【ストーカートラブル】講師・医師・美容師などからつきまとわれたら?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

本記事は、2026年10月時点の法令と一般的な運用をもとに、客・患者・受講生の立場の方が、仕事上の相手からつきまといを受けた場合の考え方を整理したものです。個別の事情によって取れる手段は変わります。


美容室で担当してもらった美容師から、予約の際に登録した電話番号に私的なメッセージが届いた。通院先の医師から、診察とは関係のない誘いを受けるようになった。習い事の講師が、教室の外でも連絡してくる。こうした「仕事を通じて知り合った相手」からのつきまといは、珍しい相談ではありません。

 相手は、本来はサービスを提供する側として、こちらの氏名や連絡先、場合によっては住所や体調のことまで知っています。そのため、どこまでが仕事の範囲で、どこからが問題なのか判断しにくく、「通いにくくなるのが嫌で言い出せない」と悩む方も少なくありません。本記事では、客・患者・受講生の側から見た対応の順序を整理します。

 なお、従業員の方が客からつきまとわれている場合については、【ストーカートラブル】接客の仕事で客につきまとわれている|個人でできることで解説しています。

仕事上の相手からのつきまといに特有の事情

 元交際相手や見知らぬ人からのつきまといと比べると、仕事上の相手からのつきまといには、いくつか異なる点があります。

  • 相手が、仕事を通じてこちらの個人情報をすでに持っています。
  • 通院や講座の受講など、すぐには関係を切りにくい事情があることが多いです。
  • 施術・診察・成績評価などの場面で、相手の側に一定の影響力があります。
  • 相手の背後に、店舗・病院・学校といった組織があります。


 最後の点は、対応を考えるうえで手がかりになります。相手個人とだけ向き合うのではなく、相手が所属する組織に事情を伝え、担当の変更や情報管理の確認を求めるという道があるためです。職種ごとの目安は、次のとおりです。

相手の職種相手が知りうる情報の例相談できる組織側の窓口の例
美容師・ネイリスト・エステティシャン氏名、電話番号、予約履歴、来店時の会話店長、運営会社の本部、予約サイトの運営会社
医師・歯科医師・看護師などの医療職住所、病歴、保険証の情報、家族構成病院の患者相談窓口、都道府県などの医療安全支援センター
塾・語学教室・習い事の講師、大学の教員住所、勤務先や学校名、成績、保護者の連絡先教室の運営会社、学校のハラスメント相談窓口


どこからがストーカー規制法の対象になるのか

 ストーカー規制法は、恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことへの恨みの感情を満たす目的で、つきまとい、待ち伏せ、面会や交際の要求、拒まれた後の連続した電話やメッセージなどを行うことを「つきまとい等」として禁止しています。これを繰り返すと「ストーカー行為」となり、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象となります。

 仕事上の相手の場合、予約の確認や検査結果の連絡など、業務として必要な連絡もあります。問題になるのは、業務とは関係のない誘い、私的な内容のメッセージ、店や病院の外での待ち伏せといった行為です。最初の1回の連絡だけで直ちにストーカー行為と評価されるわけではありませんが、断った後も続く場合や、自宅や勤務先に現れるような場合には、警察への相談を考えてよい段階といえます。

 メッセージによるつきまといの考え方は、SNS・LINEの執拗な連絡はストーカーになる?警告・禁止命令の流れもあわせてご覧ください。

仕事で得た個人情報を私的に使われたという問題

 仕事上の相手からのつきまといでは、ストーカー規制法とは別に、個人情報の扱いも問題になります。弁護士ドットコムにも、美容院で記入した顧客情報を削除してもらったはずなのに、担当した美容師から個人的な連絡が続いたという相談が寄せられています。

 個人情報保護法は、事業者に対し、あらかじめ特定した利用目的の範囲内で個人情報を扱うこと(同法18条)や、従業員が個人情報を適切に扱うよう監督すること(同法24条)を求めています。予約や施術のために預けた連絡先を、従業員が私的な連絡に使った場合、事業者の管理のあり方が問われることがあります。目的外で使われている場合、本人は事業者に対して利用の停止や消去を求めることができます(同法35条)。

 また、医師などの医療職には、業務上知った人の秘密を漏らすことを処罰する規定もあります(刑法134条)。病歴などを第三者に話されたと分かった場合は、別の問題として検討の対象になります。

被害に気づいたら最初に整えること


記録を残す

 届いたメッセージは、送信者の表示と日時が分かる形で画面を保存します。あわせて、予約履歴や来店・受診の記録、相手が店の外に現れた日時と場所をメモしておくと、後で「仕事上の連絡ではなかった」ことを説明しやすくなります。相手のアカウントをブロックする場合も、その前にやり取りの全体を保存しておくと安心です。

