【ストーカートラブル】贈り物や手紙が繰り返し届く、受け取ってしまったら不利になる?

若井亮

若井亮

テーマ:ストーカートラブル

この記事は、2026年10月時点の法令(ストーカー行為等の規制等に関する法律、民法など)をもとにしています。令和3年の改正で加わった文書の連続送付の規制と、令和7年の改正で設けられた警察の職権による警告、紛失防止タグに関する規制を反映しています。実際の扱いは、個別の事情によって変わります。


好意を断った相手や、別れた元交際相手から、手紙や贈り物が何度も届くことがあります。ポストに直接入れられていたり、宅配便で届いたりして、気づいたときにはもう手元にあるということも少なくありません。「受け取ってしまったから、好意を受け入れたと思われるのではないか」「受け取ったことを理由に、警察に取り合ってもらえないのではないか」と不安になる方もいらっしゃいます。

 この記事では、手紙や贈り物を受け取ってしまった方に向けて、受け取ったことがどう評価されるのか、届いたものをどう扱えばよいのか、拒む意思をどう伝えるのかを順に整理します。謝罪の手紙が届いた場合の判断については【ストーカートラブル】相手から謝罪の手紙が届いた|受け取るかどうかで扱っていますので、あわせてご覧ください。

受け取ってしまったこと自体で、不利になるわけではありません

 手紙や贈り物の多くは、こちらが選ぶ間もなく届きます。ポストに入っていたものや、玄関先に置かれていたものを手に取ったからといって、それだけで相手の好意を受け入れたことにはなりません。受け取ったことを理由に、ストーカー規制法による警告などを求められなくなるわけでもありません。

 気をつけたいのは、受け取ったこと自体よりも、受け取った後の対応です。お礼の返事をした、贈り物を身に着けた写真を見せた、お返しをした、といった対応が重なると、相手が「受け入れてもらえている」と受け止めやすくなります。後で警察や弁護士が関わったときにも、こちらが拒んでいたことが相手に伝わっていたかどうかが確かめられる場面があります。

繰り返し届く手紙や贈り物と、ストーカー規制法

 ストーカー規制法は、恋愛感情などの好意の感情や、それが満たされなかったことへの怨恨の感情を満たす目的で行われる「つきまとい等」を規制しています。手紙や贈り物は、届き方や中身によって、次のような行為に当たる可能性があります。

届き方・中身当たる可能性のある行為
自宅や勤務先まで持ってくる、ポストに直接入れに来る住居等への押し掛け、付近をみだりにうろつくこと(2条1項1号)
帰宅時間や服装など、行動を見ていると分かる内容監視していると告げる行為(2号)
「会ってほしい」「受け取ってほしい」と求める内容面会、交際その他の義務のないことの要求(3号)
拒んだ後も手紙が続けて届く拒まれたにもかかわらず、連続して文書を送付すること(5号)
不快な物や、性的な内容の物が入っている汚物等の送付(6号)、性的羞恥心を害する行為(8号)


 このほか、贈り物にGPS機器や紛失防止タグが仕込まれていた場合には、位置情報無承諾取得等として規制の対象になることがあります。詳しくはGPS・AirTagで居場所を追跡された|改正ストーカー規制法と位置情報無承諾取得の罪をご覧ください。

「拒まれたにもかかわらず」という条件

 手紙の連続送付(5号)は、こちらが拒んだにもかかわらず続けられたことが条件になっています。拒む意思は、はっきり言葉にしていなくても周囲の状況から認められることがありますが、相手がそれを認識していたことが必要とされます。黙って受け取り続けていると、この点が争われることがあるため、どこかの時点で拒む意思を相手に伝えておくことが意味を持ちます。伝え方は後で触れます。

 一方で、自宅への押し掛けや面会の要求などは、拒んだかどうかとは別に、その行為自体が対象になります。受け取ったことで、これらの行為が問題にならなくなるわけではありません。

