【男女トラブル】恋人に位置情報アプリの共有を強いられたら?
本記事は、2025年6月1日施行の改正刑法(懲役・禁錮を「拘禁刑」に一本化)と、2025年4月1日施行の情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法)を反映しています。
恋人の浮気が原因で別れたのに、共通の友人や職場の人から「あなたが浮気をしたと聞いた」「ひどい振り方をしたらしい」と言われる。こうした相談は少なくありません。傷ついたうえに悪者扱いまでされると、すぐにでも事実を言い返したくなるものです。
ただ、言いふらしへの向き合い方を誤ると、今度はご自身が責任を問われる側に回るおそれがあります。この記事では、どのような言いふらしが法的な問題になるのか、浮気をされた側だからこそ気をつけたい点、記録の残し方と取れる手段の順序を整理します。
まず分けて考えたい言いふらしの型
| 言いふらされている内容の例 | 主に問題になるもの |
|---|---|
| 「浮気をしたのは向こうのほう」「交際中に暴力をふるわれた」など、事実と異なる具体的な話 | 名誉毀損 |
| 「最低な人」「性格が終わっている」など、具体的な事実を伴わない悪口 | 侮辱 |
| 交際中の性生活、借金、病歴など、事実であっても人に知られたくない私生活 | プライバシー侵害・名誉毀損 |
| 「振られてつらい」「もう信用できない」など、相手自身の受け止め方 | 多くは違法とまではいえない |
相手が友人に気持ちを打ち明けているだけの場合や、「自分はこう感じた」という評価にとどまる場合は、聞いていて不快でも法的な対応にはなじみにくいことがあります。一方で、事実と異なる具体的な話を広めている場合や、私生活の詳細を明かしている場合は、手段を検討できる場面が出てきます。
名誉毀損といえるかの分かれ目
社会的な評価を下げる具体的な話か
名誉毀損で守られるのは、本人の気持ちではなく、周囲から受けている評価です。「二股をかけていた」「お金を返さずに逃げた」のように、聞いた人がその人を見る目を変えてしまうような具体的な事実を示しているかどうかが一つの目安になります。
聞いた人数が少なくても広まる見込みがあるか
名誉毀損が成り立つには、不特定または多数の人に向けた発言であること(公然性)が必要とされています。ただし、話した相手が数人の友人であっても、そこから先に広まっていく見込みがあれば公然性が認められることがあります。共通の友人グループや同じ職場など、話が伝わりやすい関係の中で繰り返されている場合は、この点が問題になりやすいといえます。
「本当のことだから問題ない」とは限らない
刑法230条1項は、示した事実が本当かどうかにかかわらず名誉毀損が成立し得ると定めています。事実であることを理由に責任を免れるのは、公共の利害に関わる事柄を公益のために示した場合などに限られ(刑法230条の2)、私的な交際をめぐる話がこれに当たる場面は多くありません。
このルールは、相手の言いふらしを評価するときだけでなく、ご自身が「浮気をしたのは相手だ」と周囲に説明するときにも同じように当てはまります。
浮気をされた側だからこそ気をつけたいこと
言い返す投稿や、相手の浮気の公表は控える
悪者にされた悔しさから、SNSに浮気の経緯や相手の実名、やり取りのスクリーンショットを載せると、内容が事実であっても名誉毀損やプライバシー侵害として相手から請求を受けるおそれがあります。浮気相手の名前まで出せば、関係する人がさらに増えます。不貞をSNSで明かすことの危うさは、【不貞慰謝料】不貞をSNSで公表することのリスクでも解説しています。
周囲への説明は、信頼できる相手に、事実だけを短く
誤解を解きたい気持ちは自然なものです。説明が必要な場合は、話す相手を本当に必要な人に絞り、「別れた理由は〇〇さんから聞いている内容とは違う」と落ち着いて伝える程度にとどめるのが無難です。相手の人柄を評価する言葉や、交際中の詳細を付け加えるほど、ご自身の発言が問題にされる余地が広がります。
浮気そのものへの慰謝料は別の問題として考える
結婚していない恋人どうしの場合、浮気をされたことだけを理由に慰謝料を請求するのは、婚約や内縁の関係がない限り難しいとされることが多いです。言いふらしへの対応と、浮気への責任追及は分けて考えたほうが整理しやすくなります。詳しくは二股・浮気をされた恋人|交際関係で慰謝料は取れるのかと【男女トラブル】未婚の交際相手の浮気相手に慰謝料を請求できるか|婚約・内縁との分かれ目と、請求する前に考えることをご覧ください。
言いふらされていると分かったときの初動
- 相手に直接抗議したり、問い詰めたりすることは控えます。口論になると、そのやり取り自体が新たな話の種になりやすいためです。
- 誰が、いつ、誰に、どのような内容を話したのかを、聞いた日のうちにメモに残します。伝えてくれた友人の名前と、そのとき聞いた言葉もできるだけそのまま書き留めておきます。
- LINEやSNSに書かれている場合は、投稿のURL、投稿日時、アカウント名が分かる形で画面を保存します。削除される前に保存しておくことが大切です。
