【不貞慰謝料】弁護士費用は相手に払わせられるのか
本記事は、当事務所が実際に解決した事例をもとに作成しています。ご依頼者のプライバシー保護のため、年齢や具体的な状況などの一部に変更を加えています。法令に関する記載は、2026年9月時点の内容に基づいています。
関係を終わらせたいと伝えたところ、職場でのつきまといが始まり、上司に相談したことで相手がかえって感情的になった。そのうえ、交際中に撮影された性的な動画を流すとまで言われた――。職場の元交際相手とのトラブルは、毎日顔を合わせる環境で起きるだけに、お一人で対処するのが難しい問題です。
本記事では、脅しにあたる発言の記録がほとんど残っていない状況で、弁護士が受任当日に介入し、勤務先とも連携しながら相手方からの接触がない状態を保てた事例をご紹介します。
ご相談の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| ご相談者 | 関東地方にお住まいの女性(相手方と同じ職場に勤務) |
| 相手方 | 同じ職場に勤務する男性(元交際相手) |
| ご相談のきっかけ | 関係の解消後に職場でつきまとわれ、上司から相手方へ注意がなされた後、交際中に撮影された性的な動画を拡散すると告げられた |
| ご要望 | 相手方との関係を断ち、落ち着いた生活を取り戻したい |
| 懸念事項 | 退職日までの引継ぎ期間中に職場で相手方と顔を合わせるおそれ/脅しにあたる発言の記録が残っていないこと |
| 解決までの期間 | 受任後、3か月以上接触がないことを確認して終結 |
ご相談までの経緯
関係の解消をきっかけに、職場でのつきまといが始まった
ご相談者は、関東地方にお住まいの女性です。同じ職場に勤める男性(相手方)と交際していましたが、相手方が結婚したことをきっかけに、ご相談者の側から距離を置くようになりました。
しかし相手方はこれを受け入れず、職場でのつきまといが始まりました。同じ建物で働いている以上、顔を合わせずに過ごすことはできません。ご相談者は次第に出勤すること自体がつらくなり、職場を離れることを考えるようになりました。
上司からの注意の後、性的な動画の拡散を告げられた
悩んだご相談者は、勤務先の管理職に事情を打ち明けました。管理職は相手方に注意をしましたが、これをきっかけに状況は悪化します。注意を受けた相手方は感情を高ぶらせ、ご相談者に対して社会的な立場を失わせるという趣旨の発言をしたうえで、交際中に撮影していた性的な動画を拡散すると告げたのです。その動画には、ご相談者の顔がはっきりと映っていました。
退職は決めていたものの、引継ぎのための出勤が残っていた
ご相談者は、すでに退職して転居することを決めていました。ただ、退職日までは引継ぎのために出勤しなければならない期間があり、その間は職員が集まる場所などで相手方と顔を合わせる可能性がありました。
この時点で警察への相談はしておらず、脅しにあたる発言はいずれも対面や電話でなされていたため、メッセージの履歴として残っているものもありませんでした。この状況をどう乗り切ればよいか判断がつかないまま、ご相談者は当事務所にご相談くださり、そのままご依頼いただきました。
弁護士の対応と解決までの流れ
受任時に残るリスクをお伝えしたうえで方針を決める
本件でもっとも心配されたのは、退職までの引継ぎ期間中に、相手方がご相談者に接触してくることでした。弁護士が代理人に就いても、同じ職場で働いている限り、物理的に接触される可能性がなくなるわけではありません。担当弁護士は、このリスクが残ることをご相談者に率直にお伝えしたうえで、ご依頼をお受けしました。
ご依頼の直前には、相手方から「管理職を交えて直接話し合いたい」という申し入れもありました。担当弁護士は、ご相談者が相手方と直接会うことは避けるべきであり、今後は弁護士が相手方と話をするという方針を明確にお伝えしました。
受任当日に、確実に届く方法で受任通知を送る
