【男女トラブル】元恋人が匿名掲示板に私のことを書いているかもしれないときは?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月時点の法令(2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法を含みます)を前提に解説しています。個別の事情によって取れる手段は異なります。


匿名掲示板に、自分の名前や勤務先、交際していたころの出来事を思わせる書き込みが見つかった。内容からすると、書いたのは別れた恋人ではないか。このような不安を抱えてご相談に来られる方は少なくありません。

 ただ、匿名の書き込みは、内容から書いた人を推し量ることはできても、それだけで本人と決めつけることはできません。この記事では、「元恋人が書いているかもしれない」という段階で何から手をつけるか、削除と特定の手続がどう進むのか、控えておきたい対応は何かを順に整理します。

「元恋人かもしれない」の段階で考えておきたいこと

 書き込みに、交際していた相手しか知らないはずの出来事が含まれていると、書いたのは元恋人だと考えたくなるのは自然なことです。ただ、交際中の出来事は共通の友人や、元恋人から話を聞いた第三者が知っていることもあります。推測が当たっている場合もありますが、外れている場合もあります。

 大切なのは、「誰が書いたか」と「書き込みをどう止めるか」を分けて考えることです。書いた人がはっきりしなくても、削除を求める手続は進められます。誰が書いたかを法的に確かめるには、後で触れる発信者情報開示の手続を使います。推測の段階で元恋人を問い詰めると、関係がこじれたり、書き込みが増えたりするおそれがあるため、まずは記録と手続の検討から始めるのが無難です。

まず残しておきたい記録

 書き込みは、書いた本人が消したり、スレッドが流れたりして見られなくなることがあります。削除を求める場合も、書いた人を特定する場合も、元の書き込みが確認できることが出発点になるため、見つけた段階で次のような記録を残しておくことをおすすめします。

  • 書き込みのURL(スレッドのURLと、個別の書き込みを示す番号)。
  • 投稿日時と、書き込みに付いているIDや名前欄の表示。
  • 書き込みの本文全体が写った画面の保存(スクリーンショットは、URLと日時が一緒に写るようにする)。
  • 前後の流れが分かる範囲の書き込み。
  • 自分であることが分かる理由(実名、勤務先、写真など、どの部分から自分のことだと読み取れるか)のメモ。


 スクリーンショットだけでは、URLや日時が分からず手続で使いにくいことがあります。画面全体をPDFとして保存しておく、ウェブ魚拓のようなサービスを併用するといった方法もあります。元恋人とのLINEなど、書き込みの内容と重なるやり取りが手元にあれば、それも消さずに残しておいてください。

書き込みの内容で変わる法的な位置づけ

 匿名掲示板の書き込みが違法かどうかは、何が書かれているかによって変わります。ご自身のことだと周りの人が読み取れることが前提になる点も、押さえておきたいところです。

書き込みの内容問題になり得る権利・罪の例
事実かどうかを問わず、社会的な評価を下げる具体的な話名誉毀損(民事の不法行為、刑事の名誉毀損罪)
具体的な事実を挙げない悪口や侮辱的な言葉名誉感情の侵害、侮辱罪
住所・勤務先・交際歴・病歴など、知られたくない私生活の情報プライバシーの侵害
交際中に撮った写真や性的な画像肖像権・プライバシーの侵害、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)など
危害を加えることをほのめかす内容脅迫罪など


 名誉毀損罪と侮辱罪は、被害を受けた人が告訴しなければ起訴されない親告罪です。告訴には、犯人を知った日から6か月という期間の定めがあります。書き込んだ人がはっきりしない段階では、この期間はまだ進んでいないと考えられていますが、特定できた後は期間を意識して動く必要があります。

削除を求める方法

 削除の求め方にはいくつかの段階があり、書き込みの内容や掲示板の対応状況に応じて選びます。

掲示板の削除依頼フォームを使う

 多くの掲示板には、削除依頼のフォームや窓口が設けられています。どの書き込みが、どのような理由で権利を侵害しているのかを具体的に書いて申し出るのが基本です。ご自身で申し出ることもできますが、申出の内容が公開される形式の掲示板もあるため、申出先の仕組みは事前に確かめておきたいところです。

情報流通プラットフォーム対処法による申出

 2025年4月に施行された情報流通プラットフォーム対処法では、利用者の多い大規模なプラットフォーム事業者として総務大臣の指定を受けた事業者に、削除申出の窓口の整備や、申出に対して原則として一定期間内に判断し通知することなどが義務づけられました。ただし、すべての掲示板が指定を受けているわけではなく、指定を受けていない掲示板では従来どおりの対応になります。

