【男女トラブル・マッチングアプリ】アプリで会った相手に、会話を録音されていたと分かったら?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

「アプリで知り合った相手と食事をした後、『あの日の会話は全部録ってある』と言われた」「自分の発言の一部を録音で聞かされ、謝罪とお金を求められている」。マッチングアプリで会った相手との間で、こうしたご相談が寄せられることがあります。反対に、身を守るつもりで録音していたことを相手に知られ、強く責められているという方からのご相談もあります。

 会話を無断で録音することについては、「自分が参加している会話なら録音しても違法ではない」という説明がよく見られます。この説明自体は誤りではありません。ただ、録音された側にとって本当に気になるのは、その録音がこの先どのように使われるのか、そして自分は何をしておくべきかという点ではないでしょうか。

 この記事では、マッチングアプリで会った相手に会話を録音されていたと分かった方に向けて、録音の法的な位置づけと、使われ方ごとの考え方、直後に気をつけたいことを整理します。自分で録音しておくべきかどうかという点は、別の記事で詳しく扱っています。

本記事は2026年10月時点の法令をもとに作成しています。ここでは、会話の相手本人が録音していた場面を中心に扱います。


録音されていたと分かったとき、最初に整理したいこと


相手が自分との会話を録音しただけでは、違法とされにくい

 会話の当事者の一方が、相手の同意を得ずに録音することを「秘密録音」と呼ぶことがあります。最高裁判所は、詐欺の被害を受けたと考えた人が相手との会話を録音した事案で、相手の同意を得ないで行われたものであっても違法ではないという判断を示しています(最高裁平成12年7月12日決定)。会話の内容は相手にはすでに伝わっているため、その相手が記録しておくこと自体は、プライバシーの侵害の程度が小さいと考えられているためです。

 民事の裁判でも、無断で録音されたことだけを理由に証拠から外されることは多くありません。証拠として認められないのは、著しく反社会的な手段で、人の自由を拘束するなどして録音された場合に限られるという考え方が示されています(東京高裁昭和52年7月15日判決)。録音されていたこと自体を理由に相手の責任を問うのは難しいことが多いという点は、最初に押さえておきたいところです。

問題になりやすいのは、録音の「使われ方」

 一方で、会話の相手が録音を手元に保管しておくことと、それを他人に聞かせたり、要求の材料にしたりすることは、別に考えられています。たとえば、次のような使われ方は法的な問題になることがあります。

  • 録音をSNSや掲示板に公開する、勤務先や家族に送る。
  • 「録音を聞かせる」と告げて、金銭や謝罪、交際の継続を求める。
  • 録音の一部だけを切り取り、事実と異なる印象を広める。


 公開や送付は、内容によってプライバシーの侵害や名誉毀損として損害賠償の対象になり得ます(民法709条、710条)。名誉毀損は刑事罰の対象にもなっています(刑法230条)。また、録音を材料に害を告げて要求をすれば、脅迫罪(刑法222条)、恐喝罪(同法249条)、強要罪(同法223条)にあたる可能性があります。

会話に加わっていない場面の録音は、評価が変わる

 自分がトイレなどで席を外している間に置かれた機器で、ほかの人との会話や電話を録音されていたような場合は、会話の当事者による録音とは言えません。いわゆる盗聴にあたる場面では、録音そのもののプライバシー侵害の程度が大きいと評価されやすくなります。録音機器を置くために自宅に無断で立ち入っていれば、住居侵入罪(刑法130条)が問題になることもあります。どの場面で、誰が録音したのかによって見通しが変わるため、分かる範囲で経緯を整理しておくことが役に立ちます。

場面ごとに見る、録音への向き合い方

 録音されていたと分かったときの対応は、相手がそれを何に使おうとしているかで変わります。主な場面を整理すると、次のようになります。

場面法的な見方考えられる対応
相手が手元に保管しているだけ多くの場合、直ちに違法とはされにくい削除を求める場合は話し合いが中心になる
証拠として使うと言われた証拠として扱われる可能性がある発言の前後関係を確認し、安易に認めない
録音を材料に金銭などを求められた恐喝・脅迫などにあたる可能性がある応じずに記録を残し、弁護士や警察に相談する
SNSなどに公開された・公開を予告されたプライバシー侵害や名誉毀損の可能性がある削除の請求、発信者の特定、差止めを検討する


「証拠として使う」と言われたとき

 お金の貸し借りや、関係を持ったときの同意の有無、別れ話の内容などをめぐって、相手が自分の主張の裏付けとして録音していることがあります。この場合、録音は裁判などで証拠として扱われる可能性があります。ただ、録音は会話の一部しか残していないことも多く、前後のやり取りや、録音されていない場面の事情によって意味が変わることがあります。録音があると聞かされても、その場で慌てて事実と異なる内容を認めたり、謝罪文を書いたりしないことが大切です。

 関係を持ったことについて同意の有無が争われている場合は、刑事手続に進む可能性も視野に入れて対応する必要があります。この点は、【男女トラブル】アプリで知り合った相手に「同意はなかった」と言われたで詳しく扱っています。

録音を材料に、お金や要求を持ちかけられたとき

 「録音を職場に送る」「家族に聞かせる」と告げられ、金銭や謝罪を求められることがあります。権利の行使として正当な範囲を超え、相手を怖がらせて要求を通そうとする言動は、恐喝や脅迫にあたる可能性があります。正当な請求と脅しの境目については、「訴えるぞ」「警察に行くぞ」は脅迫か|正当な権利行使との境界線も参考にしてください。