一度きりか、繰り返されているか

 つきまとい等が同じ相手に繰り返されると「ストーカー行為」として処罰の対象になり、繰り返しに至る前の段階でも、警告などの対象になることがあります。回数による違いは連絡は1回だけだった|つきまとい等とストーカー行為の違いで整理しています。届いた回数や日付は、この点を判断する材料になります。

受け取った後に、控えたい対応

 届いたものを受け取ってしまった後は、次のような対応を控えると、拒む意思との食い違いが生じにくくなります。

  • お礼や感想を伝える返事を出すこと。
  • 贈り物を使ったり身に着けたりして、相手の目に入るところに出すこと。
  • お返しの品を贈ること。
  • 返すために、相手と直接会うこと。
  • 怖さから、届いたものをすぐに捨てること。


 とくに、返すために会うことは勧めにくい対応です。直接会うことで、相手が話し合いの機会ができたと受け止め、面会の要求が強まるおそれがあります。返したい場合は、警察や弁護士を通す方法を検討してください。

 すぐに捨てることを控えたいのは、届いたもの自体が、行為の内容を示す記録になるためです。手元に置いておくのが気持ちのうえでつらい場合は、写真で記録したうえで袋に入れ、目に触れない場所に保管する方法もあります。

「受け取ったのだから返せ」「代金を払え」と言われたら

 後になって相手から、贈り物を返すよう求められたり、代金を請求されたりすることもあります。民法上、贈与は、あげる側の申し出を受け取る側が受け入れることで成り立つ契約です(民法549条)。こちらが受け入れていないものを一方的に置いていかれた場合には、そもそも贈与が成り立っていないと考える余地があります。

 受け入れていた場合でも、書面によらない贈与は、引き渡しが済んだ部分については後から解除できないとされています(民法550条)。そのため、一度渡されたものの代金をあらためて支払う義務は、通常はありません。ただし、婚約を前提とした贈り物など、事情によって扱いが変わることもあります。返すかどうかを決める前に、相手との連絡を増やさずに済む方法で整理することが大切です。

届いたものの扱い方


開ける前と開けるとき


  1. 開ける前に、封筒や箱の外側、宛名、消印、伝票を写真に撮ります。
  2. 開けるときは、できれば動画で撮影しながら開けます。
  3. 差出人の指紋などが残っている可能性があるため、手袋をして扱い、封筒や伝票も残しておきます。
  4. 中身に小型の機器が入っていないかを確かめます。ぬいぐるみや置物などは、とくに注意します。
  5. 不審な機器を見つけたら、自分で壊したり捨てたりせず、そのまま警察に相談します。


 盗聴器が疑われる場合の調べ方は【ストーカートラブル】自宅に盗聴器が仕掛けられているかもしれない|調べ方と法的な手段で扱っています。

保管と記録

 届いたものは、一つずつ袋に分けて、届いた日付を書いておくと後で整理しやすくなります。食べ物など保管できないものは、写真で記録してから処分します。あわせて、次のような記録をつけておくと、警察や弁護士に経緯を伝えやすくなります。

記録する項目書いておく内容の例
届いた日時気づいた日時と、届いたと思われる時間帯
届き方郵便、宅配便、ポストへの直接投函、玄関先への置き去り、手渡し
中身手紙の要旨、贈り物の種類
自分の対応受け取ったか、返事をしたか、誰かに相談したか


 郵便受けの中身が抜かれていたり、開けられていたりする様子がある場合は、【ストーカートラブル】郵便物が開けられている形跡がある|確かめ方・記録・情報が漏れる経路の止め方もあわせてご覧ください。

受け取りを拒む方法と、その使いどころ

 郵便物は、開封する前であれば受け取りを拒むことができます。「受取拒絶」と書いて押印または署名した紙を郵便物に貼り、配達員に渡すか郵便ポストに入れる方法が一般的です。宅配便も、受け取る前であれば配達員に申し出ることで受け取りを断れます。

