パパ活で写真を撮られ「拡散する」と脅された|恐喝罪・撮影罪で責任を追及する道筋
マッチングアプリで知り合った相手と会い、食事をしたり交際に発展したりした後になって、「そういえば相手の身分証を一度も見ていない」と気づくことがあります。本名や年齢はプロフィールに書かれた内容をそのまま信じていた、という方も少なくありません。
この記事は2026年10月時点の法令をもとに書いています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な判断は弁護士にご相談ください。
最初にお伝えすると、利用者どうしが会う前に相手の身分証を確認しなければならないという法律上の義務はありません。確認していなかったこと自体が、直ちに違法になるわけではありません。ただ、後から相手が18歳未満だと分かった場合や、お金を渡した相手と連絡が取れなくなった場合などには、当時どこまで確かめていたかが問われたり、相手をたどるのに手間がかかったりすることがあります。この記事では、身分証を確認していなかったことが問題になりやすい場面と、場面ごとに取れる対応を整理します。
利用者どうしで身分証を確認する義務はあるのか
異性との出会いを仲介するアプリの多くは、いわゆる出会い系サイト規制法にもとづき、運営する事業者の側で利用者が18歳以上かどうかを確認する手続を設けています。年齢確認を求められるのは事業者であり、利用者どうしに相手の身分証を確かめる義務が課されているわけではありません。
また、アプリ上の「年齢確認済み」「本人確認済み」といった表示は、運営会社が提出された書類を確認したという意味にとどまります。プロフィールに書かれた職業や年収、独身かどうかまで保証するものではありません。実際に、法律相談サイトには、身分証による年齢認証が必要なアプリで知り合った相手が、家族の身分証を使って登録していたという相談も寄せられています。アプリの確認を通っていることは一つの目安になりますが、それだけで相手の情報がすべて正しいとは言い切れない点は意識しておきたいところです。
確認していなかったことが問題になりやすい場面
| 場面 | 起きやすいこと | 主に問題になる点 |
|---|---|---|
| 相手が18歳未満だった | 刑事責任を問われる可能性、相手側からの金銭の要求 | 相手の年齢をどう認識していたか |
| 相手が既婚者だった・プロフィールが偽りだった | 慰謝料請求の検討、関係の解消 | 相手の氏名や住所が分かるか |
| お金を渡した後に連絡が途絶えた | 返金の請求 | 相手を特定できるか |
| 自分の身分証を見せていた | 個人情報の悪用、脅しの材料にされる | 相手に渡った情報の範囲 |
身分証を確認していなかったことが問題として表に出てくるのは、多くの場合、何らかのトラブルが起きた後です。以下、場面ごとに考え方を見ていきます。
相手が18歳未満だったと後から分かったとき
最も慎重な対応が必要になるのが、この場面です。相手が年齢を偽っていたとしても、それだけで責任の問題がなくなるわけではありません。
問われるのは「年齢をどう認識していたか」
18歳未満の相手に金銭などの対償を渡して性交等をした場合には、児童買春として処罰の対象になります。児童買春は、相手が18歳未満であることを認識していたこと(「18歳未満かもしれないが、それでも構わない」という程度の認識を含みます)が必要とされています。そのため、身分証を見ていなかったことが、そのまま年齢を知っていたことを意味するわけではありません。
一方で、見た目や話し方、会話に出てきた学校や行事の話などから「18歳未満かもしれない」と考えるのが自然な事情があれば、認識があったと評価される方向に働くことがあります。身分証を確認していないという事実は、そうした事情とあわせて判断される材料の一つになります。
対償のやり取りがない場合でも、各都道府県の青少年保護育成条例が18歳未満の者とのみだらな性行為などを禁じています。条例によっては、年齢を知らなかったことに過失がなかった場合に限って処罰しないという規定を置いているところもあり、どこで会ったかによって扱いが変わることがあります。さらに、相手が16歳未満の場合は、同意の有無にかかわらず不同意性交等罪が問題になります(刑法177条3項。相手が13歳以上16歳未満のときは、相手より5年以上前に生まれた者が対象です)。
どの規定が問題になるかは、相手の実際の年齢、金銭などの受け渡しの有無、会った場所、やり取りの内容によって変わります。相手が年齢を偽っていたことを示すプロフィールやメッセージは、当時の認識を説明するうえで大切な記録になります。
分かった時点で控えたいこと
- アプリ内のメッセージやプロフィール画面を削除すること。
- 相手やその家族に直接連絡し、口止めや交渉を持ちかけること。
- 求められるままにお金を支払うこと。
