既婚者が風俗トラブル|家庭への影響を抑える秘匿の実務
風俗店やその関係者から金銭を求められ、手元にまとまった額がない。そのとき最初に頭に浮かぶのが、「親に借りる」「友人に立て替えてもらう」という方法です。インターネット上には「借りてでも早く払ったほうがよい」という説明と、「そもそも払う必要はない」という説明の両方が並んでいて、どちらに従えばよいのか分からなくなります。
この記事は、借りること自体の良し悪しを決めつけるものではありません。借りるかどうかを考える前に確認しておきたいことを、順番に整理します。結論から言えば、お金をどこから持ってくるかは最後の工程です。
この記事が前提にしていること
- 成人同士のやり取りを前提にしています。相手が18歳未満である可能性がある場合は事情が大きく異なるため、個別にご相談ください。
- すでに逮捕されている、警察から呼び出しを受けているなど刑事手続が動いている場合は、この記事の一般的な説明では足りません。
- 請求されている金額が妥当か、名目に法的な根拠があるか、書面の条項が効くかといった論点は、別の記事で扱っています。
- 店のルール違反を勧めるものでも、支払うべきものを支払わずに済ませる方法を紹介するものでもありません。
借りる前に固まっているべき三つのこと
お金を用意する作業は、支払う内容が決まってから始まります。少なくとも次の三つがはっきりしないうちは、金額そのものが動く余地が残っています。
- 誰に払うのか。請求してきている人が、その金銭を請求できる立場にあるのかという問題です。
- いくら払うのか。総額だけでなく、何に対する金銭なのかという内訳の問題です。
- 払うと何が終わるのか。その支払いで問題が終わるのか、別の名目で改めて求められる余地が残るのかという問題です。
この三つは、それぞれ別の記事で詳しく扱っています。ここで押さえておきたいのは、三つが決まる前に原資を作ってしまうと、用意できた金額がそのまま話の出発点になりやすいということです。「親から借りられた」という事情が伝われば、その金額を前提に話が進みます。
また、一部でも支払うと、請求されている内容を認めたものとして扱われる場面があります。金銭の受け渡しは、金額の問題であると同時に、争うかどうかの意思表示にもなります。
借りるという判断は、いったん決めると後戻りしにくい判断でもあります。家族に頭を下げて工面したのだから、その金額を前提に早く終わらせたい。そう考えるのは自然ですが、その分だけ、金額そのものを見直す機会は遠のきます。順序を守ることには、こうした意味もあります。
「借りてでも早く払う」と言われる理由と、その限界
早く払うことに意味がある場面は確かにあります。刑事手続が動いている事案では、被害の回復が図られたかどうかが、その後の判断で考慮される要素の一つとされています。原資を本人ではなく親が用意した場合でも、被害が回復されたという事実は考慮され得ると説明する弁護士の解説もあります。
もっとも、支払えば問題が当然に終わる、という関係ではありません。支払いの効果は、何をどこまで清算する合意になっているかで決まります。急いで用意した資金で急いで払っても、清算の範囲が曖昧なままであれば、後日また連絡が来ることがあります。
期限が相手側から作られていることがあります
その場でATMに同行される、営業している貸金業者の店舗まで一緒に行くよう促される、家族に電話をかけて事情を説明するよう求められる、後日いくら払うという書面にその場で署名を求められる。こうした場面は、実際に相談として持ち込まれます。
このとき問題になっているのは、お金の工面ではなく、話の進め方です。金策の問題として一人で抱え込む前に、その場での約束や署名を避けていったん持ち帰る余地がないかを考えたほうが、選べる幅は広く残ります。
家族から出してもらう場合に、先に決めておきたいこと
渡し切りなのか、立て替えなのか
同じ「出してもらう」でも、返さなくてよい金銭なのか、後で返す約束のある金銭なのかで扱いが変わります。返す約束をして受け取れば、法律上は金銭の貸し借り(消費貸借)になります。家族の間でも、金額・返し方・期限を書いた簡単な書面を残しておくと、後々の行き違いを避けやすくなります。渡し切りにする場合は税務上の扱いが問題になることがあるため、税理士など専門家に確認しておくと安心です。
家族が直接払うのか、自分が払うのか
民法は、債務の弁済は第三者もできると定めています。ただし、法律上の利害関係がない人が本人の意思に反して弁済することには制限があり、親族であるというだけでは「正当な利益」を持つ人には当たらないと解されています。家族が相手方へ直接振り込む形をとるのであれば、本人の依頼に基づく支払いだと分かる形にしておくほうが安全です。いったん本人の口座を経由し、本人名義で支払う方法もあります。
「保証人になる」ことは別の話です
分割払いの話になると、家族に連帯保証人を求められることがあります。これは資金を出してもらうこととは別の約束で、保証契約は書面でしなければ効力を生じないとされています。口頭で「自分が責任を持つ」と言うことと、書面に署名することの重さは同じではありません。
家族に法律上の支払義務はありません
保証人になっている場合などを除けば、請求の相手は本人だけです。家族が「払わないといけないらしい」と誤解したまま用立てるのと、義務はないと理解したうえで援助を決めるのとでは、後の家庭内での受け止め方が変わります。ここは正確に伝えておきたいところです。
家族が窓口として話し始めると起きること