 受け取りを拒むと、拒む意思が相手に伝わる一方で、届いたものが手元に残らず、記録が乏しくなります。拒まれたことに相手が反発するおそれもあります。差出人の分からない届け物について、警視庁は受け取りを拒むよう呼びかけ、受け取ってしまった場合は開封せずに写真を撮って警察に提出するよう案内しています。記録を残す必要性と身の安全のどちらを重く見るかは、相手との関係や危険の程度によって変わるため、迷う場合は相談のうえで決めることをおすすめします。

拒む意思の伝え方

 拒む意思を伝えるために、相手と直接会って話す必要はありません。会うことで面会の要求に応じた形になりやすいため、避けたほうがよい場面が多いです。考えられる伝え方は次のとおりです。

  • 一度だけ、短い文面で「今後、手紙や贈り物を送らないでください」と伝える方法。
  • 警察に相談し、警察から相手に伝えてもらう方法。
  • 弁護士に依頼し、弁護士名の書面で伝えてもらう方法。


 自分で伝える場合は、理由の説明や相手を責める言葉を加えず、用件だけにとどめると、やり取りが続くきっかけを作りにくくなります。送った文面と日時は残しておいてください。相手を刺激しにくい関係の断ち方はストーカーを刺激せず関係を断つ|安全な接触遮断と証拠の残し方で詳しく解説しています。

警察と弁護士に相談するとき

 警察に相談すると、つきまとい等が繰り返されるおそれがある場合に、相手への警告や、公安委員会による禁止命令などにつながることがあります。令和7年の改正で、被害者からの申出がなくても警察が職権で警告できるようになりました。届いたものと記録を持参すると、状況を説明しやすくなります。

 相談しても警告が出ない場合に取れる手段は【ストーカートラブル】警察に相談したのに警告が出ない|次に取れる手段、自宅まで届けに来られている場合の建物側の対策は【ストーカートラブル】自宅マンションに来られている|管理会社・オートロック・防犯カメラでできることで扱っています。

 相手が知り合いで警察沙汰にすることに抵抗がある場合や、相手の反応が心配な場合は、弁護士が窓口になる方法もあります。受け取りを断る意思を弁護士から伝え、届いたものの返却も、こちらが相手と顔を合わせずに進めることができます。代理人を立てる意味については【ストーカートラブル】弁護士に依頼すると何が変わるのか|ストーカー被害で代理人を立てる意味をご覧ください。

よくあるご質問


一度お礼の返事をしてしまいました。もう相談できないのでしょうか

 相談できなくなるわけではありません。返事をした経緯も含めて、そのまま伝えてください。その後に拒む意思を伝え、それでも届き続けているのであれば、その後の経過が判断の中心になります。

受け取った贈り物は捨ててもよいのでしょうか

 届いたもの自体が記録になるため、すぐに捨てることは控えたほうが無難です。相手から返すよう求められる可能性もあるため、処分を考える場合は、写真を残し、警察や弁護士に相談してからにすると安心です。

家族あてに手紙が届いた場合も、同じように扱われますか

 ストーカー規制法は、本人だけでなく、同居の親族など本人と密接な関係にある人に対する行為も対象にしています。家族あてに届いたものも、同じように記録して保管してください。

まとめ


  • 手紙や贈り物を受け取ってしまっても、それだけで不利になるわけではありません。
  • 不利に働きやすいのは、お礼の返事やお返しなど、受け入れていると受け止められる対応です。
  • 届いたものは捨てずに、写真と記録を残して保管します。
  • 拒む意思は、直接会わずに、一度短く伝えるか、警察や弁護士を通して伝えます。
  • 受け取りを拒むかどうかは、記録を残す必要性と身の安全を比べて決めます。


ご相談について

 手紙や贈り物が届くたびに、受け取ってよかったのか、どう返せばよいのかと迷う方は少なくありません。受け取ってしまった後でも、記録を整え、拒む意思を伝える方法を選ぶことで、取れる手立ては残っています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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