【男女トラブル】同棲中の部屋から相手に出ていってもらうには?

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

本記事は2026年10月時点の法令にもとづいて書いています。配偶者暴力防止法の保護命令については、2024年4月施行の改正後の内容を反映しています。


別れを決めたものの、同棲している部屋から彼氏が出ていってくれない。話を切り出すたびに「行くところがない」「まだ別れると決めたわけではない」と言われ、同じ部屋で気まずく暮らし続けている。男女トラブルのご相談の中でも、こうしたお悩みは少なくありません。

 同棲の解消には、離婚のような決まった手続がありません。そのぶん、部屋の名義が誰にあるのか、家賃を誰が払ってきたのか、どのような約束で一緒に住み始めたのかによって、相手に退去を求められるかどうか、どの手段をとるかが変わります。この記事では、同棲中の部屋から相手に出ていってもらうまでの考え方と進め方を、状況別に整理します。

最初に確かめたいのは「部屋の名義」と「家賃の出どころ」

 退去を求められるかどうかは、気持ちの問題ではなく、その部屋を使う権利が誰にあるかによって決まります。まずは賃貸借契約書や売買契約書を手元に用意し、次のどれに当たるかを確かめてください。

部屋の状況相手の立場の目安基本となる進め方
自分名義の賃貸・持ち家で、相手は家賃を払っていない無償で住まわせてもらっている人退去を求め、応じなければ明渡しを請求する
自分名義だが、相手も家賃の一部を負担してきた負担の性質によって評価が分かれる負担の経緯を整理したうえで退去の条件を話し合う
二人の連名で契約している二人とも借主一方が残るか、二人とも退去するかを貸主を交えて決める
相手名義の部屋に自分が住んでいる部屋を借りているのは相手原則として自分が出る側になる


 以下、それぞれの場合を順に見ていきます。

自分名義の部屋に彼氏が無償で住んでいる場合

 自分が借りている部屋や自分が所有する家に、相手が家賃を負担せずに住んでいる場合、法律上は「使用貸借」(民法593条)、つまり無償で部屋を使わせている関係と考えられることが多いです。

 使用貸借は、期間も目的も決めていなければ、貸している側からいつでも終わらせることができます(民法598条2項)。また、交際していることを前提に住まわせていたのであれば、別れによってその前提がなくなり、使用貸借はすでに終了していると考える余地もあります(民法597条2項)。

 このように、自分名義の部屋に無償で住んでいる相手に対しては、退去を求めること自体に法的な裏付けがあります。相手が応じなければ、最終的には建物の明渡しを求める訴訟を起こすことも考えられます。ただし、判決が出るまでには一定の時間がかかるため、実際には話し合いや代理人を通じた交渉で退去日を決めるのが現実的な進め方になります。

家賃や生活費を一部負担してもらっていた場合

 相手が家賃の半分を払っていた、光熱費や食費を負担していたというケースもよくあります。それが生活費の分担にとどまるのか、部屋を借りる対価として払われていたのかで評価が変わり、後者に近いほど、相手が「自分にも住む権利がある」と主張してくる可能性が高まります。

 実際には、受け取ったお金をどう扱ってきたか、どのような話し合いで負担を決めたかといった経緯によって判断が分かれます。振込の記録やLINEのやり取りを残しておき、退去の条件を話し合う際に、それまでの負担分をどう清算するかもあわせて決めておくと、後の請求を防ぎやすくなります。家計の清算については【男女トラブル】同棲中の生活費|別れた後に家計を清算するで解説しています。

結婚を前提にした長い同棲だった場合

 婚約していた場合や、長年夫婦同然に暮らしてきた場合には、婚約や内縁(事実婚)の関係にあったと評価されることがあります。その場合、正当な理由なく一方的に関係を解消すると慰謝料を求められたり、内縁の解消にともなって財産の分け方が問題になったりすることがあります。部屋から出ていってもらうことと、関係の解消にともなうお金の問題とを分けて考え、両方の見通しを持ってから話を進めることが大切です。

二人の連名で契約している場合

 二人とも契約上の借主になっている場合、どちらにも部屋を使う権利があるため、一方が他方に「出ていってほしい」と求める法的な根拠は乏しくなります。また、借主が複数いる契約では、一人だけの判断で契約を解約することは難しいのが一般的です。

 この場合の選択肢は、話し合いによって一方が退去し、残る側の単独名義に切り替えるか、二人とも退去して契約を終えるかのいずれかになります。名義の変更には貸主や管理会社の承諾が必要で、残る側に家賃を払う力があるかの審査が行われることもあります。退去時の費用の負担については同棲解消の敷金・原状回復・退去費用は誰が払う?もご覧ください。

彼氏名義の部屋に住んでいる場合

 部屋を借りているのが相手であれば、原則として出ていく側になるのは自分です。どうしても住み続けたい事情があるときは、相手や貸主と名義の切り替えを相談することになります。詳しくは【男女トラブル】相手名義の部屋に住んでいる|別れた後も住み続けられるかで解説しています。

出ていってもらうまでの進め方

 自分に退去を求める権利がある場合でも、いきなり裁判を起こすことはまれで、多くは段階を踏んで進めます。

  1. 退去してほしいことと、その時期を相手に伝えます。
  2. 話し合いで退去の条件を決め、書面に残します。
  3. 応じない場合は、内容証明郵便などで期限を区切って退去を求めます。
  4. それでも応じない場合は、代理人を通じた交渉や、調停・訴訟を検討します。


