【解決事例】デリヘルで盗撮が発覚・弁護士が介入し、400万円の請求を50万円に減額した事例
この記事は、2026年10月時点の刑法、刑事訴訟法、警察官職務執行法、弁護士法をもとに作成しています。個別の事情によって考え方が変わる場合がありますので、具体的なご判断は弁護士にご相談ください。
風俗店やホテルの一室でトラブルになり、店のスタッフが現れて話が大きくなった。そうした場面について、ご相談の中では「囲まれて怖かったので、自分から110番すべきか迷った」という声と、「警察を呼んだら自分のほうが捕まるのではと思い、結局呼べなかった」という声の両方をうかがいます。同じ迷いでも、何を心配しているかは人によって違います。
ネット上では「脅されたらすぐ警察へ」という説明も、「警察を呼ぶと客に不利になる」という説明も見かけます。どちらも場面によっては当てはまりますが、どちらか一方だけを基準にすると、身の安全を後回しにしたり、反対に呼ぶ必要が乏しい場面で事態を広げたりすることがあります。分かれ目になるのは、警察を呼ぶことで「何が解決し、何が始まるのか」を分けて考えられるかどうかです。
この記事では、トラブルの現場にいるお客様の立場から、自分から警察を呼ぶかどうかを考えるときの基準を整理します。店側から「警察に行く」と言われた後の対応や、警察と弁護士の相談先の使い分けについては、それぞれ別の記事で扱っていますので、本文中のご案内からご覧ください。
迷ったときに最初に分けたい二つの問題
現場で警察を呼ぶか迷うとき、頭の中では「身の安全」と「お金や言い分の対立」が一緒になっていることが多いものです。この二つは、警察を呼ぶ意味が大きく異なります。
身の安全に関わる場面は、迷う理由が少ない
次のような状況にあるときは、自分の行為に心当たりがあるかどうかにかかわらず、110番を優先して考えてよい場面です。
- 殴られる、押さえつけられるなど、実際に手を出されている。
- 部屋や事務所から出してもらえず、出口をふさがれている。
- 身体や家族への危害をほのめかされている。
- 財布やスマートフォン、身分証を取り上げられ、求めても返してもらえない。
暴行(刑法208条)、監禁(同法220条)、脅迫(同法222条)、義務のないことを行わせる強要(同法223条)にあたりうる行為は、トラブルのきっかけがどちらにあったとしても、それ自体が別の問題として扱われます。自分にも負い目があるからといって、身体の危険を我慢しなければならない理由にはなりません。出してもらえない場面の法的な整理は、その場から帰してもらえない|監禁と不退去の境界で詳しく扱っています。
お金や言い分の対立だけなら、警察を呼んでも決着はしない
一方、「罰金を払え」「払わない」という金額の対立や、「本番をした」「していない」という言い分の食い違いだけが問題になっている場面では、事情が変わります。警察は、どちらがいくら払うべきかを決める役割を担っていません。警察官が来ればその場の話し合いは中断されるかもしれませんが、請求そのものが消えるわけではありません。
なお、店のスタッフがキャストに代わって示談金の額を示し、交渉してくることもあります。報酬を得る目的で他人の法律事件について交渉することは弁護士法72条との関係で問題になりうるため、店側の提示をそのまま受け入れる前提で考える必要はありません。ただし、これも警察がその場で判断する事柄ではなく、後の交渉の中で整理していく問題です。
さらに、言い分の食い違いが性的な行為をめぐるものであれば、警察官は「客が脅されているか」と同時に「客が何をしたか」にも関心を向けます。呼ぶ前に、この点を理解しておくことが大切です。
警察を呼ぶと、その場で何が起きるのか
双方から話を聞き、事件として扱うかを確かめる
110番通報を受けて警察官が臨場すると、当事者を分けてそれぞれの話を聞くことが一般的です。客、キャスト、店のスタッフから事情を確かめ、刑事事件として扱う必要があるかどうかを見ていきます。
このとき、キャスト側から「同意のない行為をされた」という申告があれば、客は通報した側であっても、その申告について事情を聞かれる立場になります。インターネット上の法律相談でも、店の関係者がすぐに警察を呼び、その後に被害届が出されて取調べを受けたという例が寄せられています。通報したのが客であっても、警察はどちらかの味方として来るわけではないという点は押さえておきたいところです。
逮捕されていない段階でできること・できないこと
