【男女トラブル】嘘の理由で別れた後に、慰謝料を請求されたら?
この記事は、婚姻していない交際中・同棲中のカップルを前提にしています。夫婦が離婚するときの財産分与とは考え方が異なる部分があります。
交際中に二人で車を買い、ローンを組んで乗っていた。そうしたカップルが別れることになると、「車はどちらが持っていくのか」「残ったローンは誰が払うのか」「名義はいつ変えられるのか」という問題がまとめて出てきます。
結婚していない二人の間には、離婚のときのような財産分与の仕組みがありません。そのため、ローン契約や車検証の記載、実際に誰がいくら出したのかを一つずつ確かめ、二人の話し合いで分け方を決めていくことになります。この記事では、別れた後の車とローンの扱いについて、確かめる順番と分け方の選択肢を整理します。
車の「名義」は一つではない|3つの名前を分けて確かめる
「車の名義」という言葉は、実は異なる意味で使われています。話し合いの前に、次の3つがそれぞれ誰になっているかを確かめておくと、問題の所在がはっきりします。
| 名前の種類 | 確かめる書類 | 意味すること |
|---|---|---|
| ローンの契約者 | ローン契約書・返済予定表・引き落とし口座 | 金融機関や信販会社に対して返済する義務を負う人 |
| 車検証の「所有者」 | 車検証 | 登録上の持ち主。ローン返済中は信販会社や販売店になっていることがある |
| 車検証の「使用者」 | 車検証 | その車を使う人として登録されている人 |
この3つがすべて同じ人であれば、整理は比較的単純です。トラブルになりやすいのは、「ローンは自分、乗っているのは相手」「所有者は信販会社、使用者は相手」のように、名前がばらばらになっている場合です。
ローンの返済義務は、契約した人に残る
ローンを返す義務は、ローン契約を結んだ人が負います。二人の間で「車に乗る方が払う」と約束していても、その約束を金融機関や信販会社に主張することはできません。相手が支払いを止めれば、督促は契約者のもとに届きます。延滞が続くと、信用情報への登録や残金の一括請求、車の引き揚げにつながることもあります。
一方で、二人の間の約束が無意味になるわけではありません。「相手が返済分を払う」という合意があったのに支払われない場合、契約者が立て替えた分を相手に請求できる余地があります。LINEのやり取りや、相手から毎月振り込まれていた記録などは、その合意を示す材料になります。
相手のためにローンを組んだ(名義を貸した)場合
相手が審査に通らなかったため自分の名前でローンを組んだ、という相談は少なくありません。このときも、貸し手に対する返済義務は契約者である自分に残ります。ローン契約の中には、契約者本人が使うことを前提にしているものもあり、実態と契約内容の食い違いが別の問題を生むこともあります。相手への請求と並行して、契約の条件を確かめておくことが大切です。携帯電話の名義で同じような状況が生じたときの考え方は、【男女トラブル】別れた後に「携帯代を払え」と言われた|名義を貸した・借りた場合の清算でも解説しています。
車は誰のものか|お金の出し方から考える
車検証の所有者欄は一つの目安になりますが、交際相手との間で「どちらの車か」が争われたときは、実際に誰が費用を負担したかが重視されます。次のような事情を、記録とあわせて振り返ってみてください。
- 頭金を誰が、いくら出したか。
- 月々の返済を、誰の口座から、いくら払ってきたか。
- 保険料・自動車税・車検代などの維持費を誰が負担したか。
- 購入時に「二人の車」「プレゼント」といったやり取りがあったか。
二人でお金を出し合って買った車であれば、共有と評価され、出した割合に応じて分けるという考え方につながりやすくなります。反対に、一方が相手への贈り物として買ったと評価されれば、別れた後に返してもらうことは難しくなる場合があります。どちらにあたるかは、交際期間やお金の流れなど個別の事情によって判断が分かれます。
別れた後の分け方|よく使われる4つの方法
実務でよく検討されるのは、次の4つの方法です。
| 方法 | 内容 | 注意したい点 |
|---|---|---|
| 乗る人が残りのローンを引き受ける | 車を引き取る人が今後の返済を負担し、相手が出した分を清算する | 契約者が変わらない限り、貸し手への返済義務は契約者に残る |
| 乗る人が借り換え・一括返済して名義を移す | 車を引き取る人が自分名義で借り換えるか一括で返済し、所有権解除と名義変更を行う | 借り換えの審査に通るか、手続に双方の協力が得られるか |
| 売却して清算する | 車を売り、売却代金でローンを返し、残りを出した割合で分ける | 売却額が残りのローンに届かないと、不足分の負担で再び揉めやすい |
| 契約者が引き取り、相手の出した分を返す | ローン契約者が車も引き取り、相手が負担した頭金や返済分を清算する | 相手が出した金額の確認と、返す時期・方法の取り決め |