話し合いで決めておきたいこと

 退去日だけを決めても、荷物を運び出さない、鍵を返さないといった形で問題が残ることがあります。次の点はまとめて決めておくと安心です。

  • 退去する日と、それまでの過ごし方。
  • 荷物を運び出す日時と、期限までに運び出されなかった物の扱い。
  • 鍵(合鍵を含む)を返す日と方法。
  • 退去日までの家賃・光熱費の負担。
  • 家具・家電などの分け方。
  • 住民票の異動や郵便物の転送の手続。


 決めた内容は、日付と双方の署名を入れた合意書にしておくと、後から「そんな約束はしていない」と言われることを防ぎやすくなります。話し合いの記録の残し方は【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方、家具や鍵の扱いは【男女トラブル】同棲を解消するとき、家具・家電はどう分けるのか|共同で買ったものの扱いと【男女トラブル】別れた相手が合鍵を持っている|返してもらう交渉と、鍵を替える判断も参考にしてください。

話し合いに応じてもらえないとき

 相手が話し合いそのものを避ける場合には、退去を求める意思と期限を書面で伝えます。内容証明郵便を使えば、いつ、どのような内容を伝えたかの証拠になります。期限を過ぎても住み続けている場合には、その後の期間について家賃相当額の損害金を求めることも検討できます。

 それでも動きがない場合は、簡易裁判所の民事調停で話し合いの場を設けるか、建物の明渡しを求める訴訟を起こすことになります。判決が出ても相手が出ていかないときは、強制執行によって退去させる手続があります。相手が別の人を部屋に住まわせるおそれがあるときは、訴訟の前に占有移転禁止の仮処分を検討することもあります。

自分で追い出そうとすると、かえって不利になることがある

 話が進まないと、相手の留守中に鍵を替えたい、荷物を外に出してしまいたいと考えるかもしれません。しかし、法律で定められた手続によらずに自分の力で権利を実現すること(自力救済)は、原則として認められていません。次のような行動は避けてください。

  • 相手の留守中に鍵を替えて締め出すこと。
  • 相手の荷物を無断で運び出すこと、処分すること。
  • 電気・ガス・水道を止めて住みにくくすること。
  • 管理会社や大家の名前を使った「退去通知」を自分で作って渡すこと。


 こうした行動は、相手から損害賠償を求められる原因になるほか、荷物を処分すれば器物損壊、他人名義の文書を作れば文書偽造などの犯罪に問われるおそれもあります。退去を求める正当な理由があっても、手段を誤ると立場が逆転しかねないため、手順を踏んで進めることが大切です。

暴力や脅しがあるときは、話し合いより安全を先に

 別れ話をきっかけに暴力をふるわれた、「出ていけと言うなら何をするか分からない」と脅されているといった場合には、同じ部屋で話し合いを続けること自体に危険があります。身の危険を感じたときはためらわず110番通報し、一時的に実家や知人宅に身を寄せることも考えてください。

 同棲している交際相手からの暴力は、配偶者暴力防止法の対象になります(同法28条の2)。身体への暴力や生命・身体への脅迫を受け、さらに重大な危害を受けるおそれが大きいときは、地方裁判所に保護命令を申し立てることができ、その一つに、相手に住居からの退去を命じる「退去等命令」があります。期間は原則として2か月で、住居の所有者または賃借人が被害を受けた側だけである場合には、申立てにより6か月とされています。

 退去等命令は一時的な措置なので、その期間のうちに荷物の引き取りや関係の解消を整理しておく必要があります。保護命令の要件は交際相手からのDV(デートDV)|保護命令は使える?同棲の有無で変わる対応で解説しています。

弁護士に依頼した場合にできること

 当事務所にご依頼いただいた場合、弁護士が代理人として相手と連絡を取り、退去日、荷物の搬出、鍵の返却、費用の清算といった条件をまとめていきます。ご本人が相手と直接やり取りする場面を減らすことができ、決まった条件は合意書として書面に残します。相手が応じない場合には、調停や訴訟への移行も見据えて対応します。進め方の詳細は【男女トラブル】別れ話を弁護士に任せるときの流れ|本人と会わずに関係を終えるをご覧ください。

よくあるご質問


「行くところがない」と言われたら、待つしかありませんか

 相手に次の住まいがないことは、それだけで退去を求められない理由にはなりません。ただ、現実には転居先や引っ越し費用の目処が立たないまま話が止まってしまうことも多いため、退去日までに一定の猶予を設ける、引っ越し費用の一部を負担するといった条件を示して、合意に向けて話を動かすことも一つの方法です。お金を渡す場合は、退去と引き換えであることを合意書に明記しておきます。

相手が荷物を置いたまま出ていった場合、処分してもよいですか

 相手の物である以上、無断で捨てることは避けてください。期限を示して引き取りを求め、それでも引き取られない場合の扱いをあらかじめ書面で取り決めておくのが安全です。連絡が取れなくなった場合の対応は状況によって変わるため、処分する前にご相談ください。

関連する解説記事



 同棲している部屋からの退去は、毎日顔を合わせる相手との問題であるだけに、話し合いがこじれると心身の負担が大きくなりがちです。名義や家賃の負担関係を確かめ、自分に何を求める権利があるのかを知っておくと、次の一歩を落ち着いて選びやすくなります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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