【不貞慰謝料】遅延損害金はいつから、何%つくのか
この記事は2026年9月時点の法令に基づいています。共有物の分割方法については、令和3年の民法改正(令和5年4月1日施行)の内容を反映しています。個別の事情によって結論は変わりますので、実際の対応はご相談ください。
「車は相手の名義だが、頭金は自分が出した」「犬の世話はずっと自分がしてきたが、買ったのは相手だ」。別れが決まった後に、こうしたご相談をいただきます。逆の側からも同じくらいあります。「家財を全部持って出ていかれた」「自分の名義の車に、別れた後も乗り続けられている」。
話し合って決めればよい、という説明をよく見かけます。それ自体は誤りではありません。ただ、話し合いの後にもう一段階だけ手続が残る物があります。そこが片づかないまま時間が経つと、別れたはずの二人が、書類の上ではつながったままになります。
この記事では、ペット・車・家財をひとまとめに見たときに何から手をつけるのか、名義と実際の負担が食い違うときにどう考えるのかを整理します。家具・家電の分け方と、ペットをどちらが引き取るかという帰属の判断は別の記事で扱っていますので、本記事は車と、清算全体の組み立て方に重心を置きます。
別れた後も、書類の上で続いてしまう物がある
離婚で使われる財産分与は、婚姻の解消に伴う制度です(民法768条)。婚姻届を出していない二人が別れるときには、この枠組みがそのままは使えません。内縁・事実婚と評価される関係であれば規定を類推して適用する扱いが認められていますが、交際して同居していたというだけで当然にそこへ乗るわけではありません。この違いは【男女トラブル】内縁・事実婚を解消するとき|法律上の夫婦と何が同じで、何が違うのかで整理しています。
残るのは、一つひとつの物について誰の所有かを考える作業です。代金を出した人の物、贈ったのなら受け取った人の物、出し合ったのなら共有で、持分は相等しいものと推定されます(民法250条)。この考え方は【男女トラブル】同棲を解消するとき、家具・家電はどう分けるのか|共同で買ったものの扱いで詳しく書きました。
ここから先が本記事の内容です。ソファは運び出せば終わりますが、車とペットは、運び出した後に名義の手続が残ります。この差を先に押さえると、限られた時間の使い方が変わります。
分ける前に、三つの層に仕分ける
最初にすることは、値段順に並べることではありません。次の三つに仕分けることです。
| 層 | あてはまる物 | 別れた後に残るもの | 手をつける順番 |
|---|---|---|---|
| 公の名義が残る物 | 自動車、バイク、犬の登録、マイクロチップの所有者情報 | 通知・請求・責任が名義人に届き続ける | 最初 |
| 契約が続いている物 | 自動車ローン、任意保険、駐車場、ペット保険、分割払いの家電 | 毎月の支払いと、解約・引継ぎの手続が残る | 名義と同時 |
| 名義の残らない物 | 家具、家電、寝具、食器、日用品 | 引き渡せば、その後は残らない | 最後 |
順番の基準は金額の大きさではなく、放置したときに相手との関係が続いてしまうかどうかです。冷蔵庫の取り合いに時間を使っている間に、車の名義と保険が手つかずで残る。これがいちばん避けたい形です。
なお、相手の荷物が部屋に残った場合は、【男女トラブル】相手の荷物が家に残っている・自分の荷物を取りに行きたい|勝手に処分してよいかをご覧ください。
自動車は「誰が乗っていたか」では決まらない
三つの層のうち、いちばん厄介なのが車です。家財と違って公の記録があり、契約が何本もぶら下がっているからです。
登録の名義が持つ意味
普通自動車には登録の制度があり、登録を受けた自動車の所有権の得喪は、登録を受けなければ第三者に対抗することができないとされています(道路運送車両法5条1項)。二人の間でどう決めても、外に向かって「自分の車だ」と言えるかは登録で決まります。
車検証には「所有者」欄と「使用者」欄があります。日常的に運転していたのが自分でも、使用者欄に名前があるだけでは所有者になりません。所有者が変わったときは、新しい所有者が15日以内に移転登録を申請します(同法13条1項)。話し合いで決めた内容は、移転登録まで済ませて初めて形になります。
名義と代金の負担が食い違っているとき
