キャバ嬢・ホストと店外で深い関係に|貢いだ金銭は返してもらえるか
「動画を持っている。言うことを聞かなければ家族と職場に送る」——パパ活をきっかけに、こうした連絡を受けて途方に暮れている、というご相談は少なくありません。
このとき多くの方が最初に抱くのが、「自分がパパ活をしていたのだから、被害を訴えても取り合ってもらえないのではないか」という不安です。そして相手も、まさにその不安を見越して要求を重ねてきます。
しかし、性的な画像・動画をめぐる問題では、撮影された経緯そのものが法律上どう評価されるかが出発点になります。ここを整理しないまま「自分が悪かった」と結論づけてしまうと、本来とれるはずの手段を選ばないまま、要求だけが続いてしまいかねません。
この記事では、パパ活での盗撮・性的画像をネタに脅されている方に向けて、撮影行為自体の法的な位置づけと、脅されている段階でとるべき対応、そしてデータを消させるための道筋を整理します。
「同意して撮らせた」つもりでも、撮影罪にあたることがある
盗撮を含む性的な姿態の撮影については、2023年7月13日に施行された性的姿態撮影等処罰法(性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律/令和5年法律第67号)が全国一律で適用されます。
同法の**性的姿態等撮影罪(2条)**は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と定められています。
見落とされがちなのが、処罰対象が「隠し撮り」だけではないという点です。法務省の解説によれば、撮影の態様として次の4つが定められています。
①正当な理由がないのに、ひそかに撮影する
小型カメラや無音カメラアプリを使った隠し撮り、ホテルの部屋にあらかじめ機器を設置しておく行為などが典型です。
②同意しない意思を形成・表明・全うすることが困難な状態にさせ、またはその状態に乗じて撮影する
ここでいう「困難な状態」の原因となり得る行為・事由は、不同意性交等罪(刑法176条1項各号)と同じ枠組みで例示されており、暴行・脅迫のほか、飲酒や薬物の影響、意識がはっきりしない状態、予想外の事態に直面して動けなくなった状態(いわゆるフリーズ)などが挙げられています。
さらに、**「経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること」**も例示の一つとされています。金銭のやり取りを含む関係の中で、断れば不利益が及ぶと不安に思わされていた状況は、事案によってはこの視点から検討され得ます。
③誤信をさせ、または誤信に乗じて撮影する
条文は、「行為の性質が性的なものではないとの誤信」、および**「特定の者以外の者が閲覧しないとの誤信」**をさせて撮影する行為を挙げています。
「自分だけで見る」「誰にも見せない」と言われて撮らせたのに、実際には第三者に見せるつもりだった——このような場合が想定されています。「自分が同意したのだから仕方ない」と考えている方が実は該当し得る、という意味で、最も見落とされやすい類型です。
④正当な理由がないのに、16歳未満の者を撮影する
16歳未満の場合は、本人の同意があったとしても対象になります(13歳以上16歳未満のときは、相手が5歳以上年長である場合)。
撮った後の行為も、それぞれ別の罪になり得る
同法は、撮影した後の扱いについても段階的に罰則を設けています。
| 行為 | 罪名 | 法定刑 |
|---|---|---|
| 特定・少数の者への提供 | 提供罪(3条1項) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
| 不特定・多数への提供、公然陳列 | 提供等罪(3条2項) | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり) |
| 提供・公然陳列の目的での保管 | 保管罪(4条) | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| 不特定・多数への影像送信(ライブ配信など) | 送信罪(5条) | 5年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(併科あり) |
| 送信された影像の記録 | 記録罪(6条) | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 |
「持っているだけ」であっても、提供や公然陳列の目的が認められれば保管罪の対象になり得ます。もっとも、実際に罪が成立するかどうかは撮影の経緯や目的といった個別の事情によって判断されますので、ご自身のケースが該当するかは弁護士にご確認ください。
「脅し」そのものも、別に犯罪となり得る
画像の存在をちらつかせて何かを要求する行為は、撮影の問題とは別に評価されます。
- 脅迫罪(刑法222条):「拡散する」「職場に送る」などと告げて怖がらせる行為。2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
- 強要罪(刑法223条):脅して、関係の継続や性的行為など義務のないことをさせる行為。3年以下の拘禁刑
- 恐喝罪(刑法249条):脅して金銭を交付させる行為。10年以下の拘禁刑(未遂も処罰/250条)
