【ストーカートラブル】未成年の子どもがつきまといに遭っている|親ができること
元交際相手やつきまといをしてくる相手のSNSを見たら、自分が今日行った店や駅、いつも通る道のことが書き込まれていた。名前が出ていなくても、自分のことだと分かる内容であれば、強い不安を覚えるのは自然なことです。この記事では、加害者のSNSに自分の居場所が書き込まれていた場合に、安全の確保、居場所を知られた経路の確認、記録の残し方、ストーカー規制法などで取りうる手段、書き込みの削除までを順に整理します。
この記事は、2025年12月30日に施行された改正ストーカー規制法(紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等の規制、職権による警告の創設など)を反映しています。個別の事情によって取れる手段は異なりますので、具体的な対応は警察や弁護士にご相談ください。
まず確かめたいのは「今の安全」
居場所の書き込みを見つけたとき、最初に考えたいのは法律上の評価よりも身の安全です。書き込みの内容によって、急ぐべき度合いが変わります。
| 書き込みの内容 | 考えられる状況 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 「今〇〇駅にいるね」など、現在地に触れている | 近くで見張られている、または位置情報を取得されているおそれがある | 安全な場所へ移動し、危険を感じれば110番を検討 |
| 昨日行った店や、数日前の行動に触れている | 後をつけられた、または誰かの投稿から把握されたおそれがある | 当日中に記録を残し、早めに警察へ相談 |
| 自宅や勤務先の場所に触れている | 生活の拠点を知られている | 自宅周辺の安全確保と、警察への相談を急ぐ |
書き込みに「待っている」「会いに行く」といった言葉が添えられている場合や、相手が近くにいる気配がある場合は、ためらわずに110番通報を検討してください。一人で帰宅するのを避けて家族や友人に迎えを頼む、人の多い場所で待つといった対応も考えられます。
なぜ居場所が知られたのかを考える
書き込みへの対処と並行して、相手がどうやって居場所を把握したのかを考えておくことが大切です。経路が残ったままでは、書き込みを消しても同じことが繰り返されるおそれがあるためです。考えられる経路には、次のようなものがあります。
- 実際に後をつけられている、または自宅や職場の付近で見張られていること。
- 自分のSNS投稿の写真や文章から、行動を読み取られていること。
- 共通の知人やフォロワーの投稿から、一緒にいた場所が伝わっていること。
- 交際中に設定した位置情報共有アプリや見守りアプリが、解除されないまま残っていること。
- 持ち物や車に、GPS機器や紛失防止タグを取り付けられていること。
- スマートフォンやアカウントに、相手がログインできる状態が残っていること。
位置情報アプリやアカウントの共有については【ストーカートラブル】スマホや共有サービスから居場所が漏れている|位置情報以外の経路を止めるで、GPS機器や紛失防止タグについてはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪で詳しく解説しています。
なお、不審な機器を見つけた場合は、取り外す前に取り付けられていた位置を写真で記録し、その扱いを警察に相談するのが無難です。自分の判断で処分してしまうと、相手の行為を裏付ける証拠として使いにくくなるおそれがあります。
居場所の書き込みはストーカー規制法の対象になるか
ストーカー規制法は、特定の人への恋愛感情などの好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で行われる「つきまとい等」を規制しています。居場所の書き込みは、内容や状況によって、次のような行為にあたることがあります。
「監視していると思わせる事項」を知らせる行為
ストーカー規制法2条1項2号は、相手の行動を監視していると思わせるような事項を告げたり、相手が知りうる状態に置いたりする行為を「つきまとい等」の一つとしています。本人に直接メッセージを送る場合だけでなく、本人が見ることが予想されるSNSや掲示板に書き込む行為も、この「知りうる状態に置く」にあたりうると考えられています。
