【解決事例】不同意性交等致傷の疑いで捜索・取調べを受けた|不起訴処分を勝ち取った事例
本記事は、2026年9月30日時点の民法、刑法、弁護士職務基本規程と、公表されている最高裁判所の判断をもとに作成しています。個別の事情によって結論が変わることがありますので、具体的な対応は専門家にご相談ください。
「会社の飲み会の帰りに同僚と入った店で、同僚がキャストとトラブルになった。自分は何もしていないのに、店から全員の名前と勤務先を聞かれた」。反対に「トラブルになったのは自分のほうで、一緒にいた同僚にどう説明すればよいか分からない」というご相談もあります。同じ職場の人と一緒だったという事情は、一人で店を利用した場合にはない悩みを生みます。
風俗トラブルへの対応としては、店との示談や刑事手続の見通しを説明した情報が多く見られます。いずれも誤りではありませんが、利用者が一人であることを前提にしていることが多く、同僚という「職場でつながった第三者」がいることで何が変わるのかは見えにくくなっています。
この記事では、同僚と一緒に行った店でトラブルになった場面に絞り、責任の範囲、同僚との情報のやり取り、弁護士への依頼の立て方、会社との関係を順に整理します。示談金の金額の考え方や示談書の条項の詳細は、別の記事に譲ります。
同僚と一緒だったことで何が変わるのか
一人で店を利用した場合と比べると、同僚と一緒だった場合に変わるのは、主に情報の通り道と話の窓口です。責任の基本的な考え方そのものが変わるわけではありません。
| 場面 | 一人で利用した場合 | 同僚と一緒だった場合 |
|---|---|---|
| 請求の相手 | 自分に対する請求だけを考えればよい | 店が一行をまとめて扱い、誰に何を求めているのかが曖昧になりやすい |
| 連絡の経路 | 店と自分の間に限られる | 同僚を通じて連絡が来る、同僚が代わりに話してしまうことがある |
| 事実の説明 | 自分の記憶と記録が中心になる | 同僚の記憶や説明と食い違うことがある |
| 会社への伝わり方 | 店からの連絡など外部の経路が中心になる | 同僚の会話から社内に伝わる経路が加わる |
変わらないのは責任の基本
店やキャストに対する責任は、誰がどのような行為をしたのかによって判断されます。同じ店にいた、同じグループで入店したという事情だけで、他の人の行為の責任まで引き受けることにはならないのが原則です。
変わるのは情報と窓口
一方で、同僚がいることで、自分の氏名や勤務先が相手に伝わる経路が増え、店との話し合いに関わる人も増えます。同僚と一緒だった場面では、責任の範囲よりも、情報と窓口をどう整理するかが結果を左右しやすくなります。
責任は一人ずつ判断される
損害賠償の責任は、原則として、故意または過失による自分の行為によって他人に損害を与えた人が負います(民法709条)。店から「一緒に来たのだから全員で責任を取ってほしい」と言われても、その言葉だけで支払う義務が生じるわけではありません。
同僚の行為について自分が支払う義務はあるか
複数の人が共同して他人に損害を与えた場合には、各自が連帯して賠償する責任を負うとされています(民法719条1項)。また、行為をそそのかした人や手助けした人も、共同で行為をした人とみなされます(同条2項)。
ただし、ここでいう共同とは、同じ店に居合わせたことを指すものではありません。同僚が個室で起こしたトラブルについて、別の部屋にいた人や店の外で待っていた人が責任を問われるには、その行為に関わったといえる具体的な事情が必要になります。刑事手続でも、同じ場所にいたことだけで共犯とされるわけではない点は同じです。
「全員で払ってほしい」と言われたとき
店がまとめて金額を示してきた場合は、その金額が誰のどの行為を理由とするものなのかを確認することが出発点になります。店に生じた損害とキャスト個人に生じた損害も、本来は別のものです。この点は誰に払うのか|店の損害とキャスト個人の損害は別で詳しく扱っています。