ご相談で多いのは、名義は一方、代金を出したのはもう一方という形です。相手の与信の都合で名義を寄せた、頭金だけ出した、毎月の支払いを負担していた。この場合、登録が一方の名義でも、二人の間では共有だったと主張する余地はあります。
ただし、主張する側がそれを示す必要があります。振込の記録、購入時のやりとり、費用を分担していた履歴が材料です。材料が乏しいときは、所有権そのものを争わず、出したお金の精算として請求を組み立てる方法もあります。その考え方は、別れた途端「これまでの金を返せ」と言われた|贈与と貸付の違いで整理した切り分けと重なります。
軽自動車とバイクは扱いが違う
軽自動車、二輪の小型自動車、小型特殊自動車には、普通自動車のような登録の制度がありません。これらは動産の一般ルールに戻り、引渡しが第三者に対する対抗要件になります(民法178条)。手続の窓口も異なり、普通自動車は運輸支局などでの移転登録、軽自動車は軽自動車検査協会での手続です。
ローンが残っていると、名義を動かせないことがある
販売店や信販会社を通じて分割で購入した場合、完済するまで所有者欄がその会社の名義になっていることがあります。いわゆる所有権留保です。この状態では、二人の間でどちらが引き取ると決めても、すぐには名義を移せません。契約先に無断で売却や譲渡をすると、残りの一括返済を求められることもあります。
残債が車の価値を上回ることも珍しくありません。そのときはどちらが引き取るかより、誰が払い続けるかのほうが本題になります。引取りと支払いがずれたまま別れると、乗っていない車の支払いだけが手元に残ります。この二つは同じ人に寄せてください。
車についてくる契約を、同じ日に動かす
任意保険
自動車保険は、記名被保険者が誰かによって補償の範囲が決まります。車の名義を移したのに記名被保険者を変えていないと、事故のときに補償の対象にならないおそれがあります。名義変更の予定が立った時点で保険会社に連絡してください。
等級の引継ぎができるのは、原則として配偶者と同居の親族に限られます。「配偶者」に内縁のパートナーを含めて扱う会社もありますが、交際して同居していた関係がこれに当たるかは会社ごとに分かれます。前提にせず、契約先にご確認ください。
駐車場・税金・そのほかの契約
駐車場は、名義人が解約か名義変更をしなければ、賃料の請求が名義人に届き続けます。自動車税の種別割は、毎年4月1日の時点で所有者になっている人に課されます。所有権留保でローンが残る車については、使用者が納税義務者として扱われます。4月1日をまたぐかどうかで、1年分の負担者が変わります。ETCカードの車両情報や車載機器のアカウントも、接点を残す原因になります。
ペットは、決着を待てない
どちらが引き取るかという判断そのものは、同棲中に飼っていたペットはどちらが引き取る?ペットの帰属トラブルで扱っています。ここでは清算の順序という観点から二点だけ補足します。
一つは、ペットには「保留」がないということです。家財なら、どちらの物か決まらないうちは一時的に預かる扱いができます。生き物にはそれができません。毎日の世話と費用が発生し続けますので、所有権の結論より先に、引渡しの日と当面どちらが飼うかを決める必要があります。
もう一つは、ペットも名義の残る物だということです。犬であれば市区町村の登録があり、マイクロチップが装着されていれば所有者情報の登録があります。飼い主が変わったときは変更の手続が必要で、放置すると行政からの通知が前の飼い主に届き続けます。
押し付け合いの末に置き去りにする選択は避けてください。愛護動物の遺棄は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象とされています(動物の愛護及び管理に関する法律44条3項)。面会や飼育費の分担には親権や養育費のような制度がなく、決めたいのであれば合意書に書くことになります。
物で釣り合わせず、金額で調整する
名義と契約の見通しが立ってから、家財に手をつけます。順番を逆にすると、金額の小さい物の議論で消耗したところに、期限のある手続が重なります。
物ごとに釣り合いを取ろうとすると、車のように金額の大きい物が入った瞬間に破綻します。一覧を作り、現在の価値を並べ、取得した側が差額を支払う形にしたほうが、話は早く収まります。
