【男女トラブル】恋人の車の頭金を払っていた場合、返してもらえる?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、結婚していない交際相手との間で、車の頭金を負担した場合の一般的な考え方を説明するものです。夫婦の間で購入した車は離婚時の財産分与の問題として扱われるため、本記事の対象には含めていません。


交際中に、恋人が車を買うときの頭金を出していた。その後に別れることになり、あのお金は返してもらえるのだろうかと迷う方は少なくありません。車検証の名義は相手で、毎月のローンも相手が払っているとなると、自分が出した頭金だけが宙に浮いたように感じられるかもしれません。

 頭金を返してもらえるかどうかは、交際していたことや別れた理由によって一律に決まるものではありません。お金を渡したときに二人の間でどのような約束があったか、そしてそれを後から確かめられる記録が残っているかによって、見通しが変わります。この記事では、恋人の車の頭金を払っていた場合に返還を求められるのはどのような場面か、求めるときにどう進めるかを整理します。

頭金を返してもらえるかは「渡したお金の性質」で分かれます

 恋人の車のために出した頭金は、法律上、大きく3つのいずれかとして扱われることが多いです。どれにあたるかによって、返還を求められるかどうかの考え方が変わります。

お金の性質当時のやり取りの例返還についての考え方
貸した(金銭消費貸借)「立て替えておくから、あとで返してね」と伝えていた返す約束が確認できれば、返還を求められます
あげた(贈与)「お祝いに出すよ」「プレゼントだから」と伝えていた原則として返還は難しく、例外にあたる事情があるかを検討します
二人で使う車のために出し合った(共同での出資)「二人の車として使おう」と話し、使い方や費用の分担を決めていた車の扱いとあわせて、出した割合に応じた清算を話し合う余地があります


 実際には、渡したときにどれにあたるかをはっきり言葉にしていないことがほとんどです。別れた後になって、こちらは「貸した」、相手は「もらった」と言い分が食い違うのはよくある流れです。そのため、当時のやり取りや支払いの経緯から、どの性質に近いかを組み立てていくことになります。

「貸した」といえる場合は、返す約束の記録が鍵になります

 お金を貸したといえるためには、お金を渡したことに加えて、相手が返すと約束していたことが必要です(民法587条)。借用書がなくても、LINEやメールで「頭金は少しずつ返す」「ボーナスが出たら返すね」といったやり取りがあれば、返す約束があったことを示す材料になります。

 一方で、返す約束を示す記録が何もなく、振込の記録だけが残っている場合には、お金を渡したことは示せても、それが貸したものだったのかまでは示しにくくなります。交際相手との間では、お金を渡しても返済について話をしないことが自然に起こりやすく、この点が争いになりやすいところです。

 返済の時期を決めていなかった場合でも、相当の期間を定めて返すよう求めることができます(民法591条1項)。別れたことをきっかけに、改めて期限を示して返済を求める流れが考えられます。借用書がない場合の考え方については、恋人・元恋人に貸したお金が返ってこない|借用書なしでも回収できる?もあわせてご覧ください。

「あげた」とされる場合と、その例外


渡し終えた贈与は、原則として取りやめられません

 書面を作らずにした贈与は、取りやめることができるとされています。ただし、すでに渡し終えた部分については取りやめることができません(民法550条)。頭金は販売店に支払った時点で渡し終えたと考えられるため、あげたものと評価されれば、別れたことだけを理由に返還を求めるのは難しいのが原則です。

結婚を前提に出したお金は、別の考え方ができることがあります

 例外として検討されるのが、結婚を前提に出したお金です。婚約が成立しており、結婚生活で使う車として頭金を出していたような場合には、結婚しないことになった時点で贈与の前提が失われたとして、返還を求める余地が考えられます。結納金が、婚約の解消によって返還の対象になることがあるのと似た発想です。

 また、相手の側に婚約を破棄した責任がある場合には、結婚の準備として支出したお金を、婚約破棄による損害の一部として請求することも考えられます。ただし、婚約が成立していたといえるか、相手に責任があるといえるかは、それぞれの事情に応じて判断されます。結婚の話が出ていたというだけでは足りないこともあるため、両家への挨拶や式場の予約など、結婚に向けた具体的な動きがあったかを確かめておくことが大切です。詳しくは婚約を一方的に破棄された|慰謝料を請求できるケース・できないケースで解説しています。

二人で使う車として出し合った場合

 二人で使う約束で車を買い、頭金を自分が、ローンの返済を相手が負担していたような場合には、車そのものを二人で用意したと見る余地があります。この場合、別れた後の問題は「頭金を返すかどうか」というより、「車を誰が引き取り、どう清算するか」という形になります。

 たとえば、相手が車を使い続けるのであれば、自分が出した頭金に見合う金額を相手から支払ってもらう方法があります。車を売却するのであれば、ローンの残りを清算したうえで、残ったお金を出した割合に応じて分ける方法も考えられます。車は年数とともに価値が下がるため、頭金の全額がそのまま戻るとは限らない点には注意が必要です。