安心しやすいのは、ローンの契約者と車を使う人が一致する形に整理する方法です。乗る人が残りのローンを引き受けるだけの方法は、手続が少なく済む反面、相手が途中で払わなくなったときの負担が契約者に残ります。この方法を選ぶ場合は、払われなかったときの扱いまで決めておく必要があります。
ローン返済中の名義変更が進みにくい理由
ローンで車を買うと、返済が終わるまで信販会社や販売店が所有権を持ったままにする「所有権留保」がつくことが多くあります。この場合、車検証の所有者は信販会社や販売店になっており、完済するまでは所有者を変えられないのが通常です。使用者だけを変える手続でも、所有者側の書類が必要になります。
銀行のマイカーローンのように、車検証の所有者が本人になっているケースもあります。この場合は名義変更そのものは可能でも、ローンの契約者は変わりません。いずれの場合も、完済した後に所有権解除の書類を受け取り、名義変更の手続を行う必要があり、その際には相手の印鑑証明書や委任状など協力が必要になる場面があります。別れた直後で連絡が取れるうちに、手続の段取りまで決めておくことが望まれます。
名義が自分のまま相手が乗り続けるリスク
名義の整理が終わらないまま相手が車を使い続けると、名義人の側に次のような負担が生じるおそれがあります。
- 自動車税の納税通知書が、車検証の記載に基づいて自分のもとに届くことがあります。
- 相手が事故を起こした場合、名義人も責任を問われるおそれがあります。
- 駐車違反の放置違反金の通知などが届くことがあります。
- 任意保険の契約者や補償の対象が自分のままだと、保険の扱いがこじれることがあります。
ただし、自分が名義人だからといって、相手の手元にある車を無断で持ち帰ることは、自力救済として別の問題を生むおそれがあります。自分の意思で相手に車を預けてきた経緯がある場合、警察に相談しても盗難として扱われないこともあります。返還を求めるときの進め方は、恋人に貸した車・ブランド品を返してほしい|返還を求めるときの考え方と進め方をご覧ください。
話し合いで決めておきたいこと
分け方の方針が決まったら、次の項目を書面に残しておくと、後から「そんな約束はしていない」と言われることを防ぎやすくなります。
- 車を引き取る人。
- 残りのローンを負担する人と、支払いの方法・期限。
- 支払いが滞った場合の扱い(残額の一括払い・車の返還など)。
- 所有権解除と名義変更の手続を行う期限と、互いに協力する内容。
- 名義変更までの自動車税・保険料・事故の責任の分担。
- この合意以外に互いに請求するものがないことの確認(清算条項)。
分割での支払いが長く続く場合は、公正証書にしておくことも選択肢になります。すでに口頭で条件を決めてしまった場合の対応は、【男女トラブル】口約束で別れの条件を決めてしまった|後から書面にする方法で詳しく解説しています。
話し合いがまとまらないときの進め方
相手が話し合いに応じない、金額で折り合わないといった場合には、内容証明郵便で請求の内容を明確に伝える方法があります。それでも進まない場合は、簡易裁判所の民事調停や訴訟を検討することになります。請求額が60万円以下であれば、原則として1回の審理で終わる少額訴訟を使える場合もあります。
別れた相手と直接やり取りを続けること自体が負担になっている場合は、弁護士を窓口にする方法もあります。相手と顔を合わせずに条件を詰め、名義変更や清算の手続まで進められることがあります。
よくあるご質問
ローンの契約者でなければ、別れた後に返済を求められることはありませんか
連帯保証人になっていなければ、原則として金融機関や信販会社から返済を求められることはありません。ただし、二人の間で「返済の一部を負担する」と約束していた場合には、その約束に基づいて相手から支払いを求められることがあります。
結婚を前提に同棲していた場合も、扱いは同じですか
事実上の夫婦として暮らしていたと評価される関係(内縁)であれば、離婚の財産分与に近い考え方で清算される余地があります。婚約していたかどうか、同居の期間や生活の実態によって判断が変わるため、交際の経緯を整理したうえでご相談ください。
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弁護士法人若井綜合法律事務所へのご相談
車とローンの問題は、契約者・所有者・使用者が誰か、二人がそれぞれいくら負担してきたかによって、取れる手段が変わります。別れた後も相手が乗り続けている、ローンだけが自分に残っているといった状況では、税金や事故の負担が続くこともあるため、早めに状況を整理しておくことが大切です。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
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