【男女トラブル・マッチングアプリ】出会い系で会った相手に「避妊具が破れた」と責任を求められたら?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

出会い系サイトやマッチングアプリで知り合った相手と関係を持った後、「避妊具が破れていた」「責任を取ってほしい」と連絡が来ることがあります。数回しか会っておらず本名や住所も十分に分からない相手から、緊急避妊薬の費用、妊娠した場合の中絶費用、慰謝料などを一度に求められ、どう受け止めればよいか戸惑う方も少なくありません。

 避妊具の破損は、どちらか一方が意図して起こすものではないことが多く、破れたという事実だけで法的な責任の範囲が決まるわけではありません。一方で、相手の心身の負担は現実のものです。求められている内容を項目ごとに分けて考えることが、落ち着いて対応するための出発点になります。この記事では、請求の項目ごとの考え方と、出会い系・マッチングアプリで知り合った相手ならではの注意点を整理します。

本記事は2026年10月時点の法令・制度に基づいて記載しています。緊急避妊薬は、2026年2月2日から一部の薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できるようになっています。


「避妊具が破れた」と言われたときに寄せられる相談

 出会い系サイトやマッチングアプリで知り合った相手との間では、次のような悩みが寄せられます。

  • アフターピル代を払ってほしいと言われたが、領収書を見せてもらえない。
  • 「妊娠していたら中絶費用と慰謝料を払う」という誓約書を書くよう迫られている。
  • その場で免許証のコピーを渡し、現金も渡してしまった。
  • 仕事を休んだ分も払えと言われ、連絡のたびに金額が増えている。
  • わざと外したのではないかと疑われている。


 こうした請求はひとまとめに「責任」と言われることが多いものの、法的にはいくつかの異なる問題が含まれています。まずは、何に対していくらを求められているのかを分けて確認することが大切です。

避妊具が破れたこと自体で「責任」が生じるのか


合意のうえの行為の中で起きた破損

 お互いの合意のもとで避妊具を使い、通常の使い方をしていた中で破れてしまった場合、それだけで一方に損害賠償の責任が生じるとは考えにくいところです。不法行為(民法709条)が成立するには、故意や過失によって相手の権利や利益を侵害したといえることが必要になるためです。

 もっとも、法的な支払義務の有無とは別に、緊急避妊薬の費用などを双方で分担する形で話がまとまることは少なくありません。弁護士ドットコムに寄せられた相談でも、避妊具の破損後に男性が緊急避妊薬の費用を負担した例や、費用の半額を負担することで話がついた例が見られます。

評価が変わる事情

 一方で、次のような事情がある場合は、受け止め方が変わってきます。

  • 避妊具を途中で外していた、または付けたふりをしていた場合。
  • 破れたことに気づいていながら、相手に伝えずに行為を続けた場合。
  • 相手が避妊具の使用を条件にしていたのに、それを守らなかった場合。


 避妊具の使用を前提に同意していた相手に対して無断で外すことは、同意の範囲を超えた行為として民事上の責任を問われるおそれがあり、刑事上の問題(不同意性交等罪など)として扱われる可能性も指摘されています。相手から「わざと外したのではないか」と疑われている場合は、当日の経緯を時系列で整理しておくことが重要です。この点は避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求でも解説しています。

請求の項目ごとに見た負担の考え方


求められる項目考え方の目安確認したい資料
緊急避妊薬・受診の費用双方の行為から生じた費用として、分担や一方の負担で話がまとまることが多い領収書、購入・受診の日付
妊娠した場合の中絶費用裁判例では、男女双方で不利益を分担する考え方が示されている妊娠の診断書、手術費用の領収書
慰謝料合意のうえの行為で過失もない場合は認められにくいが、その後の対応によって問題になることがあるやり取りの記録
仕事を休んだ分(休業補償)休んだ事実と必要性、金額の根拠についての説明が求められる勤務の記録、診断書


