【風俗トラブル】ソープランドで同意のない行為を訴えられた|ソープ特有の事情と主張の組み立て

若井亮

若井亮

テーマ:風俗トラブル

この記事は、2026年10月1日時点の刑法、刑事訴訟法、民法、民事訴訟法、売春防止法、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の規定をもとに、ソープランドを利用した客の立場から書いています。刑法の法定刑は、2025年6月1日に施行された拘禁刑への一本化を反映した表記です。


ソープランドを利用した後に、「キャストが同意していなかったと言っている」と店から告げられた。「被害届を出す」と言われ、事務所で書面への署名を求められた。客の立場からのご相談では、こうした場面をよく伺います。「ソープなのだから同意はあったはずだ」と考える方もいれば、「途中で嫌がっていたかもしれない」と記憶をたどり直す方もいます。

 風俗店での本番行為をめぐるトラブルについては、「同意がなければ不同意性交等罪になり得る」「その場で示談書にサインしない」と説明されることが多く、それ自体は誤りではありません。ただ、こうした説明はデリヘルなどの派遣型の店を想定していることが多く、店舗の中で長い時間をかけてサービスが行われるソープランドならではの事情は、あまり整理されていません。

 この記事では、ソープランドで同意のない行為を指摘された場合に、業態の建前、店舗型であること、サービスの時間と段階という三つの事情が、主張の組み立てにどう影響するかを扱います。売春防止法上の客の位置づけや、店が摘発された場合の対応は、別の記事に譲ります。

ソープランドで「同意のない行為」を指摘されたときに起きていること

「訴えられた」の中身は一つではない

 「訴えられた」という言葉で語られる内容は、実際にはいくつかの異なる請求や手続が重なっていることがほとんどです。誰が、何を根拠に、何を求めているのかを分けると、対応の順序が見えてきます。

相手求めていること主な根拠
店「罰金」「違約金」「迷惑料」などの支払い利用規約や誓約書(契約)
キャスト本人慰謝料などの損害賠償不法行為(民法709条・710条)
捜査機関事件としての捜査と処分不同意性交等罪(刑法177条)など
キャスト本人(裁判所を通じて)訴訟による損害賠償民事訴訟の提起


 店からの請求とキャスト本人の請求は、名義も根拠も別です。店に支払ってもキャスト本人との問題が終わるとは限らず、反対にキャスト本人と合意しても店の請求が残ることがあります。また、刑事手続は当事者どうしの合意だけで閉じるものではありません。相手ごとに区切りのつけ方が違うという点を、まず押さえておいてください。

 店が「罰金」という名目で請求してくる場合については、「罰金」を請求された|私人が罰金を科すことはできないで詳しく解説しています。

問題とされ得る罪名|陰茎の挿入に限られない

 同意のない性交等は、不同意性交等罪にあたり得ます。法定刑は5年以上の有期拘禁刑で、罰金刑はありません(刑法177条1項)。ここでいう「性交等」には、性交のほか、膣や肛門に身体の一部(陰茎を除く)や物を挿入する行為でわいせつなものも含まれます。指の挿入が問題とされる場合も、同じ条文の対象になるということです。

 挿入に至らない身体への接触が問題とされる場合は不同意わいせつ罪(同法176条1項、6月以上10年以下の拘禁刑)、けがを負わせたとされる場合はより重い不同意わいせつ等致傷罪(同法181条)が問題になります。どの罪名で扱われるかによって見通しは大きく変わるため、何を指摘されているのかを、言われた言葉のまま記録しておくことが出発点になります。

ソープ特有の事情①|業態の建前と実態のずれ

風営法上、性交はサービスの内容とされていない

 ソープランドは、風営法上、「浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」と定められています(風営法2条6項1号)。届出のうえで営まれているのは、個室で異性の客に接触する役務を提供する営業であり、性交を提供する営業として認められているわけではありません。

 一方、売春防止法は、売春をすることも、その相手方となることも禁じています(売春防止法3条)。この規定に罰則はなく、罰則は場所の提供(同法11条)など店側の行為に向けられています。この建前と実態のずれについては、ソープランドの「自由恋愛」の建前と本番|客が知っておくべき法的リスクで詳しく解説しています。

「ソープだから同意があった」は主張の柱になりにくい

 ご相談の中で、「そういう店なのだから、同意があったのは当然だ」というお考えを伺うことがあります。しかし、不同意性交等罪で問われるのは、その場で、その行為について、相手が同意しない意思を形成し、表明し、または全うすることが困難な状態にあったかどうかです。店の業態や支払った料金は、個々の行為への同意を直接示すものとしては扱われにくいと考えておくほうが安全です。

店が「当店では禁止している」と説明する構造

 店の実態を前面に出す主張は、店にとっては売春防止法上の場所の提供を認めることにつながりかねません。そのため、店やキャストの側からは「当店では禁止している」「サービスに含まれていない」という説明が返ってくるのが通常です。客が「店の実態」を根拠にすればするほど、店との間で事実の争いが広がり、肝心の当日の経過から議論が離れていくことになります。業態ではなく、その日の個室で何があったかを軸に主張を組み立てることが、ソープランドの事案では特に重要です。