- 伝えてくれた友人に、後で事情を説明してもらえるかどうかを無理のない範囲で確かめておきます。協力を強く求めると友人との関係にも影響するため、慎重に進めます。
- 周囲への説明や反論の投稿は、方針が決まるまで最小限にとどめます。
口頭での言いふらしは、録音や書面が残りにくく、後から内容を確かめるのが難しい性質があります。「友人から聞いた」という伝え聞きだけでは、相手が否定した場合に裏付けが足りないこともあるため、聞いた時点での記録が後の判断材料になります。
取れる手段と順序
| 手段 | 内容 | 留意点 |
|---|---|---|
| 弁護士名義の通知 | 事実と異なる部分を指摘し、言いふらしをやめるよう求める | 文面によっては相手が反発することもあるため、表現を慎重に選ぶ |
| 合意書の作成 | 今後は互いに相手のことを口外しない、違反した場合の取り決めを置くなど | 相手が応じる場合に限られる。双方に義務を課す形が受け入れられやすい |
| 投稿の削除の申出 | サイトやSNSの運営者に削除を求める | 投稿者が匿名の場合は、発信者情報の開示を求める手続を検討する |
| 損害賠償の請求 | 名誉毀損などを理由に慰謝料を求める(民法709条・710条) | 口頭の限られた範囲の発言では、認められる額が手続の負担に見合わないこともある |
| 刑事告訴 | 名誉毀損罪・侮辱罪として処罰を求める | いずれも告訴がなければ起訴されない罪で、原則として犯人を知った日から6か月以内に告訴する必要がある |
多くの場合、最初の目標は「これ以上広がらないようにすること」です。そのため、まず通知で言いふらしをやめるよう求め、相手が応じる見込みがあれば合意書で今後の約束を形にする、という順に進めることが考えられます。合意書の効力については【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力で解説しています。
通知の後も続く場合や、ネット上に書き込みが残っている場合には、削除や損害賠償、刑事告訴を視野に入れます。名誉毀損罪の法定刑は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(刑法230条1項)。告訴の期間や示談との関係は名誉毀損は親告罪|告訴期間と示談による解決をご参照ください。
つきまといなどを伴う場合
相手が復縁を求める気持ちや、思いがかなわなかったことへの恨みから、言いふらしに加えて待ち伏せや執拗な連絡を続けている場合には、ストーカー規制法が関わることもあります。名誉を害する事柄を本人に告げたり、本人が知り得る状態に置いたりする行為も、同法の「つきまとい等」に含まれています。身の安全に不安があるときは、警察への相談も並行して検討してください。
職場や家族にまで話が及んだとき
言いふらしが勤務先や家族にまで広がると、生活への影響が大きくなります。職場では、上司や人事担当者に、私的な交際をめぐる一方的な話が伝わっていることと、業務には関係がないことを、感情を交えずに伝えておくと、それ以上の誤解を防ぎやすくなります。具体的な進め方は【男女トラブル】別れを告げたら相手が自分の上司に話した|職場への影響を抑えるで整理しています。
相手がご家族や友人に直接連絡している場合は、別れた相手が家族や友人に接触してくる|第三者を巻き込む嫌がらせへの対応もあわせてご覧ください。
よくあるご質問
友人1人に話しただけでも名誉毀損になりますか
1人に話しただけでは、公然性が否定されることが多いと考えられます。ただし、その友人を通じて周囲に広まることが見込まれる関係であれば、問題になる余地があります。人数だけでなく、話した相手と状況から判断されます。
相手の話に一部本当のことが含まれている場合はどうなりますか
事実が含まれていても、私的な交際をめぐる話であれば、名誉毀損が成り立つこと自体は妨げられないのが原則です。どの部分が事実と異なり、どの部分が知られたくない私生活なのかを分けて整理すると、相手に求める内容がはっきりします。
相談したことは相手に知られますか
ご相談の段階で、当事務所から相手に連絡することはありません。通知を送るかどうか、いつ送るかは、ご相談者と方針を決めたうえで判断します。詳しくは【男女トラブル】相手に知られずに相談できるか|相談しただけで相手に伝わることはないをご覧ください。
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弁護士法人若井綜合法律事務所へのご相談
浮気をされたうえに悪者として語られる状況は、精神的な負担が大きいものです。それでも、言い返すことで状況が好転するとは限らず、かえって争いの火種を増やしてしまうこともあります。何を言われ、どこまで広がっているのかを記録しながら、広がりを止めることを優先して手段を選ぶことが、早く日常を取り戻す近道になります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


