残しておくと、後で記録として使いやすくなります。相手に知られている情報の範囲は、身の安全を考えるうえでも、相手方への通知の内容を決めるうえでも重要な手がかりになります。
よくあるご質問
源氏名しか知られていない場合でも、警察に相談できますか
相談できます。相手が本名を知らなくても、店の外での待ち伏せや連絡が続いているのであれば、身の安全に関わる問題です。相談の際に、相手に知られている情報の範囲を伝えておくと、本名や住所が相手に伝わらないよう配慮を求める手がかりになります。
相談したら、店を辞めなければならないのでしょうか
相談したことを理由に辞める必要はありません。働き続けるか、出勤する店舗や時間帯を変えるかは、ご自身が決めることです。ただ、相手が客として来店し続けている場合には、店の協力のもとで出勤情報の扱いなどを見直す必要が出てくることがあります。
相談したことで、相手が逆上しないか心配です
相手への働きかけの時期や方法によって、相手の反応が変わることはあります。警察や弁護士に相談する際に不安な点を伝えておけば、自宅周辺の警戒や一時的な避難先の確保など、働きかけと並行して取れる備えを一緒に考えることができます。
まとめ
風俗店などで働いていることは、ストーカー被害の相談をためらわなければならない理由にはなりません。ストーカー規制法の保護は職業によって変わらず、仕事のことが周りに伝わるかどうかについても、相談先ごとの扱いを確かめながら進めることができます。店の外で会ったことがあるなど気になる経緯がある場合も、伏せずに相談したほうが対応を組み立てやすくなります。
当事務所では、ご相談の内容を守秘義務のもとでお伺いし、相手方との連絡の窓口となることや、警察への相談の準備、金銭を求められている場合の対応などについてご相談をお受けしています。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