逮捕されていない限り、警察官から質問されても、答えることを強制されたり、意に反して警察署へ連れて行かれたりすることはないとされています(警察官職務執行法2条3項)。警察署で話を聞かれる場合も、逮捕や勾留をされていなければ、出頭を断ることや途中で退去することができます(刑事訴訟法198条1項)。
ただし、現場で同行を断ったり説明を拒んだりすることが、常に得策とは限りません。事件性が疑われている場面では、その後の捜査の進め方に影響することもあります。どこまで応じるかに迷うときは、その場で弁護士に電話で相談できるかを確かめるのも一つの方法です。
通報したという記録が残る
110番通報をすると、通報があった事実やおおまかな内容が警察側に残ります。脅されたり出してもらえなかったりした場面であれば、その場で第三者が状況を確認したことは、後に店側の行為を問題にするうえで意味を持つことがあります。反対に、性的な行為をめぐる申告があった場合には、その場で証拠の確保が進むきっかけにもなります。記録が残ることは、どちらの方向にも働きうると考えておくのが現実的です。警察が動き出す一般的な経路は、風俗トラブルで警察が動くきっかけ|被害届・通報・摘発から捜査が始まる流れで整理しています。
自分の行為に心当たりがあるときの考え方
心当たりがあることと、身の安全は切り離す
禁止されている行為をしてしまった、あるいはそう疑われてもおかしくない状況だったと感じているとき、「警察を呼べば自分の行為も明らかになる」と考えて、危険な状況を我慢してしまう方がいます。
しかし、自分の行為についての責任は、後から弁護士を通じて向き合う道があります。一方、その場でのけがや、長時間出してもらえない状況は、後から取り戻すことが難しいものです。身体の危険があるときは、自分の行為の問題とは別に、まず安全を確保するという順序で考えます。
危険がなく言い分の対立だけなら、呼ばずに離れることも選択肢
手を出されておらず、出入りも妨げられていない場面で、金額や言い分をめぐって押し問答になっているだけであれば、自分から警察を呼ぶよりも、その場では何も約束せずに離れ、早めに弁護士へ相談するほうが整理しやすいことがあります。
店側が「警察を呼ぶ」「被害届を出す」と言っている場合に、先回りして自分から通報すれば有利になるという単純な関係にはありません。キャスト側の申告がある以上、誰が通報しても、警察が確認しようとする事実は同じだからです。店側から警察の話を持ち出された後の動き方は、【風俗トラブル】店から「警察に行く」と言われた翌日にすること|被害届が出る前の時間で扱っています。
呼んだ場合に伝えること・控えること
自分から通報する場合は、まず「今、どこで、何が起きているか」を簡潔に伝えます。たとえば「ホテルの部屋で店のスタッフに囲まれ、出してもらえない」「財布を取られて返してもらえない」といった、いま起きている危険の内容です。
臨場した警察官に対しては、事実と異なる説明をすることは避けてください。後で説明が変わると、それ自体が不利に受け取られることがあります。他方で、記憶があいまいな部分まで推測を交えて詳しく話すことが、正確な説明になるとは限りません。覚えていることと、はっきりしないことを分けて話すことを心がけます。
呼ばない選択をしたときに、その場で控えたいこと
警察を呼ばずにその場を収めようとするときも、後に影響が残る行動は控えたいところです。次の点はその場で応じず、話し合いは後日にすると伝えて離れることを基本に考えます。
- 店が用意した示談書・誓約書・念書に署名すること。
- その場で現金を渡したり、振込をしたりすること。
- 身分証や名刺を見せたり、撮影やコピーを許したりすること。
- 財布、スマートフォン、身分証を店に預けること。
その場での署名や支払いが後にどう扱われるかは、店が用意した示談書にサインする危険性|宥恕条項・清算条項の落とし穴や【風俗トラブル】「今すぐ払えばこの場で終わる」と言われた|即時払いを求められたときの判断で解説しています。すでに所持品を預けてしまった場合は、【風俗トラブル】財布やスマホを店に預けさせられた|所持品を返してもらう方法をご覧ください。
「現行犯だから帰さない」と言われたら
店側から「現行犯だから帰さない」と言われることがあります。現行犯人は誰でも逮捕できるとされていますが(刑事訴訟法213条)、警察官以外の人が逮捕した場合は、直ちに検察官や警察官に引き渡さなければなりません(同法214条)。警察に引き渡さないまま、金銭の話し合いを続けるために引き留めることは、この手続とは別のものです。そのような状況であれば、自分から警察を呼ぶことも含めて考える場面にあたります。
ホテルの部屋や店の事務所での注意点
