【解決事例】パパ活を装った性的行為の強要・恐喝被害|現場での身元特定と交渉により被害金・諸費用を含む400万円の回収を実現した事例
自分の顔が使われた性的な画像や動画が、インターネット上に出回っている。生成AIが手軽に使えるようになったことで、こうしたご相談が寄せられるようになりました。実際にはなかった場面であっても、顔が自分のものである以上、見た人に信じられてしまうことがあり、受ける負担は撮影された画像の場合と変わりません。
一方で、性的なディープフェイクそのものを正面から禁じる法律は、2026年8月の時点で日本には置かれていません。国の会議でも、対策の在り方が検討されている段階です。そのため、いま何ができるのかを考えるには、すでにある法律のどれが手がかりになるのかを一つずつ確かめていく作業が必要になります。
この記事では、被害を受けた側の立場から、現行法のどこに使える部分があり、どこに届きにくさが残るのかを整理します。
この記事で扱うこと・扱わないこと
- 実在する自分の顔などが使われた性的な画像・動画が、作成され、または公開された場面を扱います。
- 手がかりになり得る法律を、刑事と民事の両面から整理します。
- 削除の申出や発信者情報開示の具体的な進め方は、別の記事で扱っています。
- 慰謝料の目安となる金額は、事案ごとの幅が大きいため取り上げません。
- 制度の見直しが進んでいる分野のため、記載は2026年8月時点のものです。
なぜ「これを取り締まる法律」が見つかりにくいのか
性的な画像をめぐる法律は、これまで「実際に撮られた画像」を前提として整えられてきました。生成AIで作られた画像は、その前提から外れることがあります。ここが、対応を考えるうえでの出発点になります。
多くの規定が「撮影された画像」を出発点にしている
たとえば、盗撮などを対象とする性的姿態撮影等処罰法は、撮影という行為と、撮影によって作られた記録を対象としています。撮影された場面がそもそも存在しない合成画像は、この入口に入りにくいことになります。
リベンジポルノ防止法が届きにくい理由
同法が対象とする「私事性的画像記録」は、撮影された画像に係る記録と定義されています。そのため、絵やコンピュータグラフィックスのように、撮影以外の方法で描かれたものは含まれないと説明されています。また、ある人の顔と別の人の裸の画像を組み合わせた場合、顔だけが写っている人については、その人の姿態が撮影されたものではないため、その人を撮影対象者とする私事性的画像記録には当たらないと解されています。
ただし、もともと撮影された画像に加工を施したもので、元の画像との同一性が認められる場合には、なお同法の対象になり得るという説明もあります。自分が撮られた写真が加工されている場合には、この点を確かめておく意味があります。
画像や行為の性質ごとの手がかり
| 画像や行為の性質 | 手がかりになり得る法律 | 留意点 |
|---|---|---|
| 顔などから本人と分かる形で公開された | 刑法の名誉毀損罪/民事の人格権 | 「合成」との表示があるときの扱いが争点になる |
| 性的な部位が露出した状態で公開・販売された | 刑法のわいせつ物頒布等罪など | 写された人を守るための規定ではない |
| 被写体が18歳未満 | 児童買春・児童ポルノ禁止法/自治体の条例 | 実在する児童の姿態の描写と認められるかで分かれる |
| 合成の素材に他人の作品が使われている | 著作権法 | 権利者は素材の制作者側で、本人ではない |
| 拡散を材料に金銭などを求められた | 刑法の脅迫罪・強要罪・恐喝罪 | 画像の性質にかかわらず問題になり得る |
同じ一枚の画像でも、どの角度から見るかで使える条文が変わります。以下、順に見ていきます。
名誉毀損として扱えるのか
社会的な評価が下がったかどうかで判断する
名誉毀損は、公然と事実を示して人の社会的な評価を下げた場合に問題になります。過去には、他人の顔を合成した性的な動画をインターネット上で公開した行為について、名誉毀損の成立を認めた裁判例があります。この分野で実際に使われてきたのは、まずこの枠組みでした。
「合成」と書いてあれば対象外になるのか
一見して偽物と分かるものや、偽物である旨が書かれているものについては、「その人が実際にそうした行為をした」という事実を示したことにならないとして、成立が否定され得るという指摘があります。合成と書かれていることを理由に取り上げられなかった例があるとも報じられています。
もっとも、ディープフェイクであることを示す語句が付された動画について、名誉毀損の成立を認めた裁判例もあります。表示があれば当然に対象から外れる、という単純な線引きにはなっていません。
なお、名誉毀損罪は告訴がなければ起訴されない罪で、告訴には犯人を知った日から6か月という期間の制限があります。被害に気づくのが遅れやすい分野であるだけに、気づいた時点で確認しておく意味があります。
わいせつ物頒布等罪と児童ポルノ禁止法
わいせつ性という別の物差し
実際の摘発では、生成AIで作った性的な画像を公開・販売した行為について、わいせつな電磁的記録を陳列したという構成が用いられた例が報じられています。ただしこの規定は、画像のわいせつ性に着目して置かれたもので、写された人を守るための規定ではありません。性的な部位が隠されている画像は対象になりにくいとされ、届く範囲は限られます。
