【男女トラブル】交際相手から妊娠を告げられた|最初の1週間に確認すること

若井亮

若井亮

テーマ:男女トラブル

この記事は、2026年10月時点の民法・母体保護法・戸籍法などに基づいて作成しています。認知の無効の訴えについては、2024年(令和6年)4月1日に施行された改正民法(令和4年法律第102号)の内容を反映しています。


「交際中の彼女から、妊娠したと告げられました。頭が真っ白で、何から考えればいいのか分かりません」。妊娠をめぐるご相談では、男性からこうした声をよくお聞きします。反対に、女性の側からも「打ち明けたあと、彼の態度がはっきりせず、どう話を進めればいいのか分からない」というご相談が寄せられます。

 一般には「まず誠実に向き合うこと」「認知や養育費の義務を知っておくこと」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、告げられた直後の数日間に、具体的に何を確認し、何をまだ決めなくてよいのかという「順序」は、あまり整理されていないように思われます。実際には、この最初の時期に交わした言葉や書面、渡したお金が、その後の話し合いに長く影響することがあります。

 この記事では、交際相手から妊娠を告げられた男性の側を中心に、最初の1週間で確認しておきたいことを時系列に沿って整理します。中絶費用の分担、認知や養育費の金額、相手が既婚の場合の慰謝料などの個別の論点は、それぞれ別の記事で詳しく扱っていますので、本文中でご案内します。

最初の1週間をどう考えるか|決めることと決めないことを分ける

 妊娠を告げられると、「産むのか、産まないのか」「結婚するのか」という大きな問いが一度に押し寄せてきます。しかし、最初の1週間で取り組むべきことは、結論を出すことよりも、結論を出すための前提を確かめることです。

1週間で結論を出す必要はない

 妊娠の継続や出産を決めるのは、最終的には妊娠している女性本人です。男性の側にできるのは、自分の考えを伝え、事実を確認し、必要な負担について話し合うことです。告げられたその場で結婚や中絶について結論めいたことを口にすると、後から撤回したときに相手を深く傷つけ、話し合い自体が難しくなることがあります。最初の数日は「気持ちを受け止める」「事実を確かめる」「その場で約束をしない」の3点を意識することが大切です。

ただし、時間の制約があることは理解しておく

 一方で、妊娠には時間の制約があります。母体保護法に基づく人工妊娠中絶は、現在の運用では妊娠22週未満に限られています(母体保護法2条2項)。また、妊娠12週以降の中絶では身体的な負担が大きくなり、死産の届出も必要になります。男性の側が判断を先延ばしにし続けると、相手の選択肢を狭めることになりかねません。「急いで決めない」ことと「放置しない」ことは別物だと考えておくとよいでしょう。

 最初の1週間で確認しておきたいことを、時期の目安ごとにまとめると次のとおりです。

時期の目安確認しておきたいこと控えたいこと
1〜2日目受診の有無、妊娠週数、相手の体調と気持ちその場での結論、疑いをぶつける言い方
3〜4日目交際の状況(婚姻・同居の有無)、自分の考えの整理相手の家族や知人への一方的な連絡
5〜7日目書面や金銭のやり取りの内容、相談先名目のはっきりしない送金、内容を確認しないままの署名


1〜2日目|妊娠の事実と週数を確かめる

 最初に確認したいのは、妊娠が医療機関で確認されているかどうか、そして妊娠何週目なのかという点です。市販の妊娠検査薬で陽性が出た段階なのか、産婦人科を受診して確認を受けた段階なのかによって、その後の進め方は変わります。

受診の状況と週数を聞く

 まだ受診していない場合には、早めの受診を勧め、必要であれば付き添いや費用の負担を申し出ることも考えられます。受診していれば、医師から伝えられた週数や出産予定日を聞いておきます。週数は、妊娠の時期と交際の時期が重なっているかを確かめるうえでも、中絶を検討する場合の期限を知るうえでも基本となる情報です。

 なお、妊娠の届出をすると市区町村から母子健康手帳が交付されます(母子保健法15条、16条)。届出や手帳の受け取りは女性本人が行う手続ですが、話し合いの中で「どの段階まで進んでいるか」を共有しておくと、その後の見通しを立てやすくなります。

診断書や画像を求めるときの伝え方

 事実を確かめるために、診断書やエコー写真を見せてほしいと頼むこと自体は、不自然なことではありません。ただし、「本当に妊娠しているのか」「嘘ではないのか」と疑う言い方をすると、相手との関係が大きくこじれることがあります。「これからのことを一緒に考えるために、週数や予定日を正確に知っておきたい」といった伝え方を心がけるとよいでしょう。

 一方で、受診を拒み続ける、確認の求めに応じないまま金銭だけを強く求められる、といった場合には、慎重な対応が必要です。この点については「妊娠した」「病気になった」と請求されたら|妊娠詐欺・示談金詐欺の見極め方で整理しています。