「今日は〇〇のカフェにいたね」「最近帰りが遅いね」といった書き込みは、名指しがなくても、本人が自分のことだと分かり、相手も本人に見せるつもりで書いていると考えられる場合には、この類型に該当する可能性があります。一方で、ごく限られた人しか見られない非公開のアカウントで書かれていて、本人の目に触れる経路がない場合などは、評価が分かれることもあります。
見張りやうろつきと組み合わさっている場合
書き込みの内容が、実際に自宅や職場の近くにいなければ分からないものであれば、その前提として見張りやうろつきが行われている可能性があります。同法2条1項1号は、住居や勤務先などの付近での見張りやうろつきを規制しています。書き込みと、自宅周辺で相手を見かけた記録を合わせることで、行為の全体像が見えやすくなります。
位置情報を無断で取得していた場合
相手が、本人の承諾なくGPS機器などで居場所を取得していた場合は、「位置情報無承諾取得等」として別に規制されています。2025年12月30日施行の改正では、紛失防止タグを用いて位置情報を取得する行為や、タグをひそかに持ち物に取り付ける行為も対象に加えられました。
「ストーカー行為」として処罰される場面
つきまとい等や位置情報無承諾取得等を反復して行うと「ストーカー行為」にあたり、処罰の対象となります(同法18条)。一度の書き込みだけでは直ちに処罰とならない場合でも、警察から相手への警告や、公安委員会による禁止命令の対象となることがあります。また、交際を断られたことなどへの恨みからの行為であっても、規制の対象に含まれます。
ストーカー規制法以外で問題になる場面
好意や恨みの感情を満たす目的とはいえない場合や、書き込みの内容によっては、ほかの法律での対応を考えることになります。
| 書き込みの内容 | 問題になりうるもの | 主な対応 |
|---|---|---|
| 自宅の住所や勤務先を特定できる形で公開している | プライバシー侵害 | 削除請求、損害賠償請求 |
| 「行ってやる」など危害を加えることを示している | 脅迫罪(刑法222条) | 警察への相談、被害届・告訴 |
| 居場所とあわせて、事実を挙げて評判を下げる内容を書いている | 名誉毀損(刑法230条、民事上の不法行為) | 削除請求、損害賠償請求、告訴 |
| 本人の写真を無断で載せている | 肖像権の侵害 | 削除請求、損害賠償請求 |
どの法律で対応するのがよいかは、書き込みの内容だけでなく、相手との関係やこれまでの経緯によっても変わります。複数の手段を並行して進めることもあります。自宅の住所を書き込まれた場合の対応は、【ストーカートラブル】ネットに自宅の住所を書き込まれた|削除とその日の安全確保で解説しています。
書き込みを見つけたときの記録の残し方
書き込みは、相手が後から削除したり、アカウントを非公開にしたりすることで見られなくなるおそれがあります。見つけた時点で、次の順に記録を残しておくことが大切です。
- 書き込みの画面を、投稿日時とアカウント名が写るようにスクリーンショットで保存すること。
- 投稿のURLと、相手アカウントのプロフィール画面のURLやIDを控えること。
- 連続した投稿や動画は、画面録画で前後の流れごと残すこと。
- 書き込みに出てくる場所や日時について、その日の自分の実際の行動をメモにしておくこと。
- 保存したデータを、スマートフォン以外の場所(パソコンやクラウドなど)にも複製しておくこと。
自分の行動と書き込みの内容が一致していることを示せると、相手が実際に見張っていたり、位置情報を取得していたりしたことを裏付ける材料になります。
記録を取る際は、相手の投稿に反応したり、コメントやメッセージで抗議したりすることは控えた方がよいでしょう。反応があったこと自体が相手の行動を強めることがあるほか、やり取りが続くことで事実関係が複雑になるおそれがあります。相手のアカウントをブロックするかどうかも、記録を取り終えてから考える方が安全です。ブロックすると、その後の書き込みが自分から見えなくなる場合があるためです。被害に遭ったときに避けたい対応は、ストーカートラブルに遭ったら絶対にやってはいけない5つのこと|早期・穏便に解決するためにでも整理しています。
警察への相談と、警告・禁止命令
警察に相談する際は、保存した記録と、書き込みの内容を裏付ける自分の行動メモを持参すると、状況が伝わりやすくなります。相談先は、住所地などを管轄する警察署です。緊急性が高い場合は、110番通報を優先してください。