内訳が分からないまま全員分を一人が引き受けると、後から同僚との間で負担を分け直す必要が生じ、職場の人間関係にも影響が及びかねません。同じ場にいたことと、同じ責任を負うことは別の問題です。
お酒に酔っていたことはどう扱われるか
飲み会の後という事情から、酔っていて覚えていない、判断が鈍っていたというご相談も少なくありません。
民法には、自分の行為の責任を判断する能力を欠いた状態で他人に損害を与えた人は賠償の責任を負わないという定めがあります。ただし、故意または過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りではないとされています(民法713条)。自分で飲酒して酔った場合はこのただし書が問題になるため、酔っていたことだけで責任を免れると考えるのは難しいといえます。
一方で、記憶があいまいであることは、相手の説明をそのまま受け入れる理由にもなりません。覚えていないことは覚えていないと整理し、同僚の記憶や店の利用記録と照らし合わせていくことが考えられます。飲酒と記憶の問題は記憶が曖昧なまま責任を問われている|飲酒と本番トラブルも参考にしてください。酔って転倒した際のトラブルについては、【解決事例】酔って転倒しキャストが負傷、治療費等を請求された|解決金約22万円で示談が成立した事例もご紹介しています。
同僚が関わることで起きやすいこと
同僚と一緒だった場面では、トラブルそのものとは別に、同僚を介して生じる問題があります。
同僚が店との連絡役になってしまう
店が連絡先を知っている同僚に連絡し、その同僚が「本人に伝えておきます」「こちらで何とかします」と応じてしまうことがあります。同僚に善意があっても、本人の了解がないまま条件を受け入れる話が進むと、後で「約束したはずだ」と主張される材料になりかねません。本人の了解なく代わりに結んだ約束は、本人が認めなければ本人に効力を生じないのが原則ですが(民法113条1項)、そうした争いが生じること自体が負担になります。
同僚には、店から連絡があっても何も約束せず、本人につなぐだけにしてもらうよう頼んでおくことが考えられます。
名刺や社員証から勤務先が伝わる
会社の飲み会の帰りは、名刺入れや社員証、会社支給のスマートフォンを持っていることが多く、身分証の提示を求められた際に勤務先まで伝わりやすい状況にあります。身分証の提示や撮影を求められた場面の考え方は、身分証の提示・撮影を求められた場合|応じる義務と拒否の帰結で整理しています。
誰かが先に立て替えて払ってしまう
その場を収めるために、同僚の一人が全員分を立て替えて支払う、あるいは同僚からお金を借りて支払うという流れになることもあります。立て替えた分を後でどう分けるかは、店との問題とは別に、同僚同士の問題として残ります。周囲から借りて払うことの注意点は家族や知人から借りて払うことの是非|先に確認すべきことをご覧ください。
同僚の会話から社内に伝わる
トラブルの内容は、店からの連絡よりも、同僚同士の会話から社内に広がることがあります。どこまでを誰に話すかは、同僚と早い段階で確認しておきたい事項です。勤務先に伝わる経路の全体像は勤務先に伝わる経路|通知制度と事実上の伝達を分けるで扱っています。
警察が関わった場合に同僚との間で気をつけたいこと
店やキャストが警察に相談した場合、トラブルを起こしたとされる人だけでなく、一緒にいた同僚が参考人として話を聞かれることがあります。参考人として呼ばれた場面の考え方は【風俗トラブル】参考人として呼ばれた|客が被疑者に切り替わる分岐点で説明しています。
話を合わせることのリスク
同じ職場の人同士だと、説明が食い違わないよう事前に話を合わせたくなるかもしれません。しかし、事実と異なる内容で口裏を合わせ、その内容を捜査機関に説明した行為について、犯人隠避罪(刑法103条)にあたるとした最高裁判所の判断があります(最高裁判所平成29年3月27日決定)。また、他人の刑事事件に関する証拠を隠したり消したりする行為は、証拠隠滅罪の対象になります(刑法104条)。同僚の件について、自分のスマートフォンに残っているやり取りや写真を消すことも、この点から慎重に考える必要があります。
