【ストーカートラブル】相手の家族から被害届を取り下げるよう迫られている|応じる前に考えることと、働きかけを止める順序
本記事は、2026年10月時点のストーカー規制法に基づいて書いています。令和7年12月30日に施行された改正(警察の職権による警告の創設など)を反映しています。
元交際相手や知人からの連絡が止まらない、帰り道で待ち伏せをされている。そうした被害に遭っていても、男性の場合は「自分が相談してよいのだろうか」とためらい、一人で抱え込んでしまうことがあります。結論からいえば、ストーカー被害の相談は男性でもできます。法律は被害者の性別で扱いを分けておらず、警察や公的な窓口、弁護士のいずれにも相談することができます。
この記事では、男性がストーカー被害を相談するときに、どの窓口を選べばよいか、相談の前に何を整えておくと話が進みやすいかを中心に解説します。男性が相談をためらいやすい事情や、使える手続の全体像については【ストーカートラブル】男性のストーカー被害|相談しにくさと使える手続でも取り上げています。
ストーカー規制法は被害者の性別を区別していません
ストーカー規制法は、特定の人への恋愛感情や好意、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行う、つきまといや待ち伏せ、拒まれた後の連続した電話やメッセージなどを「つきまとい等」と定め、これを繰り返すことを「ストーカー行為」として規制しています(ストーカー規制法2条)。条文には、被害者や加害者の性別による区別はありません。被害者が男性で相手が女性の場合も、同性どうしの場合も、同じ要件で判断されます。
警察による警告(4条)、公安委員会による禁止命令(5条)、禁止命令に違反した場合の罰則といった仕組みも、男性の被害者がそのまま使えます。令和7年12月30日に施行された改正では、被害者からの申出がなくても、警察が職権で警告できる仕組みが設けられました。
男性の被害は決して珍しいものではありません。京都府が令和4年度に実施した調査では、ストーカー行為の被害に遭ったことがあると答えた男性は約7%でした。被害によって命の危険を感じたと答えた割合は男性37.1%、女性35.9%と、男女でほぼ同じ水準です。一方で、被害について誰かに相談した割合は男性67.1%で、女性の72.7%をやや下回りました。被害後の変化として、電話番号やSNSのアカウントを変えたという回答や「特に変わらない」という回答は男性のほうが多く、誰かに頼るより自分で連絡手段を変えて対処しようとする傾向がうかがえます。
男性が相談をためらいやすい場面
ご相談の場面では、次のような思いを口にされる男性の方が少なくありません。
- 男性が女性を怖がっていると言うのは、大げさだと思われそうだ。
- 相手が女性なので、むしろ自分のほうが加害者だと疑われるのではないか。
- 別れ話がこじれただけだと受け流されそうだ。
- 殴られたわけではないので、相談するほどの被害ではない気がする。
- 同性の元交際相手なので、関係を説明すること自体に抵抗がある。
いずれも自然な感覚ですが、相談をあきらめる理由にはなりません。ストーカー規制法の対象になるかどうかは、行為の内容や回数、目的によって判断され、身体への暴力があったかどうかは要件になっていません。同性からのつきまといについては【ストーカートラブル】同性からのつきまとい|規制法の対象になるかで詳しく解説しています。
目的に合わせて相談先を選ぶ
ストーカー被害の相談先はいくつかあり、それぞれ役割が異なります。男性が利用できるかどうかもあわせて整理すると、次のとおりです。
| 相談先 | 主な役割 | 男性の利用 |
|---|---|---|
| 警察(110番・#9110・最寄りの警察署) | 緊急時の駆けつけ、警告・禁止命令の手続、捜査 | 性別を問わず相談できる |
| 法テラス(DV等被害者法律相談援助) | 弁護士による法律相談(資力により無料) | 性別を問わず利用できる |
| 自治体の男性相談窓口 | 悩みの聞き取り、関係機関の紹介 | 男性向けの窓口を設けている自治体がある |
| 法務局の人権相談 | 人権侵害についての相談、助言 | 性別を問わず相談できる |
| 弁護士 | 相手との交渉の代理、警察への申出の準備、民事上の請求 | 性別を問わず相談できる |
身の危険を感じるときは警察へ
待ち伏せされている、自宅に押しかけられている、危害を加えるような言葉が届いているといった場面では、まず警察に連絡してください。差し迫った危険があれば110番、急ぎではない相談であれば警察相談専用電話の#9110や最寄りの警察署の窓口が利用できます。警告や禁止命令の手続も、警察を通じて進みます。
費用が心配なときは法テラスの制度を確認する
法テラスでは、ストーカー被害を受けている方や受けるおそれのある方を対象に、弁護士による法律相談を行う「DV等被害者法律相談援助」という制度を設けています(総合法律支援法30条1項5号)。法務省の案内では、自由に処分できる現金・預貯金の合計が300万円以下であれば無料、これを超える場合は相談料5,500円の負担とされています。この制度も、男性が利用できます。
まず話を整理したいときは自治体の窓口も
法的な手続に進むかどうかを決める前に、状況を誰かに話して整理したいという方もいます。自治体によっては、男性の悩みを専門に受ける相談窓口を設けています。東京都では、東京ウィメンズプラザが「男性のための悩み相談」を電話で受け付けており、配偶者や恋人からの暴力などの問題も相談の対象に含まれています。受付の曜日や時間帯は変わることがあるため、利用する前に公式の案内で確認してください。各地の法務局でも、人権相談として電話や面談での相談を受け付けています。