心配した家族が相手方と直接やり取りを始めると、連絡先が家族に移り、家族が当事者のように扱われることがあります。事情を知る範囲も広がります。家族に知られずに進めたい場合の連絡方法の設計については、別の記事で扱っています。
家族に頼むときに伝えておきたいこと
家族への説明は、金額の話から始まりがちです。ただ、出す側にとっての判断材料は金額だけではありません。次の四点を、分かっている範囲で伝えておくと、話が一度で済みやすくなります。
- 何が起きて、誰から何を求められているのか。
- 求められている金額と、いつまでという期限。
- その期限が誰の都合で決まっているのか。まだ確定していないのであれば、確定していないと伝えます。
- 出してもらった場合に、どう返すつもりなのか。返せる見通しが立たないなら、その点も含めて伝えます。
途中まで説明して都合の悪い部分を伏せると、後からその部分が出てきたときに、金銭のこと以上に「説明しなかったこと」が問題になります。どこまで伝えるかを含めて、家族に切り出す前に弁護士に相談される方もいます。
知人から借りる場合に出てくる問題
家族より頼みやすく見えることがありますが、後に残るものが違います。
- まとまった額を頼むには理由の説明が要り、事情を知る人が一人増えます。返済が続く限り、その関係も続きます。
- 職場の同僚や上司から借りると、職場に事情が伝わる経路ができます。
- 書面を残さないと、後で「貸した」「もらった」の食い違いが起きやすくなります。
- 「自分が代わりに話をつけてやる」と申し出る人がいます。報酬を得る目的で他人の交渉を代わりに行うことは制限されており、任せた結果として不利な合意になることもあります。
- 借りた側の負い目が、その後の関係のなかに残ることがあります。
金融機関などから借りる場合
その場で契約しないことが出発点です。貸金業者からの借入れには年収に応じて総量を制限する仕組みがあり、希望どおりの金額を短時間で用意できるとは限りません。
急いでいるときほど、審査のない調達手段が目に入ります。給与を前払いすると称して手数料を差し引く取引について、最高裁は、実質的には貸付けと同じものだと判断しました。同じ仕組みの手口が「後払い現金化」などと名前を変えて続いていると指摘されています。借入先を検討する場合は、金融庁が設けている登録業者の検索の仕組みで、その業者が登録を受けているかを確かめてください。厳しい取り立てを受けている場合の対応は、別の記事で扱っています。
借り方によって「後に残るもの」が違います
| 借り方 | 用意までの速さ | 事情を知る人 | 支払った後に残るもの |
|---|---|---|---|
| 家族から | 比較的早い | 家族 | 家族への返済と、家庭内の関係 |
| 知人から | 相手次第 | 知人とその周辺 | 返済と、関係の変化 |
| 貸金業者から | 審査による | 原則として本人のみ | 利息を含む返済 |
| 借りずに分割にする | 支払いは先送り | 相手方と自分 | 合意した条件に沿った支払い |
借りることだけが選択肢ではありません。総額を詰め直す、支払期日を延ばしてもらう、頭金を入れて残りを分割にするといった形も、実際には取られています。分割にする場合の合意書の読み方は、別の記事で扱っています。
支払うと決めた場合に残しておきたい記録
- 誰に、いつ、いくら支払ったかが分かるもの(振込であれば控え、現金であれば受領した旨の書面)。
- 何に対する支払いなのかを書いた書面。金額だけの領収書では、後から範囲が争いになります。
- 家族や知人に出してもらった分についての、当事者間の簡単な書面。
- 支払いに至るまでのやり取り(連絡の日時と、言われた内容)。
現金をその場で手渡す形は、記録が残りにくく、後から確かめる手段が乏しくなります。
借りて払ったあとに起きやすいこと
- 清算の範囲が曖昧なまま支払うと、別の名目で改めて求められることがあります。
- 家族への返済が滞り、当初の問題とは別に家庭内の問題が生じることがあります。
- 高い利息で調達すると、相手方との関係が終わった後も返済だけが長く残ります。
- 資金を用意できたこと自体が相手に伝わると、支払える人だという前提で話が進むことがあります。
相談の前に整理しておきたい五点
- 届いている請求の書面と、そこに書かれている内訳。
- 相手方とのやり取りの記録(通話、メッセージ、その場で渡された紙)。
- 相手から言われている期限と、その根拠として説明されている内容。
- 自分で用意できる金額と、用意できる時期。
- 家族や知人に頼める範囲。頼めない場合は、頼めないことも含めてお伝えください。
まとめ
- お金の用意は最後の工程で、その前に「誰に」「いくら」「払うと何が終わるのか」を固めます。
- 用意できた金額が、そのまま話の出発点になることがあります。
- 早期の支払いが考慮される場面はありますが、支払えば当然に終わるという関係ではありません。
- その場でATMや貸金業者へ促される場面は、金策ではなく話の進め方の問題です。
- 家族から出してもらうときは、渡し切りか立て替えかを先に決めます。
- 家族が直接払う場合は、本人の依頼に基づく支払いだと分かる形にしておきます。
- 保証人になることは、資金を出すこととは別の約束です。
- 知人からの借入れは、事情を知る人と関係の変化が後に残ります。
- 高い利息での調達や、審査のない調達手段には注意が必要です。
- 借りずに条件を組み替える方法も、選択肢に入ります。