自分の子かどうかに疑問がある場合

 交際の時期や避妊の状況から、自分の子であるか疑問を持つ方もいらっしゃいます。出生前に親子関係を調べる検査を行う民間の機関もありますが、母体からの採血が必要になるため、相手の協力がなければ行えません。疑問を持っていることを伝える場合も、相手を責める言い方は避け、「お互いのために確認しておきたい」という形で提案するのが現実的です。疑問が残るまま認知や金銭の約束をしてしまうことは避けたいところです。

3〜4日目|交際の状況と自分の立場を整理する

 事実関係がある程度分かってきたら、次は2人の関係が法律上どのような位置にあるのかを整理します。婚姻しているかどうか、同居しているかどうか、どちらかに配偶者がいるかどうかによって、関係する法律の扱いが変わるためです。

交際相手は中絶の同意が必要な「配偶者」にあたるか

 母体保護法は、人工妊娠中絶について「本人及び配偶者の同意」を求めています(母体保護法14条1項)。ここでいう配偶者には、婚姻の届出をしていなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある者が含まれます(同法3条1項)。そのため、婚姻しておらず事実婚ともいえない交際相手は、法律上の「配偶者」にはあたらないと解されています。

 もっとも、医療機関によっては、交際相手の男性に同意書への署名を求める運用が見られます。署名を求められた場合の考え方については、交際・パパ活相手の妊娠|認知・養育費・中絶同意書の基礎知識もあわせてご覧ください。

自分または相手に配偶者がいる場合

 どちらかが既婚者である場合には、妊娠の問題に加えて、配偶者との関係で慰謝料の問題が生じる可能性があります。男性が既婚であることを隠して交際していた場合には、女性の側から貞操権の侵害を理由とする請求を受けることもあります。こうした場面については、【不貞慰謝料】不貞相手が妊娠した場合に生じる問題、既婚を隠されて妊娠|貞操権侵害の慰謝料はいくら請求できるで詳しく扱っています。

結婚を考える場合に知っておきたいこと

 結婚を前向きに考える場合、婚姻後に生まれた子は、婚姻前に懐胎していたとしても夫の子と推定されます(民法772条1項)。この点は2024年4月施行の改正で明確にされました。一方で、結婚の話が途中で立ち消えになった場合には、別の整理が必要になります。この点は授かり婚の破談・できちゃった婚の解消|養育費・認知の整理で説明しています。

5〜7日目|書面と金銭のやり取りに注意する

 話し合いが進むと、何らかの約束を書面にしたり、費用としてお金を渡したりする場面が出てきます。この段階のやり取りは後から争いになりやすいため、内容を確かめてから進めることが大切です。

「中絶する」という約束には法的な拘束力がない

 出産するかどうかを決めるのは女性本人であり、「中絶する」と約束する書面を交わしても、その約束に基づいて中絶を求めることはできないと考えられています。中絶を前提にお金を渡したのに中絶が行われなかった場合には、渡したお金について返還を求められる余地がありますが(民法703条)、相手が出産を選んだ後は養育費との調整など別の話し合いが必要になります。

 中絶する場合の費用の分担については、男女双方が負担するという考え方が一般的です。詳しくは【男女トラブル】中絶費用は折半なのか|「おかしい」と感じたときの整理の仕方をご覧ください。

「認知を求めない」「養育費はいらない」という言葉の扱い

 相手から「認知はしなくていい」「養育費も求めない」と言われることがあります。しかし、子が父に認知を求める権利は放棄できないとされており(最高裁昭和37年4月10日判決)、こうした合意を書面にしても、後に認知を求められる可能性は残ります。養育費についても、子の利益を大きく損なう取り決めは見直されることがあります。相手の言葉をそのまま前提にして、今後の生活設計を固めてしまうことは避けたいところです。

胎児認知を求められたとき

 出産前に父が子を認知する「胎児認知」という手続があります。胎児認知には母の承諾が必要で(民法783条1項)、届出は母の本籍地で行います(戸籍法61条)。いったん認知すると、取り消すことはできません(民法785条)。血縁上の親子関係がない場合に限って認知の無効の訴えが認められますが、認知をした者が訴えを起こせるのは原則として7年以内で、胎児認知の場合は子の出生の時から数えます(民法786条1項)。胎児認知を求められた場合は、週数や交際の時期を確かめ、疑問が残るときは急いで届出をしないことが大切です。

お金を渡すときに書き残しておくこと

 受診費用や生活費の援助としてお金を渡す場合には、「いつ、いくらを、何の名目で」渡したのかが分かる形にしておくと、後の話し合いで認識の違いが生じにくくなります。振込の記録を残す、メッセージで名目を伝えておく、といった方法が考えられます。交際中に作った書面の効力については、【男女トラブル】交際相手との間で作った書面|『誓約書』『覚書』の効力でも整理しています。

