【男女トラブル・マッチングアプリ】知り合ったばかりの相手から高額な「お礼」を求められたら?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は、2026年10月時点の法令をもとに、知り合って間もない相手から金銭を求められた場面の一般的な考え方を整理したものです。個別の事情によって結論が変わることがあります。


マッチングアプリやSNSで知り合い、一度か二度会っただけの相手から「会ってあげたお礼」「時間を割いたお礼」として、数万円から数十万円のお金を求められることがあります。会う前にそのような話は出ていなかったのに、会った後や連絡を控えた後になって金額を示され、断ると「家族に話す」「職場に連絡する」と言われるケースもあります。

 知り合ったばかりの相手からの要求であっても、相手の言い分にどこか心当たりがあると、払わなければならないのではと迷う方は少なくありません。本記事では、こうした「お礼」の要求に支払義務があるのかを法的な根拠から整理し、求められたときの対応の順序と、すでに支払ってしまった場合の考え方を解説します。

「お礼」を求められる典型的な場面

 ご相談として寄せられる内容には、いくつかの共通する流れがあります。次のような状況に心当たりがある方は、この記事の内容が参考になると思われます。

  • 一度食事をしただけなのに、後から「お礼として10万円払ってほしい」と言われた。
  • 会う前にお金の話はなかったのに、ホテルに行った後で金額を示された。
  • 「楽しかったならお礼をするのが普通」と言われ、断るとこちらが非常識であるかのように責められる。
  • 連絡を控えたら「誠意を見せないなら家族や職場に知らせる」と送られてきた。
  • その場で「今度お礼をする」と言ってしまい、それを理由に請求されている。


 いずれも、相手の言葉が「お礼」「気持ち」「誠意」といった、金額の根拠がはっきりしない表現になっている点が共通しています。まずは、どのような場合に法律上の支払義務が生じるのかを確認しておくことが、落ち着いて対応するための出発点になります。

「お礼」に支払う義務はあるのか


支払義務の根拠は「約束」か「損害」が中心になる

 ある人が別の人に対してお金を支払う法的な義務を負うのは、主に、当事者の間で支払いを約束した場合(契約)と、こちらの行為によって相手に損害を与えた場合(不法行為)です。

 知り合ったばかりの相手と食事をした、会って話をしたというだけでは、通常、そのどちらにも当たりません。会う前に金額を取り決めていたわけではなく、こちらが相手の権利を侵害したわけでもないのであれば、後から「お礼」として示された金額に応じる法的な義務は、基本的には生じないと考えられます。相手が一方的に金額を決めて請求しても、それだけで支払義務が生まれるわけではありません。

「お礼をする」と自分から口にしていた場合

 その場の流れで「今度お礼をするね」「何かお返しをする」と伝えていたため、それが約束にあたるのではと心配される方もいます。

 具体的な金額や支払時期を決めていない「お礼をする」という言葉は、社交上のあいさつにとどまるものと受け取られることが多く、直ちに特定の金額を支払う契約が成立したとは評価されにくいと考えられます。仮に金額まで口にしていたとしても、見返りを求めずにお金を渡す約束は法律上の「贈与」にあたり、書面によらない贈与は、まだ渡していない部分について解除することが認められています(民法550条)。

性的な関係の対価として約束していた場合

 会う前のやり取りで、性的な関係を持つことと引き換えに金銭を渡すと取り決めていた場合、その約束は公の秩序や善良の風俗に反するものとして、法的には無効と判断される可能性が高いと考えられます(民法90条)。無効な約束に基づいて支払いを強制することはできず、相手が裁判でその金額を求めても、認められる見込みは低いといえます。

 もっとも、こうした場合には、ご自身にとって周囲に知られたくない事情が含まれていることが多く、それが要求に応じてしまう理由になりがちです。また、相手が18歳未満であった場合には、金銭を渡すことやその約束そのものが刑事上の問題になります。相手の年齢について不安がある場合は、相手とのやり取りを進める前に弁護士へご相談ください。

 なお、事前に食事やデートの対価となる金額を取り決めていた関係で、約束した金額の支払いをめぐってもめている場合は、取り決めの内容や経緯によって考え方が変わります。詳しくはパパ活の「約束したお手当」トラブル|口約束・条件変更でもめたらで解説しています。

 場面ごとの考え方を整理すると、次のようになります。

場面支払義務の考え方
会って食事や会話をしただけ約束も損害もなく、原則として支払義務は生じないと考えられる
「お礼をする」と金額を決めずに伝えた社交上の言葉と受け取られることが多く、特定の金額の支払義務は生じにくい
金額を口約束していた書面によらない贈与として、まだ支払っていない部分は解除できる余地がある
性的な関係の対価として約束していた公序良俗に反し、無効と判断される可能性が高い
相手の物を壊した、けがをさせた実際に生じた損害の範囲で賠償義務を負うことがある


要求の仕方によっては相手の側が問題になる

 支払義務がない請求であっても、相手がどのような言葉で求めてきたかによって、取るべき対応の方向は変わります。

 「払わなければ家族に知らせる」「職場に連絡する」「ネットに書く」といった、こちらの名誉や生活に関わる不利益を告げてお金を払わせようとする行為は、恐喝罪(刑法249条、10年以下の拘禁刑)にあたる可能性があります。実際にお金を受け取っていなくても、恐喝未遂として問題になることがあります。