警察は、相談の内容に応じて、相手への警告、禁止命令、刑事事件としての捜査などを検討します。2025年12月30日施行の改正により、被害者からの申出がなくても、警察が職権で警告をすることができるようになりました。もっとも、どの措置をとるかは警察の判断によるため、相談したからといって必ず警告が出るとは限りません。
警告や禁止命令の流れはSNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れで、警告が出なかったときの考え方は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で解説しています。
書き込みを消してもらうための手段
記録を残したうえで、書き込みそのものを消してもらう方法を検討します。ただし、削除を急いだ結果、警察が確認する前に書き込みがなくなってしまうこともあります。警察に相談している場合は、削除を求めるタイミングについても相談しておくとよいでしょう。
SNSの運営会社への削除の申出
多くのSNSには、プライバシーの侵害や嫌がらせを報告する窓口があります。2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法により、大規模なプラットフォーム事業者には、削除の申出に対応する体制を整え、一定の期間内に判断の結果を通知することなどが求められるようになりました。詳しくは【男女トラブル】情報流通プラットフォーム対処法で削除依頼はどう変わったのかをご覧ください。
相手に削除を求める
相手が誰か分かっている場合は、削除と今後の書き込みの中止を相手に求めることも考えられます。本人が直接連絡すると、それをきっかけにやり取りが続いてしまうおそれがあるため、弁護士を通じて書面で求め、削除や接触しないことを約束する合意書を交わす方法がとられることがあります。
裁判所の手続や、投稿者の特定
任意の削除に応じてもらえない場合は、裁判所に削除を求める仮処分を申し立てる方法があります。相手が匿名のアカウントで書き込んでいて、誰なのかを確かめる必要がある場合は、発信者情報開示の手続を検討します。いずれも、書き込みが権利を侵害していることを示す必要があるため、残した記録の内容が判断に影響することがあります。匿名の相手への対応は【ストーカートラブル】相手が誰か分からない|匿名のつきまといで相手をたどる方法と、たどれないときの守り方で解説しています。
自分の側で見直しておきたいこと
問題があるのは相手の行為であることを前提としたうえで、居場所が伝わる経路を少しでも減らしておくことは、身を守るうえで役立ちます。
- SNSの公開範囲を見直し、相手と共通のフォロワーがいないかを確かめること。
- 外出先での投稿は、その場を離れてから行うこと。
- 写真に位置情報が付かない設定にしておくこと。
- 写真に写り込む駅名や看板、窓からの景色に注意すること。
- 交際中に共有していたアプリやアカウントのパスワードを変更し、ログイン中の端末を確認すること。
友人や家族にも事情を伝え、一緒に写った写真や、居場所が分かる投稿を控えてもらうよう頼んでおくと安心です。転居などを含めた対策は引っ越したのに住所を突き止められた|居場所を知られない対策もあわせてご覧ください。
弁護士に相談することでできること
弁護士は、書き込みの記録をもとに、ストーカー規制法やそのほかの法律でどのような手段がとれるかを整理し、警察への相談に同行したり、相手への削除の求めや合意書の作成を代理したりすることができます。本人が相手と直接やり取りせずに済むことは、安全の面でも意味があります。必要に応じて、接近の禁止を求める仮処分や損害賠償の請求も検討します。
代理人を立てる意味については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味で、接近を禁止する方法の使い分けについては接近禁止を実現する2つの道|ストーカー規制法(警察)と民事保全(裁判所)の使い分けで解説しています。
加害者のSNSに居場所が書き込まれていた場合、書き込みそのものへの対処と、居場所を知られた経路への対処の両方が必要になります。安全を確保したうえで記録を残し、警察や弁護士と相談しながら、状況に合った手段を選んでいくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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