なお、同居していた交際相手から暴力を受けている場合は、配偶者暴力防止法の保護命令の対象になることがあります。この制度も、被害者の性別による区別はありません。
相手との関係を断つ形をつくりたいときは弁護士へ
警察の手続は、相手の行為を止めることが中心です。相手に貸したお金や預けた荷物の清算が残っている、相手との連絡の窓口を自分以外に移したい、接触しないことを書面で約束させたいといった場合は、弁護士への相談が向いています。警察と弁護士のどちらを先にするかの考え方は【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序で解説しています。
相談に行く前に整えておきたいこと
どの窓口に行く場合でも、次の準備をしておくと、限られた相談時間で状況が伝わりやすくなります。
時系列のメモをつくる
いつ、どこで、相手が何をしたか、自分がどう対応したかを、日付順に書き出しておきます。記憶があいまいな部分は「〇月ごろ」と幅をもたせて構いません。最初の出来事から最近の出来事までの流れが一覧できると、相談を受ける側が、行為が繰り返されているかどうかを判断しやすくなります。
記録を消さずに残しておく
メッセージや着信履歴、SNSでのやり取り、届いた手紙や贈り物は、削除や処分をせずに保存しておきます。画面を撮影する場合は、日時と相手のアカウント名が写るようにしておくと、後から確認しやすくなります。先ほどの調査のとおり、男性は連絡先やアカウントを変えて対処することが多いようですが、ブロックやアカウントの削除をする前に、まず記録を残すことを優先してください。
相手との関係を伏せずに伝える
弁護士ドットコムには、同性の元交際相手から待ち伏せや暴力を受けた男性が、交際していたことを伏せて警察に相談したところ、軽い注意にとどまったという相談が寄せられています。ストーカー規制法の対象になるかどうかは、恋愛感情やそれが満たされなかったことへの恨みといった目的があるかどうかに左右されます。相手との関係を伏せると、その判断に必要な事情が伝わらないおそれがあります。話しにくい事情があっても、関係の経緯はできるだけそのまま伝えることをおすすめします。
自分の側の言動も整理しておく
別れ話がこじれた場面では、相手から「自分こそ被害者だ」と主張されることもあります。弁護士ドットコムにも、別れを告げた元交際相手の女性から繰り返し連絡を求められ、新しい交際相手の存在を知られた後には脅すような言葉まで送られるようになった男性の相談が見られます。こうした場面では、自分が相手に送ったメッセージや、会った経緯なども含めて整理しておくと、相談を受ける側が事実関係を偏りなく把握しやすくなります。相手がSNSで被害を訴えている場合の対応は【ストーカートラブル】相手が「ストーカーされた」とSNSに書いている|反論してよいかで取り上げています。
どうなってほしいかを決めておく
「連絡が止まればよい」「警告を出してほしい」「処罰を求めたい」「お金の清算もしたい」など、望む結果によって使う手続は変わります。決めきれていなくても構いませんが、優先したいことを一つ挙げておくと、相談先から具体的な選択肢を示してもらいやすくなります。
警察の対応が軽いと感じたとき
警察に相談したものの、口頭での注意にとどまった、様子を見るよう言われたという経験をされた方もいます。その場合でも、相談の内容は警察の記録として残るのが一般的です。その後も行為が続いたときは、新たな出来事を記録に加え、改めて警告の申出を検討することができます。次に取れる手段については【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で、相談記録の取り寄せ方については【ストーカートラブル】警察への相談記録を手元に取り寄せる|開示請求の手順と黒塗りの読み方で解説しています。
弁護士に相談するとできること
弁護士は、被害を受けている方の代理人として、相手との連絡の窓口を引き受けることができます。今後の接触をやめるよう求める通知を弁護士の名前で送ることもでき、その際、ご本人の連絡先や住所を相手に伝えずに進めることができます。このほか、警察に警告や禁止命令の申出をする際の事実の整理、接触しないことを約束する合意書の作成、慰謝料などの請求も扱います。相手が女性であっても、交渉の進め方が大きく変わることはありません。具体的な内容は【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。
まとめ
- ストーカー規制法は被害者の性別を区別しておらず、男性も警告や禁止命令などの手続を同じように使えます。
- 身の危険を感じるときは警察、費用が心配なときは法テラス、まず話を整理したいときは自治体の男性相談窓口など、目的に合わせて相談先を選べます。
- 相談の前に時系列のメモと記録を用意し、相手との関係を伏せずに伝えると、状況が正確に伝わりやすくなります。
- 自分の側の言動も含めて整理しておくと、相手から反対の主張をされた場合にも対応しやすくなります。
- 相手との連絡を自分から切り離したいときは、弁護士を窓口にする方法があります。
男性であることを理由に、法律上の扱いが変わることはありません。「この程度で相談してよいのか」と迷う段階のほうが、記録も新しく、選べる手立ても多く残っています。一人で対処を続ける前に、まずは状況を話してみてください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