この時期に避けたい言動

 最初の1週間は、気持ちの整理がつかないまま言動に出てしまいやすい時期です。後から問題になりやすいものを挙げておきます。

中絶を強く迫る・連絡を断つ

 中絶を繰り返し強く迫ったり、応じなければ別れると告げたりすることは、相手に大きな精神的負担を与えます。言動の内容や程度によっては、慰謝料の請求を受けたり、強要罪(刑法223条)が問題になったりすることもあります。また、連絡を一方的に断つと、相手は家庭裁判所での手続を検討せざるを得なくなり、かえって負担が大きくなることがあります。女性の側から見たこの場面は、妊娠を告げたら逃げられた・音信不通|相手を特定して認知・養育費にたどり着くまでで扱っています。

記録を残すときの注意

 話し合いの内容を記録しておくことは、後の認識の食い違いを防ぐうえで役に立ちます。もっとも、記録を残す目的は、相手を追い詰めることではなく、お互いの約束の内容を確かめることにあります。記録の作り方の考え方は、【男女トラブル】別れ話を録音しておくべきか|交際を終える話し合いでの記録の作り方が参考になります。

第三者に話を広げる

 相手の家族や共通の知人、職場などに妊娠の事実を伝えることは、相手のプライバシーに深く関わります。相談相手を選ぶこと自体は大切ですが、相手の了解なく話を広げることは控えたほうがよいでしょう。

弁護士に相談することを考える場面

 当事者同士で落ち着いて話し合えているのであれば、すぐに弁護士が関わる必要はありません。ただし、次のような場面では、早めに相談しておくと見通しを立てやすくなります。

  • 高額な金銭の支払いや、内容のよく分からない書面への署名を求められている。
  • 相手やその家族から、職場や家族に知らせるといった言葉とともに要求を受けている。
  • 胎児認知や養育費の取り決めを求められ、判断に迷っている。
  • 自分の子であるか疑問があり、どのように確かめればよいか分からない。
  • どちらかが既婚であり、配偶者との関係も含めて整理が必要になっている。


 弁護士が窓口となることで、直接顔を合わせずに条件を詰めていくこともできます。実際の解決例として、【解決事例】交際相手の妊娠をめぐり100万円超を請求された事例|直接の面談に応じず解決金30万円で合意書を締結もご参照ください。

よくあるご質問

相手がまだ病院に行っていないと言う場合は、どうすればよいですか。

 まずは受診を勧めることが基本です。妊娠の確認や週数の把握は、相手の体調管理のためにも、今後の話し合いのためにも欠かせません。費用の負担や付き添いを申し出ると、受診のきっかけになることがあります。受診を拒み続けながら金銭だけを求められる場合には、慎重に対応したほうがよいでしょう。

中絶の同意書に署名を求められたら、応じなければなりませんか。

 婚姻しておらず事実婚ともいえない関係であれば、法律上は配偶者の同意が求められる場面にはあたらないと解されています(母体保護法14条1項、3条1項)。ただ、医療機関の運用で署名を求められることがあり、相手の手術が遅れることは望ましくありません。署名すること自体が費用の全額負担を約束する意味を持つわけではありませんので、内容を確認したうえで判断するとよいでしょう。

相手の親から連絡が来た場合は、誰と話せばよいですか。

 妊娠をめぐる話し合いの当事者は、基本的に交際している2人です。相手の親が話し合いに加わること自体はよくありますが、親が相手本人に代わって合意を結ぶ権限を持っているかは別の問題です。この点は【男女トラブル】相手の家族が代わりに交渉に出てきた|代理権の有無の確かめ方で詳しく説明しています。

まとめ


  1. 最初の1週間は、結論を出すよりも、受診の有無や妊娠週数などの事実を確かめることを優先する。
  2. 人工妊娠中絶は妊娠22週未満に限られるため、判断を先延ばしにし続けることは避ける(母体保護法2条2項)。
  3. 婚姻しておらず事実婚ともいえない交際相手は、中絶の同意が求められる「配偶者」にはあたらないと解されている(母体保護法14条1項、3条1項)。
  4. 「中絶する」という約束に法的な拘束力はなく、中絶を前提に渡したお金は返還が問題になることがある(民法703条)。
  5. 子が認知を求める権利は放棄できないため、「認知はいらない」という言葉を前提に将来を決めない(最高裁昭和37年4月10日判決)。
  6. 胎児認知には母の承諾が必要で、取り消すことはできない。認知無効の訴えは原則として子の出生から7年以内に限られる(民法783条1項、785条、786条1項)。
  7. 中絶を強く迫る、連絡を断つ、第三者に話を広げるといった言動は、後の紛争の原因になりやすい。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、男女間のトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。交際相手の妊娠をめぐって、話し合いの進め方や書面・金銭のやり取りに迷っている方のご相談に対応しています。

妊娠を告げられて対応に迷っている方も、妊娠を打ち明けたものの相手との話し合いが進まない方も、おひとりで抱え込まず、早い段階でご相談ください。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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