ソープ特有の事情②|店舗の中で起き、店がすぐに前に出てくる

その場で事務所に呼ばれ、書面を求められる

 デリヘルのような派遣型と違い、ソープランドでは出来事が店の建物の中で起きます。キャストが店に連絡すれば、従業員がすぐに個室の前や受付に来て、そのまま事務所で話し合いを求められるという流れになりやすいのが特徴です。

 事務所では、身分証の提示や撮影、事実を認める内容の書面、金額を記した誓約書などへの署名を求められることがあります。相手の人数が多く、帰りにくい雰囲気の中で作られた書面であっても、本人の署名がある書面は本人の意思で作られたものと推定されるため(民事訴訟法228条4項)、後から内容を争うには手間がかかります。その場では、事実関係の説明や金額の約束は控え、持ち帰って検討したいと伝えることが基本になります。

 すでに書面に署名し、控えも手元にない場合については、【風俗トラブル】店の事務所で書かされた紙の写真を撮っていない|内容を後から確かめる方法で整理しています。

店舗の記録は、客の手元にはない

 店舗型であることは、客にとって不利な面ばかりではありません。店舗には入店から退店までの経過を示す記録が残っていることが多く、それが客の説明を裏付ける場合もあります。

記録の例分かり得ること
受付や入退店の時刻入店から退店、事務所に呼ばれるまでの時間の流れ
共用部分の防犯カメラの映像退室時の双方の様子や、従業員とのやり取り
指名や来店の履歴初対面だったのか、指名を重ねた関係だったのか
支払いの記録(カードの明細など)利用した日時、コース、時間


 ただし、これらはいずれも店の管理下にあり、客が自分で取り寄せることはできません。防犯カメラの映像は一定の期間で上書きされることが多く、時間がたつほど確認は難しくなります。刑事手続に進んだ場合には、弁護人が裁判官に証拠の保全を請求する手続もあります(刑事訴訟法179条)。店の記録は時間とともに失われやすいため、どの記録が自分の説明を裏付け得るかを、早めに洗い出しておくことが大切です。

 客自身の手元に残る材料としては、予約や問い合わせのやり取り、店のサイトや料金表の表示、帰り道に書いたメモなどがあります。いずれも消さずに保存してください。

ソープ特有の事情③|長い時間と複数の段階

同意は行為ごとに、時間に沿って考える

 ソープランドのサービスは、入浴をはさんで長い時間をかけて進むことが多く、その間にいくつもの場面があります。ある場面で受け入れられていた行為があっても、それが別の行為への同意を意味するわけではありませんし、途中で示された拒否の意思は、その時点から意味を持ちます。同意は「入店時に一度」ではなく、行為ごとに時間に沿って検討されるということです。

 相手の態度が変わった、言葉が少なくなった、行為が予想していなかった流れで進んだといった事情は、刑法176条1項が掲げる「同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと」や、「予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕させること」などとの関係で検討されることがあります。どの類型として扱われているのかの読み方は、どの類型で立件されているのか|不同意性交等罪の8つの要因の読み方で詳しく解説しています。

インターホン、報告の時期、退室時の様子

 ソープランドの個室には、店と連絡をとるためのインターホンなどが置かれていることが一般的です。「その場で使わなかったのだから嫌がっていなかったはずだ」と考えたくなるかもしれませんが、驚きや恐怖で声を上げられないことは十分にあり得るため、それだけで同意があったと評価されるとは限りません。反対に、終了後しばらくしてから店に報告されたという事情も、それだけで申告が不自然だとされるわけではありません。

 こうした事情は、一つだけを取り出すのではなく、時間の流れの中で全体として評価されます。いつ、どの場面で、誰が何を言ったのかを覚えている限り時系列で書き出し、記憶があいまいな部分はあいまいなまま記しておくことが、後の主張の土台になります。

指名・常連という関係の評価

 何度も指名を重ねていた関係であれば、それまでのやり取りや関係の経過は、当日の状況を理解するための事情として考慮されることがあります。ただ、以前に受け入れられていたことが、その日の行為への同意を当然に意味するわけではありません。関係の長さは、同意の有無を判断する材料の一つにはなり得ても、それだけで結論を決めるものではないと捉えておくのが適切です。

主張の組み立て方|争点を四つに分けて整理する

何が争点になっているのかを分ける

 同意のない行為を指摘された場合の争点は、おおむね次の四つに分けられます。どこを争い、どこは争わないのかを決めることが、主張の組み立ての出発点です。

争点確認すること材料の例
行為の有無と内容何が行われたとされているのか、それは事実か当日のメモ、店から告げられた言葉の記録
同意の有無その行為の時点で、相手が拒否の意思を示せる状態だったか時系列の経過、退室時の様子、指名の経緯
客の認識(故意)相手の状態を客がどう認識していたかその場でのやり取り、相手の反応
損害と金額請求額に根拠があるか、誰に対する請求か請求の内訳、規約の文面、提示された書面


 客の認識が争点になる場合の考え方は、「同意があったと思っていた」|不同意性交等罪で争点になる事情で、同意を裏付ける材料とその限界は、「同意があった」を証明できるか|風俗トラブルの証拠と限界で詳しく解説しています。

