【男女トラブル】別れた恋人に貸していた鍵付きの物置やトランクルームはどうなる?
この記事は、2020年4月1日に施行された改正民法(消費貸借や消滅時効の規定)を前提に解説しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。
交際相手から「親が急に入院して、支払いが間に合わない」と頼まれ、入院費をいったん貸したものの、その後なかなか返してもらえないというご相談があります。家族の病気という事情があるだけに強く言い出しにくく、催促を先延ばしにしているうちに別れ話が持ち上がったり、連絡が途絶えたりすることも少なくありません。
この問題を整理するうえで大切なのは、「誰に貸したのか」「貸したと言えるのか」「どの順で求めるのか」という3つの点です。この記事では、恋人の家族の入院費として渡したお金について、返還を求める前に確かめておきたいことと、進め方の目安を解説します。
最初に確かめたいのは「誰に貸したのか」
入院費の支払いに使われたお金でも、借りた人(借主)が恋人なのか、入院した家族本人なのかで、返済を求める相手が変わります。使い道が家族の入院費であっても、それだけで家族が借主になるわけではありません。
恋人が借主と考えられる場面
恋人から「入院費が足りないから貸してほしい」と頼まれ、恋人の口座に振り込んだり、恋人に現金を手渡したりした場合、お金の貸し借りの約束をしたのは恋人とあなたです。恋人が受け取ったお金を家族の支払いに充てたとしても、それは恋人側の使い道の問題であり、返済を求める相手は基本的に恋人と考えることになります。
家族本人が借主と考えられる場面
入院した家族本人やその配偶者から直接頼まれた、家族名義の借用書がある、家族本人が「必ず返します」とメッセージを送ってきている、といった事情があれば、家族本人が借主と評価される可能性があります。恋人は家族の代わりに話を取り次いだだけ、という整理になることもあります。
判断の手がかりになる事情
| 確かめたい事情 | 恋人が借主と考えやすい例 | 家族本人が借主と考えやすい例 |
|---|---|---|
| 誰から頼まれたか | 恋人から頼まれた | 家族本人から頼まれた |
| お金の渡し先 | 恋人の口座・恋人への手渡し | 家族の口座・家族への手渡し |
| 返済の約束をした人 | 恋人が「返す」と言っている | 家族本人が「返す」と言っている |
| 借用書やメモの名義 | 恋人の名前 | 家族本人の名前 |
実際には、恋人が頼み、家族が受け取り、返済の話は誰もはっきりさせていない、というように事情が入り混じっていることもあります。病院の窓口へ直接支払った場合も含めて、誰との約束でお金を出したのかを、やり取りの記録から一つずつ確かめていくことになります。
家族だから返す義務がある、とは限らない
恋人が借主である場合、その親やきょうだいが、家族であるという理由だけで返済の義務を負うことはありません。民法には親族間の扶養義務(民法877条)がありますが、これは家族の生活を支えるための義務であって、家族の誰かが第三者から借りたお金を肩代わりする義務とは別のものです。家族の入院費を誰が負担するのかという考え方は、【親子問題】成人した子の入院費・治療費を誰が払うのか|扶養義務と保証人欄の意味でも触れています。
家族に返済を求められるのは、家族が保証人になる約束をしていた場合などに限られます。保証の約束は書面でしなければ効力を生じないため(民法446条2項)、口頭で「家族も責任を持つ」と言われただけでは足りないと考えられます。反対に、家族本人が借主である場合、恋人が当然に返済義務を負うわけではなく、恋人自身が借主や保証人になっているかどうかで判断することになります。
「貸した」と言えるかどうか|贈与との分かれ目
お金を渡した事実があっても、相手から「お見舞いとしてもらったものだ」「援助してくれたと思っていた」と言われることがあります。お金の貸し借り(消費貸借)は、返還の約束をしたうえでお金を渡すことで成り立つため(民法587条)、返す約束がなかったと評価されると、法的には贈与と扱われるおそれがあります。
家族の入院という事情は、援助と受け止められやすい面があります。そのため、返還を求める側が「返してもらう約束だった」ことを示せるかどうかが分かれ目になります。手がかりになるのは、たとえば次のような記録です。
- 「貸してほしい」「必ず返す」「来月には返せる」といったLINEやメールのやり取り。
- いつ・いくら渡したかが分かる振込明細や通帳の記録。
- 借用書や、返済額・返済時期を書いたメモ。
- 一部でも返済を受けたことが分かる記録。
- 入院の時期や病院名など、相手から伝えられた事情の記録。
借用書がなくても、やり取りの記録から貸し借りが認められることはあります。記録は消さずに、スクリーンショットや印刷で保存しておくことをおすすめします。借用書がない場合の考え方は恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?、贈与との違いは別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いでも解説しています。
