本番後に妊娠・中絶費用を請求された場合の対処法|弁護士が解説
「盗撮を疑われた」「店とのトラブルで勤務先を握られた」——性風俗の利用そのものは、成人どうしの合意であれば原則として犯罪ではありません。それでも、利用に伴うトラブルに巻き込まれると、「会社に知られて職を失うのではないか」という不安を抱える方は少なくありません。
もっとも、「風俗でトラブルになった=ただちに懲戒解雇」という単純な話ではありません。会社が従業員を処分できる範囲には法律上の枠があり、トラブルが勤務先に伝わっていく経路にも、ある程度の典型パターンがあります。
この記事では、性風俗を利用する男性の視点から、(1)風俗トラブルが会社にバレる典型ルート、(2)私生活上の行為を理由に懲戒処分・解雇ができるのかという労働法の枠組み、(3)発覚と処分のリスクを抑えるための防止策、を整理します。
前提:風俗の利用自体より「トラブル」が問題になる
まず押さえておきたいのは、失職や懲戒の引き金になるのは、多くの場合「利用そのもの」ではなく、利用に付随して起きたトラブルだという点です。
売春防止法は、成人どうしの売買春そのものには罰則を設けていません。会社にバレて処分が問題化するのは、たとえば次のようなケースです。
- 盗撮を疑われた、あるいは実際に撮影してしまった
- 施術中に相手に触れてしまい、わいせつ行為として被害を訴えられた
- 本番行為をめぐって被害届が出された
- 美人局(つつもたせ)や恐喝で「勤務先にバラす」と脅されている
- ぼったくり被害で店に個人情報を握られた
- 相手が18歳未満だった(この場合は別の重い法律が関わります)
これらのトラブルは、それぞれ問われうる罪も対処も異なります。ここでは個別の罪の解説には立ち入らず、「トラブルがどう会社に伝わり、会社は何をどこまでできるのか」に絞って解説します。
会社にバレる典型ルート
風俗トラブルが勤務先に発覚する経路は、おおむね次のパターンに整理できます。
ルート1:逮捕・勾留による長期の欠勤
もっとも発覚につながりやすいのが、逮捕・勾留による身柄拘束です。逮捕されると、その後72時間以内に勾留請求の可否が判断され、勾留されると原則10日間、延長で最長20日間、身柄拘束が続きます。逮捕からの日数を合わせると、最長で23日程度にわたって出社できない状態になりえます。
数日の欠勤であれば家族が体調不良として連絡することでしのげる場合もありますが、拘束が長引くほど、勤務先に説明がつかなくなり、発覚のおそれが高まります。メンズエステの一斉摘発に巻き込まれた、盗撮を疑われた、といった場面で身柄を拘束されると、この経路が現実味を帯びます。
ルート2:実名報道
逮捕された事案が報道され、氏名が出ることで発覚するパターンです。一般の方が実名で報道されるのは、多くの場合、逮捕された事案に限られます。逆に言えば、事件化・逮捕を避けられれば、この経路のリスクは大きく下げられます。
ルート3:店や相手が勤務先情報を握っている
風俗トラブルに特有なのがこの経路です。その場で免許証や名刺を預けさせられたり、勤務先を聞き出されたりして、「支払わなければ会社に連絡する」と迫られるケースがあります。美人局や恐喝、ぼったくりの取立ての場面で起こりやすく、示談交渉の連絡が職場に及ぶことを懸念する方もいます。
ここで重要なのは、「勤務先にバラす」と告げて金銭を要求する行為自体が、脅迫罪(刑法222条)や恐喝罪(刑法249条)にあたりうるという点です。会社バレを人質に取られている状況は、こちらが一方的に弱い立場とは限りません。
ルート4:警察から会社への連絡は原則ない
「捕まったら警察が会社に連絡するのでは」と心配される方は多いのですが、民間企業の従業員について、警察から勤務先に連絡がいくのは原則的ではありません。例外的に連絡が及びうるのは、会社の施設内で起きた事案、会社自体が被害者となる事案、捜査上どうしても勤務先の確認が必要な事案などです。風俗の利用は通常こうした例外にあたらないため、この経路そのものよりも、ルート1〜3を通じた間接的な発覚を想定しておくのが現実的です。
私生活上の行為で懲戒処分・解雇はできるのか
仮に会社に知られたとして、次に問題になるのが「会社はどこまで処分できるのか」です。ここには労働法の重要な枠組みがあります。
懲戒処分には法律上のハードルがある
労働契約法15条は、懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には、懲戒権の濫用として無効になると定めています。つまり、会社が「犯罪を犯したから即クビ」と判断しても、その処分が当然に有効になるわけではありません。
懲戒処分が有効と認められるには、一般に次の要素が求められます。
- 根拠規定と周知:就業規則に懲戒事由が定められ、従業員に周知されていること
- 相当性:処分の重さが行為の重大性に見合っていること(初犯・軽微な事案にいきなり最も重い処分を科すのは相当性を欠くと判断されやすい)
- 適正な手続:本人に弁明の機会を与えるなど、手続が適正であること
私生活上の非行は原則として対象になりにくい