担当弁護士は、ご依頼を受けたその日のうちに受任通知書を作成しました。受任通知とは、弁護士が代理人に就いたことと、今後の連絡窓口が弁護士になることを相手方に知らせる書面です。仕組みについては受任通知とは何か|送られると相手方との関係はどう変わるかで解説しています。
送付の方法にも工夫をしました。相手方の電話番号が分からず、住所宛ての郵送では届くまでに数日かかるため、ご相談者のメッセージアプリのアカウントから、受任通知書のデータを相手方へ直接送っていただく方法を採りました。送信の手順は、次のとおり具体的にお伝えしています。
- 押印済みの受任通知書のデータの送信。
- 今後の対応はすべて弁護士に依頼したこと、以後の連絡は弁護士宛てに行ってほしいことを伝える本文の送信。
- 相手方の既読を確認した時点でのアカウントのブロック。
この流れにより、通知が相手方本人に届いたことを確認しながら、以後の直接のやり取りを断つことができました。
勤務先と情報を共有し、引継ぎ期間中の接触を避ける
介入後、担当弁護士はご相談者に、弁護士が代理人に就いたことを勤務先の管理職へ伝えるよう助言しました。事情を把握した管理職は、ご相談者に一定期間の休務を認め、その後は退職日まで在宅での業務に切り替える対応をとりました。
これにより、当初もっとも心配されていた「職場で相手方と顔を合わせる可能性」そのものがなくなりました。弁護士が関与していることを勤務先が把握していたことが、速やかな配慮につながったと考えられます。
あわせて担当弁護士は、休日などに万が一相手方が接触してきた場合には、その場でためらわずに110番通報し、弁護士に依頼していることと担当弁護士の名前を伝えるよう、ご相談者に具体的にお伝えしていました。
賠償の請求より、関係を断つことを優先する
受任後、担当弁護士はご相談者と改めて方針を確認しました。相手方の言動について損害賠償を請求したり、勤務先を通じて責任を問うたりすることも、選択肢としては考えられます。しかし本件では、脅しにあたる発言を裏づける客観的な記録がほとんど残っていませんでした。担当弁護士は、手元の資料から相手方の法的責任を認めさせるのは簡単ではないという見通しを、率直にご説明しました。
ご相談者が望まれていたのは、相手方から金銭を得ることではなく、関係を断ち、落ち着いた生活を取り戻すことでした。そこで、関係の遮断を優先する方針を続けることとし、相手方の接触が止まらない場合には警察へ被害を申告するという次の手段も準備したうえで、経過を見守りました。
受任通知を送った後、相手方からはご相談者本人への接触も、当事務所への連絡もありませんでした。心配されていた動画の拡散も確認されていません。3か月以上にわたり接触のない状態が続いたことを確認し、事件を終結しました。
解決結果と対応のポイント
- 受任当日に受任通知を送り、その後、相手方からの接触はありませんでした。
- 心配されていた性的な動画の拡散は、終結までの間に確認されませんでした。
- 勤務先と情報を共有したことで、退職までの引継ぎ期間が在宅での業務に切り替わり、職場で顔を合わせる可能性がなくなりました。
- 相手方が求めていた直接の話し合いに応じることなく、終結に至りました。
- 3か月以上にわたり接触がないことを確認して、事件を終結しました。
担当弁護士からのコメント|性的な画像や動画で脅されている方へ
「拡散する」と告げること自体が、違法となることがあります
交際中に撮影した性的な画像や動画について、関係が終わった後に「拡散する」と告げ、相手を思いどおりに動かそうとする行為は、残念ながら珍しいものではありません。
実際に画像や動画を不特定多数に向けて公開すれば、私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律(いわゆるリベンジポルノ防止法)の処罰対象となるほか、名誉毀損罪などが成立する可能性もあります。また、実際に公開していなくても、名誉などに害を加える内容を告げて相手を怖がらせる行為は、脅迫罪(刑法222条)にあたることがあり、何かを無理にさせようとした場合には強要罪(刑法223条)が問題になることもあります。