緊急避妊薬の費用

 緊急避妊薬は、性交後できるだけ早く(原則72時間以内)服用することで効果が高くなるとされています。2026年2月からは一部の薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できるようになり、市販品の希望小売価格は1錠7,480円とされています。医療機関を受診して処方を受ける場合は、費用が医療機関によって異なります。

 この費用の負担を求められた場合、領収書を確認したうえで全額または一部を負担することは、話を早く落ち着かせる現実的な選択肢の一つです。反対に、領収書などを示さないまま相場を大きく超える金額を求められる場合は、慎重に対応する必要があります。

妊娠した場合の中絶費用と慰謝料

 妊娠が分かり中絶を選んだ場合について、東京高等裁判所平成21年10月15日判決は、男性にも中絶に伴う不利益を解消・軽減するための行為をする義務があるとし、話し合いに誠実に応じることや、経済的な負担を分担することを求める考え方を示したとされています。このため、費用を双方で分担する形が一つの目安になります。

 一方で、妊娠がまだ分からない段階で「妊娠したときのため」として中絶費用や慰謝料を先に求められることもあります。妊娠の有無が確認できない段階で前払いに応じる必要があるかは、慎重に考えるべき点です。反対に、妊娠を告げられた後に何も伝えず連絡を絶つと、それ自体が不誠実な対応として慰謝料の問題につながるおそれがあります。費用の負担については中絶費用は相手に請求できる?男女の費用負担もご参照ください。

出会い系・マッチングアプリならではの注意点

 出会い系サイトやマッチングアプリで知り合った相手との間では、継続して交際している相手の場合とは異なる事情が重なりやすくなります。

身分証のコピーや誓約書を求められる

 「連絡が取れなくなると困るから」として、その場で免許証のコピーを求められたり、支払いを約束する誓約書を書かされたりする例があります。弁護士ドットコムの相談でも、身分証のコピーと現金を求められたケースや、アフターピル代・中絶費用・慰謝料をまとめて支払う旨の書面を書かされたケースが見られます。身分証の情報は、後から家族や勤務先への連絡に使われるおそれもあります。すでに渡してしまった場合は身分証の写真を送ってしまった|個人情報を握られた後の対処も参考になります。

請求の名目が増える・第三者が出てくる

 最初は緊急避妊薬の費用の話だったのに、「仕事を休むことになった分」「関係先への損害の負担」などと名目が増え、金額が膨らんでいく相談もあります。相手の知人や交際相手を名乗る人物が交渉に加わってくる場合は、美人局や、妊娠を口実にした金銭目的の請求である可能性も視野に入れる必要があります。見分け方は「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方で解説しています。

関係の性質や相手の年齢

 金銭のやり取りを前提とした関係だった場合や、相手が18歳未満であった可能性がある場合には、費用の負担とは別の法的な問題が生じることがあります。こうした事情がある場合は、相手と話を進める前に弁護士へ相談することをおすすめします。

責任を求められたときに確認したいことと避けたい対応


まず整理しておきたいこと

 相手からの連絡にすぐ応じる前に、次の点を整理しておくと、その後の判断がしやすくなります。

  1. 行為の日時・場所、避妊具の使用状況、破れたことに気づいた時点。
  2. 相手から求められている項目と金額、支払いの期限。
  3. 請求の根拠となる資料(領収書・診断書)の有無。
  4. アプリやサイト上のやり取り、メッセージの記録。
  5. すでに渡した金銭や書面、身分証の写しの有無。


 アプリやサイトを退会したり相手をブロックしたりすると、やり取りを確認できなくなることがあります。先に記録を残しておくことが大切です。記録の残し方は【男女トラブル・マッチングアプリ】退会するとやり取りは消えるのか|証拠を残す順序で取り上げています。

