【風俗トラブル・ホストクラブ】ホストクラブで酔って開けたシャンパン代は払う必要がある?

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

ホストクラブで酔いが回り、気づいたら高額なシャンパンが何本も開いていた。翌日、伝票や売掛の連絡を見て、「本当に自分が頼んだのか」「この金額を払わなければならないのか」と不安になる方は少なくありません。酔っていたこと自体で支払いを免れるとは限らない一方で、注文の経緯や料金の説明、店側の対応によっては、支払いを争える余地が残る場合もあります。この記事では、酔って開けたシャンパン代について、どのような場面で支払い義務が問題になるのか、会計の場や翌日に何をしておくとよいのかを整理します。

この記事は、2025年6月28日に施行された改正風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)の内容を踏まえて記載しています。個別の事案での結論は、注文の経緯や残っている記録によって変わります。


酔って開けたシャンパン代で起きやすい3つの場面

 「酔って開けたシャンパン」といっても、実際の経緯は人によって異なります。どの場面に当たるかで、考え方の出発点が変わります。

場面よくある経緯まず確かめたいこと
自分で頼んだが覚えていない飲みながら勢いで注文した記憶はあるが、本数や銘柄、金額を覚えていない伝票の内容、注文時のやり取り、同席者の記憶
勧められて断り切れなかったシャンパンコールの流れで次々と勧められ、断れないまま本数が増えた勧め方の内容、料金の説明があったか
頼んでいないのに開けられた酔って席を外したり眠ったりしている間に、ボトルが運ばれてきた注文した事実そのものがあるか


 弁護士ドットコムの相談でも、「安いものならよいと答えたのに、コールの途中で次の注文を勧められ、断れずに5本になった」「泥酔している間に担当ホストが勝手にシャンパンを持ってきた」といった趣旨の相談が寄せられています。いずれの場面でも、後から振り返って事実を組み立て直すことが出発点になります。

酔っていたことだけで支払いを免れるとは限らない

 まず押さえておきたいのは、「酔っていたから注文は無効」とは簡単にはいえないという点です。お酒を飲む場所である以上、ある程度酔った状態で注文することは、店も客も前提にしているともいえます。

意思能力が問題になるのは限られた場面

 民法では、意思表示をした時に意思能力がなかった場合、その契約は無効とされています(民法3条の2)。泥酔して自分が何をしているのか分からない状態で注文した場合には、この規定が問題になる余地があります。

 ただし、意思能力がなかったと認められるのは、会話が成り立たない、立っていられない、といった程度の深い酩酊状態が想定されます。「酔っていて細かいことは覚えていない」という程度では、注文の時点では判断ができていたと評価されることも多く、この主張だけで支払いを争うのは難しい場合があります。また、その状態を後から立証すること自体にも難しさがあります。

錯誤を理由に取り消せるか

 「1本数万円だと思っていたら数十万円だった」というように、思い違いのまま注文した場合には、錯誤による取消し(民法95条)が考えられます。もっとも、思い違いが本人の重大な過失によるときは取消しができないとされており、酔っていたことが重大な過失と評価されるおそれもあります。店側が料金の誤解を知りながら注文を受けた場合などは、別の考慮が働くことがあります。

支払いを争える余地がある場面

 酔っていたこと以外の事情に目を向けると、支払い義務を見直せる場面が見えてくることがあります。

注文していないシャンパンが開けられた

 飲食代の支払い義務は、客と店の間で注文(契約)が成立していることが前提です。客が注文していないのにボトルが運ばれてきて開けられた場合、そのボトルについては、そもそも契約が成立していないと考える余地があります。

 改正風営法では、ホストクラブなどの接待飲食営業を営む者が守るべき事項として、客が注文していない飲食等の提供をしてはならないと定められました。この規定に反した場合は行政処分の対象になり得るもので、直ちに代金が無効になると定めたものではありませんが、店側の対応を見直すうえで一つの手がかりになります。

料金について説明と違う金額を請求された

 注文の際に聞いていた金額と、会計で示された金額が大きく違う場合も、支払い義務を検討し直す場面です。改正風営法では、料金に関する虚偽の説明も、接待飲食営業を営む者がしてはならない行為とされています。説明と異なる料金については、詐欺による取消し(民法96条)や、説明どおりの金額を超える部分の支払いを争うことが考えられます。料金の説明と実際の会計が違う場合の交渉は、料金が説明と違う|ぼったくり被害の返金交渉でも解説しています。

恋愛感情や威迫によって注文させられた

 「好きなら入れてほしい」「入れてくれないと関係が終わる」といった言葉で注文を求められた場合、消費者契約法上の取消し(同法4条3項)が問題になることがあります。改正風営法でも、客の恋愛感情等につけ込んだ飲食等の要求が禁止され、注文や支払いをさせる目的での威迫には罰則が設けられました。ただし、消費者契約法の取消しには要件があり、すべての色恋営業が取消しの対象になるわけではありません。主張の立て方は【風俗トラブル・ホストクラブ】『色恋だと分かっていたはずだ』と言われた|困惑類型の主張の立て方で詳しく扱っています。