 求められるままに支払うと、その後に追加の要求が続くことがあります。即答はせず、相手からのメッセージや通話の記録を残したうえで、弁護士や警察に相談することを検討してください。

公開された、または公開すると言われたとき

 録音がSNSなどに公開された場合は、投稿先のサービスに削除を求める方法や、投稿者を特定するための発信者情報開示請求が考えられます。2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法では、一定規模以上のサービス事業者に、削除の申出への対応を迅速に行うことが求められています。公開を予告されている段階でできることは、【不当要求対応】SNSでの『晒し』を予告された|投稿される前にできることで、アプリのやり取りを公開された場面については、【男女トラブル】アプリのやり取りをスクリーンショットで晒されたで整理しています。

録音されていたと分かった直後に気をつけたいこと


相手の端末を取り上げたり、その場で消させたりしない

 録音に気づいた場面で、相手のスマートフォンを取り上げて録音を消したくなるかもしれません。しかし、力ずくで端末を奪ったり壊したりすると、暴行罪(刑法208条)や器物損壊罪(同法261条)など、今度は自分が責任を問われるおそれがあります。削除を求めるとしても、言葉で伝えるにとどめ、その場で解決しようとしないほうが安全です。

相手とのやり取りを残しておく

 録音の存在を告げられたメッセージや、その後のやり取りは、後で相手の言動を示す材料になります。アプリのメッセージは、相手の退会や強制退会によって見られなくなることがあるため、画面を撮影するなどして早めに保存しておくと安心です。保存の順序については、【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序をご覧ください。

削除を求めるなら、約束を書面に残す

 相手が手元に保管しているだけの録音について、法的に削除を強制できる場面は限られています。そのため、実際には話し合いで削除と第三者への不提供を約束してもらい、その内容を合意書に残す方法がとられることが多くなります。当事者どうしで直接話すと感情的になりやすいため、弁護士が窓口となって進めることもできます。削除の約束は、口頭ではなく書面に残しておくことで、後から問題になったときの手がかりになります。実際に合意書を結んだ例として、【解決事例】マッチングアプリで渡した個人情報や画像が不安に|ご依頼当日に削除と不拡散の合意書を締結もあわせてご覧ください。

相手の名前や連絡先が分からないとき


アプリの登録名しか知らない場合

 マッチングアプリで会っただけの相手だと、本名や住所が分からないことも少なくありません。相手の言動に対して削除や損害賠償を求めるには、まず相手を特定する必要があります。弁護士が事件を受任した場合には、弁護士会を通じて運営会社などに情報の報告を求める弁護士会照会(弁護士法23条の2)を使うことが考えられます。ただし、回答するかどうかは照会先の判断による部分があります。詳しくは、【男女トラブル・マッチングアプリ】マッチングアプリの運営会社に、相手の情報開示を求められる?で解説しています。

運営会社への通報も選択肢になる

 録音を材料にした要求や嫌がらせは、多くのアプリで利用規約違反とされています。運営会社に通報すると、相手のアカウントが利用停止になることがあります。ただし、通報によって相手との連絡手段がなくなり、やり取りを後から確認できなくなることもあるため、記録を保存してから通報するのが順序としては無難です。

よくあるご質問


録音を消すよう相手に求める権利はありますか?

 相手が手元に保管しているだけの段階では、法律上の権利として削除を強制できる場面は限られます。ただ、録音を公開すると予告されている、要求の材料にされているといった事情があれば、差止めや損害賠償を求めることが考えられます。まずは話し合いで削除と不提供の約束を求め、合意書に残す方法が現実的です。

こちらも相手との会話を録音しておいてよいですか?

 自分が参加している会話を自衛のために録音することは、一般的には違法とされにくいと考えられています。ただし、録音したものを公開したり、要求の材料に使ったりすると、今度は自分が責任を問われるおそれがあります。録音の残し方は、【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方で詳しく扱っています。

録音の内容が自分に不利なときは、どうすればよいですか?

 無断で録音されたことを理由に、証拠から外してもらえることは多くありません。そのため、録音の内容を前提に、前後の経緯や録音されていない事情を説明していくことになります。録音の一部しか示されていない場合は、全体を確認したうえで対応を考えることが大切です。

まとめ


  1. 会話の相手本人が録音することは、相手の同意がなくても直ちに違法とはされにくいとされています(最高裁平成12年7月12日決定)。
  2. 無断の録音でも、民事の裁判で証拠として扱われることが多くあります(東京高裁昭和52年7月15日判決)。
  3. 録音の公開や送付は、プライバシーの侵害や名誉毀損として損害賠償の対象になり得ます(民法709条、710条、刑法230条)。
  4. 録音を材料にした金銭などの要求は、恐喝や脅迫にあたる可能性があります(刑法249条、222条)。
  5. 相手の端末を力ずくで奪ったり壊したりすると、自分が責任を問われるおそれがあります(刑法208条、261条)。
  6. 削除を求める場合は、削除と不提供の約束を合意書に残すことが有効です。
  7. 相手の情報が分からない場合は、弁護士会照会などで特定を検討します(弁護士法23条の2)。


マッチングアプリで会った相手の録音にお困りの方へ

 弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。アプリで会った相手に会話を録音され、公開や要求をほのめかされている方はもちろん、自分の録音について相手から責任を問われている方からのご相談もお受けしています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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