【風俗トラブル】何年も前の風俗利用について突然「不同意性交だった」と連絡が来たら、どうすればいい?
この記事は、2026年10月時点の民法、消費者契約法、刑法、売春防止法、労働基準法の規定をもとに、風俗店の利用客がキャストと店外で会っていたことを理由に、店から金銭を求められた場面を整理したものです。個別の事情によって結論が変わることがあるため、実際の対応は弁護士にご相談ください。
「女の子と食事に行っただけなのに、店から『直引きだ』と言われ、営業の損害として100万円を払えと連絡が来た」。相談の現場では、客の立場からこうした声が寄せられます。一方で、キャストの側からも「店外で会っていたことが店に知られ、お客さんに話をつけて払わせるよう言われた」という相談が届きます。
インターネット上では、「店の罰金に支払義務はない」という説明がよく見られます。それ自体は誤りではありませんが、店が「罰金」ではなく「損害賠償」「営業補償」という名目で請求してくる場合や、誓約書に署名していた場合には、もう一段の整理が必要です。また、店外で会っていたのが食事だけだったのか、店を通さずにお金を渡していたのかによっても、見通しは変わります。
この記事では、店外で会っていたことを店から「直引き」扱いされ、客として請求を受けた場面に絞って、支払義務の有無を分ける点と、請求を受けた後の進め方を解説します。店を通さずに会うこと自体のリスクは風俗嬢と店外・プライベートで会ってトラブルに|「店を通さない」リスクで、キャストから外で会おうと誘われた段階の注意点は【風俗トラブル】『店を通さずに会おう』と持ちかけられた|裏引きの当事者になる危険で扱っています。
「直引き」扱いの請求とは何か
直引き・裏引きと店外デートの関係
直引き(じかびき)は、キャストが店を通さずに客から直接お金を受け取ることを指す業界の言葉で、裏引きとも呼ばれます。店外デートは、店を通さずに客とキャストが会うことを指し、食事や買い物だけの場合も含まれます。実際には両者が重なることも多いため、店が「外で会っていた」という事実をとらえて、まとめて「直引き」と呼ぶことがあります。
しかし、法的に意味を持つのは呼び方ではなく、実際に何があったかという事実です。店が「直引き」という言葉を使っていても、それだけで客の支払義務が決まるわけではありません。
店が持ち出す請求の名目
店からの請求は、次のような名目で示されることが多くあります。
| 名目 | 店の言い分の例 | 客の側で確かめること |
|---|---|---|
| 罰金・ペナルティ | 規約違反なので罰金100万円 | 客との間に、その金額を払う約束があったか |
| 違約金 | 誓約書に違約金の定めがある | 誓約書の文言、署名した経緯、金額の相当性 |
| 損害賠償・営業補償 | 店を通さずに稼いだ分、店が損をした | どのような損害が、いくら生じたのか |
| コース料金相当額 | 外で会った時間分の料金を払え | 利用していないサービスの代金を払う理由があるか |
名目が変わると、店が示さなければならない根拠も変わります。請求の書面やメッセージは、名目と金額が分かる形でそのまま保存しておきましょう。
客に支払義務が生じるかを分ける3つの点
店と客の間に「払う」という約束があったか
店が罰金や違約金を請求できるのは、原則として、客との間でその支払いを約束していた場合です。民法は、当事者があらかじめ損害賠償の額を決めておくことを認めており、違約金の定めはこの賠償額の予定と推定されます(民法420条1項・3項)。
問題は、その約束があったといえるかです。店内の張り紙やホームページの利用規約に「店外での接触は罰金100万円」と書かれていても、利用時にそれが示され、同意したといえる事情がなければ、客を拘束する約束にはなりにくいと考えられます。規約が定型約款にあたる場合でも、相手方の利益を一方的に害する条項は合意しなかったものとみなされます(民法548条の2第2項)。また、店は事業者、客は消費者という関係にあるため、消費者の利益を一方的に害する条項は無効とされる余地があります(消費者契約法10条)。
誓約書に署名していた場合でも、金額が店に実際に生じうる損害と比べて過大であれば、公序良俗に反するものとして全部または一部が無効とされることがあります(民法90条)。
キャストと店の契約は、客を直接しばらない