裁判所の手続を使う

 削除依頼に応じてもらえない場合は、裁判所に削除の仮処分を申し立てる方法があります。書き込みが権利を侵害していることを、資料をそろえて説明する必要があります。

公的な相談窓口

 総務省の委託で運営されている違法・有害情報相談センターや、法務省の人権擁護機関でも、削除依頼の方法について相談できます。人権擁護機関が、事案によって掲示板の管理者に削除を要請することもあります。

書き込んだ人を特定する手続

 書き込んだ人に損害賠償を求めたり、刑事告訴をしたりするには、まず相手が誰かを確かめる必要があります。そのための手続が、発信者情報開示です。

発信者情報開示命令の手続

 以前は、掲示板の運営者からIPアドレスなどの開示を受け、次にインターネット接続業者から契約者の住所・氏名の開示を受けるという、2段階の裁判手続が一般的でした。2022年10月からは、この2段階を1つの手続の中で進められる発信者情報開示命令の制度が加わっています。

 開示が認められるには、書き込みによって権利が侵害されたことが明らかであること、開示を受ける正当な理由があることなどの要件を満たす必要があります。「元恋人が書いたと思う」という事情だけでは足りず、書き込みの内容そのものが違法であることを示す必要がある点に注意が必要です。

時間の制約がある

 インターネット接続業者が通信の記録(ログ)を保存している期間には限りがあり、携帯電話の回線では数か月程度とされることが多いようです。書き込みから時間がたつと、ログが消えて特定ができなくなるおそれがあります。特定まで考えている場合は、早めに方針を決めることが大切です。

特定できない場合もある

 海外のサーバーを使っている掲示板や、公衆Wi-Fiから書き込まれた場合などは、手続を進めても書いた人までたどり着けないことがあります。費用と時間もかかるため、削除だけを先に進めるのか、特定まで進めるのかは、書き込みの内容や被害の程度を踏まえて検討します。

警察に相談できる場面

 書き込みに危害をほのめかす内容がある場合や、自宅の住所が書かれている場合は、身の安全を優先して早めに警察へ相談してください。

 また、元恋人が恋愛感情や、それが満たされなかったことへの恨みから、名誉を害する事項をあなたが知り得る状態に置く行為を繰り返している場合には、ストーカー規制法の対象になり得ます。掲示板への書き込みのほかに、待ち伏せやしつこい連絡が重なっているときは、その記録もあわせて持参すると相談がしやすくなります。

してしまいがちだが控えたい対応

 不安や怒りから、次のような対応をとってしまうことがあります。いずれも、かえって事態を難しくするおそれがあります。

  • 推測の段階で元恋人に「書いたのはあなたでしょう」と問い詰めること。
  • 掲示板に反論や相手を名指しする書き込みをすること。
  • 元恋人の実名や個人情報を、ほかの場所に書き込むこと。
  • 書き込んだ人を探るために、元恋人のアカウントに無断でログインすること。
  • 記録を残さないまま、すぐに削除依頼を出すこと。


 特に、相手を名指しして反論すると、推測が外れていた場合に、今度はご自身が名誉毀損の責任を問われるおそれがあります。他人のアカウントへの無断ログインは、不正アクセス禁止法に触れる行為です。

特定できた後の選択肢

 手続によって書き込んだ人が元恋人だと分かった場合、次のような選択肢を検討することになります。

  • 書き込みの削除と、今後書き込みをしないことを約束する合意書を交わす。
  • 慰謝料や、特定にかかった費用の一部の支払いを求める。
  • 名誉毀損罪などで刑事告訴をする。
  • 接触や書き込みが続く場合に、ストーカー規制法に基づく警告や禁止命令を求める。


 どの選択肢を重く見るかは、「とにかく書き込みを止めたい」「関わりを完全に断ちたい」など、ご本人が何を優先したいかによって変わります。元恋人と直接やり取りをすることに負担を感じる場合は、弁護士を窓口にして交渉することもできます。

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 匿名の書き込みは、誰が書いたのか分からないこと自体が不安を大きくします。記録を残し、削除と特定のどちらを、どの順番で進めるかを整理するだけでも、取れる手段は見えやすくなります。ログの保存期間のように時間の制約がある手続もあるため、気になる書き込みを見つけた段階で一度ご相談ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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