【ストーカートラブル】車にGPSを付けられていたら、どうすればいい?
つきまといを受けて引っ越しを考えている方や、すでに転居した方から「新しい住所を住民票から調べられてしまわないか」というご相談を受けることがあります。住民票の閲覧制限(正式には「住民基本台帳事務におけるDV等支援措置」)は、配偶者からの暴力の被害者だけのものと思われがちですが、ストーカー行為等の被害者も申し出ることができます。この記事では、申出ができる人、手続の流れ、制限で防げることと防げないことを順に整理します。
この記事は、2026年10月時点で総務省が公表している案内と、各市区町村の公開資料をもとに作成しています。申出書の様式や必要書類、運用の細部は市区町村ごとに異なるため、実際の手続の前に、住民票のある市区町村の窓口でご確認ください。
ストーカー被害でも閲覧制限を申し出られる
総務省の案内では、DV等支援措置を申し出られる人として、配偶者からの暴力の被害者、児童虐待の被害者と並んで、ストーカー規制法6条に規定するストーカー行為等の被害者で、さらに反復してつきまとい等または位置情報無承諾取得等をされるおそれがある方が挙げられています。これらに準ずる方も対象とされています。
相手が元配偶者である必要はなく、元交際相手、一度も交際していない知人、職場の関係者などからのつきまといでも、この要件にあたれば申出の対象になります。また、申出者と同じ住所に住んでいる家族についても、あわせて支援措置を求めることができます。
支援の必要性が確認されると、申出の相手方(加害者とされる人)から次の請求があっても、市区町村はこれを制限(拒否)します。
| 制限される手続 | 根拠となる条文 |
|---|---|
| 住民基本台帳の一部の写しの閲覧 | 住民基本台帳法11条、11条の2 |
| 住民票(除票を含む)の写し等の交付 | 住民基本台帳法12条、12条の2、12条の3 |
| 戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付 | 住民基本台帳法20条 |
戸籍の附票には、本籍地の市区町村で住所の履歴が記録されています。住民票だけを制限しても附票から転居先が分かるおそれがあるため、本籍地が別の市区町村にある場合は、本籍地側の扱いも確認しておくことが大切です。
申出から支援開始までの流れ
総務省が示している流れは、おおむね次のとおりです。
- 警察などの相談機関に、ストーカー被害について相談する。
- 住民票のある市区町村(戸籍の附票の制限も求める場合は本籍地の市区町村)に「住民基本台帳事務における支援措置申出書」を提出する。
- 市区町村が、相談機関の意見を聴く、またはストーカー規制法に基づく警告等実施書面などの提出を求めることで、支援の必要性を確認する。
- 確認の結果が申出者に連絡され、関係する市区町村にも申出書が転送される。
相談機関で申出書に意見を付してもらってから窓口へ提出する方法のほか、先に窓口で申し出て、市区町村が相談機関に照会する方法をとる自治体もあります。どちらの順序になるかは自治体の運用によりますので、窓口で確認してください。
窓口に持っていくもの
自治体によって細部は異なりますが、公開されている案内では、次のようなものが挙げられていることが多いようです。
- 支援措置申出書(窓口に備え付け)。
- 顔写真付きの本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど)。
- ストーカー規制法に基づく警告等実施書面など、被害を裏付ける書面(交付を受けている場合)。
- 代理人が手続する場合は、委任状や代理人の本人確認書類。
支援の期間は1年、延長は期間終了の1か月前から
支援措置の期間は、確認の結果が申出者に連絡された日から1年です。期間終了の1か月前から延長を申し出ることができ、延長が認められると、さらに1年間続きます。延長の際にも支援の必要性が改めて確認されるため、その間の被害の状況や相談の経過を手元に残しておくと説明がしやすくなります。
期間中に転居するなど申出書の内容に変更が生じたときは、改めて申出や変更の手続が必要になると案内している自治体があります。転居を予定している場合は、どの順序で届出と申出を行うかを事前に窓口で相談しておくと安心です。転居の手続全体の順序については、【ストーカートラブル】引っ越した先を知られないための手続の順序でも解説しています。
警察の警告がまだ出ていない場合
申出書に添付する書面として「ストーカー規制法に基づく警告等実施書面」が例示されているため、警告が出ていなければ申し出られないと考える方もいます。しかし、総務省の案内では、支援の必要性は相談機関の意見を聴くことでも確認するとされており、警告や禁止命令が出ていることが必須とはされていません。
一方で、市区町村は相談機関の意見などをもとに必要性を判断するため、相談の記録がまったくない段階で窓口に行っても、すぐに支援が始まるとは限りません。「つきまとわれそうで不安」という段階であっても、まずは警察に相談し、これまでの経緯や今後のおそれを具体的に伝えておくことが、申出の前提になると考えておくとよいでしょう。