相手への返信は最小限にする

 返信を重ねると、やり取りが続いていると受け取られるおそれがあります。返す場合は「業務以外のご連絡はお控えください」といった短い一文にとどめ、その後は応じないという方針が考えられます。直接伝えることに不安がある場合は、次に述べる組織側の窓口や弁護士を通して伝える方法もあります。

通う場所をどうするか決める

 美容室や習い事であれば、利用先を変えることも選択肢です。語学教室や学習塾、エステなどの一部の継続的なサービスには、特定商取引法にもとづく中途解約の仕組みがあり、違約金の上限が定められています。一方、通院を続ける必要がある場合は、病院に事情を伝えて担当医の変更を求める方法があります。

店舗・病院・学校に相談するときの伝え方

 組織に相談するときは、感情的な表現を避け、事実と求めることを分けて伝えると話が進みやすくなります。

  1. いつ、どのような連絡や行動があったかを、時系列で示します。
  2. 求めることを具体的に伝えます(担当の変更、本人を接触させないこと、個人情報の管理状況の確認、利用停止など)。
  3. 回答の期限と、回答してほしい方法を伝えます。
  4. 電話で話した場合も、要点をメールや書面で送り、記録に残します。


 組織の側がどのような対策をとれるかは、【ストーカートラブル】職場や店舗で客からつきまとわれる|従業員を守るために会社ができることの内容が、立場を入れ替えて参考になります。習い事やジムの場合は、【ストーカートラブル】習い事・ジムで知り合った人からのつきまとい|施設への相談と、警察・弁護士へ進む目安も参考にしてください。

 ただし、相手が個人経営の美容室のオーナーや開業医であるなど、相手本人が組織の責任者である場合には、組織に相談する道は実質的にありません。組織が相手をかばう対応をとる場合も含め、そのときは警察や弁護士への相談を先に考えます。

警察・弁護士への相談を考える目安

 次のような状況がある場合は、組織への相談と並行して、警察や弁護士への相談を検討してよいと考えられます。

  • はっきり断った後も、連絡や誘いが続いている。
  • 自宅、勤務先、最寄り駅など、店や病院の外に相手が現れた。
  • 仕事で伝えた住所や連絡先が、私的に使われた形跡がある。
  • 「来なくなったら困る」など、こちらを不安にさせる言葉があった。


 警察は、ストーカー規制法にもとづき、相手に警告を出したり、公安委員会が禁止命令を出したりする手続を進めることがあります。禁止命令に違反してストーカー行為をした場合は、2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金と、より重い罰則の対象になります。近年の法改正では、被害者からの申出を待たずに警察が警告を出せる仕組みも整えられています。相談したのに警告が出ない場合の考え方は、【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段で解説しています。

 弁護士に依頼した場合は、相手本人に接触の中止を求める通知を送るのと同時に、所属する事業者に対しても、個人情報の管理と従業員への監督を求める申入れを行うといった、二方向からの対応が考えられます。代理人を立てる意味については、【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。被害の程度によっては、慰謝料の請求や接近禁止の仮処分を検討することもあります。

よくあるご質問


相手の勤務先に伝えたら、かえって逆恨みされないか心配です

 勤務先から注意を受けたことをきっかけに、相手の態度が変わる可能性はあります。不安が大きい場合は、組織に伝える前に警察に相談しておく、弁護士を通じて組織と本人に同時に伝えるなど、伝える順序と方法を工夫することで、その後の備えを整えやすくなります。

相手が退職・独立した後も連絡が続いています

 相手が組織を離れると、組織による監督は期待できなくなります。その場合でも、ストーカー規制法による警告や禁止命令、民事上の請求は利用できます。退職時に顧客情報を持ち出していた疑いがある場合は、元の勤務先に事情を伝えることにも意味があります。

子どもが塾の講師から個人的な連絡を受けています

 未成年の場合は、本人が「大ごとにしたくない」と考えて保護者に話さないことがあります。保護者から塾の運営会社に事情を伝え、講師の担当変更や連絡手段の制限を求めることが考えられます。詳しくは、【ストーカートラブル】未成年の子どもがつきまといに遭っている|親ができることをご覧ください。

まとめ

 講師・医師・美容師など、仕事上の相手からのつきまといは、相手がすでに個人情報を持っていること、関係をすぐには切りにくいことに難しさがあります。一方で、相手の背後に組織があるため、組織への相談、警察への相談、弁護士による通知という複数の道を組み合わせられるという面もあります。記録を残しながら、ご自身が通い続けたいのか、離れたいのかも含めて、進め方を整理していくことが大切です。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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