【男女トラブル】避妊していたのに妊娠したと言われた|最初に確認すること

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月時点の民法・家事事件手続法などに基づいて作成しています。妊娠週数の数え方は、法務省民事局参事官室「妊娠の期間等に関する報告書」(令和3年6月29日)に示された医学的知見を参照しています。


「避妊はしていたはずなのに、交際相手から妊娠したと言われました。正直、信じられない気持ちが先に立ってしまいます」。妊娠をめぐるご相談では、男性からこうした声をお聞きすることがあります。反対に、女性の側からは「きちんと避妊していたと伝えたら、まるで自分だけの問題のように扱われた」というご相談も寄せられます。

 一般には「避妊をしていても妊娠の可能性はゼロではない」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、「避妊していた」という事情が、親子関係や費用の負担、話し合いの進め方のどこに関係し、どこには関係しないのかという整理は、あまり示されていないように思われます。この区別があいまいなまま話し合いに入ると、言葉の行き違いから関係がこじれ、必要な確認ができなくなることがあります。

 この記事では、避妊していたのに妊娠したと告げられた方を中心に、最初に確認しておきたいことを順に整理します。告げられた直後の1週間の過ごし方、中絶費用の分担、相手が既婚の場合の問題などは、それぞれ別の記事で扱っていますので、本文中でご案内します。

「避妊していた」という事情が意味すること・意味しないこと

 最初に整理しておきたいのは、「避妊していた」という事実が、法律上どのような重みを持つのかという点です。ここを取り違えると、その後の確認の順序も見誤りやすくなります。

避妊は妊娠の可能性を下げるが、なくすものではない

 医療機関の解説でも、コンドームや低用量ピルは、正しく使っていても妊娠の可能性が残るとされています。コンドームの破損や外れ、装着のタイミング、ピルの飲み忘れなど、本人が気づかないまま避妊の効果が下がっていることもあります。また、膣外射精は、医療機関の解説では確実な避妊法とは扱われていません。

 したがって、「避妊していたのだから妊娠するはずがない」と考えるのは、医学的にも正確ではありません。避妊していたことは、妊娠の可能性を低くしていたという事情にとどまります。

父子関係は避妊の有無ではなく血縁で決まる

 法律上、婚姻していない男女の間に生まれた子と父との親子関係は、認知によって生じます(民法779条)。父が任意に認知しない場合でも、子の側から認知の訴えを起こすことができ(同法787条)、その手続では多くの場合、DNA鑑定によって血縁関係の有無が確かめられます。

 つまり、「避妊していた」という事情は、自分が父ではないことの根拠にはならず、反対に父であることの根拠にもなりません。親子関係の有無は、最終的には血縁で判断されるということを、最初に押さえておくとよいでしょう。

認知や養育費の責任は、避妊の有無で変わらない

 子が生まれ、認知によって親子関係が認められれば、父は子を扶養する義務を負い、養育費の分担が問題になります(民法877条1項、788条、766条)。この義務は子のためのものであり、妊娠に至った経緯の中で避妊をしていたかどうかによって、軽くなったりなくなったりするものではありません。

 このことは、相手から「避妊していると言われていた」という場合でも同じです。避妊をめぐる大人同士の事情と、生まれてくる子に対する責任とは、分けて考える必要があります。

最初に確認すること①|妊娠の時期と交際の時期を照らし合わせる

 避妊していたのに妊娠したと言われたとき、多くの方がまず気にされるのは「本当に自分との間の妊娠なのか」という点です。この疑問を確かめるうえで最初の手がかりになるのが、妊娠週数や出産予定日です。

妊娠週数は受精した日から数えるものではない

 妊娠週数は、最終月経の初日を「妊娠0週0日」として数えます。排卵と受精は、一般にそこから2週間ほど後に起こるとされています。そのため、たとえば医療機関で「妊娠6週」と言われた場合、受精はその診察日からおよそ4週間前が目安になります。

 週数を聞いて「その時期には会っていない」と感じた場合でも、この数え方を知らないまま判断していることが少なくありません。医療機関で伝えられた週数と、受精時期の目安をまとめると次のとおりです。

医療機関で伝えられた週数受精時期の目安(診察日からさかのぼって)
妊娠5週およそ3週間前
妊娠6週およそ4週間前
妊娠8週およそ6週間前
妊娠10週およそ8週間前


 出産予定日が分かっている場合は、予定日からおよそ266日(38週)さかのぼった日が受精の目安になります。

目安には幅があることを前提にする

 月経周期や排卵の時期には個人差があるため、最終月経から計算した週数は、妊娠初期の超音波検査で胎児の大きさを測ったうえで修正されることがあります。そのため、上の目安にも前後数日から1週間程度の幅があると考えておく必要があります。

 照らし合わせの結果、交際の時期と重なっているのであれば、避妊していたことを理由に自分との間の妊娠ではないと考えることは難しくなります。時期の照合は、相手を疑うためではなく、自分自身の認識を正確にするための作業だと考えるとよいでしょう。