記憶が人によって違うのは自然なことです。それぞれが覚えていることを、覚えているとおりに説明することが基本になります。詳しくは証拠を消した・口裏を合わせた|証拠隠滅罪と量刑への影響をご覧ください。
話さないことと事実と違うことを話すことは別
話したくないことを話さないことと、事実と異なることを話すことは、法的な意味が異なります。同僚に「社内で話さないでほしい」と頼むことと、「警察にはこう話してほしい」と頼むことも同じではありません。判断に迷う場合は、話をする前に弁護士に相談することが考えられます。
弁護士への依頼は一本化するか分けるか
同僚と一緒にトラブルに関わった場合、同じ弁護士にまとめて相談や依頼ができるのかというご質問をよくいただきます。
同じ弁護士に依頼する場合
同じ事件について複数の人から依頼を受けることは、それ自体が禁じられているわけではありません。ただし、依頼者同士の利害が対立するおそれがあるときは、弁護士は受任にあたって、それぞれの依頼者に辞任の可能性などの不利益があることを説明しなければならないとされています(弁護士職務基本規程32条)。受任後に利害の対立が生じた場合には、事情を告げて辞任などの適切な措置をとることになります(同規程42条)。
窓口が一本になれば、店とのやり取りが整理され、同僚ごとに異なる話が店に伝わることを防ぎやすくなります。
分けて依頼したほうがよい場面
一方で、次のような事情がある場合は、それぞれが別の弁護士に相談することも検討に値します。
- トラブルを起こしたとされる人と、同行していただけの人で立場が大きく異なる。
- 誰の行為によるトラブルなのかについて、同僚同士で認識が食い違っている。
- 立て替えた費用や支払いの負担をめぐって、同僚同士で意見が分かれている。
- 警察が関与しており、同僚が参考人として話を聞かれる可能性がある。
相談に同僚が同席する場合
最初の相談に同僚と一緒に来られる方もいます。同席には話が早く進むという面がある一方、それぞれが話しにくいことを話せなくなる面もあります。詳しくは相談に家族や知人を同席させてよいか|同席が与える影響をご覧ください。
会社との関係をどう考えるか
同僚と一緒だったことで、会社に知られるのではないか、処分を受けるのではないかという不安を抱える方も多くいます。
業務時間外の私的な行為として扱われるのが原則
飲み会そのものが会社の行事であっても、解散した後に個人として店に行った行為は、通常は私生活上の行為として扱われます。私生活上の行為を理由とする懲戒について、最高裁判所は、行為の性質や情状、会社の事業の内容や規模、従業員の地位などを総合して、会社の社会的評価に及ぼす悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならないという考え方を示しています(最高裁判所昭和49年3月15日判決)。店を利用したことや、そこでトラブルになったことだけで、直ちに懲戒の対象になるとは限りません。
業務との接点が生じる場面
ただし、店の代金を会社の経費で精算した、法人カードで支払った、取引先の接待の延長として店に行ったといった事情があると、業務との接点が生じ、会社が関心を持つ理由が出てきます。私的な利用を経費として精算した場合は、店とのトラブルとは別の問題として扱われることもあります。会社との関係では、店に行ったかどうかよりも、業務とどこで接点を持ったかが問われます。懲戒や失職のリスクについては風俗トラブルが原因の失職・懲戒|会社にバレる典型ルートと防止策で扱っています。
店から会社に請求が向けられた場合