ホテルの部屋であれば、フロントに連絡することで第三者に来てもらえる場合があります。店の事務所へ移るよう求められたときは、閉じた空間で複数の人と向き合う形になるため、応じるかどうかを慎重に考えます。
反対に、店の中で退出を求められたのに居座り続ければ、客の側に不退去(刑法130条)の問題が生じることもあります。出られる状況であれば、その場を離れること自体が身を守る手段になります。場面ごとの対応は、【風俗トラブル】ホテルの部屋に店のスタッフが来た|ドアを開ける前に考えることと複数の店員に囲まれた場面|その場での言動が後に持つ意味で扱っています。
場面ごとの考え方を整理する
ここまでの内容を、現場の状況ごとにまとめると次のようになります。
| 現場の状況 | 自分から警察を呼ぶことの考え方 |
|---|---|
| 暴行を受けている、または受けそうになっている | 110番を優先する場面です |
| 部屋や事務所から出してもらえない | 110番を含めて考える場面です |
| 所持品や身分証を取り上げられ、求めても返されない | 返還を求めても応じない場合は通報を考えます |
| 家族や勤務先に知らせると言われ、支払いを迫られている | その場では支払わずに離れ、言われた内容を記録して早めに弁護士へ相談します。身体の危険が加わる場合は通報を考えます |
| 金額や言い分の対立だけで、出入りは自由 | 何も約束せずに離れ、弁護士への相談を先にすることが考えられます |
| 店側がすでに警察を呼んでいる | 重ねて通報しても状況は大きく変わりません。来た警察官に事実と異なる説明をしないことが大切です |
店側の言動がどこから恐喝などの問題になるのかは、店の請求が恐喝に変わる線引き|正当な権利行使との境界で詳しく整理しています。
よくあるご質問
自分から通報すれば、やましいことはないと受け取ってもらえますか?
通報した事実だけで、行為の有無について有利に判断されるわけではありません。警察は、誰が通報したかではなく、それぞれの説明や客観的な状況をもとに判断します。通報は、身の安全を守るための手段として考えるのが基本です。
警察を呼んだら、その場で逮捕されることはありますか?
キャスト側の申告や現場の状況によっては、その可能性がないとはいえません。一方で、臨場した段階では双方から話を聞くにとどまり、その日は帰宅できる場合もあります。どちらになるかは事案ごとに異なるため、警察官から同行を求められた段階で弁護士に連絡を取れるかを確かめておくと、落ち着いて対応しやすくなります。
その場では呼ばずに帰った後、やはり警察に相談したくなったら?
後日に警察へ相談することもでき、緊急でない相談には警察相談専用電話「#9110」も利用できます。ただし、店とのやり取りが続いている状況で自分から警察に事情を伝えるかどうかは、伝える内容によって後の手続への影響が変わります。先に弁護士に相談し、順序を決めてから動くことをおすすめします。相談先の使い分けは、風俗トラブルは警察・弁護士どっちに相談すべき?状況別の判断基準でも整理しています。
まとめ
- 現場で警察を呼ぶか迷ったときは、「身の安全の問題」と「お金や言い分の対立」を分けて考える。
- 暴行(刑法208条)、監禁(同法220条)、脅迫(同法222条)、強要(同法223条)にあたりうる状況では、自分の行為に心当たりがあっても110番を優先して考える。
- 警察は金額の争いを決める役割を担っておらず、呼んでも請求そのものが消えるわけではない。
- キャスト側の申告があれば、通報したのが客であっても、客の行為も確認の対象になる。
- 逮捕されていなければ答弁や同行を強制されることはない(警察官職務執行法2条3項、刑事訴訟法198条1項)が、断ることが常に得策とは限らない。
- 警察官以外の人が現行犯逮捕した場合は直ちに引き渡す必要があり(刑事訴訟法214条)、金銭の話を続けるための引き留めとは区別される。
- 呼ばずに離れる場合も、署名・支払い・身分証の提示や撮影・所持品の預け入れには応じない。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店の利用をめぐるトラブルについてのご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。現場で店から金銭を求められている方、その場は離れたものの今後の連絡や警察の動きに不安がある方は、早い段階でご相談ください。
店とのやり取りをどこで止めるか、警察にどう向き合うかは、残っている記録や当日の経緯によって変わります。ご事情を伺ったうえで、対応の順序を一緒に整理します。