やり取りを消してしまうと、相手が年齢をどう説明していたかを示す記録が失われ、かえって説明が難しくなることがあります。また、「未成年だった」と告げてお金を求めてくる人物の中には、事実と異なる話を材料にしている人もいます。事実関係を確かめないまま支払うと、要求が繰り返されるおそれがあります。詳しくは、相手が18歳未満だと知らなかった|年齢の確認と認識の評価と「未成年だった」と脅された|事実確認と恐喝への対応で解説しています。
相手の本名や住所が分からないまま請求したいとき
独身だと聞いて交際していた相手が既婚者だった、貸したお金を返さないまま連絡が取れなくなった、といった場面では、相手に慰謝料や返金を求めることを考える方もいると思います。ところが、裁判で請求するには、原則として相手の氏名と住所が分かっている必要があります。身分証を見ていない場合、プロフィールの名前が本名かどうかも分からないことがあります。
このようなときでも、手がかりが残っていれば、相手をたどれる場合があります。たとえば、電話番号や振込先の口座、車のナンバー、本人が話していた勤務先などです。弁護士は、弁護士会を通じて事業者などに情報の照会を求める手続(弁護士会照会)を使えることがあり、電話番号から契約者の氏名や住所が分かる場合もあります。アプリの運営会社に記録の開示を求める方法もありますが、応じるかどうかは運営会社の判断によるうえ、記録の保存期間にも限りがあります。
反対に、手がかりがほとんど残っていない場合は、特定が難しいこともあります。また、相手の情報を自分で調べようとして、自宅や勤務先を探し回ったりSNSで呼びかけたりすると、別のトラブルを招くことがあります。相手とのやり取りや、受け取った情報を早めに保存しておくことが、後の選択肢を広げることにつながります。関連して、【男女トラブル・マッチングアプリ】アプリ内のメッセージは後から取り寄せられるのか|保存期間と開示の限界、【不貞慰謝料】マッチングアプリで出会った相手が既婚だったもご参照ください。
自分の身分証を相手に見せていた場合
相手の身分証は見ていないのに、自分は求められて身分証を見せたり、画像を送ったりしていたという方もいます。身分証には氏名・生年月日・住所が載っているため、後に関係がこじれたとき、自宅や家族への連絡をほのめかされる材料になることがあります。
身分証の情報をもとに「家族や職場に知らせる」などと告げてお金を求められた場合、その内容によっては恐喝などの犯罪にあたる可能性があります。一人で応じる前に、警察や弁護士に相談することを考えてください。
すでに画像を送ってしまった場合は、何を渡したのかを書き出して整理し、相手からの連絡を保存しておくことが出発点になります。相手に削除を求める方法や、要求を受けたときの対応については、身分証の写真を送ってしまった|個人情報を握られた後の対処で詳しく扱っています。
これから会う相手について確かめておきたいこと
身分証を見せ合うことは、互いの個人情報を渡し合うことでもあります。相手に提示を強く求めると、それ自体がトラブルのきっかけになることもあるため、身分証の確認だけに頼るよりも、次のような点に気を配るほうが現実的です。
- アプリの年齢確認や本人確認が済んでいる相手かどうかを確かめます。
- プロフィールと会話の内容に食い違いがないかに気を配ります。
- 年齢に少しでも疑問がある場合は、会う約束や関係を急がないようにします。
- メッセージやプロフィール画面は、自分の端末にも保存しておきます。
- 会って間もない段階でのお金の貸し借りには応じないようにします。
相手が退会するとアプリ内のやり取りが見られなくなることがあるため、記録の残し方は早めに考えておくと安心です。この点は【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序で整理しています。
弁護士に相談できること
相手が18歳未満だった可能性がある場合には、刑事手続になるかどうかの見通しや、警察から連絡が来たときの対応について相談できます。相手やその関係者から金銭を求められている場合には、弁護士が窓口となって連絡を受け、事実関係を確かめながら対応することも考えられます。
相手の本名や住所が分からない場合には、残っている手がかりから相手をたどる手続を取れるかどうかを検討し、特定できたときには慰謝料や返金の交渉に進むことになります。どの場面でも、手元の記録が多いほど取れる手段は増えますので、記録を消さずにご相談いただくことが大切です。
身分証を確認していなかったこと自体を、必要以上に心配する必要はありません。大切なのは、トラブルの兆しに気づいた時点で、何が起きていて、手元にどのような記録が残っているかを落ち着いて整理することです。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