つまり、まだ動画が出回っていない段階でも、すでに法的に問題のある行為が行われている可能性があるということです。一度インターネット上に広がった画像や動画をすべて消すことは難しく、被害の回復には時間と負担がかかります。拡散を告げられた段階での対応については、『拡散するぞ』と脅されている|拡散前にとるべき緊急対応3ステップもあわせてご覧ください。
職場の上司に相談する前に知っておいていただきたいこと
本件で状況が悪化したきっかけは、ご相談者が勤務先の管理職に相談し、管理職から相手方へ注意がなされたことでした。
職場でのつきまといに悩んだとき、まず上司や人事部門に相談するのは自然な行動であり、本来そうすべき場面でもあります。ただ、相手方が同じ職場にいる場合、職場からの注意を「自分の立場を悪くされた」と受け止め、かえって感情的になることがあります。本件はその一例でした。
職場への相談を控えるべきということではありません。大切なのは、職場への相談と並行して、あるいはその前に、外部の専門家にも状況を伝えておくことです。職場は労務管理の観点から対応しますが、脅しや画像の拡散といった問題には、法的な手段を別に用意しておく必要があります。両方を備えておけば、状況が悪化した場合にも次の手を打ちやすくなります。
なお本件では、弁護士が関与している事実を勤務先に伝えたことが、休務や在宅での業務といった速やかな配慮につながりました。職場との連携は、進め方を誤らなければ、ご本人の安全を確保するうえで役に立ちます。
記録が残っていない場合でも、取れる手立てはあります
脅しにあたる発言は、対面や電話でなされることが多く、記録が残っていないことも少なくありません。本件でも、メッセージの履歴として残っているものはありませんでした。
記録が乏しい場合、損害賠償の請求や刑事告訴といった手段は選びにくくなります。それでも、弁護士が代理人として介入し、連絡の窓口を一本化したうえで行為をやめるよう求めることで、相手方の行動が止まることは少なくありません。弁護士が関与した後もなお行為を続ければ、法的な手続に進むおそれがあることを、相手方が意識しやすくなるためと考えられます。
また、元交際相手による職場での待ち伏せなどは、ストーカー規制法の対象となる場合があります。警察で取れる手続については、元交際相手のつきまとい・待ち伏せ|ストーカー規制法でできる対応で解説しています。
あわせて、今後に備えて記録を残しておくことをおすすめします。本件でも、ご相談者が脅しを受けた日時をメモに書き留めていたため、担当弁護士はそのメモを保管しておくよう助言しました。日時と発言内容を記したメモ、通話の録音、やり取りのスクリーンショットは、いずれも後の手続で意味を持つことがあります。
賠償を求めるか、関係を断つかという選択
被害を受けた方の多くは、相手方に責任を取らせたいとお考えになります。それはもっともなお気持ちです。
一方で、損害賠償の請求や刑事手続に進むことは、その間、相手方と関わり続けることでもあります。記録が十分でない場合には、手続が長引いたうえに、望んだ結果が得られないこともあります。
本件のご相談者が優先されたのは、相手方から金銭を得ることではなく、できるだけ早く落ち着いた生活を取り戻すことでした。その方針のもと、受任当日に介入した後は接触がなく、もっとも心配されていた動画の拡散も確認されないまま終結に至りました。
どちらを選ぶのがよいかは、残っている記録の状況、相手方との関係、ご本人の置かれている環境によって変わります。ご相談いただければ、見通しを率直にお伝えしたうえで、一緒に方針を考えていきます。
同種のご相談をお考えの方へ
職場の同僚や元交際相手からつきまとわれている、性的な画像や動画を撮られていて拡散すると言われた、上司に相談したらかえって状況が悪くなった、警察に相談すべきか迷っている。こうしたお悩みを抱えている方は、お一人で抱え込まず、拡散される前の段階でご相談ください。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