週数や予定日の聞き方

 最終月経の日付を細かく尋ねると、相手は問い詰められているように感じることがあります。「これからのことを一緒に考えるために、医師から言われた週数や予定日を教えてほしい」という形で、医療機関で確認された情報を共有してもらうのが現実的です。まだ受診していない場合の進め方や、診断書を求めるときの伝え方は、【男女トラブル】交際相手から妊娠を告げられた|最初の1週間に確認することで詳しく扱っています。

最初に確認すること②|避妊の具体的な状況を自分の記憶で整理する

 次に、「避妊していた」という言葉の中身を、自分の記憶に沿って具体的に書き出しておきます。後から話し合いや手続に進んだとき、この整理があるかどうかで説明のしやすさが変わります。

書き出しておきたい項目

 記憶が新しいうちに、次のような点をメモにしておくとよいでしょう。

  • 性交渉があった時期と、その回数。
  • 避妊の方法(コンドーム、低用量ピル、膣外射精など)と、それを誰が管理していたか。
  • 毎回避妊していたのか、避妊しなかった機会があったのか。
  • 破損や外れなど、避妊がうまくいかなかったと思い当たる場面があったか。
  • 避妊について、2人の間でどのような約束や会話があったか。


 このメモは、相手に見せて「避妊していた証拠」とするためのものではありません。あくまで自分の認識を整理し、相談の際に事実関係を正確に伝えるための材料です。

避妊についての約束がある場合は、やり取りも残しておく

 「避妊すると約束していたのに守られなかった」という主張は、男女のどちらの側からも出てくることがあります。たとえば、避妊具を外したことを告げずに性交渉を続けた場合や、避妊していると偽った場合には、相手が妊娠について自ら判断する機会を損なったとして、民事上の責任が問題になる場面があると考えられています(民法709条、710条)。

 実際に約束どおり避妊していたのであれば、そのことをうかがわせるメッセージのやり取りなどは、削除せずに残しておくことが大切です。反対に、相手が避妊していると言っていたのに実際は違っていたと感じている場合も、その旨のやり取りは残しておくとよいでしょう。

最初に確認すること③|相手が何を求めているのかを切り分ける

 妊娠を告げられた場面では、相手の言葉の中に、報告や相談、費用の負担、結婚、慰謝料といった異なる要素が混ざっていることがよくあります。それぞれについて、「避妊していた」という事情がどこまで関係するのかを分けて考えると、話し合いの焦点が見えやすくなります。

相手が求めていること「避妊していた」事情との関係
受診や体調についての相談ほとんど関係しない。まず受診と体調を優先する
中絶費用の負担分担を否定する理由にはなりにくい
出産後の認知・養育費関係しない。血縁の有無で判断される
結婚妊娠の経緯にかかわらず、結婚を強いられることはない
慰謝料避妊について偽っていたかどうかが争点になることがある


中絶費用の分担への影響

 合意のうえでの性交渉による妊娠であれば、中絶にかかる費用は男女双方で負担するという考え方が一般的です。裁判例にも、妊娠に至った性行為は双方の行為であることを前提に、男性の側も中絶に伴う身体的・精神的・経済的な負担を応分に分かち合うべきであったとして、損害賠償を命じたものがあります(東京高等裁判所平成21年10月15日判決)。避妊していたことは、この分担を否定する理由にはなりにくいと考えておくのが現実的です。分担の考え方については、【男女トラブル】中絶費用は折半なのか|「おかしい」と感じたときの整理の仕方で詳しく整理しています。

慰謝料を求められた場合

 合意のうえでの性交渉で妊娠したこと自体を理由に、慰謝料の支払義務が生じることは一般的には多くありません。慰謝料が問題になりやすいのは、避妊について偽っていた場合や、妊娠を告げられた後に話し合いを一方的に避け続けた場合などです。

 この場面では、避妊を約束どおり行っていたかどうかが争点になることがあり、②で整理した記憶ややり取りが意味を持ちます。一方で、避妊していたとしても、妊娠を告げられた後の対応が不誠実であれば、別の理由から責任を問われることがあります。避妊していたことだけで、すべての請求に応じなくてよいと考えるのは避けたいところです。

結婚を求められた場合

 結婚は当事者双方の意思によるものであり、妊娠したことを理由に結婚を強制されることはありません。ただし、応じない場合にどのような話し合いが必要になるかは別の問題です。この点は【男女トラブル】妊娠を理由に結婚を迫られている|応じない場合に起きることで扱っています。

疑問が残る場合の確かめ方と、控えたい対応

 時期の照合や記憶の整理をしても、自分との間の妊娠であるか疑問が残ることはあります。その場合でも、確かめる方法と順序を知っておけば、関係を必要以上にこじらせずに済むことがあります。

親子関係を確かめる方法

 出産前に親子関係を調べる検査を行う民間の機関もありますが、母体からの採血が必要になるため、相手の協力がなければ行えません。出生後であれば、当事者の合意によりDNA鑑定を行うことができます。

