【解決事例】名義を貸した部屋から交際相手が退去しない場合の対処法|弁護士が交渉で明渡しを実現した事例
中絶費用を「折半にしよう」と言われ、その場では返事をしたものの、後から気持ちが追いつかないというご相談があります。反対に、折半を求められた側から「なぜ自分が半分なのか」というご相談をいただくこともあります。この記事では、折半という言葉に違和感が残るとき、その違和感のどこが話し合いや法的な評価に乗り、どこが乗りにくいのかを整理します。
「折半」は法律で決まっているわけではない
まず前提として、中絶費用を男女で半分ずつ負担すると定めた条文はありません。民法にも母体保護法にも、負担割合を決める規定は置かれていません。
それにもかかわらず折半という言葉が広く使われているのは、妊娠が二人の行為から生じた結果である以上、そこから生じた不利益も双方で分け合うのが公平だという考え方が、実務の出発点として置かれているためです。あくまで出発点であって、事情によって動きます。
「目安」と「決まり」は違う
半額という数字は、話し合いが行き詰まったときに参照される目安にすぎません。相手から「法律で半分と決まっている」と言われた場合、その説明は正確ではないとお考えください。同じように、こちらから「全額が当然だ」と伝えても、そのまま通るわけではありません。
費用そのものの中身や、公的な給付を差し引いた実際の負担額の考え方については、中絶費用は相手に請求できる?男女の費用負担で整理しています。本記事は、金額の計算ではなく「納得できない」という部分に絞ってお話しします。
「おかしい」と感じる中身を4つに分ける
違和感とひとことで言っても、実際には性質の異なるものが混ざっています。話し合いを進めるうえでは、まずこれを分けておくと整理しやすくなります。
| 違和感の型 | 具体的な内容 | 扱われる枠 |
|---|---|---|
| 割合そのもの | 身体的な負担は分けられないのに、お金だけ半分なのか | 費用の分担 |
| 経緯 | 避妊について嘘をつかれた、既婚であることを隠されていた | 別枠の損害賠償 |
| 態度 | 連絡が取れない、付き添いもない、金額を値切られた | 評価に影響しうる事情 |
| 資力 | 相手のほうが収入が多いのに同額なのか | 話し合いの調整要素 |
このうち、金額の話し合いで正面から扱われるのは1行目だけです。2行目以降は、費用の分担とは別の枠で評価されたり、割合を動かす事情として働いたりします。混ぜたまま伝えると、相手には「感情的に金額を吊り上げようとしている」と受け取られてしまうことがあります。
評価に乗りやすい事情と、乗りにくい事情
どのような事情なら割合が動きうるのか、大まかな傾向を挙げます。
| 事情 | 評価への乗りやすさ |
|---|---|
| 避妊をめぐって事実と異なる説明があった | 乗りやすい |
| 既婚であることを隠されていた | 乗りやすい |
| 意思に反して中絶を迫られた | 乗りやすい |
| 通院の付き添いや連絡を一切拒んだ | 事情として考慮されうる |
| 収入や資産に差がある | 話し合いでは調整要素になりうる |
| 交際の期間が短かった、相手に愛情がなかった | 乗りにくい |
| 相手の態度が冷たかった | 乗りにくい |
最後の2行は、当事者にとっては最もつらい部分でありながら、それだけでは金銭の評価に結びつきにくい領域です。ここを中心に主張を組み立てると、話し合いが長引きやすくなります。
折半という提案が出てくる場面
ご相談の中で多いのは、次の3つの場面です。いずれも、金額そのものより「決め方」に問題が残りやすい形です。
相手が先に金額を示してくる
手術の日程が迫っている時期に、相手から金額と支払方法だけが提示されるという流れです。時間の制約がある中で提示されるため、内訳を確認しないまま受け入れてしまいやすくなります。急かされている状況では、金額に返事をする前に内訳を求めることだけでも、後の選択肢が変わります。
一部だけ支払われ、そのまま連絡が途絶える
半額に足りない金額が振り込まれ、以後の連絡が止まるという形です。受け取ったこと自体が合意を意味するわけではありませんが、そのまま時間が経つと、当時の事情を説明しにくくなっていきます。金額に納得していない場合は、その旨を記録に残る形で伝えておくのが安全です。
相手の家族が話に出てくる
相手の親などが間に入り、こちらの窓口が増えることがあります。当事者以外の方に支払義務があるわけではないため、誰との間で何を決めるのかを最初に確認するようにしてください。