事実を争う場合と、事実を前提に解決を目指す場合

 指摘された行為そのものに心当たりがない、または同意があったと考える場合は、事実関係を争う方針になります。この場合、その場で謝罪したり、事実と異なる内容まで認めたりすると、後の交渉や捜査で、事実を認めた資料として扱われるおそれがあります。

 これに対し、相手の受け止め方への配慮が足りなかったと考える場合には、事実関係を前提に、キャスト本人との示談を目指す方針もあります。示談は、検察官が処分を判断する際に考慮される事情の一つですが、捜査機関の判断を拘束するものではありません。

 否認と示談のどちらを選ぶかは、きれいに二者択一で決めきれないこともあります。この点は、無実でも示談すべき?否認と示談のジレンマで整理しています。

どの方針でも、説明の一貫性が問われる

 店での説明、警察での供述、弁護士を通じた交渉での主張が食い違うと、そのこと自体が信用性を下げる事情として扱われることがあります。最初の段階で慌てて説明した内容が、後から足かせになるケースは少なくありません。方針を決める前は、話す範囲を絞っておくことが、後の主張を守ることにつながります。供述の変遷がどう評価されるかは、供述が途中で変わると不利になる理由|変遷の評価で詳しく解説しています。

指摘を受けた後に控えたいこと

 ソープランドで同意のない行為を指摘された後は、次のような行動を控えてください。

  • キャストに直接連絡をとる、店の外で待つなど、本人に接触しようとすること。
  • その場で現金を渡す、金額を約束する、内容を確認しないまま書面に署名すること。
  • 「同意だったよね」とキャストや従業員に確認を迫り、その様子を録音しようとすること。
  • 予約のやり取り、通話履歴、支払いの記録などを削除すること。
  • SNSや掲示板に、店やキャストについて書き込むこと。


 キャストに確認を迫ったり録音したりする行動は、身を守るつもりでも、かえって不利な事情として扱われるおそれがあります。終了直後の場面での振る舞い方は、【風俗トラブル】終了後にキャストが泣き出した|その直後に客がしてはいけないことで詳しく解説しています。

よくあるご質問

高い料金を払っていました。同意があった根拠になりませんか。

 料金の額や支払いの事実は、店に何の対価を支払ったかを示すものではあっても、その日の個々の行為について相手が同意していたことを直接示すものとしては扱われにくいと考えられます。料金を根拠にした主張には、店の側から「性交はサービスに含まれていない」と反論されることも想定されます。主張の軸は、当日の個室での経過に置くことをおすすめします。

店から請求されているだけで、キャスト本人からは何も言われていません。店に払えば終わりますか。

 店からの請求とキャスト本人の権利は別のものです。店に支払っても、キャスト本人との関係や刑事手続が当然に終わるわけではありません。誰との間で、何について合意するのかを分けて検討し、合意書にはその範囲を明記しておく必要があります。

時間がたってから警察から連絡が来ることはありますか。

 あり得ます。不同意性交等罪は告訴がなくても起訴できる罪であり、公訴時効も15年とされています(刑事訴訟法250条3項2号)。店の受付や支払いの記録から利用者が特定されることもあるため、連絡がないことを理由に記録を処分しないでください。取調べで聞かれることは、風俗事件の取調べで聞かれること|供述が争点に直結する項目で詳しく解説しています。

まとめ


  1. 「訴えられた」の中身は、店からの請求、キャスト本人の損害賠償請求(民法709条・710条)、刑事手続に分かれ、それぞれ区切りのつけ方が異なる。
  2. 同意のない性交等は不同意性交等罪(刑法177条1項)にあたり得て、指などの挿入も「性交等」に含まれる。
  3. ソープランドは風営法上、異性の客に接触する役務を提供する営業とされ(風営法2条6項1号)、業態や料金は個々の行為への同意を直接示すものとは扱われにくい。
  4. 店舗型のため、店がその場で前に出て書面を求めやすい一方、受付や防犯カメラなど客の説明を裏付け得る記録も店に残る(刑事訴訟法179条)。
  5. サービスが長く複数の段階に分かれるため、同意は行為ごとに時間に沿って検討され、インターホンを使わなかったことなどは単独では決め手にならない。
  6. 争点を、行為の有無、同意の有無、客の認識、損害と金額の四つに分け、争う点と争わない点を決めてから話す。
  7. 店での説明、警察での供述、交渉での主張の一貫性が問われるため、方針を決める前は話す範囲を絞る。


弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗トラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。ソープランドを利用した後に同意のない行為を指摘された、店から金銭を請求された、警察から連絡が来たといった、いずれの段階でも、事実関係を伺ったうえで、争う点と争わない点の整理からお手伝いします。

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若井亮
専門家

若井亮(弁護士)

弁護士法人若井綜合法律事務所

風俗トラブルや男女トラブル、それに伴う刑事事件まで一貫して対応。累計相談件数は男女トラブル約23,000件、風俗トラブル約8,000件。全国からの相談を24時間受け付け、迅速な対応を心がけています。

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