 合意がまとまらない場合には、家庭裁判所の調停で話し合うことになり(家事事件手続法257条1項)、調停の中でDNA鑑定が行われることもあります。当事者間で親子関係について合意ができ、裁判所が必要な事実を調べたうえでその合意を正当と認めれば、合意に相当する審判がされる仕組みもあります(同法277条1項)。

疑問が残るうちは、認知や金銭の約束を急がない

 疑問が解消されないまま、胎児認知に応じたり、まとまった金額の支払いを約束したりすることは控えたほうがよいでしょう。いったん認知すると取り消すことはできず(民法785条)、認知の効力を争うには限られた手続によることになります。

 一方で、相手が受診を拒み続けながら金銭だけを強く求めてくる、といった場合には、妊娠そのものの事実から慎重に確かめる必要があります。この点については「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方で整理しています。なお、風俗店の利用に関して避妊をめぐる請求を受けている場合は、避妊の有無が争点になる場面|感染・妊娠の主張と請求もあわせてご覧ください。

「避妊していた」を理由に話し合いを打ち切らない

 避妊していたことを強調するあまり、相手の話を聞かずに連絡を断ってしまうと、相手は家庭裁判所での手続を考えざるを得なくなり、かえって話し合いが長引くことがあります。妊娠を告げられた後に話し合いを避け続けたことが、慰謝料の判断に影響した裁判例もあります。疑問がある場合でも、「確かめたうえで、必要な負担については話し合いたい」という姿勢を示しておくことが、結果として自分を守ることにもつながります。

弁護士に相談することを考える場面

 当事者同士で落ち着いて話し合えているのであれば、すぐに弁護士が関わる必要はありません。ただし、次のような場面では、早めに相談しておくと見通しを立てやすくなります。

  • 避妊していたかどうかをめぐって、相手との言い分が食い違っている。
  • 避妊について偽っていたとして、慰謝料を求められている。
  • 時期が合わないと感じているが、どのように確かめればよいか分からない。
  • 胎児認知や、まとまった金額の支払いを約束する書面への署名を求められている。
  • 相手やその家族から、職場や家族に知らせるといった言葉とともに要求を受けている。


 弁護士が窓口となることで、直接顔を合わせずに事実の確認や条件の調整を進めることもできます。実際の解決例として、【解決事例】交際相手の妊娠をめぐり100万円超を請求された事例|直接の面談に応じず解決金30万円で合意書を締結もご参照ください。

よくあるご質問

膣外射精をしていた場合、避妊していたことになりますか。

 膣外射精は、医療機関の解説では確実な避妊法とは扱われていません。当事者の間で「避妊していた」と受け止めていたとしても、妊娠の可能性は十分に残る方法です。いずれにしても、認知や養育費の責任は血縁の有無で判断されるため、避妊の方法によって結論が変わるわけではありません。

「ピルを飲んでいる」と言われていたのに妊娠しました。責任は軽くなりますか。

 ピルは正しく服用していても妊娠の可能性が残るとされており、飲み忘れなどで効果が下がることもあります。また、相手の説明が事実と違っていたとしても、生まれてくる子に対する認知や養育費の責任は、そのことによって軽くなるものではありません。相手に対して何らかの請求ができるかは、説明の内容や経緯によって異なりますので、やり取りを残したうえで個別にご相談ください。

週数から考えると、時期が合わないように思います。どうすればよいですか。

 まずは、妊娠週数が最終月経の初日から数えるものであり、受精はその約2週間後が目安になるという点を踏まえて、改めて照らし合わせてみてください。そのうえでなお疑問が残る場合は、相手を問い詰めるのではなく、医療機関で確認された予定日などを共有してもらい、出生後の鑑定も視野に入れて進め方を考えるのが現実的です。疑問が残るうちに、認知や金銭の約束をすることは控えたほうがよいでしょう。

まとめ


  1. 避妊は妊娠の可能性を下げるものであり、なくすものではない。「避妊していた」ことは、父でないことの根拠にはならない。
  2. 婚姻していない男女の間の子との親子関係は認知によって生じ、任意に認知しない場合は認知の訴えで血縁が確かめられる(民法779条、787条)。
  3. 認知や養育費の責任は子のためのものであり、避妊の有無によって変わらない(民法877条1項、788条、766条)。
  4. 妊娠週数は最終月経の初日から数え、受精はその約2週間後が目安になる。時期の照合はこの数え方を踏まえて行う。
  5. 避妊の方法や約束の内容は、記憶が新しいうちに書き出し、関係するやり取りは削除せずに残しておく。
  6. 避妊について偽っていた場合などには民事上の責任が問題になることがあり、中絶費用は双方で負担する考え方が一般的である(民法709条、710条、東京高等裁判所平成21年10月15日判決)。
  7. 疑問が残るうちは胎児認知や金銭の約束を急がない。認知は取り消すことができない(民法785条)。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。避妊していたのに妊娠したと告げられ、事実の確かめ方や話し合いの進め方に迷っている方のご相談に対応しています。

妊娠を告げられて対応に迷っている方も、避妊をめぐる相手の言い分に納得できず話し合いが進まない方も、おひとりで抱え込まず、早い段階でご相談ください。

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Mybestpro Members

若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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