車検証の名義だけでは決まりません

 車検証の名義が相手になっているからといって、頭金を出した側が何も求められないわけではありません。反対に、自分の名義だからといって、当然に車を自分のものにできるわけでもありません。ローンで購入した車は、支払いが終わるまでローン会社や販売店が所有者、買主が使用者として登録されていることが多く、名義と実際の負担が一致しないことは珍しくありません。誰がいくらを負担し、どう使う約束だったかを整理することが出発点になります。車や家財の分け方全般については、【男女トラブル】別れた後に共通のペット・車・家財をどう分けるかも参考になります。

返還を求める前に集めておきたい記録


  • 頭金を振り込んだ記録や、現金を引き出した記録が残る通帳。
  • 販売店の注文書や売買契約書、領収書(誰の名前で支払ったかが分かるもの)。
  • 頭金を渡す前後のLINEやメールのやり取り(「返す」「二人の車」などの言葉)。
  • 車検証の写し(所有者・使用者の欄)。
  • ローンの返済を誰がしていたかが分かる記録。
  • 結婚の話が具体的に進んでいたことを示す記録(両家への挨拶、式場の予約など)。


 やり取りの記録は、相手に削除されたり、機種変更で失われたりすることがあります。返還の話を切り出す前に、スクリーンショットを保存しておくと、後で事実関係を説明しやすくなります。

返還を求めるときの進め方


まずは金額と根拠を記録の残る形で伝えます

 最初は、相手との話し合いから始めるのが一般的です。その際は、口頭だけでなくLINEやメールなど記録の残る方法で、「いつ、いくらを、どのような約束で出したか」「いくらを、いつまでに返してほしいか」を落ち着いて伝えます。感情的なやり取りになると、話が頭金から離れてしまい、まとまりにくくなります。

 返事がないからといって、何度も電話をかけたり、自宅や職場に出向いたりすることは控えた方がよいでしょう。お金の清算という正当な用件であっても、連絡の仕方によってはつきまといと受け取られるおそれがあります。この点は【刑事事件】元交際相手に荷物やお金の清算で連絡したい|正当な用件でもストーカーと言われる場面で詳しく説明しています。

応じてもらえないときは内容証明や裁判所の手続を検討します

 話し合いで解決しない場合には、内容証明郵便で請求の内容を正式に伝える方法があります。内容証明郵便そのものに相手に支払わせる力はありませんが、いつ、どのような請求をしたかを記録に残すことができ、相手が事態を受け止めるきっかけになることがあります。

 それでも支払いがない場合は、裁判所の手続を検討します。請求額が60万円以下であれば、原則として1回の期日で審理を終える少額訴訟を利用できます。ただし、相手が通常の訴訟での審理を求めれば通常の訴訟に移ります。60万円を超える場合や、相手が「贈与だった」と争っていて事実関係の確認に時間がかかりそうな場合は、通常の訴訟や民事調停を選ぶことになります。相手と連絡がつかない場合の進め方は、【男女トラブル】相手が話し合いに応じない|連絡が取れないまま清算する方法でも取り上げています。

時効にも注意が必要です

 お金の返還を求める権利には時効があります。2020年4月1日以降に生じた金銭の請求であれば、権利を行使できることを知った時から5年、権利を行使できる時から10年のいずれか早い方で時効にかかるのが原則です(民法166条1項)。何年も前に出した頭金の場合は、いつから時効が進むのかを早めに確かめておくことをおすすめします。請求の種類ごとの目安は、男女トラブルの時効早見表|請求の種類別に何年で消えるかにまとめています。

よくあるご質問


相手から「プレゼントだと思っていた」と言われました。もう請求できませんか

 相手がそう主張しているだけで、請求が認められなくなるわけではありません。返す約束をうかがわせるやり取りや、二人で使う車として話し合っていた記録があれば、それをもとに相手の主張と向き合うことになります。反対に、こちらから「お祝い」「プレゼント」と伝えていた記録がある場合は見通しが厳しくなることもあるため、手元の記録を一度整理してみることが大切です。

相手が車を売ってしまいました。頭金はどうなりますか

 相手名義の車であれば、相手が売却すること自体を止めるのは難しいことが多いです。ただし、頭金が貸したお金であれば、車がなくなっても返還を求める権利は残ります。共同で出資していた車であれば、売却で得たお金の分け方を話し合う余地があります。売却の時期や金額が分かる資料があると、話を進めやすくなります。

頭金を私の親が出していた場合、誰が請求するのですか

 親から借りたりもらったりしたお金を、ご自身が相手に渡したのであれば、通常はご自身が相手に請求する立場になります。一方、親が相手に直接お金を渡し、相手に貸したといえる事情がある場合には、親が請求する立場になることもあります。誰が請求するかによって必要な記録も変わるため、事前に整理しておくとよいでしょう。

関連する解説記事



車の頭金の清算でお悩みの方へ

 恋人の車の頭金を返してもらえるかどうかは、渡したときの約束と、それを示す記録によって大きく左右されます。別れた直後は、相手と冷静に話すこと自体が負担になることもあります。当事務所では、ご相談者に代わって相手との窓口となり、事実関係を整理したうえで返還を求める交渉を行っています。サービスの内容は【男女トラブル】弁護士が交際関係の解消時のトラブルに介入するサービス|金銭の清算・画像の削除・ストーカー・脅迫まで全国対応でご案内しています。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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