身体への負担は「折半」の外側にある
折半という言葉に違和感が残る最大の理由は、身体的な負担は分けようがないという点にあると思われます。手術を受けるのも、その後の体調の変化を引き受けるのも一方だけです。
この部分は、費用の頭割りとは別の問題として扱われます。裁判例の中には、共同の行為から生じた不利益は双方が等しく分担すべきであり、相手方にはその不利益を軽減し分担する義務があるという考え方を示したものもあります。つまり、「費用を半分払ったから終わり」とは限らないということです。
もっとも、経緯に問題がなく、双方の合意のもとでの関係であった場合には、身体的な負担があったというだけで別途の金銭が認められるとは限りません。この線引きは事案ごとに異なります。
「折半でいい」と答えた後に考え直したくなったとき
その場の空気で承諾してしまい、後から納得できなくなるという流れは、決して珍しいものではありません。
まだ書面にしていない場合
口頭のやり取りだけであれば、金額の前提が変わったこと、たとえば後から避妊についての説明が事実と違うと分かったといった事情を伝えて、話し合いを再開する余地があります。ただし、いったん示した金額を動かすには相応の理由が必要になります。
書面を交わした場合
示談書や合意書に署名し、「本件に関し他に債権債務がないことを相互に確認する」といった清算条項が入っていると、後から別の請求を出すことが難しくなります。金額そのものより、この一文の有無のほうが後々効いてきます。署名を求められている段階であれば、その前にご相談いただくのが安全です。
折半を求められた側が納得できない場合
立場が逆のご相談もあります。この場合に確認していただきたいのは、次の点です。
- 請求されている金額の内訳が示されているか(領収書や明細があるか)。
- 費用そのものと、それ以外の名目が混ざっていないか。
- すでに支払った分が差し引かれているか。
- 支払うことで何が終わるのか(清算条項の有無)が書面で確認できるか。
なお、費用を負担したことと、その後の認知や養育費の問題とは別に扱われます。「払ったのだから今後いっさい関わらない」という取り決めが、そのまま将来にわたって効力を持つとは限りません。
風俗やパパ活といった関係の中で妊娠を理由に金銭を求められた場面については、風俗・パパ活相手から妊娠を理由に金銭請求された|認知・養育費の考え方で扱っています。
話し合いを前に進めるための整理
感情が残っている段階でも、次の3点を先に固めておくと、やり取りが具体的になります。
- 実際にかかった額を領収書で確定させる(相場から入らない)。
- 納得できない部分が、割合の話なのか、経緯や態度の話なのかを分ける。
- どこまで決まれば終わりにするのか、自分の側で線を引いておく。
やり取りは、可能な範囲で記録に残る形にしておくことをおすすめします。後から事情を説明する場面で、当時のやり取りが手がかりになります。
よくあるご質問
相手が「法律で半分と決まっている」と言っています
そのような条文はありません。半額は実務上の目安であり、事情によって動きます。相手の説明を前提に金額を決める必要はありません。
全額を負担してほしいと伝えてもよいのでしょうか
伝えること自体は問題ありません。ただし、応じない相手に対して繰り返し強い言葉で迫る形になると、こちらの立場が悪くなることがあります。根拠と金額を書面で示す形に切り替えるほうが、結果的に早いことが多いです。
相手と連絡が取れなくなりました
連絡が取れない段階でも、やり取りの記録と費用の裏づけが残っていれば、後から手続を検討する余地があります。記録を消さずに残しておいてください。
まとめ
- 中絶費用を折半とする法律上の決まりはなく、半額は公平の考え方に基づく目安である。
- 「おかしい」と感じる中身は、割合・経緯・態度・資力に分けて整理すると扱いやすい。
- 身体への負担は費用の頭割りとは別の枠で考えられ、費用を折半すれば終わりとは限らない。
- いったん承諾した後でも、書面を交わす前であれば話し合いの余地は残る。
- 清算条項の入った書面に署名すると、後から別の請求を出すことは難しくなる。
- 請求された側は、内訳・既払分・清算条項の3点を書面で確認する。
中絶費用をめぐるご相談は、金額そのものよりも、納得できないまま話が進んでしまうことへの不安から寄せられることが少なくありません。当事務所では、男女いずれの立場からのご相談もお受けしています。書面に署名する前の段階でも、すでに話が進んでしまった後でも、取りうる選択肢を整理してお示しします。