被写体が18歳未満の場合
国会では、AIで生成された画像であっても、実在する児童の姿態を視覚により認識することができる方法で描写したものと認められるのであれば、児童ポルノに当たり得るという趣旨の答弁がされています。実際に、生成された画像を所持していたとして児童ポルノ禁止法違反で起訴された例も報じられました。あわせて、条例で規制の対象に含めることを明記した自治体もあります。
「著作権法違反で逮捕」という報道の読み方
この分野の摘発では、著作権法違反が使われた例があります。これは、合成の素材に使われた動画について、その制作者側の権利が侵害されたという構成です。顔を使われた本人の権利にもとづくものではありません。報道を見て「自分も同じ手段が使える」と考えてご相談に来られる方がいますが、本人が自分の名前で動かせる手段は、別に組み立てる必要があります。
刑事が動きにくくても、民事は別に考える
偽物であることは、責任を免れる理由になりません
民事では、名誉、名誉感情、肖像、私生活上の情報といった人格的な利益が侵害されたとして、損害賠償を求めることが考えられます。内容が事実でないことは、反論の材料になるどころか、身に覚えのない性的な描写を結び付けられたという被害の中身そのものです。刑事の要件を満たしにくい場合でも、民事の評価は別に行われます。
公開の差止め
人格権にもとづいて、公開の差止めを求める道もあります。表現の自由との調整から、裁判所は慎重な枠組みで判断していますが、私生活に関わる事柄について差止めを認めた例もあります。
先にしておきたいこと
削除を急ぎたくなる場面ですが、記録が残っていないと、その後の手続で使える材料が失われます。
- 画面全体のスクリーンショットとURLを、日時が分かる形で保存する。
- 投稿者のアカウント名や表示名もあわせて控える。
- 送られてきたメッセージがある場合は、消さずにそのまま残す。
- どこまで広がっているかを把握するため、見つけた掲載先を書き出す。
- 相手への直接の連絡や、公開の場での反論はいったん保留する。
そのうえで、掲載先の運営会社への削除の申出を検討します。規模の大きいサービスについては、申出に対する調査と結果の通知の手続が法律で定められていますが、削除そのものを義務づける制度ではない点に留意が必要です。投稿者の特定は削除とは別の手続で、通信記録の保存期間という時間の制約を受けます。
金銭を求められている場合
「拡散されたくなければ」という形で金銭や関係を求められている場合は、画像の性質にかかわらず、脅迫や恐喝の問題として扱われます。応じても要求が止まらないことが多く、支払いの記録がかえって次の要求の材料になることもあります。やり取りを保存したうえで、警察と弁護士に早めにご相談ください。
相談できる窓口
- 警察相談専用電話の#9110。被害が続いている場合は110番。
- 性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)。
- 違法・有害情報相談センター。削除の申出の方法などについて相談を受け付けています。
- 法務局の人権相談。
- 性的な画像の被害に取り組む民間の支援団体。削除要請の支援を行っているところもあります。
よくあるご質問
作った人が誰か見当がついています。直接やめさせてもよいですか
相手が消してしまうと、投稿があったことを示す材料が残らなくなることがあります。また、やり取りの中で強い言葉を使うと、こちらの立場が問われることもあります。記録を残したうえで、代理人を通じた連絡をご検討ください。
まだ公開されていませんが、作られたようです
公開されていない段階では、削除の申出や発信者情報の開示といった手続は使いにくくなります。一方で、公開すると告げられている場合は、その言動自体が別の問題になります。何を、誰から、いつ言われたのかを残しておくことが手がかりになります。
海外のサイトに掲載されています
国内の手続がそのまま使えるとは限らず、時間もかかります。それでも、掲載先の通報窓口を使う、国内から閲覧できる転載先に対応するなど、取れる手が残っている場合があります。まず、どこまで広がっているかを把握することから始めます。
まとめ
- 性的なディープフェイクを正面から禁じる法律は、2026年8月時点では置かれていない。
- 多くの規定が「撮影された画像」を前提にしているため、合成された画像は入口に入りにくい。
- リベンジポルノ防止法は届きにくいが、元の写真を加工したものは扱いが異なり得る。
- 名誉毀損は手がかりになり、合成である旨の表示があっても成立を認めた裁判例がある。
- わいせつ物頒布等罪や児童ポルノ禁止法が使われた例もあるが、それぞれ射程が限られる。
- 著作権法による摘発は素材の権利者の側の話で、顔を使われた本人の権利とは別である。
- 刑事の要件を満たしにくい場合でも、民事の人格権にもとづく請求や差止めは別に検討できる。
- まず記録を残すことが、その後に使える手段の幅を左右する。
この分野は、制度の検討が続いている途中にあります。使える手段が限られる場面はありますが、何も残らないというわけではありません。弁護士法人若井綜合法律事務所では、こうしたご相談をお受けしています。一人で抱え込まず、早い段階でご相談ください。