 一方で、「払ってくれないなら弁護士に相談する」「法的な手続を取る」といった言葉は、権利の行使を告げるものとして、それだけで脅迫や恐喝にあたるとはいえません。ただし、請求の根拠そのものがない場合や、手続を口実に過大な金額を迫る場合には、評価が変わることもあります。どのような言い方がどの罪に関わるのかは、恐喝・強要・脅迫はどう違うのか|言い方で罪名が変わるで整理しています。

 また、最初から金銭を得る目的で、配偶者や交際相手を名乗る人物と組んで関係を持たせる、いわゆる美人局の可能性がある場合もあります。「お礼」の要求の後に別の人物が出てきたときは、美人局と正当な慰謝料請求の見分け方|払う前に確認すべきこともあわせてご確認ください。

要求を受けたときに避けたい対応


  • その場で現金を渡したり、指定された口座に振り込んだりすること。
  • 相手が用意した念書や借用書に署名すること。
  • 免許証や保険証の写真、勤務先、家族の連絡先を伝えること。
  • 感情的な反論や、責任を認めるような謝罪を長文で送ること。
  • 記録を残さないまま、やり取りの履歴やアカウントを削除すること。


 一度支払うと「求めれば払う相手」と受け止められ、別の名目で追加の要求が続くことがあります。また、相手が用意した書面には、事実と異なる内容や過大な金額が書かれていることがあり、後から争う際の負担が大きくなります。書面の効力については脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで解説しています。

 謝罪の言葉を送ること自体が直ちに不利になるわけではありませんが、「迷惑をかけた」「責任を取る」といった表現は、支払義務を認めた証拠として相手に持ち出されることがあります。返信する場合は、事実関係には触れず、短い文面にとどめるのが無難です。

 すでに身分証の画像などを送ってしまった場合は、身分証の写真を送ってしまった|個人情報を握られた後の対処も参考になります。

落ち着いて進めたい対応の順序


  1. 相手のプロフィール画面、メッセージの履歴、通話の記録をスクリーンショットなどで保存します。
  2. いつ、どこで会い、どのようなやり取りがあったかを、日付とともにメモに残します。
  3. 金額とその理由を求められた経緯を、相手の言葉のまま記録しておきます。
  4. 脅すような言葉がある場合は、警察の相談専用電話(#9110)や最寄りの警察署に相談します。
  5. 弁護士に相談し、相手とのやり取りの窓口を代わってもらうかどうかを検討します。


 証拠を保存する前に相手をブロックすると、その後のメッセージが確認できなくなり、相手の言動を示す記録が残らないことがあります。ブロックするかどうかは、記録をひととおり確保してから判断するとよいでしょう。マッチングアプリの運営会社に通報する方法もありますが、相手のアカウントが停止されると、それまでのやり取りが見られなくなる場合がある点にも注意が必要です。

 相手からのメッセージに返信しないことの位置づけや、届いた言葉が脅しにあたるかの見分け方は、【男女トラブル】既読無視をしたら脅すようなメッセージが来た|返信しないことの位置づけと、届いた言葉の見分け方で解説しています。また、知り合ってすぐの段階で、生活の苦しさや家族の事情を理由にお金の相談を持ちかけられた場合の考え方は、【男女トラブル】会ってすぐにお金の相談をされた|貸す前に確認することをご覧ください。

すでに支払ってしまった場合

 脅されて、あるいはその場の雰囲気に押されて、すでにお金を渡してしまったという方もいます。

 脅されて支払った場合には、恐喝による被害として返還を求めたり、強迫による意思表示として取り消したりする余地があります(民法96条)。一方、支払う義務がないと分かっていながら自分の判断で支払った場合や、性的な関係の対価として支払った場合には、法律上、返還を求めることが難しくなる場面もあります(民法705条・708条)。

 返還を求められるかどうかは、支払いに至った経緯や、それを示す記録が残っているかによって変わります。一度支払ったからといって、その後の要求にも応じなければならないわけではありません。追加の要求には応じず、早めに状況を整理することが大切です。詳しくは払ってしまった後に取り戻せるか|恐喝・強迫を理由とする返還で解説しています。

弁護士に相談するとできること

 弁護士にご依頼いただくと、弁護士が代理人として相手方に受任通知を送り、以後の連絡を弁護士に一本化するよう求めます。ご本人が相手と直接やり取りを続ける必要がなくなり、相手の言葉に振り回されにくくなります。受任通知の効果については受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。

 そのうえで、請求に法的な根拠がないことを相手方に伝え、要求を止めるよう求めます。脅すような言動がある場合には、警察への相談と並行して進めることもあります。早期の解決を優先して一定の解決金を支払う形で合意する場合でも、口外しないことや今後連絡しないことを合意書に盛り込み、同じ要求が繰り返されないよう配慮して進めます。

 当事務所でも、知り合って間もない相手からの金銭の要求について、弁護士の介入によって支払いを伴わずに解決に至ったケースがあります。【解決事例】食事に行っただけで「妻と職場にバラす」と脅され約40万円を請求された事案を、支払いゼロで解決や【解決事例】マッチングアプリの相手から「妻に伝える」と脅された恐喝トラブルを解決した事例もあわせてご覧ください。

 相手の本名や住所が分からない場合でも、残っているやり取りやアカウントの情報から、取れる手立てを検討できることがあります。

まとめ

 知り合ったばかりの相手から「お礼」を求められても、会う前の約束やこちらが与えた損害がなければ、その金額に応じる法的な義務は基本的に生じないと考えられます。ただし、相手との間でどのような話があったか、どのような言葉で求められているかによって、取るべき対応は変わります。その場で支払ったり書面に署名したりする前に、まずは記録を手元に残し、一人で抱え込まずにご相談ください。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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