実際に不特定多数へ公開されてしまった場合には、リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)の公表罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)などの対象にもなり得ます。
脅されている段階で、まずとりたい4つの行動
①要求にその場で応じない
金銭であれ、関係の継続であれ、追加の撮影であれ、一度応じたことで終わったとは限りません。応じられる相手だと受け止められ、要求が繰り返されるケースもあります。期限を切られていても、即断せずに相談する時間を確保してください。
②やり取りをそのまま残す
送られてきた画像・動画、「拡散する」といったメッセージ、日時、相手のアカウント名や電話番号は、削除せずに保存してください。スクリーンショットに加え、元のトーク画面も残しておくと経緯が追いやすくなります。
なお、相手をブロックすべきかどうかは、逆上を招くおそれとのバランスで判断が分かれます。自己判断で動く前に、警察や弁護士に相談したうえで決めることをおすすめします。
③これ以上の材料を渡さない
新たな画像はもちろん、勤務先・学校・自宅・家族に関する情報、SNSのアカウントなども、渡せば脅しの材料が増えることになります。「今回で最後にするから」という言葉を前提に応じるのは避けたほうがよいでしょう。
④自分で交渉せず、窓口を一本化する
直接のやり取りは感情的になりやすく、こちらの発言を切り取られて別の主張に使われることもあります。また、相手が「削除した」と言っても、本人以外にそれを確かめる方法はありません。代理人を立てて窓口を一本化すれば、相手と直接やり取りせずに進められます。
データを消させるための2つの道筋
被害に遭われた方が最も気にされるのは、処罰よりも「データが手元から消えるのか」という点です。ここには性質の異なる2つの道筋があります。
(1) 当事者間の合意による削除
相手との交渉により、削除と再発防止を書面化する方法です。実務では、次のような条項を置くことが考えられます。
- 画像・動画をすべて削除したことの確認
- 保管場所の網羅的な確認(スマートフォン本体、非表示フォルダ、パソコン、タブレット、外部メディア、クラウド、メッセージアプリの送信履歴など)
- 今後、撮影・提供・公表しないことの約束
- 違反した場合の違約金
- 接触の禁止、守秘義務
ただし、この方法は相手が応じることが前提であり、また、削除が完全になされたかを外部から検証することは困難です。この限界は正直にお伝えしておく必要があります。
(2) 刑事手続の中での消去・没収
一方、盗撮などの撮影行為自体が犯罪にあたる場合には、当事者間の話し合いとは別のルートがあります。
性的姿態撮影等処罰法は、罰則に加えて、撮影行為により生じた物を複写した物等の没収(8条)と、捜査機関が押収した記録媒体に記録されている対象データについて、検察官が消去等の措置をとる仕組み(9条以下)を定めています。これは、被害の拡大を防ぐという同法の目的に基づいて設けられたものです。
つまり、「相手が消してくれるかどうか」だけに委ねられない枠組みが、法律上用意されているという点が、合意の上で撮影された画像との大きな違いになります。
もっとも、この仕組みは刑事事件として立件され、捜査機関がデータを押収していることが前提となります。すべての事案で使えるわけではありませんので、まずは事実関係を整理したうえで、警察への相談を検討することになります。
すでに拡散されてしまった場合
サイト管理者やプロバイダへの削除要請、裁判所への削除仮処分の申立て、情報流通プラットフォーム対処法(旧プロバイダ責任制限法/2025年4月1日施行)に基づく発信者情報開示請求といった手段があります。通信記録の保存期間には限りがあるため、時間の経過が不利に働きます。
「自分も責められるのでは」という不安について
相談をためらう最大の理由がここにあります。
成人同士を前提とすれば、売春防止法は売春・買春という行為そのものに罰則を設けていません(同法が処罰対象としているのは、勧誘、周旋、場所の提供といった行為です)。パパ活をしていた事実があることを理由に、被害を申告する道が閉ざされるわけではありません。
また、弁護士には守秘義務があります。相談内容が家族や勤務先に伝わることはありません。
相談先としては、弁護士のほか、警察相談専用電話(#9110)、各都道府県警のサイバー犯罪相談窓口、法務省の女性の人権ホットラインなどがあります。
なお、当事者に18歳未満の方が関わる場合は、児童買春・児童ポルノ禁止法などが関係し、まったく別の検討が必要になります。この場合はご自身で判断せず、早い段階で弁護士にご相談ください。
まとめ
- パパ活での性的な撮影は、隠し撮りに限らず、断りにくい状況を利用した撮影や、「自分しか見ない」と誤信させたうえでの撮影も、性的姿態等撮影罪の対象となり得ます
- 撮影後の提供・保管・送信も、それぞれ別の罪として定められています
- 「拡散する」という脅し自体が、脅迫罪・強要罪・恐喝罪にあたる可能性があります
- 脅されている段階では、その場で応じない/やり取りを残す/材料を渡さない/窓口を一本化する、の4点が基本になります
- データの削除には、当事者間の合意による方法と、刑事手続の中で消去・没収が行われる方法があり、後者は同法に基づく枠組みとして用意されています
「自分にも落ち度があった」と感じておられる方ほど、相談が遅れ、その間に要求がエスカレートしてしまう傾向があります。被害の状況を整理するだけでも、とり得る手段は見えてきます。お一人で抱えず、早い段階でご相談ください。