共有物については、協議が調わないときや協議ができないときに、裁判所へ分割を請求できます(民法258条1項)。命じられる方法は、現物を分ける方法、一方に取得させて代金を負担させる方法、競売の三つです(同条2項、3項)。家具や家電では費用が見合いませんが、車は金額がまとまるため、一方が取得して代金を支払う形が現実味を持つ数少ない物です。査定額をめぐる争いになりますので、買取業者の査定を複数取り、数字を共有するところから始めてください。金額が60万円以下なら少額訴訟という簡易な手続もあります(民事訴訟法368条1項)。
取り返すつもりの行動が、立場を悪くする
自分にも持分があるのだから先に確保してしまえばよい。そう考えたくなる場面ですが、権利があっても自分の力で実現してよいわけではありません。合鍵で部屋に入って車の鍵を持ち出す、相手が使っている間に車を移動させる。こうした行為は、後の交渉でこちら側の落ち度として持ち出されます。
刑事の面でも、共有の物や自分名義の物であっても、他人が占有しているものを無断で持ち去れば窃盗として扱われる余地があります。この点は共有物・共同名義の物を持ち出した|「他人の物」といえるかをご覧ください。
合意書に入れておきたい項目
名義の手続が残る物がある以上、口頭の合意では足りません。
- 対象となる物の一覧と、それぞれを誰が取得するか。
- 差額の金額と、支払期日・支払方法。
- 名義変更の期限と、手続費用をどちらが負担するか。
- ローンが残っている物について、残債を誰がどう負担するか。
- 保険・駐車場・登録など、付随する契約の扱い。
- ペットの引渡日と、それまでの世話・費用の負担。
- 互いに他に債権債務がないことを確認する条項。
最後の項目は、清算条項の意味|後から追加請求されないためにで書いたとおり、範囲の書き方で効き方が変わります。名義変更が済んでいない段階で全部を清算すると、後から手続を求める根拠まで消えることがあります。期限つきの義務を残したうえで清算する組み方をご検討ください。
よくあるご質問
相手名義の車の頭金を出しました。持分を主張できますか
頭金を出した事実だけで当然に持分が認められるわけではありませんが、共有だったと主張する材料にはなります。振込の記録や購入時のやりとりが残っているかで見通しが変わります。所有権の主張が難しくても、立て替えた金銭の返還として請求する道は残ります。
自分名義の車に、別れた後も相手が乗り続けています
所有者として返還を求めるのが基本です。求め方の手順は、恋人に貸した車・ブランド品を返してほしい|返還を求めるときの考え方と進め方にまとめています。あわせて任意保険の内容もご確認ください。運転者の範囲を限定する特約が付いていると、相手の起こした事故が補償の対象外になり、名義人であるご自身に責任が及ぶことがあります。
ペットに会わせる約束は、後から守らせられますか
面会について法律上の制度は用意されていません。約束するなら合意書に書くことになりますが、相手が応じない場合に力ずくで実現させる手段は限られます。回数や方法を細かく決めるより、守られなかったときにどうするかまで含めて考えておくほうが現実的です。
まとめ
- 婚姻していない二人には財産分与の枠組みがそのままは使えず、一つひとつの物の所有で考える(民法768条、250条)。
- 公の名義が残る物・契約が続いている物・名義の残らない物に仕分け、この順で手をつける。
- 普通自動車は登録を受けなければ所有権の得喪を第三者に対抗できず、所有者の変更には15日以内の移転登録が必要(道路運送車両法5条1項、13条1項)。
- 軽自動車や二輪の小型自動車には登録の制度がなく、引渡しが対抗要件になる(民法178条)。
- ローンが残ると名義を動かせないことがあり、引取りと支払いは同じ人に寄せる。
- 保険の記名被保険者、駐車場、税金など、付随する契約を同じ日に動かす。
- ペットは保留ができないため、引渡日と当面の世話を先に決める。遺棄は処罰の対象になる(動物の愛護及び管理に関する法律44条3項)。
- 差額は金銭で調整し、まとまらないときは共有物の分割、民事調停、少額訴訟を検討する(民法258条、民事訴訟法368条1項)。
名義の付き方や残っている記録によって、取れる手段は変わります。車のように期限のある手続が絡む場合は、順序を決めるだけでも負担が軽くなります。
同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。