入院の話が事実でなかったと分かった場合
後になって、家族が入院していなかった、聞いていた事情と食い違う点が次々に出てきた、といったことが分かる場合もあります。最初からだますつもりでお金を受け取っていたのであれば、詐欺罪(刑法246条)にあたる可能性があり、警察への相談を検討する余地があります。
もっとも、返済が遅れているというだけで詐欺と評価するのは難しいことが多く、警察も個人間のお金の貸し借りには慎重な姿勢をとります。刑事手続とは別に、民事でお金の返還を求める道は残りますので、両方の可能性を視野に入れて事実を整理しておくことが大切です。病気の話を信じてお金を渡していたケースについては、【男女トラブル】病気や不幸の話を信じてお金を渡していた|嘘だと分かった後で詳しく扱っています。
返してもらうための進め方
借主が誰か、貸し借りを示す記録があるかを確かめたら、次のような順で返済を求めていくのが一般的です。
- LINEやメールなど記録に残る方法で、金額と返済の希望時期を伝えます。
- 返事がない、または話がまとまらない場合は、内容証明郵便で請求します。
- それでも解決しない場合は、民事調停、支払督促、少額訴訟(60万円以下の請求)、通常の訴訟といった裁判所の手続を検討します。
返済の期限を決めていなかった場合
「落ち着いたら返す」など期限を決めずに貸した場合、貸した側は、相当の期間を定めて返すよう求めることができます(民法591条1項)。家族の入院が続いている事情もあり得ますので、すぐに全額をと迫るのではなく、準備の時間を見込んだ期限を示して請求するのが穏当です。
分割で返したいと言われた場合
入院費の支払いが重なっているなどの事情で、相手から分割での返済を申し出られることもあります。応じる場合は、総額、毎月の金額、支払日、振込先、支払いが滞ったときの扱いを書面にまとめ、双方が署名しておくと、後の行き違いを防ぎやすくなります。
時効にも注意が必要です
貸したお金を返してもらう権利は、請求できることを知った時から5年、請求できる時から10年で、時効により消滅するおそれがあります(民法166条1項)。内容証明郵便などで請求すると、時効の完成が6か月猶予されますが(民法150条1項)、その間に調停や訴訟などの手続をとらなければ猶予は続きません。時効の考え方は男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかもご参照ください。
請求するときに避けたい対応
返してもらえない状況が続くと、焦りから強い手段をとりたくなることがあります。しかし、次のような対応は、かえってご自身の立場を不利にするおそれがあります。
- 恋人の勤務先や、家族が入院している病院に出向いて返済を迫ること。
- 共通の知人やSNSで、お金を返さない人だと広めること。
- 「返さないなら家族や職場に知らせる」など、相手を怖がらせる言葉で求めること。
- 借主ではない家族に、返済の義務があるかのように繰り返し請求すること。
- 夜間や深夜に、何度も電話やメッセージを送ること。
内容によっては、業務妨害、名誉毀損、脅迫や恐喝といった問題に発展するおそれがあります。家族に連絡をとる必要がある場合も、事実関係を落ち着いて伝えるにとどめ、支払いを強いる言い方は避けることが大切です。
別れた後でも請求はできる
交際が終わったからといって、貸したお金を返してもらう権利がなくなるわけではありません。ただ、別れ話と返済の話が混ざると感情的な対立が強くなり、話し合いが進みにくくなります。相手から「交際中のことだから」「別れの慰謝料と差し引きにする」などと言われた場合も、貸したお金の問題と交際の問題は、それぞれ切り分けて考えることになります。
別れた後に連絡がとれなくなった場合でも、住所が分かれば内容証明郵便や訴訟の手続を進められます。住所が分からないときは、弁護士会照会などの方法で手がかりを探せることもあります。
弁護士に相談するとできること
弁護士に依頼した場合、借主が恋人なのか家族なのかを記録から整理し、請求先と請求額を確かめたうえで、ご本人に代わって相手方とやり取りします。弁護士名の書面で請求することが、相手が話し合いに応じるきっかけになることもあります。
また、分割返済の合意書の作成や、話し合いで解決しない場合の裁判手続まで、状況に応じて対応できます。恋人やその家族と直接やり取りする負担を減らしながら、事実に沿った解決を目指せる点も、ご相談いただく意味の一つです。
家族の入院という事情があったからこそ、貸した側は催促しにくく、時間だけが過ぎてしまうことがあります。誰に貸したのか、どのような約束だったのかを早めに整理しておくことが、穏当な解決につながります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