警察への相談を進めても警告に至らない場合の考え方は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で整理しています。相談の順序に迷う方は、【ストーカートラブル】警察と弁護士のどちらに先に相談するか|ストーカー被害での順序もあわせてご覧ください。
閲覧制限で防げること・防げないこと
閲覧制限は、住民票や戸籍の附票という公的な記録から住所をたどられることを防ぐための制度です。効果が及ぶ範囲を知っておくと、ほかに手当てが必要な部分が見えてきます。
相手方本人や、相手方に頼まれた第三者からの請求
相手方が判明している場合、相手方からの閲覧や交付の請求は、不当な目的によるもの、または相当と認められないものとして拒否されます。
相手方が第三者になりすまして請求することを防ぐため、第三者からの請求については、写真付きの身分証明書の提示を求めるなど本人確認が厳格に行われます。さらに、相手方から依頼を受けた第三者による請求を防ぐため、請求の理由についても厳格な審査が行われるとされています。弁護士などが職務上の必要から請求する場合も、この厳格な審査の対象になります。もっとも、審査の具体的な運用は市区町村ごとに異なるため、相手方に代理人がついている場合などで心配な点があれば、窓口や弁護士に確認しておくと安心です。相手方の代理人とのやり取りについては、【ストーカートラブル】相手に弁護士がついた|相手方の代理人との話し方で解説しています。
裁判手続で住所を知られないための手当て
相手方から損害賠償を求める訴えを起こされた場合や、こちらから請求する場合には、訴状などに住所を記載するのが原則です。ただ、民事訴訟法には、住所を知られることで社会生活に著しい支障が生じるおそれがあるときに、住所を秘匿する申立ての制度が設けられています。閲覧制限とは別の手続ですので、裁判になる見込みがあるときは早めに準備しておくことが大切です。具体的な対応は、【ストーカートラブル】相手から逆に損害賠償を求められた|請求の中身を仕分け、住所や連絡先を渡さずに対応するで整理しています。
閲覧制限の外にある経路
閲覧制限が及ぶのは住民基本台帳と戸籍の附票に関する請求です。実際には、次のような経路から住所が知られてしまうこともあります。
- 共通の知人や家族からの情報。
- SNSに投稿した写真や位置情報。
- 郵便物や宅配便の伝票、転送の手続。
- 勤務先や通学先からの尾行。
- 不動産を所有している場合の登記事項証明書。
不動産登記については、DV被害者等が申し出ることで、登記事項証明書に住所に代わる事項を記載する措置が設けられています。そのほかの経路は、制度ではなく日々の行動の見直しで手当てすることになります。転居後に住所を突き止められた場合の対策は引っ越したのに住所を突き止められた|居場所を知られない対策で、郵便物から情報が漏れている疑いがある場合は【ストーカートラブル】郵便物が開けられている形跡がある|確かめ方・記録・情報が漏れる経路の止め方で解説しています。
申出の前後に整えておきたいこと
閲覧制限は、ほかの手立てと組み合わせることで効果を発揮しやすくなります。申出の前後に、次の点を確認しておくとよいでしょう。
- 本籍地が別の市区町村にある場合の、戸籍の附票の扱い。
- 同じ住所に住む家族を、あわせて支援の対象にするかどうか。
- 勤務先に、住所や勤務予定を外部に伝えないよう配慮を求めるかどうか。
- 相手方からの連絡や請求の窓口を、弁護士に一本化するかどうか。
- 警察への相談の経過や、つきまといの記録の保管方法。
勤務先への配慮の求め方については、【ストーカートラブル】勤務先に配慮を求める|勤務地や勤務時間の変更で取り上げています。
弁護士は、閲覧制限の申出そのものを代わりに行う立場ではありませんが、相手方との連絡窓口を引き受けることで、ご本人の住所や連絡先を相手方に伝えずにやり取りを進めることができます。誓約書や合意書を作成する場面でも、ご本人の住所を記載しない形を検討します。警察への相談に向けて経緯を書面にまとめることや、警告・禁止命令の申出を見据えた記録の整理もお手伝いできます。
よくあるご質問
閲覧制限を申し出たことは、相手に知られますか
市区町村が相手方に対して、申出があったことを知らせる仕組みではありません。ただし、相手方が住民票などを請求して交付を断られた場合に、何らかの制限がかかっていると察する可能性はあります。そのため、閲覧制限だけで安全が確保されると考えず、警察への相談や日々の行動の見直しとあわせて備えておくことが大切です。
一緒に住んでいる家族も対象にできますか
申出者と同じ住所に住んでいる方については、申出者とあわせて支援措置を求めることができます。子どもと一緒に転居する場合などは、申出の際に窓口で伝えてください。
1年がたったら制限は自動的に終わりますか
延長の申出をしなければ、期間の満了で支援措置は終わります。期間終了の1か月前から延長を申し出ることができ、その際には支援の必要性が改めて確認されます。更新の時期を忘れないよう、通知書の日付を控えておくとよいでしょう。
住民票の閲覧制限は、ストーカー被害を受けている方が新しい生活の場所を守るための有力な手立ての一つですが、住所が知られる経路のすべてを塞ぐものではありません。警察への相談、転居の段取り、相手方との連絡の窓口づくりを組み合わせながら、ご自身の状況に合った備えを進めていくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