懲戒権は、本来、企業の秩序を維持するために認められた権利です。そのため、業務と関係のない私生活上の行為は、たとえ法に触れるものであっても、ただちに懲戒の対象になるわけではありません。
この点を示した代表的な判例が**横浜ゴム事件(最高裁昭和45年7月28日判決)**です。従業員が私生活で住居侵入罪に問われ罰金刑を受けた事案で、会社は「会社の体面を著しく汚した」として懲戒解雇しましたが、最高裁は、(1)行為が私生活の範囲内であること、(2)受けた刑罰が軽微であったこと、(3)その従業員の職務上の地位が指導的なものでなかったこと、などを踏まえ、懲戒解雇を無効と判断しました。
一方で、私生活上の行為でも懲戒が認められる場合はあります。**関西電力事件(最高裁昭和58年9月8日判決)は、私生活上の行為であっても、企業の信用や事業に重大な影響を及ぼす場合には規制が及びうるとしています。また小田急電鉄事件(東京高裁平成15年12月11日判決)**では、鉄道会社の社員が電車内での痴漢を繰り返して有罪判決を受けた事案について、会社の社会的評価を低下させるおそれがあるとして、懲戒解雇が有効とされました。
整理すると、私生活上の非行を理由とする懲戒解雇が有効になりやすいのは、(a)就業規則に私生活上の非行が懲戒事由として明記されており、(b)その行為が企業の社会的評価を著しく低下させるおそれがあると客観的に認められる場合です。行為の態様が悪質か、反復しているか、報道されたか、本人が管理職や指導的立場か、業種として特に高い信用が求められるか、といった事情が総合的に考慮されます。
不起訴・非公表なら覆せる余地がある
近年でも、私生活上の盗撮で逮捕された会社員が不起訴となり、報道もされず、業務への具体的な悪影響も認められなかったケースで、懲戒解雇を無効と判断した裁判例(名古屋地裁令和6年8月8日判決)があります。事件化を避けられるか、不起訴を得られるか、報道されないかどうかが、最終的な処分の重さを大きく左右しうるということです。
公務員は別の枠組み
なお、公務員の場合は民間企業より厳しくなりやすい点に注意が必要です。国家公務員法・地方公務員法では、禁錮以上(現在は拘禁刑)の刑に処せられると当然に失職するとされ、罰金や不起訴でも「懲戒処分の指針」に基づいて処分が検討されます。公務員の性犯罪事案は実名報道されやすい傾向もあり、より早い段階での対応が求められます。
発覚と処分のリスクを抑える防止策
以上を踏まえ、客側の立場で取りうる現実的な防止策を挙げます。前提として、被害者がいるトラブル(盗撮・わいせつなど)を起こさないことが第一であり、以下は「起きてしまった場合に被害を最小化する」ための考え方です。
1.早い段階で弁護士に相談する
処分の重さは、刑事手続の結果に強く連動します。早期に弁護士が関与できれば、勾留を回避して長期欠勤を防げる可能性が高まり、被害者との示談を通じて不起訴を目指すことで、報道や前科のリスクを下げられる余地が生まれます。被害者との直接交渉は原則として難しく、連絡先も本人には知らされないため、示談は弁護士を介して進めるのが基本です。
2.個人情報をむやみに渡さない
その場で免許証や名刺を預けたり、勤務先を伝えたり、暗証番号を入力したりすると、後々「会社バレ」を人質にした要求につながります。トラブルの場では、その場で払わない・サインしない・個人情報を渡さないを基本とし、安全の確保を最優先にしてください。
3.「バラすぞ」という脅しには応じない
会社への連絡をちらつかせた金銭要求に一度応じても、多くの場合それで終わりません。前述のとおり、こうした要求は脅迫罪・恐喝罪にあたりうるものです。自分ひとりで交渉せず、やり取りを記録として残し、弁護士に窓口を一本化するのが安全です。
4.会社への対応も慎重に
まだ会社に知られていない段階では、刑事手続の状況が落ち着くまで様子を見るという選択肢もあります。すでに知られてしまった場合でも、自暴自棄にならず、弁明の機会を通じて事実を整理して伝えることが大切です。会社側が「犯罪=即解雇」という誤った前提で動こうとすることもあるため、必要に応じて法的な観点から説明していくことで、処分を避けたり軽くしたりできる余地があります。
5.やってはいけないこと
- 被害者に直接連絡・謝罪に行く(口止めや二次被害と受け取られるおそれ)
- 証拠となるデータや機材を慌てて処分する(証拠隠滅として別の問題になりえます)
- SNSなどで事件について発信する
まとめ
風俗トラブルが会社に発覚する主な経路は、逮捕・勾留による長期欠勤、実名報道、そして店や相手に勤務先情報を握られての要求です。一方で、警察から会社への連絡は原則的ではなく、私生活上の行為を理由とする懲戒解雇にも労働契約法上の高いハードルがあります。事件化を避け、不起訴を得られれば、処分を覆したり軽くしたりできる余地もあります。
不安なときほど、単独での場当たり的な対応は事態を悪化させがちです。トラブルの内容と勤務先への影響を早い段階で整理し、専門家に相談することが、失職や重い処分を避けるための現実的な一歩になります。