店外での接触を禁止しているのは、多くの場合、店とキャストとの間の業務委託契約や誓約書です。契約は、原則として当事者の間でだけ効力を持ちます。キャストが店との約束に違反したとしても、その約束の当事者ではない客が、同じ罰金を当然に負うことにはなりません。
また、店がキャストに課す罰金そのものも、キャストの働き方が実質的に労働者にあたる場合には、違約金や賠償額の予定を禁じた規定(労働基準法16条)に照らして無効とされることがあります。キャストへの請求と客への請求は、別の問題として切り分けて考えることが大切です。
約束がなければ、店は損害と違法性を示す必要がある
客との間に支払いの約束がない場合、店が請求する根拠は不法行為(民法709条)になります。この場合、客の行為が違法といえること、店に実際の損害が生じたこと、その行為と損害との間に因果関係があることを、店の側で示さなければなりません。
他人どうしの契約関係に第三者が関わったことを理由とする損害賠償は、裁判例上、相手方の契約違反を知りながら積極的に働きかけたなど、違法性の強い事情がある場合に限って認められる傾向にあります。客とキャストが互いの意思で会っていたというだけで、店の売上が減った分をそのまま客に負担させる根拠にはなりにくいのが一般的な見方です。もっとも、客がキャストに店を辞めて自分と個人的に取引するよう繰り返し求めていたような事情があれば、評価が変わる可能性もあります。
「直引き」かどうかは事実で決まる
食事やデートだけだった場合
店外で食事をした、買い物に行った、交際に発展したという事実だけでは、店の営業上の利益を奪ったとはいいにくい場面がほとんどです。客もキャストも、勤務時間外に誰と会うかを自分で決めることができます。店が「直引き」と決めつけてきても、お金のやり取りがなかったのであれば、その点ははっきりさせておく必要があります。交際に発展した後のお金の整理については【男女トラブル】キャストと私的な交際に発展した後の金銭清算で解説しています。
キャストにお金を渡していた場合
店を通さずにキャストへお金を渡し、性的なサービスを受けていた場合は、店のいう「直引き」に近い事実関係になります。この場合でも、客と店の間に約束がなければ、店が請求できる範囲は前の章で述べた不法行為の枠内にとどまり、損害の額も店の側で示す必要があります。
なお、金銭などを対価に不特定の相手と性交することは、店内か店外かを問わず売春防止法上の「売春」にあたり、同法3条で禁止されています。ただし、売春をした本人やその相手方を処罰する規定は置かれていません。そのため「警察に言えば客も捕まる」と告げられても、それだけで刑事責任が生じるわけではありませんが、交渉の材料として持ち出されやすい事情であることは意識しておきましょう。
誰が誘ったか、いつからいつまでか
店外で会うようになった経緯は、違法性の評価に関わります。キャストの側から連絡先を渡されたのか、客が繰り返し誘ったのか、会った回数や期間、その間に店の利用が減ったかどうかなどを、時系列で書き出しておくと整理しやすくなります。連絡先を渡された後に起きやすい流れは【風俗トラブル】キャストから個人的な連絡先を渡された|応じた後に起きやすいことでも解説しています。
請求を受けたときの進め方
その場で認めない・署名しない
店から呼び出されたり、電話で問い詰められたりしても、「直引きをしました」と認める言葉や、金額の入った誓約書・念書・借用書への署名は避けましょう。一度書いた書面は、後から効力を争うことはできても、交渉の出発点として扱われやすくなります。強く迫られて署名した書面は、強迫による意思表示として取り消せる場合があります(民法96条1項)。署名した後でも金額が見直された例として、【解決事例】デリヘルキャストとの「裏引き」で300万円の念書|弁護士の介入で40万円に減額できた事例があります。
キャストと口裏を合わせようとしない
請求を受けた後、キャストに連絡して事情を確かめたくなることがあります。しかし、キャストも店から問い詰められ、客に払わせるよう求められている場合があり、やり取りの内容が店に伝わることもあります。直接の連絡は控え、窓口を一本にしておくほうが、後の交渉は進めやすくなります。キャスト本人から個人の連絡で請求が来た場合の考え方は【風俗トラブル】キャスト本人から個人のLINEで連絡が来た|店を通さない請求の扱いをご覧ください。
家族や職場に知らせると言われたら