避けたい対応

 焦りから次のような対応をすると、後の話し合いで不利になったり、要求が続いたりするおそれがあります。

  • 根拠を確認しないまま、その場で多額の現金を渡すこと。
  • 「すべて責任を取る」など、範囲の決まっていない約束をすること。
  • 故意に外したことを認める内容など、事実と異なる書面に署名すること。
  • 身分証の写しや勤務先、家族の連絡先を伝えること。
  • 妊娠の可能性を告げられた直後に、何も伝えず連絡を絶つこと。


 妊娠を告げられたときの受け答えについては、【男女トラブル】妊娠を告げられたときに言ってはいけない言葉|後で不利になる発言でも詳しく取り上げています。

脅しや過大な要求に変わったとき

 費用の分担を話し合うこと自体は正当なものです。しかし、「払わなければ家族や職場に知らせる」「ネットに書き込む」などと告げて金銭を求める行為は、恐喝罪(刑法249条)にあたる可能性があります。請求の名目が正当なものであっても、求め方によっては違法と評価されることがあります。

 また、脅されて書いた誓約書や念書は、強迫による意思表示として取消しを主張できる場合があります(民法96条1項)。書面に署名してしまった場合の考え方は脅されて署名した念書・示談書は有効か|「無効」と「取消し」の違いで解説しています。自宅に来るといった連絡があるなど身の危険を感じる場合は、警察への相談も検討してください。

弁護士に相談する意味

 弁護士が窓口になると、相手との直接のやり取りを減らしながら、請求の項目ごとに根拠を確認し、負担すべき範囲を整理して話し合いを進めることができます。緊急避妊薬の費用など合理的な範囲の負担に応じる場合でも、支払いと引き換えにそれ以上の請求をしないことや、受け取った個人情報の扱いなどを書面で取り決めておくことで、後から話を蒸し返されるおそれを小さくできます。

 相手の身元が十分に分からない場合でも、残っている記録から取れる手段を検討できることがあります。マッチングアプリで知り合った相手との金銭トラブルの例としては、【解決事例】マッチングアプリの相手から「妻に伝える」と脅された恐喝トラブルを解決した事例もご覧ください。

よくあるご質問


結局妊娠していなかったのに、慰謝料を求められています。払う必要はありますか?

 合意のうえの行為の中で避妊具が破れ、その後も誠実に対応していた場合、妊娠に至らなかったにもかかわらず慰謝料の支払義務が認められる場面は限られると考えられます。ただし、行為の経緯や当時のやり取りによって判断は変わるため、記録をもとに個別に検討する必要があります。

自分の子かどうか分からない場合はどう考えればよいですか?

 相手に他の交際相手がいる可能性があるなど、父親であるか疑問がある場合は、その点を整理しないまま費用の全額負担や認知を約束することは避けたほうがよいでしょう。出産する場合には、DNA鑑定などで確認する方法もあります。妊娠を告げられた直後の確認事項は【男女トラブル】避妊していたのに妊娠したと言われた|最初に確認することで解説しています。

すでに支払ったお金は取り戻せますか?

 脅されて支払った場合や、妊娠していないのに中絶費用として受け取られていた場合などは、返還を求められることがあります。相手の身元や支払いの経緯を示す記録が必要になるため、早めに整理しておくことが大切です。

関連する解説記事



 「避妊具が破れた」という出来事は、双方にとって予期しないものであることがほとんどです。相手の不安に向き合うことと、根拠の確認できない要求に応じないことは両立します。請求の中身を一つずつ確かめながら、落ち着いて対応していきましょう。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

リンクをコピーしました

Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

関連するコラム

プロのおすすめするコラム

コラムテーマ

コラム一覧に戻る

プロのインタビューを読む

風俗・男女トラブルの不当要求から依頼者を守る弁護士

  1. マイベストプロ TOP
  2. マイベストプロ東京
  3. 東京の法律関連
  4. 東京の男女・夫婦問題
  5. 若井亮
  6. コラム一覧
  7. 【男女トラブル・マッチングアプリ】出会い系で会った相手に「避妊具が破れた」と責任を求められたら?

若井亮プロへの仕事の相談・依頼

仕事の相談・依頼