店が「会社に責任を取ってもらう」と言ってくることがあります。会社が従業員の行為について責任を負うのは、その行為が事業の執行についてなされた場合です(民法715条1項)。業務時間外に私的に利用した店でのトラブルは、通常はこれにあたりません。会社に知らせると告げられた場合の考え方は、「家族と職場にバラす」と言われた|告知の中身別に見る違法性も参考にしてください。
会社に自分から報告する必要はあるか
私生活上のトラブルについて、会社に報告する一般的な法律上の義務はありません。ただし、就業規則で、逮捕や起訴などがあった場合の届出を定めている会社もあります。まずは就業規則の定めを確認し、報告するかどうか、どこまで伝えるかを落ち着いて判断することが考えられます。
いまの段階で確認しておきたいこと
同僚と一緒だった場面で、早めに整理しておきたい事項は次のとおりです。
- 店が請求しているのは誰で、どの行為を理由としているのか。
- 自分自身が当事者なのか、同行していただけなのか。
- 店に伝わった自分の氏名、連絡先、勤務先の範囲。
- 同僚が店とどのようなやり取りをしたか、何かを約束していないか。
- 誰がいくら支払ったか、立て替えた分はあるか。
- 警察からの連絡の有無と、同僚が話を聞かれているかどうか。
- 店の代金を経費や法人カードで支払っていないか。
記録としては、店とのメッセージや着信履歴、支払いの控え、当日の行動の時刻などを、消さずに残しておくことが大切です。
よくあるご質問
同僚と一緒だった場面でよくいただくご質問をまとめました。
同僚だけがトラブルを起こし、自分は別の部屋にいました。自分にも請求は来ますか。
店が一行の全員に連絡してくることはあります。ただし、別の部屋にいただけであれば、同僚の行為について責任を負うことは通常考えにくいといえます。請求が来た場合は、その理由が誰のどの行為なのかを確認し、自分の関与がないのであればその旨を伝えることになります。直接のやり取りに不安がある場合は、弁護士を窓口にすることも考えられます。
上司に誘われて断れずに店に行きました。会社の責任になりませんか。
上司に誘われたという事情があっても、店での自分の行為についての責任が上司や会社に移るわけではありません。一方で、断りにくい状況で店に誘われたこと自体が職場の問題として扱われる余地はあり、それは店とのトラブルとは別に考えることになります。
同僚に口止めをお願いしてもよいですか。
社内で話を広めないよう頼むこと自体は、通常の人間関係の範囲のことです。ただし、警察から事情を聞かれた際に事実と違う説明をするよう頼むことは、別の問題を生じさせるおそれがあります。お願いする内容は「社内で話さないでほしい」にとどめておくことが考えられます。
まとめ
- 同僚と一緒だった場合に変わるのは、責任の基本ではなく、情報の通り道と話の窓口です。
- 損害賠償の責任は自分の行為について負うのが原則で(民法709条)、同じ店にいただけで同僚の行為の責任を負うことにはなりません(民法719条参照)。
- 自分で飲酒して酔った状態を招いた場合、そのことだけで責任を免れるのは難しいとされています(民法713条ただし書)。
- 同僚には、店から連絡があっても何も約束せず、本人につなぐだけにしてもらうことが考えられます。
- 事実と異なる内容で話を合わせることや、他人の事件の証拠を消すことは、別の罪が問題になり得ます(刑法103条、104条)。
- 同じ弁護士への依頼は可能ですが、利害が対立するおそれがある場合は説明を受けたうえで判断します(弁護士職務基本規程32条)。
- 会社との関係では私生活上の行為として扱われるのが原則で、業務との接点があるかどうかが分かれ目になります(民法715条1項)。
弁護士法人若井綜合法律事務所では、風俗店・メンズエステなどでのトラブルに関するご相談を池袋と新橋の事務所でお受けしています。同僚と一緒だった場面では、ご本人と同僚それぞれの立場を分けて整理するところから始めます。
トラブルを起こしたとされる方も、一緒にいただけで店から連絡を受けた方も、店とのやり取りを一人で抱え込まず、早めにご相談ください。