「払わなければ家族や勤務先に連絡する」と告げて金銭を求める行為は、内容や態様によっては恐喝罪(刑法249条)や脅迫罪(刑法222条)にあたる可能性があります。その場で支払いを約束せず、やり取りを録音・保存したうえで、弁護士や警察に相談することを検討してください。弁護士が代理人として受任通知を送れば、店とのやり取りは弁護士を通す形に切り替わり、家族や職場への接触を控えるよう求めることもできます。
話し合いで終わらせる場合に確かめること
金額の根拠を示してもらう
事実関係によっては、一定の金額を支払って早く終わらせる判断が合理的な場合もあります。その場合でも、店が主張する損害の内訳、たとえば失われたとする売上の計算方法や対象期間を示してもらい、根拠のある範囲に絞り込むことが基本です。
誰との間で終わらせるのかを決める
店と合意しても、キャスト本人が別に請求してくる可能性は残ります。反対に、キャストとだけ話をまとめても、店からの請求が止まるとは限りません。誰が当事者として合意書に署名するのかを確認し、必要があれば店とキャストの双方を含めた形にします。
合意書に入れておく条項
合意書には、支払う金額と方法のほか、これ以外に請求しないことを確認する清算条項や、家族や職場に連絡しないこと、互いの情報を第三者に漏らさないことの約束を入れておくのが一般的です。条項の考え方は風俗トラブルの示談書に必ず入れる6条項|抜けると後で効かないで詳しく解説しています。
よくあるご質問
キャストが店に「外で会っていた」と認めてしまいました。客も払わなければならないのですか?
キャストが店に事実を認めたとしても、それはキャストと店との関係の話です。客の支払義務は、客と店の間に支払いの約束があったか、客自身の行為に違法性があるかによって判断されます。ただし、キャストの説明は店が事実を主張する材料として使われるため、ご自身の認識と違う点があれば記録しておきましょう。
店のホームページに「店外での接触は罰金」と書いてありました。払う必要はありますか?
ホームページに記載があるというだけで、客がその金額を払う約束をしたとは限りません。利用時に規約が示され、それに同意したといえるか、金額が実際の損害と比べて相当かが問題になります。過大な金額であれば、無効とされたり減額されたりする余地があります。
「出禁にしたうえで裁判を起こす」と言われました。どうすればよいですか?
出入り禁止は店の判断でできますが、それと金銭の請求は別の問題です。仮に訴訟を起こされた場合は、店の側で約束の存在や損害を立証する必要があります。裁判所から書類が届いた場合は放置せず、期限内に対応することが大切です。詳しくは【風俗トラブル】「ブラックリストに載せた」「出禁だ」と言われた|出入り禁止と請求の関係と【風俗トラブル】店から届いた請求書面に「法的措置」と書いてある|本当に訴えられるのかをご覧ください。
まとめ
- 店が「直引き」と呼んでいても、支払義務を決めるのは呼び方ではなく、実際に何があったかという事実である。
- 店が罰金や違約金を請求できるのは、原則として客との間に支払いの約束があった場合であり、違約金は賠償額の予定と推定される(民法420条1項・3項)。
- 張り紙や利用規約の記載だけでは約束があったとはいいにくく、一方的に不利な条項は合意から外されたり無効とされたりする余地がある(民法548条の2第2項、消費者契約法10条)。
- 誓約書に署名していても、金額が過大であれば全部または一部が無効とされることがある(民法90条)。
- 約束がない場合、店は不法行為として違法性・損害・因果関係を示す必要があり、互いの意思で会っていただけでは売上の減少分を客に負わせる根拠になりにくい(民法709条)。
- その場で事実を認めたり書面に署名したりせず、強く迫られて署名した書面は取り消せる場合がある(民法96条1項)。
- 家族や職場への連絡をほのめかして金銭を求める行為は、恐喝罪や脅迫罪にあたる可能性がある(刑法249条、同法222条)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。全国からのご相談を24時間受け付けており、店との交渉の窓口を弁護士が担うことで、ご家族や勤務先に知られないよう配慮しながら対応を進めます。
店外で会っていたことを理由に店から請求を受けている方、キャストとして店から客に払わせるよう求められて困っている方は、支払いや署名をする前に一度ご相談ください。