金額が通常の水準から大きく外れている

 市場価格からかけ離れた金額でシャンパンが計上されている場合や、短時間で到底飲み切れない本数が計上されている場合には、公序良俗違反(民法90条)や暴利行為として、適正額を超える部分の支払いを争う余地があります。もっとも、ホストクラブの料金は一般の飲食店より高く設定されていることが通常で、「高い」というだけで無効になるわけではありません。どの部分が通常の水準を超えているかを具体的に示すことが求められます。

会計の場と翌日にしておきたいこと

支払いを争えるかどうかは、後に残る記録で大きく変わります。ホストクラブ側は伝票などの記録を整えていることが多く、客の側に記録がないと、「強引に勧められた」「頼んでいない」という主張を裏付けにくくなります。

  • 会計の際に伝票や明細を見せてもらい、写真を撮っておきます。
  • 注文したシャンパンの銘柄・本数・単価を、覚えている範囲でメモに残します。
  • 担当ホストや店とのLINE・メッセージは削除せずに保存します。
  • 一緒に来店した友人がいれば、当日の様子を聞き取っておきます。
  • クレジットカードの利用明細や、売掛の金額を示す連絡を保存します。


その場で借用書や売掛の書面への署名を求められたら

 酔った状態で、売掛の金額を確認する書面や借用書への署名を求められることがあります。署名した書面は、後に「この金額で合意した」という証拠として扱われるおそれがあります。内容を確かめられる状態でないときは、署名を急がず、日を改めて確認したいと伝えることも一つの対応です。改正後に支払う必要のある売掛かどうかの見分け方は、【風俗トラブル・ホストクラブ】ホストクラブの売掛を請求された|改正後に『払う必要のある売掛』を見分けるで解説しています。

クレジットカードで決済してしまったとき

 酔った状態でカード決済をしてしまった場合でも、カード会社に事情を伝えて、支払いの停止や取消しを相談できる場合があります。ただし、カード会社の判断や手続には期限があることが多く、早めに動くことが大切です。詳しくはクレジットカードで高額決済させられた|取消・チャージバックは可能かをご覧ください。

「親に払ってもらえ」と言われたら|家族に支払う義務はあるか

 売掛を払えないと伝えた際に、「親に払ってもらえばいい」「家族に連絡する」と言われることがあります。

 成人した本人が注文したシャンパン代を支払う義務を負うのは、原則として契約の当事者である本人です。親やきょうだいが連帯保証人などになっていない限り、家族が代わりに支払う法的な義務はありません。家族が「本人の代わりに払う」と約束する書面に署名すると、その時点で家族自身が支払い義務を負うおそれがあるため、内容を確かめずに応じないことが大切です。

 また、支払いを迫る目的で威迫することは改正風営法で禁止されており、家族への連絡をちらつかせて支払いを迫る行為が、内容によっては問題になることがあります。親の側から見た対応は【親子問題】子がホストクラブの売掛で多額の債務を負った|親が関わるときの順序と改正風営法でも整理しています。

どこに相談すればよいか

 ホストクラブの料金をめぐるトラブルについては、いくつかの相談先があります。消費生活センター(消費者ホットライン188)では、契約に関する一般的な助言を受けられます。新宿区のように、ホストクラブの高額請求について弁護士相談の枠を設けている自治体もあります。威迫を受けている、売春や性風俗での勤務を求められているといった場合は、警察(警察相談専用電話#9110、緊急時は110番)への相談が考えられます。

 支払うべき金額を具体的に見直したい、店や担当ホストとの連絡を自分で続けることがつらい、という場合には、弁護士に交渉の窓口を任せることも選択肢です。弁護士が代理人として入ることで、店からの連絡は弁護士に向くようになり、伝票や記録をもとに、支払うべき部分と争える部分を切り分けて交渉することができます。

関連する解説記事



 酔って開けたシャンパン代は、「酔っていたから払わなくてよい」とも「伝票がある以上すべて払うしかない」とも言い切れない問題です。注文したのか、料金の説明はどうだったのか、どのように勧められたのかを一つずつ確かめることで、支払うべき部分と見直せる部分が分かれてきます。記憶があいまいな場合でも、伝票やメッセージ、同席者の話から事実を組み立て直せることがあります。

同じような状況でも、経緯や残っている記録によって取れる手段は変わります。どこから手をつければよいか判断がつかない段階でも、事実を整理するところからご一緒できます。
当事務所では、電話・メール・LINEのうちご希望の方法でご相談をお受けしています。ご都合のよい手段をお選びください。
早い段階でご相談いただくほど、選べる手立ては多く残ります。迷っている段階でも、まずはお気軽にお声がけください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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